12 運命の分かれ道(2)
閲覧ありがとうございます´Д`*)☆
今回は少し長いですが、一生懸命書いたのでよかったら最後まで読んでもらえるとうれしいです。
それではヽ(*ゝωб*)ノ゜+*:;;:*どぉ㎡ぞ*:;;:*+
カーナの目つきに理性はない
血走った目から感じ取れるのは明確な殺意のみ
「来るな!来たら、この女を殺すぞ!!」
囚人の1人はボウガンの先をマリアンヌに向けてそう言った。
しかしカーナから返答は無い
カーナは窓ガラスから入ってくるとそのまま真っ直ぐマリアンヌの元に歩いていく。
自分の言葉が届いているのか、パニックになる囚人
つい引き金を引く指に力が入る。
そして放たれた矢
「!?」
だがその矢がマリアンヌに命中することは無かった。
なぜならマリアンヌに放たれた矢をカーナがその身を盾のようにして守ったから。
「お怪我はありませんか?マリアンヌ様」
「うむ」
「到着が遅れて申し訳ありませんでした」
カーナは、まるで怒りで痛覚が無いと言わんばかりに肩に受けた矢を強引に引っこ抜く。
そして跪く
「マリアンヌ様、どうか私にこのゲス共を殺す許可を下さい」
俯き、雨水が髪の毛を伝って廊下にポツポツと斑点模様を形作る中、カーナはそう呟いた。
マリアンヌは少し考える
そして言った
「うむ、許す。 こいつらに使い道は無い、好きなように殺せ」
「ありがとうございます」
「ふざけるな! 死ぬのはお前だ、このクソやろーー!」
そう叫んだのは一番マリアンヌにご執心だった囚人A
囚人Aは血だらけの下半身を隠すことなく先ほどまでボウガンを持っていた別の囚人からボウガンを奪い取る。
そして引き金に手をかけた。
しかしその引き金を引くよりも先に囚人Aの胴体を1本のナイフが貫いていた。
「っ!!」
悲鳴はない
なぜなら悲鳴をあげるための喉はすでに裂かれていたから。
水風船を握りつぶしたように血が飛び散る。
「まずは1人目」
ぐらりと倒れこむ囚人Aからズブリという気持ち悪い肉の音と共にナイフが抜かれる。
恰幅のいい体がドシンとカーペットの上に落ちて周囲を血の池のように染めた。
ピクピクと動く指先、カーナは見下しながら言った。
「くたばれ」
カーナはこの時、初めて人を殺した。
しかしそこには何の感慨深さも無い。
あと数秒後に死ぬ人間を見下ろした所で、あるのは到着が遅れた自分への不甲斐無さと
沸騰するような怒りだけだった。
自分の命はマリアンヌ様の所有物、ならば自分自身は殺せない。
ではこの気持ちを沈めるには?
答えは決まっている、、
カーナは横たわっている囚人の風穴をグリグリと踏みつける。
死を目前にしながらも苦しそうに悶える囚人Aの顔はカーナの気持ちを幾分癒してくれた。
でも…足らない。
そう思ったときだった。
囚人の1人は黙ってボウガンを構える
”今ならカーナを殺せる”
だから音も無く真後ろから撃った。
だが次の瞬間、人間とは思えない動きを囚人達は見ることになる。
なんと、カーナは飛んで来た矢をまるで箸で掴むようにピンポイントで素手で止めてみせたのだ。
それも背後からの矢を、一瞥もせずに。
その光景に囚人たちは唖然とした。
カーナは矢をわざと囚人達から見えやすいようにして握りつぶしす。
そして言った。
「よくも貴様ら、マリアンヌ様を、、、、安心しろ全員殺してやる。 殺して、殺して、殺して殺して殺して殺して、殺しつくしてやる!!」
燃えるような髪
髪同様に真っ赤に血走ったカーナの瞳
まるでの鬼のようだった。
そしてその言葉を聞いた囚人たち
背筋に悪寒が走った。
悲鳴をあげるのも忘れ、全てをかなぐり捨てるように逃げ出した。
「1匹たりとも逃がすものか」
カーナのナイフは磁石に吸い寄せられるように囚人達の命を次々に奪っていった。
ある囚人は腹から内臓をぶちまけ
ある囚人は頭蓋骨が粉砕した状態で倒れこみ
ある囚人はへし折れた両手両足から骨が飛び出した状態で座り込み
ある囚人は目玉をくりぬかれて舌を引っこ抜かれのた打ち回る
その地獄絵図の中でカーナは満足そうにナイフを握ったまま立ち尽くす。
マリアンヌが声をかける。
「終わったか?」
「はい」
その時、廊下の奥から物音が聞こえた。
2人は音のしたほうに顔を向ける。
暗闇の中に立っていたのはここ1ヶ月、マリアンヌのことを何度も送り迎えした人間
アンジェラのお抱え騎士『ワーナー』であった。
× ×
”遅かった”
それがワーナーが隠し階段を上って、急いで通路を進んだ先の光景を見て思った率直な感想であった。
ドレスが破れ半裸のマリアンヌ
夥しい血液の海
そこで獣に食い散らかされて虫の息となって、後は死を待つだけの囚人たち。
その傍ら血がベットリと付いたナイフを持つカーナ
もはや話し合いは不可能。
言い逃れれる要素は皆無。
カーナとの戦いは避けられそうにない。
カーナの肩に目をやる。
傷から察するに矢を受けた可能性が高い。
まだ出血している点から囚人達にやられたのか。
自分なら矢を受けるようなミスはしない
どれだけの数がいようが、あんなゴロツキ共から傷を受けるようなマヌケなことは無い。
この考察はワーナーを安心させた。
アンジェラ様はこの女をかっているようだが実力の上では自分のほうが上だ。
そもそも”たかが女に”元正騎士の自分負ける事など万に一もない。
そう判断しながらもワーナーは考える。
しかしながらアンジェラ様の親友を殺してもいいのか?
そもそも、この女を手に入れることが、我が主君アンジェラ様の願い、しかしこうなっては…
マリアンヌが何がカーナに言っている。
程無くしてカーナはこちらに向かって走り出してきた。
ワーナーはいつも通りの無表情で槍を構える。
そして静かにカーナを殺すことを決意した。
「申し訳ありませんアンジェラ様、カーナを殺します」
× ×
「やつはワーナー…だったかな?」
うろ覚えの知識を引き出すようにマリアンヌは首を傾げる。
「マリアンヌ様、あいつも殺してよろしいですか?」
「うむ、許……いや、ちょっと待て」
その時ふと頭にある人物の言葉が浮かんだ。
”あなたは実に愚かしい。私という存在が現れたら、とたん依存を始め、自分で考えることを放棄しはじめた”
その通りだな、とマリアンヌは納得するように息を漏らす。
そして久しぶりに自分の脳を動かす。
「マリアンヌ様?」
改めてマリアンヌはワーナーのほうに体を向けて、目を細める。
そして品定めをするように見つめる。
ここで殺すか否か
それはこいつがただの囚人とは違うかどうかで判断するべきで事柄だ
ワーナーはアンジェラのお気に入りだ
それは強いからか?
いや、違う、アンジェラは今日、地下室に向かう時にこう言っていた。
”うふふ、愛想は無いけれど命令には忠実で信用できる人間なのだけれど”
命令に忠実で信頼できる…か。
これはつまりこいつが裏切らないということはもちろん、そのことをアンジェラ自身が確信して信頼しているということ。
ということは、他の人間には知りえないアンジェラの情報すら持っていると可能性を暗示しているのでは?
思考が纏まれば纏まるほどマリアンヌの口はニヤニヤと形を変えていく。
そしていい考えが思いついたマリアンヌ
その口はついに笑い声すらこぼしてしまった。
「やつには利用価値がある、生かしたまま城に持ち帰る。よいな?」
「はいもちろん。我が神、マリアンヌ様の仰せがままに」
「うむ、では行け」
「了解しました」
× ×
ナイフの柄を逆手に持ち
地を這うような腰の低さで突っ込んでくるカーナ
ワーナーは予想していたと言わんばかりに臨戦態勢にはいる。
槍の切っ先を向けて迎え撃つ構え。
二人の視線が交差する。
”今だ!”
タイミングはドンピシャ
槍を斜め下に突き出すだけの動き
それだけなのに先ほどまでの囚人の動きとはまるで違う。
体全体を使って槍に全ての力を込める熟練された動きだった。
そしてワーナーは”獲った!”と確信した。
しかし当たったと核心した瞬間やつは消えた、槍の切っ先は空しく絨毯を突き刺すのだった。
「バカなっ」
つい、戦闘中にもかかわらずそう口走ってしまうような光景。
まるで幻を見たようにワーナーの思考は停止する。
”いったい何が?”
そう思考を回そうとする
だがそれよりも先にワーナーの片足の腱が切り裂かれていた。
「っ!」
ワーナーは背後に視線をやると、そこにカーナはいた。
飢えた獣のような目でこちらを見ている。
そして先ほどよりも低い体勢から2撃目を放とうとしていた。
槍を避けると同時に切ったのか?
いいや、ナイフのリーチ差ではありえない。
やつは突き出した瞬間、確かに消えた。
そして次の瞬間には背後にいた。
いつ自分の足を切ったのか?
それすら分からない。
「一撃程度で調子に乗るな!」
突き刺した槍を力任せに引き抜き背後の敵に攻撃を与えるために力を込める。
カーナはその微細な動きを感知して無駄だと言わんばかりに言う。
「調子に乗るも何も、もう詰んでる」
腱を切ったことでワーナーを支えていた体がよろける。
一瞬出来た隙、1秒にも満たないほどのものだが、それはカーナを相手にした戦いにおいては絶望的なほどの敗北を意味していた。
下から上へ、ワーナーの体を蛇が巻きついていて這い上がるようにナイフを振るっていく。
残った片足、太もも、腕、腹、どれも何かしら大切な機能を奪い取るのが目的であると言わんばかりに致命傷を避けるように切っていく。
そして最後に首に鋭すぎる手刀が入る。
ワーナーの視界が歪んでいく。
別に侮っていたわけではない。
全力で殺しにいった。
ただ、実力差がありすぎたのだと
そして今になってアンジェラの言っていた意味が分かった
”ワーナー、私の最も信頼する騎士よ。 この皇帝の争奪戦、女の私が勝ち残るにはカーナの存在が必須になるわ、あなたもそれを肝に銘じておきなさい”
薄れゆく意識の中ワーナーは痛感した。
雷鳴に照らせれたカーナの傍でワーナーはまるで神経の切れた四肢のようにだらんと垂れ下がり、力を失って膝から崩れていった。
「今度こそ終わったか?」
マリアンヌはそう言って近づいてくる。
「はい、ワーナー以外で息のあるものはもうこの場にはおりません」
「そうかそうか、ならこっちへ来い」
「はい」
パチーン!、と思いっきりマリアンヌはカーナの頬を平手で叩いた。
マリアンヌは冷たく睨む
「来るのが遅い、何をしていた?」
カーナは目を伏せて
「申し訳ありません、アンジェラ様に勧誘できそうな人間がいると言われて」
「それはお前に命じたことだったはずだ」
「私には…知人と呼べる人間はアンジェラ様を除くといません、ですから、、、」
「アンジェラに人を紹介してもらったと?」
「はい。 ですが、今日そこに行っても誰もおらず、何か悪い予感もしたので急いで帰ってきました」
マリアンヌは跪くカーナの顎の下に指をやり、引き上げるように上に上げる。
「出来ないことは出来ないと言え、二度と我に嘘をつくな。嘘をついたら死ね」
「はい、分かりました」
「それと」
頭の中にチラつくアンジェラの顔を消し去るように言った。
「今後、我以外の人間に対して様付けをするな。 お前が仕えるべき人間は生涯において我以外いない、そうだな?」
「はい」
「我が死んだ時はすぐに貴様も命を絶て」
「もちろんです、我が神、マリアンヌ・ディ・ファンデシベル様」
マリアンヌはカーナの肩の傷に手を当てる。
そして指で落書きでもするようになぞる
少しだけカーナの眉がピクリと反応する
「カーナ、お前の今日受けたこの傷は我のせいだ。 我を憎むか?」
「いいえ、御身に傷が無ければこれは勲章です。憎むなんてとんでもありません」
「そうか」
徐にマリアンヌは床に無造作に転がっていた矢を手に取る。
月明かりに照らすとその矢にはベットリとカーナの血が付いていた。
マリアンヌはその矢を強く握る
そして大きく振り上げた
「っ!!」
「マ、マリアンヌ様!!」
勢いをつけてカーナが受けた傷と同じ場所へ振り下ろされる。
マリアンヌの左肩から血が滲んでいく。
急いで近づいてくるカーナにマリアンヌは近づくなと手の平を前に突き出す
そして歯を食いしばりながら言った。
「よい、、、近づく、な、これは、我が、人間の、心を捨てた、誓い、、だ」
肩が死ぬほど熱い。
矢の先端が1ミリ進むごとに歯を食いしばっていなかったら意識を持っていかれるほどの激痛。
マリアンヌは更に続けて言う
「我は、弱い、だから、捨てないといけ、ない」
ギリギリと憎しみを込めるように鳴る、歯と歯の擦れる音。
カーナは来るなと言われた事を今にも破りそうな勢いで
「マリアンヌ様がそんなことをされる必要はありません!」
矢を持つ手は更に強く握られる。
そしてマリアンヌは「いいや、必要なんだ」と首を振る。
「今まで我は人を虐げることが出来る権力を持ちながら行使せず、他人に頼って依存してきた。 これはその代償だ、我は今後この傷を見るたびに思い出す、愚かな自分自身を、情けない過去の自分を、だから刻み付ける必要がある、、心の奥深くまで」
口からはまるで何度も念仏を唱えるように「捨ててやる、捨ててやる」と言って矢をグリグリと更に押し込む。
「人間の心なんていらない、そんなものがあるから弱みに付け込まれた、、だから捨ててやる! こんないらない物は捨ててやるんだ!」
最後に矢を乱暴に引っ張り抜いた。
血がドバッと出る
そして体全体で息をするように、震える唇で言った
「どうだカーナ、我は変われただろ?」
引き攣りながらも笑顔を作ろうとするその顔
カーナはマリアンヌの体を抱きしめるようにそっと支える。
そして柔らかく頷く
「はい」
カーナは自身のスカートの裾をビリビリと破り「今はこれしか無いのでご勘弁ください」と言い、マリアンヌの傷を止血する。
器用なものだな、と感心しながらマリアンヌは息を整えていく。
ふと、倒れているワーナーが目に入ったのでカーナに問いかける
「ちなみに先ほどそいつの槍を避けたのはどうやったのだ? 我には消えたように見えたのだが」
「あれはただの足運びと姿勢、そしてスピードの緩急を使った応用みたいなものです」
「よく分からんのだが、それを使えば誰ででも消えることが出来るようになるのか?」
「はい」
今「誰でも」って言ったのだが
たぶんこいつの中で我は入ってないんだろうな
「まず相手の槍を構えた立ち姿を見てだいたいの実力は分かりました」
「構えで分かるのか?」
「はい、私には遠く及ばない。そう確信しました」
構えだけで確信なんて持てるものかね?
「実力の程が分かれば後はそう難しくはありませんでした。彼に向かって走っていく時のスピードを本来の5割ぐらいに抑え、槍が当たる瞬間スピードを上げて、姿勢落とす、歩幅を小刻みにする。以上の3つの要素を同時に行うことにより残像を作り出しました」
すげーな、お前
そして我には一生、分かりそうもない世界だ。
まぁ別に分かろうとも思わぬがな。
「そろそろここを出るぞ、早くしないとアンジェラが兵を連れてくる」
「はい、ですがマリアンヌ様、このままお外に出るとお体が濡れてしまいます」
「構わぬ、汚い唾液まみれの体を洗い流すにはちょうどいい」
「唾液まみれ!? い!?い!?いったい何が!?」
尋常じゃないほど慌てふためくカーナ
背負っているワーナーの体が乱暴に左右に揺れる。
マリアンヌは「いちいち聞くな」と煙たそうに手を払う動作をした。
そして窓の淵に足をかけると、強く蹴った。
外はドシャ降り
横殴りの雨が痛いぐらいの強さで肌を打ち付ける。
素足でドロドロの地面の上に立つと泥濘が足の指と指の間に入ってきた。
「気持ち悪いな」
しかし先ほどまでの事と比べるとなんてことはない。
振り返ると自分の顔が割れた窓ガラスに映っていた。
客観視するまでもなく、ここに来た時の表情とはぜんぜん違う。
マリアンヌは全てを悟るように言った。
「今日の一番の教訓は我らは愚者だということが分かったことだな」
え!、と驚くカーナ
必死にそんなことは無いと首を振る。
それを見て雨に打たれながらマリアンヌは笑う。
「いいや、少なくとも両方とも賢者ではないよ」
最後まで読んでいただきありがとうございました(b゜v`*)
今回は長いので、読まれる方がダレないで読めるように少し工夫をしてみました(ง •̀ω•́)ง✧
少しでも楽しんでもらえればうれしいです(*'∪'*)ルン♪




