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11 運命の分かれ道(1)

クリックありがとうございます(^^)


今回は長いお話だったので二つに別けました (○´―`)

ではでは、どうぞお楽しみください。


 行き止まりに勢いよくぶつかるたびに急いで引き返してまた他の道へ。

 繰り返すこと数回、しだいにすすやホコリが体をおおっていく。

 暗闇はひたすらに深く、闇は自分の指先すら映し出さない。


 何度突き当たりに体ごとぶち当たっただろう。

 何度こけたかも分からない。


 履いていたヒールの高い靴はすでに両足とも脱げた。

 いつもなら素足で歩くなど足を痛めると言っているところだが今回はそんな余裕も無い。

 切れる息と同様に破れていくドレス。

 手足についた青いアザが暗闇を猪突猛進に進んできたことを物語っていた。


 だがここで足の動きを止めるわけにはいかない、

 だってここで止めれば待っているのは陵辱りょうじょくされた後の死だけなのだから。


 まだ追いつかれていないのは囚人たちにおもりが付いていたからだろう。


「どこにいるのかな~」

「はやく出ておいで~子猫ちゃん♪」


「どうせお前は俺達に犯されるんだけどな」

「皇族ってどんな味がするんだろうな」


 背後から聞こえる男たちの声

 逃げるようにマリアンヌの足はただ前へ進んでいくのであった。




 ようやく闇に目が慣れてきたころ、扉に行き着いた。


 この扉を開けたら先ほどまでいた部屋で、アンジェラと囚人達が待ち受けていたらと思うと手足が凍傷を起こしたように震えた。

 震えた片手を残った手で押さえながら押し開ける

 目の前には急な斜面の階段

 心臓が緩むようにホッとした。


「助かった」


 それはただ単に運がよかっただけなのか

 それとも何度もアンジェラの後ろをついていったことで、たとえ頭が覚えていなくても足が覚えていたのかもしれない。

 なんにしても胸をで下ろすには十分な事柄ことがらだった。


 マリアンヌは10段ほどの階段をまるで飢えた野良犬のように駆け上がる。

 そして生まれてこのかたやったことの無いアッパーカットを打ち込むように隠し床を突き上げる。


「はぁ、はぁ」


 廊下は水を打ったように静まり返っていた。

 耳に入ってくるのは自分の息切れた吐息

 それと遠くに聞こえる横殴りの雨がガラスを打ち付ける音だけ。


 どうやら外は雨のようだ。

 ともあれとりあえず館の外に出なければ…


「えっ?」


 その時”何か”に足を掴まれた。


 それは同時に心臓をじかに掴まれたような感覚だった。


 マリアンヌは恐る恐る、暗闇にれてきた目の視線を下げる。

 階段から伸びている腕の先

 ギョロギョロと動く二つの物体

 そしてそれが目だと分かった時には遅かった。

 視線が合ってしまった。


「つ~かま~えた~」


 おぞましい声だった。


 逃げ、な、い、と


 息が出来ない

 頭の中もまるで電気を全て消したかのように真っ白

 でも脳はマリアンヌの体に「全力で逃げろ」と命令する。


「ああぁぁぁあああぁあ!!」

「っ!!」


 マリアンヌは訳の分からない奇声を発しながら掴まれている手を爪で引っかく。

 爪が肉に食い込む

 男は激痛からパッと手を放した。


 ”追いつかれた!追いつかれた!!追いつかれた!!!”


 恐怖が心を支配して狂った人間のように同じ用語が頭の中を繰り返す中、マリアンヌは暗闇に包まれた通路を全力で走る。

 すると雷の光が廊下を照らす場所に行き着いた。


 このまま廊下を進んでいくのは適切ではない。

 パニックにおちいった脳が唯一叩き出した正論。

 マリアンヌは急いで窓の鍵に手をかける


「早く早く早く早く」


 しかしこの追いかけられている場においてはこの上ないほどの悪手であった。


「逃がさねーよ!」


 振り回されるようにつかまれた腕

 さっき掴まれた時よりも数倍強い力で掴まれている。

 先ほどと同じように引っいてみたが、うんともすんとも放さなかった。

 逆に思いっきりビンタをされた。


 勢いよく体ごと壁にぶち当たるマリアンヌ。

 その時に一瞬、窓ガラスから入り込む雷の光りで囚人の顔が見えた。

 地下室の囚人Aであった。


「ひぃ!」


 のがれるように手元にあったキャンドルを投げつける。

 しかしマリアンヌのコントロールでは当たることは叶わず、キャンドルは窓ガラスを割っただけ。


「ハズレだ」


 囚人Aはそう言った後、押し倒してマリアンヌの上に馬乗りになり舌を出す。

 そして味見をするようにベロリとマリアンヌの頬を舐め上げた。


「やっぱり、うめぇ~な」


 囚人Aのズボンは既に脱ぎ捨てられていた。

 粘りつくような唾液が全身にまとわり付いていく。


 じゅる、じゅるり。


 おいしそうに汗を舐め取る囚人A

 その舌はくまなくマリアンヌの体をなぞっていく。


 徐々(じょじょ)に他の囚人たちもその場に集まってくる。

 マリアンヌは「はぁはぁ」という息遣いを遠ざけるように顔をそむける。


 マリアンヌの全身を舐め回せば舐め回すほどに囚人Aの呼吸はどんどんと荒くなっていく。


 そしてついに


 囚人Aはドレスをまくり上げ

 力任せにマリアンヌの足を開かせる。


「えっ!」


 マリアンヌの目に入ったのは醜悪な形をした物体。


 マリアンヌはみにくく勃起するそれを見てその後の展開を考えるとゾッとした。

 近づいてくる囚人、懸命けんめいに腕の力を入れて抵抗する。

 そして震えてカチカチと鳴る歯で言った。


「助、け、て」


 のどからしぼり出すように、か細い声。

 囚人Aはそれを見てニタリと気持ち悪く笑う


「お姫さん、運が悪かったな」


 無慈悲な言葉だった。


 マリアンヌは涙を流しながらブンブンと首を振る。

 逃れるように手を伸ばす、その時、何か、手に当たった。


 何が手の中にあるのは分からない

 でもこのまま犯されるぐらいなら…


 マリアンヌは手に持っていたそれを力いっぱい振り払った。


「っ!」


 囚人Aは顔をゆがめた。

 そして巨体が地面に倒れこむ

 その股間からは血がとめどなく流れていく。


 マリアンヌはそれを見て

 飛び散る血を見て、ガラスを持つ手が震える。


 手にも付いた血


 今まで見たことも無かった血

 気が遠くなる


 その時、手に持っていたガラスがマリアンヌ自身を映す。

 おびえきって、今にも泣き出しそうな、クシャクシャで情けない顔。


 なんだ、この顔は?


 そう思った。


 これでまるで父上が言ったように


 ”ただの女ではないか”


 そしてガラスに映った自分に納得するように呟いた。


「あ~なるほど」


 そしてマリアンヌは自嘲じちょうの笑みをもらす。


 ああ、信用するから裏切られたんだ。

 最初から誰も信じなければよかったんだ。

 覚悟が足らなかった。

 この道を進んでいく覚悟が。

 アンジェラ姉さまの言う通りじゃないか。



「このあまぁ~、絶対に犯してやる!」


 自分の股間から出ている血を、手で必死に押さえながらのた打ち回る囚人A。

 地面から見上げられるその目

 マリアンヌは先ほどとは別人のようにせせら笑う。

 先ほどまで真っ赤な顔になり、必死に隠していた胸を隠すことは既に無く

 両手を大きく広げて言った。


「犯す?どうやって? お前の醜いそれはもう男性機能を取り戻すことはないのではないか」

「くそがぁぁ~~~」


 マリアンヌはこれ見よがしにガラスをチラつかせる。

 そしておびえていた今までを忘れたかのように快活かいかつに笑った。


われを犯せなくて残念だったな」

「手に持っているガラスを放せ!」


 周囲を取り囲む囚人の1人がそう言ってボウガンをこちらに向けた。

 マリアンヌは震える唇を強くかんで震えを押さえつける。


「それだけの人数がいて、しかも飛び道具まで持っている。 なのにも関わらず、たかが小娘がガラスの破片を持っている程度で何を恐れている? われを犯したいのではないのか?」

「ふざけるな! 早くそれを放せ」

「断る。 これが無いとお前達の大事な男性器を切り刻めないだろう? さぞ、痛かろうな~、まぁ女であるわれには分からんが」


「撃つぞ!」


 ダメだ引くな!


 そう心の中で声が聞こえた。

 ここで一歩でも引けばもう進めなくなる

 そう思った

 そしてそう思ったら自分の中で何かが弾けとんだ気がした。


「何のつもりだ?」


 逃げようとしている足のきびすを返す。

 そして一歩、また一歩、囚人に近づいていく。

 気持ちが言葉に追いついたような感覚


「どうした?引き金を引かぬのか? せっかくアンジェラ姉さまからボウガンを貰ったのであろう、それともお前達のような劣悪種にはその程度の勇気も無いのか?」


 真っ直ぐ狙いが心臓に向くように体を向けるマリアンヌ。

 そしてまるで魔法をかけるような口調で語りかける。


「引きたければ引け、どうせ当たらないさ」

「な、何を言ってるんだ?」

「さぁ~?そこまではさすがにわれも分からぬが、もしかしたら割れた窓から急な突風が入り込んで矢がれる。あるいは引き金を引いた瞬間、ボウガンが壊れるかも? まぁ何にしても当たりはしない」


 すでに震えや涙は消えていた。

 引き金にかけられた指に恐怖は無い。


「死ね!!」


 大声と共に引き金に力を入れる。

 しかし次の瞬間、それは壊れた。

 大きな音と共に盛大に分解した。


 正確に言うと弦の部分が引きちぎれたことによって他の部分も壊れた。

 それは劣化していたからなのか?


 確かに他のボウガンに比べてその囚人が手にしているのは古そうだったが、それをマリアンヌが知るわけも無く

 更に言えばその古いボウガンが今、この瞬間に壊れる保障など何処にもなかったのだ。

 だがしかし、現実にマリアンヌが言う通り矢はマリアンヌに当たることは無かった。


 その現実が囚人たちの目を点にさせる。

 引き金を引いた囚人が言った。


「お、お前は、本当に人間か?」


 その問いにマリアンヌは笑う


「人間か……さっき辞めたよ」


 暗闇の中、マリアンヌは重ねるように更に笑う。


「そして運というのは得てしてすぐに逆転してしまう、先ほどまで強運でも現在は分からない」

「何を言って?」

「お前達はわれおかそうとせずにすぐに地下室で殺すべきだったのだ。まぁこれだけの美人をただ殺すのは味気ないと考えるのは分からんでもないが…男というのは本当に御しがたいな」

「だから?」

「だからわれが割ったガラス、割れてから2分もたってしまった」

「だからなんなんだ!」


 すごんでくる囚人たちにマリアンヌは後ろを指差す。

 その顔はこの上なく楽しそうだった。


「お前達の人生はこのたびめでたくゲームオーバーをむかえた。 う、し、ろ♪」


 そこには1人の人影が立っていた。

 人影は叩きつけるような雨に打たれながらもただ立ち尽くす。


 囚人たちは目をらす

 その時、雷が近くに落ちた

 そしてその逆光が人影を照らした。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」


 割れた窓の近くにいた囚人がまるでお化けを見たかのように悲鳴をあげてたじろぐ。


 それもそうだろう

 そこにいたのはカーナだったのだから。




閲覧ありがとうございました。


前の話ぐらいから書いているのがすごく楽しいので文章にもそれが反映されているとうれしいです。

さぁ~がんばるぞ(∩`ω´)⊃)) しゅっしゅっ


次はもっと面白いですよ♪

…たぶん(笑)

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