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36 1ヶ月前(6)

クリックありがとうございます(^^♪人とご飯を食べて美味しいと思ったことが無いひとりぼっちの桜ですw ん?(o・_・o)?だって、食事に集中できないし、他人の咀嚼音そしゃくおん箸や食器の当たる音、腹が立つでしょ? 皆もそうだよね?ね(o'ω'o)モキュ?


長く描いてきた出発前のお話ですが、遂に今回で最後です♪

ではどうぞご覧くださいませ~♪



 それはとても静かなハイキングであった。

 待ち合わせはマリアンヌの部屋の前。


「やぁ、待たせたね」


 香水ではなく風呂の石鹸せっけんの甘い香りがシグレの鼻先をくすぐる。

 マリアンヌはいつものドレスというよりも、寝巻きのようなドレスに薄いカーディガンを羽織って部屋から出てきた。

 時間も時間だからだろう、風呂から上がってまだ間もないマリアンヌ、その髪は完全に渇ききっておらず、顔はノーメイク、いつもの黒い口紅は元より黒いアイシャドーも引かれていない。


 シグレは改めてマリアンヌという人間の美しさに感嘆かんたんの声をあげた。


「やはりマリアンヌ様は本当にお美しゅうございます」


 普通女性がノーメイクなら色々驚く事もあるだろう。

 かく言うシグレもそういった状況にかち合った事がある。

 だがどうだろう、この目の前の女神とも思える女性の造形美。

 少しだけいつもより童顔どうがんに見える程度で、その美しさには一切の遜色そんしょくは無い。


 一瞬、マリアンヌは「あ?」となったが、シグレの視線の先が自分の顔に向いている事で言っている意味を理解した。


「ん?あ~そう言えば今はメイクしてないな」

「いえ、必要ないかと。あなた様に化けるための化粧は不必要かと思います」


 薄く笑う瞳。


われにも作りたいイメージ像というものがあるのだよ、男のお前には分からんだろうがな」

「ハッ、無粋な提言を申し訳ございません」

「それはそうとシグレ、このような時間になってしまってすまないね。今、われは対外的には家で引きこもっている事になっているからな。われの計画上も今あまり第三者に会うのは喜ばしくない、つまり大手を振って出歩くならこういう時間帯になってしまうのだ」

「いえいえ!そのような事をお気になされないでください!私は神であるマリアンヌ様の従順なる従者、例え不眠不休だろうと不満などございません!」

「そこまでの事を即答出来るのはお前かカーナぐらいだよ。では行こうかね」

「ハッ!」


 歩き始めた2人。

 周囲に人影は無く夜の空気も相まって、絢爛豪華けんらんごうかな廊下はなおいっそ静まり返っているようであった。

 そこを足音など気にしないでヒールの音を立てながら歩くマリアンヌと、足音を最小限に付き従うシグレ。


 少し歩く、やがて見えてくる綺麗に整備された中庭を月明かりに照らされながら抜けて皇帝の王の間のある中央建物付近へ。


「マリアンヌ様、つかぬ事をお聞きしますが」

「なんだい?」

「なぜ、この場所に来るまで人がいなかったのですか?」


 今から行こうとしている所は、城の中でも皇帝のいる寝室と同等程度の価値があるであろう魔道具が置かれている宝物庫とも呼ばれている場所。

 所有者不明の魔道具が数多く眠っている。

 にも関わらず皇帝は元より、見回りの騎士1人もすれ違わないで城の中を自由に歩き回れている事実。

 シグレはこのあまりにも奇怪な出来事を問わずにはいられなかった。


 マリアンヌは足を止めず、その理由を口にする。


「現在この城では引継ぎ上の問題で警備の穴が出来てしまっているのだよ、今は全員が休憩中だ」


 全員が休憩中!?

 シグレは目を丸くさせる。


「なぜそのような馬鹿げた事が起こっているんですか!?休憩中って、そんな、、この城に限って!なぜ、そのような事が!」

「そう驚くな、全てはわれたくらみよ」

「企みですか?ですが…このような大掛かりな事をどうやって」

われには騎士を統括する人間に友達がいてね、そいつに”頼んだんだよ”。人に見られたくないから深夜の指定の時間、1時間だけ騎士の見回りなどを取りやめろ、方法は任せる。と」

「統括する人間ですか?…それはもしかして右大」

「シグレ…シー」


 足を止めずに顔だけ振り返って指を唇に当てるマリアンヌ。


「誰が聞いているやもしれない、それ以上は言うな。そしてお前が知らなくていいことだよ。大丈夫、後からマリアンヌの権利は御付きのシグレという男に持たせるために1つ貰った、と父上たちに伝わる手はずになっている。先に貰うだけだ、結果が一緒なら先だろうが後だろうが同じだ」


 神はいったいどこまでの事が操れるのだ?

 そう思いながらも。


「別に今じゃなくてもよろしかったのでは?」

「というと?」

「そこまでして今魔道具を取りに行く必要が無いのでは?警備の者たちに手を回したり、このような時間に出歩くリスク、マリアンヌ様の手を煩わせてしまって、私としては申し訳ない気持ちで。マリアンヌ様が慰問が終わってからなら自由に歩きまわれるのなら別にそれからでも」


 マリアンヌは最後まで聞かずに「それはありえない」と首を振る。


われはお前になんと言ってここに連れて来た?」

「卒業祝いとして魔道具をやる、でしょか」

「そのとおり、そして卒業祝いとは今与えるべきものだ。確かにお前の言う通り、われが慰問から帰ってきてからの方がノーリスクだろう、今動くことはわれにとって一切プラスには働かん。だがそれが何だというのだ?われが褒美をやると言ったら、それは今やらねば筋が通らん。と言うか、そもそもこのプルートにある全ての財はわれの物だ、誰かの顔色をうかがうなどありえぬわ」


 そして明後日におもむく3階の王の間まで最短ルートで歩を進めると、王の間の前を通り過ぎる。

 奥まった通路の先には、持ち主不在の魔道具たちが待っている宝物庫。

 このプルートにおいて皇帝のいる部屋と同等クラスに警備が厳重な場所。


「さて、そろそろ着くぞ」

「はい。因みに鍵は?」

「鍵?」

「はい。昔、ムンガル卿の部隊に所属する前、私はここで警備をしていたことがあります。その時、この奥の宝物庫には厳重な鍵がいくつも」


 マリアンヌは軽快に答えた。


「無いよ、ほら」

「っ!?」


 これもマリアンヌが手を回したからだろう。

 以前、まだ若い時、ここの警備をしていた事があったシグレ。

 その時には確かに付いていた忘れもしない頑丈そうな錠は取り外され、押せば開く状態であった。


「ここまで手が回っているとは」


 得体の知れない恐怖感に襲われるシグレ。

 いったいこの鍵を取り外させるためにはどれほどの根回しが必要なのか想像もつかない。


「さて入ろうか」

「お開けします」


 シグレは気持ちを落ち着かせるように息を1つフーと吐くとドアに手をかけた。


 ………

 ……

 …


 生唾がゴクリとなる。


「素晴らしい場所ですね」


 騎士という職務にじゅんじていたシグレにとって、魔道具が並んでいるこの光景は胸を高鳴らせた。

 一方、


「そうかな?われにはやかましいだけの場所だが。うっとおしいし、イライラするだけだろ」


 などと愚痴りながら30近くのまだ所有者未定の魔道具たちに視線を動かす。

 王の間に匹敵するほどの室内の広さに、まるで美術館のように陳列された魔道具たち。

 鏡のように姿を映し返す大理石の床、壁に備え付けられたいくつものランプの炎が照らす先には、剣や盾はもちろん、鎧、2メートル以上の槍、イヤリング、指輪、変な鉄製の模型、その他の魔道具全てが磨かれ手入れをされた状態で置かれていた。


「警備をしていたことがあると言っていたが、中には入らなかったのか?」

「それは規則で止められていましたので」

「からの~?」

「いえ、入っておりません」

「………」


 やっぱりこいつは優秀だけどつまらないな。

 普通気になったら入るよね?


 この室内を光景を見る限り定期的に清掃が行われているのは明らか。

 ということは、おそらく父上の性格を考えれば昔からずっとそうなのだろう。

 そしてそれだけ大事にしているという事は、清掃中も警備も変わらず扉の前に待機させていたはず。

 じゃあその時にでも横からスーと、さ。

 入るよね?入るはずだよ?

 最低でも中をちょっと覗き見るぐらいは…さ。


「いや、お前にそんなのを期待しても無駄か」

「どうかされましたか?」


 閉まった扉にもたれ掛かったままのマリアンヌ、気怠そうな眼差しでシグレを見ながら長い髪をクルクルといじる。


「う~うん、なんでも。では始めようか」

「はい。ではマリアンヌ様、何から始めましょうか? 念のために事前に精のつくものを大量に食べてきましたので、マリアンヌ様が仰られた魔道具を初めて使用したとしても多少は耐えれるかと」

「お前な~」


 マリアンヌは「お前はわれの言う事を信じていないのか?」と、思いながらも「まぁ~母上もそうだったしな」と割り切りながら首を振った。


「いや、何でもない。必要ないよ、お前は適当に室内を歩くだけでよい」

「歩くだけでよろしいのですか!?三日月峠の一件もありますので、マリアンヌ様が魔道具の適正を見抜けると仰った言葉を疑うわけでは無いのですが、手に取ったり、色々あるのでとりあえず並べて使えるかどうか確認を」

「必要ない」

「り、了解いたしました」


 シグレはもちろん反論しない。

 マリアンヌの言われるままに室内を歩いた。

 だが盲目的に信じているシグレであっても流石に歩き回るだけで魔道具の適正が分かるとは思えなかった。


 そう、この時まで…


「ストップ」


 それは答えを意味していた。


「はい、なんでございましょう?」

「お前は動くな」


 ゆっくりとマリアンヌは近づいてくる。

 そしてシグレの横を通過すると、透明のケースに入ったイヤリング。

 の、奥にあった


「これだな」


 マリアンヌが手に取ったのは手の平大の馬車の模型だった。

 馬車といっても馬などはもちろんいない、ただ人が乗る部分だけが精巧に作られている模型。


「ほらよ」

「おっと!」


 まるでゴミ箱にゴミを放り投げるように国宝である魔道具を放り投げるマリアンヌ。

 それを受け取ると


「ありがとうございます。では早速使ってみましょう」

「うむ、そうだな……いや、ちょっと待て」


 マリアンヌはそう言うとシグレが持つ模型に顔を近づける。


「うむ、ふ~む…なるほど」

「マリアンヌ様?」

「シグレ」

「はい」

「能力の詳細までは分からんが、どうやらここでは使わないほうがいいようだ。お前に相応ふさわしい気配りの出来る良い魔道具ではないか」

「な、なるほど」


 マリアンヌは扉へと身体の向きを変える。


「さ、戻るぞ、時間はまだあるが、われはもう眠い。魔道具の使い方は明日カーナにでも聞け」

「はい。今ドアをお開けします」


 そう言うと、ヒールの甲高い音と執事服の衣擦れの音を残して、マリアンヌたちは宝物庫を後にする。


「因みに明後日って朝何時集合だっけ?」

「皇帝陛下の伝令によると11時でございます」

「早っ!?11時…だと。。AM?」

「もちろん午前中でございます」

「明日は1日寝て寝溜めしよっと。あ~そうそう、その魔道具、燃費すごく悪いみたいだから明日はあまり使いすぎるなよ」

「はい、了解いたしました」


 次の日、休息日をもらったシグレはカーナの元に行って魔道具の訓練をしてみるのだが。

 この一件以降さらにマリアンヌを神のように崇めることになる。

 結論から述べるとマリアンヌの言ったとおりシグレは魔道具が使えた。

 そして本当にこの魔道具は室内では使うべきではなかった。


 馬車の形をした模型。

 能力はただの移動道具であり遠出するための移動手段。

 だが魔道具嫌いのマリアンヌはこの魔道具をいたく気に入ることとなる。


 その精巧な馬車の模型は術者の能力発動と同時に巨大化し、外的要因から馬車内部への攻撃を強固に防ぎ、魔法によって生み出された2匹の亡霊のような馬が力強く馬車を引く。

 もちろん馬自体は疲れる事無く走り続けれる事が出来る。

 速度は通常の馬車のおよそ3倍。

 外装の優雅さ、内装の豪華さと広さ、そして何より自分しか持っていないという特別感。


 後のマリアンヌの主要な移動手段となる魔道具である。



閲覧ありがとうございました(*- -)(*_ _)ペコリ

この章の初め辺りで「あのファゴット際から3ヶ月、いったい何が!?って思っているとは思いますが、それは今後語られます」と言いましたが、、いかがでしたか?これが3ヶ月間で起こった全てです。皆さんに少しでも楽しんで頂けたなら幸いです(^J^)さて、次回から出発、頑張るぞ~ヽ(○´w`○ )ノ

ではまた次回お会いしましょう(^^)/~~~




次回の回から遂に出発になるわけですけど……それでふと思ったんですけど、普通出発のお話までに36話。しかも1話1話が少ないわけでもなく5千6千文字がジャブのようにアップされ(因みに今回は5千文字でしたw)、下手をすれば1万文字オーバーの当作品(-_-;)これがもしランキングに載るような人気小説だったとしたら………100%炎上ですよ(^_^;)「早く出発しろや!!」ってね(笑)


いや~良かった(^^♪人気無くて♪人気の無い自分に万~~歳ヽ(^o^)丿!!丁寧に、そして好きなように物語が描けるぞ~\(^o^)/


あれ?おかしいな……目から汗が止まらないや(╥_╥)

そうか、さっき今日の晩御飯で作ったオムライス、その時の玉ねぎのみじん切りが目に染みているんだね。そうだ、そうに決まっているよ(。♋ฺ‸♋ฺ。)

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