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魔女と呼ばれた少女 -少女は死体の山で1人笑う-  作者: ひとりぼっちの桜
【第7章】 一夜で滅んだ村

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34 1ヶ月前(4)

クリックありがとうございます(^^♪今期おすすめの深夜アニメは『やがて君になる』のひとりぼっちの桜ですw 皆さん…私、こういう物語が書きたかったんですよね…(  ̄- ̄)トオイメ。とても面白い作品なのでよかったら皆さんも観てみてね☆



今回のお話ですが、皆さん、是非今回のお話を読む前に『20 2ヶ月前(3)』をもう一度読んで頂きとうございます(´-`).。当初は後書で「読んでね(^^)」って書くのも悪くないと思っていたのですが、悩んだ結果、先に読んだほうが絶対に面白くなる!皆様の心に訴えかけられると思ったので、要らぬお節介をしてしまいました(笑)全ては皆様の心をハートフルにするため故なので、どうかご容赦をw


ではどうぞ今回のお話もお楽しみ下さいませ~♪



 恐怖で己を失いそうになる。


 何も見えない暗闇。


 どこまでも続く底なしの闇。


 そんな全てを飲み込むような暗闇にも関わらず、耳元で明瞭に聴こえる闇の飲まれたマリアンヌの声。


 しかし、もちろんこの場にマリアンヌはいない。


 まだご飯の時間じゃない。


 いるわけがないのだ。


 こんな狭い部屋に自分以外の人がいたなら気配で分かる。。


 でも聴こえる。


 確かに聴こえるのだ。


 耳を塞いでいても声が聞こえる。



            ”お前の味方はわれだけだ”



 その声はとても優しくて、温かくて、何も見えない不安しかない真っ暗な空間にいるにも関わらずシアの心を温かく照らし続けた。



 ………

 ……

 …


 あれから何日経ったのだろう?


 10日?

 20日?

 それとも1ヶ月?


 分からない。


 今は朝なのかな?

 それとも昼なのか?

 もしくは夜なのか?


 分からない。


 シアは真っ暗な空間にいた。

 全ての感覚が麻痺した、ただ息苦しさだけが永遠と続く闇。

 自分が吸って吐く呼吸音だけが聞こえる。

 心臓の音が迫ってくる。


 全身がぼぅとして力が入らない。

 意識が朦朧もうろうとして何も考えられない。


 でもそもそも日数を数えたり、昼か夜か考えるなんて無駄な事なんだ。

 する必要が無い。

 だって待っていたらあの人が来てくれる。


 最近はずっとご飯を持ってきてくれるあの人の事ばかり考える。



【あの人は恐い人なのかな?】

【そんな事はない!俺達を初めて人として認めてくれた!許してくれた!寂しさを埋めてくれた!いつも守ってくれてるだろ!】

【守る?いったい何から?】

【あの赤髪からだよ!】

【違うよ。だってあの赤髪は命令で僕達を殴っているんだ】

【命令って、誰の命令だよ?】

【それは…マリアンヌ様が命令して…いや守って…あれ? どっちだっけ?】


 ノートは既に無い。

 いや、あるのかもしれない。


「う…頭が…痛い」


 でも暗闇で支配されたこの空間において、ノートがあろうが無かろうが、そんな事は既に問題ではない。


【そろそろ来る時間だな】

【なんで分かるの?】

【腹が減り加減で】

【アハハ、そんなので本当に分かるの?】

【分かるね】

【じゃあそういう事にしておくよ。それはそうと今日のご飯は何だろうね?】

【何でもいいけどデザートにアップルパイが欲しい】

【そうだね、僕もアップルパイは食べたい。あれは本当にこの世の物とは思えないほど美味しいもんね】

【ああ、甘くてうまい】


 首を傾げる。


【あれ?君って甘いもの苦手じゃなかったっけ?】

【それはお前だろ】

【いや、僕は昔から甘いものが好きで】

【じゃあ誰が甘いものが嫌いなんだ?】

【え…誰だっけ?】


 首を傾げる。


【ていうか】

【というか】


 首を傾げる。


【今、僕は】

【俺は】



【誰と喋ってるんだ?】


 僕達は自分が分からなくなった。

 そして口は自然と待ち人の名を口にしていた。


「早く来ないかな~”ママ”」


 その声は澄んでいて、汚れ1つ無い清涼のようであった。



             ×             ×



 更に2週間ほど経過した……


 事前に右大臣から聞きだした皇族たち全員が呼び出される日、それを遂に数日後に迫っていたある日のこと。


 この頃のシアは以前まで焦燥感や恐怖感などは一切無く、マリアンヌが来ると満面の笑みを見せるようになっていた。

 今日も今日でマリアンヌが持って来た食事を美味しそうに地面に座りながら、箸も使わず犬のように食べる。

 シアがご飯を全て平らげるのを確認すると、マリアンヌが話を切り出した。


「食事が終わってすぐで悪いんだが、今日はお前に1つお願いがあるんだよ」


 純粋な瞳で顔を上げるシア。


「え、何?」


 ここに閉じ込められる前より頬はこけ、全体的にやせ細ってしまった身体。

 しかし表情は毎日が充実していて恐怖など皆無。

 今も目を輝かせている。


「も、もちろん僕に出来る事ならなんでもやるよ」

「本当か!シア! われは嬉しいよ、お前のような忠義者をもって」


 するとマリアンヌは見上げてくるシアに対して、悩ましげにゆっくりと首を振った。


「聞いてくれよシア~、今朝のことなんだがね~。われの庭にある大切にしていた花壇にフンをした生き物がいてね、何とか頑張って捕まえたんだけど、それをお前に処理してもらいたいのだ」

「生き物?」


 なぜそれを自分に?そこにいる赤い髪の悪魔にやらせればいいのに…と思いながらもシアは説明の先を促す。


「それを殺せばいいの?」

「うん、そうだよ。大丈夫、”簡単”な事だから」


 いつも通り扉の前に立っているカーナにチラリと目をやった。


「カーナ、不届き者をここへ」

「はい」


 指示に従いカーナはいつものメイド服のスカートを颯爽さっそうひるがえすと扉を少し開け、廊下横に置いてあった鉄製のカゴを部屋に持ち込む。

 そのカゴには


「この子は…」

「そう、お前がこっそり地下室を抜け出してまで手当てし、何度も何度も会いに行っていた、大事にしていた小鳥のピーちゃんだよ」


 その青い小鳥はシアが自分と境遇が似ていると感じ助けた小鳥。

 地下室から抜け出し、餌を与えていた初めて出来た唯一の友達。


「本当はわれもお前の友達にこんなに怒りたくは無いのだがね、こいつはわれの心の平穏を脅かした悪だ」


 小鳥がカゴの中で暴れまわる中、マリアンヌは「悪は罰せなければいけない」と続ける。


われに仇なす者は例え羽虫であろうが存在してはならないのだ。教えたよな? だから…殺せ。こいつはわれの敵だ、そうすれば晴れてわれとお前は家族だ」


 なぜマリアンヌが小鳥の存在を知っているのか?

 手当てした最初の事すら知っているのか?

 それらを語る事無く、マリアンヌは一方的に話を終わらせると、ポン、とシアの肩に手を置いた。


「お前が本当にわれの家族なら、われの為に出来るよな?」


 これは踏み絵だ、とマリアンヌは薄く笑う。

 そして


「カーナ、鳥を」


 カーナは出入り口、空気穴に至るまで逃げ場が無いことを確認するとカゴを開ける。

 カゴを開けた事によって小鳥はすぐ逃げるかと思われた。だが、今まではカゴの中で暴れまわってた小鳥であったが、シアの存在を見るや否や小鳥はシアの手の平にちょこんと乗ると本当に楽しそうにじゃれ付いてきた。

 それはまるで、またいつもの朝のように撫でられると期待しているように。


 これだけでもどれだけシアがこの青い小鳥を可愛がっていたかが分かる。

 だがそんな事などお構い無しと言わんばかりに無情な声色がシアの背を叩いた。


「カーナ、ナイフをシアに渡しなさい」

「はい、マリアンヌ様」


 カーナが胸元から取り出したのは一振りのナイフ。

 もちろん魔道具ではない。

 が、果物の皮をむいたりなどの用途ではなく、間違いなく何かの命を奪うのが目的で作られているのが分かる刃渡り、禍々(まがまが)しいデザインだった。


「シア、これでやりなさい」

「………」

「カーナ」

「はい」


 そしてその小型のナイフをカーナが無理矢理、手渡そうとすると。


「いらない」

「どういう事ですか?まさかとは思いますが…シア。マリアンヌ様のご命令が聞けないと言うのではないですよね?」


 眼光を鋭くさせながらカーナはナイフを強く握りこむ。

 だがシアは首を横に振りながらその言葉を否定する。


「違うよ」


 そして…


 その手は

 無言のまま

 優しく小鳥を包むと


 無慈悲に、

 残酷に、


 ゴキ、グチャり。


 指の隙間からこぼれ落ちる生暖かい血、はみ出す青い羽。

 再び広げられる手。


「手でやった方が早いでしょ」


 見下ろした先にあったのは、まるで生ゴミのようにぐちゃぐちゃの肉塊と成り果てた小鳥であった。


「これでいい?」


 彼の目はキラキラと輝いていた。

 しかも殺す瞬間まで、その瞳の奥に殺気の色を為していなかった。

 まるでマリアンヌの命令を受け、人を殺すカーナと同じように躊躇ためらわずに。


「……」

「……」


 マリアンヌとカーナは絶句する。

 なぜならカーナも、マリアンヌでさえ、鳥を殺せと命じればシアは躊躇ちゅうちょすると予想していたから。

 そしてそうなった場合、どうやって小鳥を殺させるようにもっていくかも事前に打ち合わせしていた。

 だからこそ、今回のこのシアの行動には呆気に取られた顔をする。

 正直、何を考えているのか分からなかった。


 だがシアは疑っているこちらの毒気を抜きさるようなほがらかな笑みでもう一度言った。


「これで…いいんだよね?」


 可愛がっていた鳥を殺すという行為。

 自分への忠誠心を試すという意味合いでマリアンヌが用意した踏み絵。

 彼はそれをいとも容易たやすくに乗り越えた。

 その結果がマリアンヌに確信をもたらす。


 シアがここから出たいが為に嘘を付いている可能性は最早無い。


「ああ、よくやった。そしてお前は本当に素直な良い子だね、われは嬉しいよ、嬉しすぎて涙が出てくる」


 予想以上の結果をありがとう。

 臨床実験は大成功だ。

 壊れゆくモルモットの姿を見るのは実に愉快であったぞ。

 今後はこれを有効活用し、我が覇道の足掛かりとしようではないか…。

 そう、、全てはわれの思うがままよ。


 マリアンヌはにやける口を必死に抑え込みながら朗らかに笑顔を作る。

 するとシアはその場で飛び跳ねた。


「やった! これで僕達は家族だね!ママ!」

「ああ、その通………ん?」


 何…ダト?


 刹那、マリアンヌは思考を廻らす。


 今、こいつ、われの事を何て言った?

 ママとか言わなかったか?

 聞き間違えか?


 いや、確かに言ったような。。

 カーナの事を言ってるわけじゃないよな?

 われを見て言ったわけだから。


「ママ?」

「ふぅぇ?」


 思わずおかしな声を出してしまった。


「あ、あぅ、あ、うん」


 うわ~決定的だわ。

 完全にわれに言ってるよ。


 Why?

 なぜ?

 なぜそうなるの?

 なぜマザー?母?


 何処にどういう要素があいまって、こんな結果になったのだ?


「そうだね、よくやったね、シア」


 マリアンヌは返事をしながらも記憶の奥を探り推論する。


 可能性があるのだとしたら、少し前に出た”家族”というワードだ。

 こいつが家族にえていて、そのワードに反応したのも分かる。


 しかし、なぜだ!

 なぜ家族=母なんだ!?

 年齢をかんがみれたらいいとこ姉だろ。

 そもそもわれが言った『家族』とは一門とかそういう大きな意味で言ってたのに、なぜ一足飛いっそくとびして家庭に所属する事になってるんだよ!


 その後も様々な解釈を脳内で繰り広げるマリアンヌ。

 しかしいくら脳の回転率を上げようが確かといえる答えは導き出せなかった。


 表情には出さないが言葉に完全に詰まるマリアンヌ。

 一方シアは純粋な瞳を向けたまま小首をかしげた。


「どうかしたのママ」

「い、いや、別に」


 というか気のせいかな?以前から年齢より子供っぽいとは思っていたが、ここ最近、深刻な幼児化が進んでいるような。

 確か、こいつの歳って。


「何でもないよ、われの可愛いシア」


 その言動にシアは心から安堵する。

 そして、すぐ感動が押し寄せてきた。

 やっと自分は愛される権利を得たのだと。


 よどみなく、その奥底まで透き通る純粋な眼差しから


「ママ~!」

「っ!?ちょお前、待っ!」


 両手を広げながら跳躍ちょうやくするようにマリアンヌに抱きつくシア。

 生臭いにおい、まだ手に残る血と、何か気持ち悪い肉片が高級な漆黒のドレスにベタリと塗りたくられる。


「てめ殺…。お、お~よしよし、お前は本当に良い子だね」


 若干涙目でシアの頭を撫でるマリアンヌ。

 何日も外に出していないことで風呂にも入っていない頭はぬちゃぬちゃして、


 手も服も気持ち悪いです。

 臭いです。

 吐きそうです。

 助けて誰か。



              ×          ×



「まったく何だったんだ、あのママというのは」


 シアの実験は無事終了したし、近々やつの部屋を別途用意するか、もしくは囚人たちの待つ地下室に戻すか。そんな事を考えながらマリアンヌは旧アンジェラ邸の廊下を出ようとしていた。

 眉間にシワを寄せながら。


「それにしてもわれの至高のドレスが汚らわしい鳥の血で汚れた。カーナ、部屋に戻ったら即風呂に入る、この服は捨てろ、汚らしい」

「了解いたしました、マリアンヌ様。それにしてもあの茶番のような家族ごっこを本物だと錯覚させた、今回のマリアンヌ様の計画お見事でございます」

「う、うむ。ありがとう、カーナ」


 茶番のような?

 何だろう、

 こいつに限って悪気は無いんだろうけど、いつも言い方がアレだよな。


「因みにカーナ、奴は今何歳だったけ?」

「確か…16ですね」


 ということは。


われは同じ歳の息子が出来たわけか」

「おめでとうございます」

「めでたいかな?」


 実験の結果を考えるなら、喜ばしい事なのだろうが。

 そんな大真面目な顔で祝い口上を述べられても。

 なぜだか、微妙な心境だ。


「大丈夫です!マリアンヌ様のようなお美しい母君ならシアもこの上ない程に誇りになって、幸せに違いありません!」

「いや、別にわれはそういう心配をしてるんじゃなくてだな」


 アンジェラ邸から自分の住んでいる城へ戻るため森へ足を踏み入れる中、マリアンヌの心も森にさ迷っていくのであった。



閲覧ありがとうございましたm(_ _ )m

今回のお話でなぜこの章の最初でシアがマリアンヌを「ママ」と呼んだかが明かされたかと思います(^^)

いや~大変だったw1人の人間をしっかりと描くというのはやっぱり大変ですね(笑)

ではまた次回お会いしましょう♪(´ゝ∀・`)ノシ

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