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魔女と呼ばれた少女 -少女は死体の山で1人笑う-  作者: ひとりぼっちの桜
【第7章】 一夜で滅んだ村

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29 2ヶ月前(12)

クリックありがとうございます(#^.^#)昨日?いや、もう日にちを跨いじゃったから一昨日ぶりですね、最近蚊が増えてきて殺意の波動を撒き散らしているひとりぼっちの桜ですw

皆、知ってる?蚊って、メスしか血を吸わないらしいですよ……ちょっと信じられない事実だけどねwやつらは全員血を求めているようにしか思えない(>_<汗)


では今回のお話もどうぞお楽しみ下さいませ~



 シグレは仰々しく頭を下げる。


「はい、私のワガママにお付き合い頂きありがとうございます」

「え~もういいんですかぁ~?」

「はい、シャルドネさん。あなたも私の質問に答えて頂きありがとうござ―」


 会話を終わらせようとするシグレ、しかしシャルドネは興奮気味に身を乗り出してくる。


「まだですよ!まだマリアンヌ様が一番綺麗な宝石だと思うっていう事を伝えきれて無いのにぃ!?宝石ですよ、宝石!マリアンヌ様は世界一綺麗な宝石なんですよぉ!あ~その目、その髪、その肌、その美貌、その声に至るまで綺麗だなぁ!綺麗綺麗綺麗!」


 だんだん目がヤバくなっていくシャルドネに、何度か『違うよ、われ宝石じゃないよ』と言いながら落ち着かせようとするマリアンヌ。

 だが自分の美しさをここまで褒め称えられて嫌な気はしないのか、少し頬を緩ませていた。


 一方、言葉を発しないオム。

 彼は今それどころではなく、覚えるのに必死だった。

 そして傍らにいるランはやれやれと覚えた紙の束をシグレに返した。


「マリアンヌ様、覚えましたわ。問題をどうぞ」

「いや…お前はいいよ」


 こんなくだらない事に嘘つきそうに無いから。


「では私も質問いいかしら?」


 今日は質問が多いな。

 少し飽きてきた。


「う~ん、何?」

「なぜ付いて来るのがこの2人なのか聞いてもいいかしら?」

「不満か?」

「いいえ、不満なんてとんでもない。ただ、理由を聞きたいだけですわ」

「ラン!言われた事にはハイだけで答えなさ」

「いいよ、カーナ、答えてあげよう。シャルドネのおかげで少し気分が良くなってきたからね」


 まぁ良くなったと言ってもミリ単位だが。


「え~と、2人がお前のお供にした理由だったね。まずオムについてはアトラスの地を知っているから」

「そうでしょうね」


 オムに関しては分かる。

 異論は無い。 だが―


「そしてシャルドネだが、先も言ったとおり旅芸人の一座であれば演奏は欲しい。歌も音楽も無い芸など、色の無い絵と同じ、元オペラ歌手であり楽器演奏経験もあるシャルドネは適任。彼女には問題があり潜入に適していないのはもちろんわれも知っているが、他の囚人にシャルドネほどの演奏家はいない、ならば仕方があるまい?」


 そして『お前のお供に付けるなら、この2人以外いないだろ?』と目で語りかけてくるマリアンヌ。

 喝采が巻き起こる。


「なるほど、流石はマリアンヌ様」

「素晴らしい采配です!」

「マリアンヌ様は頭ぁ良いなぁ」


 急遽湧き上がる外野からの喝采かっさいの嵐にマリアンヌ


「まぁな、われが考える人選に誤りなどあろうものか」


 と言った。


「………」


 もっともなように聞こえる。


 少なくともラン以外のこの場にいる人間は、全員心から納得していた。

 だがランは気付いていた。

 今のマリアンヌの言葉には大きな矛盾が存在する事に。


 今、マリアンヌが言った事は、そもそもマリアンヌが”旅芸人”などという設定を最初に作ったから必要になってしまった条件でしかなく、旅芸人でなければシャルドネを選ぶ根拠や利点など存在しなくなってしまうのだ。

 むしろ反乱分子たちに接触するのが目的なら旅芸人などと目立った者でなく、行商人などの方が良い。

 そして行商人なら前科があまりにも有名な大量殺人鬼のシャルドネは絶対に選ばない。

 ゆえにこれは後付けの理論。

 囚人の中で自分と唯一仲が悪く、マリアンヌを崇拝しているシャルドネという女を自分に付ける為に”旅芸人”という設定を追加したとしか思えない。


 問題はなぜ私とシャルドネの関係を知っているのか?だけど…。

 カーナが囚人間の人間関係を知っていたとは考えづらい。

 ということは他の囚人から聞いたのかしら?

 もしくはシアからという線も…。


 なんにせよ。


 私はマリアンヌに完全には信じられてはいないようね。

 誰の入れ知恵かしら?

 少し前までは信用を勝ち得ていたはずなのだけど…。


「ラン、分かってくれたかな?」


 周囲の人物への説明が上手くいってご満悦まんえつのマリアンヌ。

 ランは沈黙の時間無く微笑むと頷いた。


「了解いたしましたわ」


 すると納得できない表情で渋顔を作るシャルドネが言った。


「その理由なら私だけでも~いいようなぁ?っていうかぁ~この2人よりももっといい人いますよぉ?」

「と言うと?」

「囚人の中にいますよぉ」

「う~む、でもなぁ」

「でも?」

「ランの方がお前より顔の作りがいいだろ?お前がどいつを推しているのかは知らんが、ラン以上の顔は囚人の中にはいない。おそらく男所帯おとこじょたいであろう反乱分子どもにはランの方が受けがいいと思ったのだよ」


 その回答に一瞬ピクリと目元を引きつらせたシャルドネであったが、すぐ、えへへと笑みを浮かべ。


「ひどいですぅ、マリアンヌ様。わたし傷ついちゃいましたぁ」


 その後も「ひどいでぅ~」と抗議を連呼するシャルドネにからかうような表情を作るマリアンヌ。


「気に障ったか?まぁ安心しろ、われという神が与えたもうた美貌びぼうからしら、お前達のような底辺の顔の差なんて微々たるものだよ、お前も自信を持ってよいぞ」

「それ全然フォローになってないでぇすよぉ。でもマリアンヌ様は本当に、どんな宝石みたいにキラキラしてるから許せちゃいます」


 と、なぜか頬を赤らめてマリアンヌの美しい髪を見続けながら


「因みに何ですけど~私からもぉ~最後に1つだけお聞きしたい事があるのでぇすけど~?」

「なんだい?1つと言わず、お前の質問なら3つまでなら答えてやろう」

「それ微妙な数ですねぇ」

「フフ、疲れているんだよ、われも今日は色々あってな。で?」

「もしも~」


 伸ばした語尾と共に雰囲気が変わるシャルドネ。

 その目はまさに殺人鬼と呼ばれた過去の自分の目であった。


「潜入中に、この2人のどちらかが裏切ったらどうするのですぅ?」


 ランは壁に寄りかかって考え事。

 オムは未だ覚えきれるきざしは無く必死に文字を追っている。

 だが流石に今の言葉に反応しないわけもなく、2人の視線とシャルドネの視線が交錯こうさくする。


 ふんわりした喋り方だがシャルドネの瞳に仲間を信用するという概念は映っていなかった。


 マリアンヌは答えた。


「なるほど、お前の心配もごもっともだ。だからお前達に現実的な話をしよう」


 そしてお前達、と再度呼びかけ、この場にいる3人の囚人をゆっくり見渡した。


「現状お前達はわれ恩情おんじょうにて命を繋ぎとめている。しかも自由な状態で。にも関わらず、われの期待に答えられなかった、恩情を無下むげにした場合はもちろん罰を受けるだろう。その中でも今シャルドネが言った”裏切り行為”というのはわれがもっとも忌み嫌うものだ。もしもそんな事が起きたのなら、断言しよう、そいつは絶対に逃がさない、地の底までも追いかけて捕まえる。そしてその人間は簡単には殺さない、われの出来うる最大限の苦痛を長期に渡って与える事を約束しよう」

「あの~、マリアンヌ様~」


 キラキラしたまるで子供が自分の憧れているアイドルを見るような瞳を向けるシャルドネ。

 今まで美しい銀線の髪を見ていた視線はマリアンヌの深い黒色の瞳へ向けられる。

 まるで最高級のブラックダイヤのような瞳。


「なんだ?」

「今言ったことは裏切り行為の予防にはなると思うんですけどぉ~対処にはならないと思うんでぇすね?紙にも書いてなかったんですけど、私が本当に聞きたいのはぁ~潜入中、そこお2人のどちらか、もしくは2人とも裏切った場合、私が殺しちゃってもいいです~?」


 純度100%の敵意が込められた言葉にオムとランは視線を鋭くする。

 当たり前だ、遠まわしに2人は裏切る可能性があるとマリアンヌやボスであるカーナに言っているようなものなのだから。


「そうだね…。いいだ…いや、念のために怪しいと思ったらわれに先に伝えろ。その為の特別な伝令方法は後でお前だけに伝える。その結果、われが裏切ったと判断した場合はお前の好きにしろ」


 わざと裏切る可能性があると言われている2人にも聞こえるように口にするマリアンヌ。

 パッと顔を輝かせるシャルドネ。

 その瞳には一切の汚れなく、その時が来たら、この女が本当にランとオムを躊躇無く殺すであろう事を物語っていた。


「わ~~い、マリアンヌ様はお優しいな~」

「喜ぶのは自由だが、われの到着を待ったほうが利口りこうだと思うがね。カーナから聞いた話ではお前ではオムには勝ててもランには勝てないと聞いている。返り討ちにあうのが関の山では無いのか?」

「そこは下克上げこくじょうでぇすよ~、私も伊達だてに大量殺人してきたわけじゃないですからね~。魔道具とかを持ってないなら、ランさんにも負けない自信がありますぅからぁ~」

「ほぅ、それは是非見てみたいな」


 どうもシャルドネはまだマリアンヌと話し足りないらしく、マリアンヌから離れる様子が無い。

 既に紙は覚え終えたが、これでは帰るに帰れないとランは小さな溜め息をついた。


「ふふ、シャルドネ、私も見てみたいわ」


 あれぇ?と小首を傾げるシャルドネ。


「ランさん、見てみたいって…言ってる意味分かってますぅ?」


 明確に向けられた悪意に思わずクスリと笑うラン。

 その笑いは何処か小馬鹿にしたような笑いだった。

 すると閉ざされたシャルドネの口、その奥からギリっという歯軋り音が聞こえた。

 笑顔のまま問い掛ける。


「何がおかしいんですかぁ?」

「いえ、ごめんなさい。言っている意味は分かってるわよ」

「分かってるんだぁ、へぇ~」


 まるで背後に氷と花畑、全く違う空気を背負う両者がしばし言葉も無く向かい合う。

 見かねたカーナは。


「2人共やめなさい。マリアンヌ様の前ですよ、ケンカとか意味わかりません。殺しますよ、ほんと」

「え~ボスぅ、今の私悪いのぉ?」

「2人共って言ってるじゃないですか、あなただけに言ってはいません」


 お前も昔ムンガルとやってたけどな、と思うマリアンヌの傍らでいつものように妖艶に含み笑うラン。


「私も大人げ無かったわ。でもあえて話を戻すけど、あなたが想定する私との戦い、その場合は私が魔道具を隠し持っていないといいわね」


 ピクリと反応するシャルドネの眉。

 彼女も大量殺人をする過程で知っていた、魔道具がどれだけ恐ろしい物なのかを。

 戦闘がずぶの素人の人間でも使えば容易に人を殺せてしまう品物。

 しかも正体不明の魔道具では対処が出来ない。


 探るように目を細める。


「あれ~?ランさん、持ってるんですか?」

「さぁ?どうかしら。ただ不用意に私に攻撃しない方がいいと思うわよ」

「その言い方は持ってないよねぇ~?だって持ってるなら、ボスに勝っちゃってるもんねぇ~?」

「あなたがどう感じているかは知らないけれど、ボスの実力は魔道具があった程度で圧倒できる実力じゃないわよ」

「その感じはもしかして本当に魔道具持ってたり―」


 対立するような形で探りをいれ合う2人、ランとシャルドネ。

 両者の言葉に割り込むようにマリアンヌは言った。


「ラン、お前は魔道具を持ってないだろ」


 断言されるその言葉にシャルドネは目をぱちくりさせる。


「え~本当ですか~?」

「ああ、安心しろ。そいつは魔道具を持ってない」


 その言葉は疑ったり、かまをかけている風ではなく、確信めいていた。

 ランは首を傾ける。

 妖艶な長い黒髪が肩からこぼれ落ちる。


「お言葉ですけど、もしかしたら持っているかもしれないわよ。魔道具というのは指輪のような小さいサイズの物もあるし、形だって」

「いや、そんな事は知っているよ」

「なら」


 口元を緩めるマリアンヌ。


「いや、お前は絶対に持ってないよ」

「なぜそう言い切れるのかしら?」


 復唱するように重ねて質問すると、シャルドネと喋っていたマリアンヌから楽しげな雰囲気が完全に消え失せる。


 ゆっくりと流れる銀線の髪。

 そして黒々としたその瞳は深淵を覗く様に正面からランを捉えた。


「ラン、われはお前を”信用”しているからね」

「信用?」

「ああ、秘密裏ひみつりに魔道具を隠し持っている。そんなわれに対して造反行為とも取れるような事、われが信用しているお前がするわけがない」


 それを聞いて吹き出して笑うシャルドネ。

 身に纏うのは再びかわいい女の子の雰囲気。


「なぁ~んだ、それ勘じゃないですか~。信じて損したですぅよぉ、マリアンヌ様~」

「まぁ、そうとも言えるかな」

「シャルドネ!マリアンヌ様に対して無礼な口のききかたはやめなさい!」

「いいよカーナ、こいつちょっとお気に入りになってきたし。。多少は…ね」

「………」


 違う、この女は嘘をついている。


 ランはマリアンヌを恐ろしいと感じた。

 今の一連の会話も普通なら冗談を言っているように聞こえる。

 実際マリアンヌと喋っているシャルドネはそう受け取っている。


 だがこの女は確信している。

 私が魔道具を持っていないことに。

 信じているから裏切るような行為を取る訳がない?なんだ、その取ってつけたようなあからさまな嘘は。


 戦闘能力は無いはずの少女。

 温室育ちの王族。

 にも関わらず、時折見せる暗い海の底のような瞳。

 心を見透かされているような錯覚にすら陥る瞳。

 シャルドネではないが、この女から目が離せなくなる。


 やはりマリアンヌという人間は何処か掴めない。

 イカレているという意味ではシャルドネと同じかもしれない。

 そもそもこの2人は何処か似ているようにも思える。

 しかし、マリアンヌはシャルドネのようにただイカレているんじゃない。


 それに加えて不気味なのだ。


 とても。


 今もどれだけ真意を読み取ろうとマリアンヌを疑っと眺めた所で答えは返って来ない。


「困ったわね」


 ランは誰にも聞こえないようにそう呟くと、これからの自分の取るべき行動を考えるようにマリアンヌとシャルドネの会話が終わるのをジッと待つことにした。



閲覧ありがとうございましたm(_ _ )m


本当はね…このお話で2ヶ月前を終えようと思ってたんですよ(^^でもねアップする寸前に面白い会話を1つ思いついちゃって、どうしても2ヶ月前のラストに入れたくなったので、今から即行で書き上げようと思いますε=ε=┌(o゜ェ゜)┘

まぁ1ページ、2ページぐらいだとは思うのでそんなに時間はかからないと思いますが、前書き後書きも含むと最低でも2時間はみていただければ次のお話がアップ出来るかとw


え?『前書き後書きとかいいから早よ次の話をアップしろ』ですって?

酷い(/□≦、)!無駄だと思われるこの前書き後書きですが、実は1時間ぐらいかけて書いているんですよ(ノ◇≦。) ビェーン!!


ってことで、また次回お会いしましょう(^^)/~~~

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