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魔女と呼ばれた少女 -少女は死体の山で1人笑う-  作者: ひとりぼっちの桜
【第7章】 一夜で滅んだ村

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154/392

22 2ヶ月前(5)

クリックありがとうございます(*´∀`*)♪今期オススメの深夜アニメは『はるかなレシーブ』ひとりぼっちの桜ですw

あれ?どうしたんですか?皆さん、そんな「あ~やっぱりな」みたいな顔をして?

言っておきますが!私は皆さんの想像している理由でこのアニメをオススメしているんじゃないんですよ!ヽ(`д´;)/私はムチッとプリッとプルンとしている所を評価して……ん?ち、違いますよ!ストーリーがムチッとプリッとプルンとしている所を評価しているんですよ(゜д゜;)ええ!凄いよ!色々とw

ってことで、凄く面白い作品なのでよかったら皆さんも観て見てね♪



すいません!今回のお話ですが1万字超えちゃいました(>_<)原稿用紙17ページw

最初は2つぐらいに切ろうかな~と思ったのですが、でもシアの大切なお話なので切りたくなかったのでそのままアップする事にしましたw凄く長いですが、お盆休みにでもゆっくり見て頂ければ幸いです♪

ではどうぞご覧くださいませ~



「ゴミ?…ゴミというのはあれか? 産業廃棄物、この世に必要無い物という意味のあれかね?」

「分かってるなら一々(いちいち)回りくどい言い方してんじゃねぇよ、殺すぞ」


 この瞬間、カーナの目が殺意で満ちた。


「おいシア、今なんて言った?」


 光源がロウソクしかない薄暗い部屋が血で真っ赤に染まるような殺気がシアに向けられる。

 強く踏み出される足。


「マリアンヌ様に対してそんな口のきき方をしたということは、お前はよほど死にたいようだな。いいだろう、殺してやる」


 憎しみのこもった瞳でシアに近づいていくカーナ。

 瞬間、そのマグマのような怒りをマリアンヌはさえぎった。


「いいからカーナ、口を挟むな、下がっていろ。今、われはシアと喋っている。それと、その”殺すぞ”みたいな空気をシアに飛ばすものやめろ。あと敬語忘れているぞ」

「……はい、了解しました」


 ゆっくりとシアを睨んでいたカーナの視線が外される。

 マリアンヌは小さくだが長い溜め息を漏らす。


「すまなかったね、シア。少しお前に会えた喜びで口が流暢りゅうちょうになっていたようだ、許しておくれ」


 軽く手を上げて謝罪、そして「さぁ、座りたまえ」と床に転がった椅子を指差すマリアンヌ。

 その言葉を聞き、歯軋りと歯をむき出しで近づくなと威嚇する人間がいた、もちろんシアだ。


「俺を殺そうとしたくせに座れだって?ふざけんなよ」

「フフフ、すまないね。お前に会いたくて~会いたくて~、ちょっとおいたをしてしまったよ。でもお前が悪いんだぞ。われが会いたいと言っているのだからすぐに出てこればよかったものを…。使いたくも無いカーナを使うはめになってしまったではないか」

「俺に意識の切り替えは出来ない。スイッチを持っているのはシアで俺じゃない、俺は見ているだけだ」

「なるほど、お前が切り替えているわけではないのだな」


 まぁ以前のカーナの報告からある程度推察していたので知っていたけどね。

 嘘も方便というものだよ。


「さぁ、早く座ってわれと楽しいお話をしようではないか。それともまたカーナを使ったほうがよいかな?」


 ひどく不機嫌そうなシアであったが、このままだとまたカーナに何をされるか分からない。だからカーナを警戒しながらも、未だにジンジンと痛む頬に手を当てながらマリアンヌの言う通り椅子にドスンと腰をかけた。


 満足そうにマリアンヌは微笑む。

 そして観察する。


「座ったぞ、これで満足か?」

「ああ」


 座り方がだいぶ変わったな、それに視線と息遣いもだいぶ変わってる。

 変わる前はわれの目をまともに見てこなかった典型的な気弱を絵に描いたようなプロトタイプのような性格だったが、今は背後のカーナに対してもそうだが、われに対してもここまで言い口、目もしっかり見てきている、好戦的な勝気な性格。

 先ほどの動きといい、思った以上に筋力はあるようだな。

 服越しでは良く分からんが、まぁ大量の殺しをやってきたという輝かしい経歴、16という年齢を考えたら当たり前なのかもしれんが。


 って言うか、さっきから落ち着きが無いな。

 貧乏揺すりしてる。


 殴るか?


 いやいや、我慢だマリアンヌ。

 今は我慢のときだ。

 落ち着きが無いのは背後のカーナのせいだと思おう。


「で、ゴミっていうのはどういう事かな?およそ人の名前には思えないのだが」

「俺が最初に視た光景」

「ん?」

「俺が最初に覚えているのは自分の顔と同じぐらいの拳、シアの父親からの暴力だった。その時にあいつは俺の事をゴミと呼んだ。だから俺の名前はゴミだ」

「ひどい父親だな、実の子供になんてひどい仕打ちを」


 まるで、どこぞの皇帝を思わせる父親だな。


「実の父親じゃない、あいつの父親は早くに流行り病で死んでいる。俺を殴ったのは娼婦しょうふをやっていたあいつの母親の新しい彼氏という名の父親だ」

「お前の両親はひどい人間だったんだね」

「俺に親はいない」

「おや?さっきの君は親にゴミと名づけられたと言っていたのではないのかね?」

「あれはシアの親だ、俺に両親はいない」

「………」


 マリアンヌは目の前でゆらゆらと揺れているロウソクの火に目を落としながら考える。


 さっきから”あいつの”と言っていたが、シアと親を同一視してないのか?

 この症例の人間は、しゅたる人格の親を全ての人格が親と認識していると聞くが…。

 まぁ、しかし、大多数という言葉があるということはそこには少数派という者たちがいるのも事実、別に驚くこともないな。


「そうか、なるほど。で、暴力から逃れるために血の繋がらない父親を殺したのか?」

「それを聞いてどうするつもりだ?」

「ん?別に……どうもしないが」

「俺を、シアを死刑にするつもりか?」


 いや、もうお前ら死刑囚だから。

 アンジェラがここにかくまってなかったら死んでるから。


「何もするつもりは無いさ。 何度も言うが、われはお前の話を聞きたいだけだ。どんな話を聞いたとて、お前に対して何か罰を与えようなんて毛ほども思っておらん」

「本当か?」


 目を細め、まるでこちらの嘘を見抜こうとしている目だった。

 念を押すように言ってくるシア、マリアンヌはクスクスと笑う。


「信じられないなら念書でも書いてやろうか?」


 その気になれば反故ほごに出来ちゃう念書でよければ。


 そして指を使ってペンで書くような動作をすると、シアは苦虫を噛み潰したような顔で「本当ならそれでいい」とだけ口にした。

 頷くマリアンヌ。


「それは何よりだ、では話しなさい、シア」


 マリアンヌはシアの記憶の扉を開くように、ゆっくりとした口調で言葉をつむいでいく。


われはね。ただ、お前の生きてきた人生に興味があるだけなんだよ」

「…分かった、話すよ。その代わり絶対に殺そうとするなよ」

「もちろん♪ な、カーナ?」

「はい」


 同意するカーナを肩越しにチラリと見てホッと息を吐き出すシア。

 そして渋々とだが、彼は語り始めた。


「繰り返しになるが、あいつの親は酷い親だった。だから俺が助けてやった」


 助けた?


「毎日毎日、義父によって殴られて蹴られて、それでも母親はおろか誰も助けてくれない。奴の母親は自分の子供であるシアよりも男を選ぶような女だったからな。シアは耐え忍ぶだけ、そんなクソみたいな生活。シアはそれでも両親の怒りを買わないように生活した、食事は2人の食べ残しを食べていた。いや、食べ残しがあるときはまだ幸運だった、1日水だけの時すら稀な事じゃなかった。それでも暴力はやまなかった、酷いときは水を飲むことすらも怒りを買う要因になるほどに」


 なるほど、そういった劣悪な状況がもう1つの人格を生み出すわけか。


「そして暴力が一定を超えたら俺が引き受ける。痛かったし、恐かった、いつ殺されてもおかしくなかった、サンドバッグのように殴られる毎日、それでもそれが俺のするべきことだから我慢した。そんなある日、酔いつぶれた義父がソファーで寝ていた時、俺は思った、俺なら殺せるんじゃいか?って」

「ほぅ、それで?」


 瞳を輝かせるマリアンヌ。


「あんなにシアが恐がっていた義父だったが、殺すのは案外簡単だった。つまるところ人間なんて恐い存在じゃない、ただの肉傀にくかいだったんだ。母親が娼婦として働いていた間、義父はいつも飲んでたから、酔いつぶれたところにナタで殺した。死体は隠した」

「死体はどう処理したのだ?」

「俺が街の外まで運んで埋めた」


 シグレに調べさせたが、こいつの住んでいた地方の街はそう大きくないとはいえ我がプルートの属国ぞっこく、兵は警備の為に駐屯ちゅうとんしていたはず。

 それをこいつは200近く殺して、死体は外に埋めている。

 兵士に見つからずに。

 独自の廃棄するルートがあるのか、それとも…。

 思った以上にこの裏の人格のシアは頭が切れるのか?


 様々な可能性を模索しつつ、マリアンヌは疑問を口に出した。


「街を守る兵によく見つからなかったな、どうやって煙に巻いたんだ?」

「あの街の騎士達は本国のエリートでも何でもない、一言で言えば腐ってる。真面目に街を守っている奴なんて1人もいない」


 なるほど、そういう感じの街ね。

 勘ぐり過ぎたな。

 と、同時に参考になるな。

 資料を読むだけではまず分からぬ知識だ。

 だが、われが見知らぬ土地に慰問に行く街を考えると、今後はこういった可能性も考慮して分かっていかないと、分からないといけいな事項だ。

 頭をもっと鍛えねば。


「ということは夜中にでもコッソリ死体を運んだ?」

「ああ、夜中になれば全員酒を飲んで寝てるから、盛り場さえ近づかなければ誰にも見られずに運ぶのは簡単だった」

「ふざけた兵士どもだな」


 いつかシアの故郷、そのふざけた街に行ってみたいものだ。

 もちろん駐屯する騎士、全員の首を切り落とす為に。


「慎重に埋めたんだ、誰にもバレないように気をつけて。深く、深く。これで平和だと思ったけど、でもやつの母親はその後もシアを見なかった。半年ぐらいした頃、また新しい父親が来た。今回も別に歯向かった訳でもない、聞き分けの無い事を言った訳でもない、でもシアに対しての暴力がまた始まった」


 まぁ気の強い奴にとって、シアの表の性格はウジウジしていて見ているだけでイラつくのは分かる。とは流石に言えないな。


「酷い両親だね。その父親ももちろん殺したんだろ?」

「ああ、その後も、その後の父親も殺した」


 多いな。

 どれだけ男に依存している母親だよ。

 ここまでの話を聞く限り、おそらくシアにしても望まれて産まれたというよりも、産まれてしまった事故のような存在だったのだろうな。


「そして4人目の父親を殺して埋める為に運ぼうとしているところを母親に見つかった」


 そこまで言うとシアは一度言葉を切って、急に汗のかいた手を服でぬぐった。

 それを見ていたマリアンヌ、目を細める。


「その日は母親は帰ってこないはずだったんだ、仕事で朝まで、なのに」


 今、こいつ手をぬぐった?


 基本的に手汗とは緊張や過度なストレスによって引き起こされるものだ。

 こちらはそんな物を与えてはいないのに。

 あくまでも平和的に話しているのに。

 にも関わらず手汗を急にかいた?


 われに会って緊張…は無いな。それならもっと早くに手を拭うだろうし、この人格のシアにその可能性は低い。

 ならば殺人の事を聞かれてストレス…も無いな。それなら義父を殺した辺りで手を拭うだろう。

 ならば残った可能性は…聞かれたくないこと、思い出したくないこと、秘密にしておきたいこと。


 つまりは


「お前は母を殺すつもりは無かったんだな?」

「…ああ」

「でも殺してしまったと」


 力なく頷くシアにマリアンヌは更に考える。


 果たして見つかっただけで殺すだろうか?

 他の殺人、義父に関しては血も繋がっていないから気兼ねなく殺せるかもしれんが、仮にも表の人格の実の母親だ。そこには躊躇ためらい生まれても不思議ではない。


 手汗、過度なストレス、思い出したくない記憶。


「義父の死体を運んでいる所を見つかったとき、母に何かを言われた?そしてそれはお前にとってとてもショックな言葉で、思い出すことすらもはばかられる言葉」

「さっきから何で分かるんだ?」

「え?」


 おっと、いかんいかん。

 いつもの癖で先読みしてしまった。

 聞き役に徹しなければ。


「あ~~、勘だよ、勘。 まぁ、われの悪い癖のようなものだ、話の腰を折って悪かったな。で、なんと言われたのだ?」

「この悪魔、お前なんて産まなきゃよかった」


 ほぅ~、中々に剛速球を投げ込んでくる母親ではないか。

 ほとんどの子は受けきれないだろうな。


「気が付いたら埋める死体が2つになっていた」


 まぁ、ある意味打ち返したな。


「あの女が悪い。あの女が何度も何度もチャンスを与えたのにシアを選ば無かったから。だから俺は母親を、あいつの母親を」


 ここにきて初めて口にするのを明らかに躊躇ためらうシア。

 後悔の念を感じ取ったマリアンヌはシアの心をいたむように言った。


「それ以上は母親の事について言わなくてもよい。お前は悪くない、悪いのはお前たちを拒絶する全てだ」


 ってきり責められると思っていたシアは目を丸くする。


「責め…ないのか?」

「責める理由が無い。お前は自分を、シアを守ったに過ぎない。だって考えてみろ、その時すぐに母を殺さなかったら、逆上ぎゃくじょうした母がどんな暴挙に出たか分からんではないか。これは言うならば自己防衛だよ、批判される事など1ミリも無い。さぁ~母親の次に起こった事を聞かせておくれ」


 ワクワクした気持ちを抑えきれないマリアンヌは先を催促した。


「母親を殺してから、そこからシアの1人暮らしが始まった。元々、シアに対して金を回すような母親じゃなかったが、それでも最低限は金が必要になる」

「う~ん、ちょっと待ってくれるかな?」


 流石にここは聞き流せない、とマリアンヌは話を中断させる。

 シアは眉をひそめる。


「なんだよ?」

「シアは急に働かないといけなくなった事、急に母すらいなくなった事を不思議には思わなかったのか?」

「あいつは自分は母親に捨てられたと思っている」


 いやいやいや。


「なぜそんなにも、お前にとって都合つごうの良い解釈をシアはしたんだ?」

「メモを残した」


 メモ?

 あ~、なるほど。

 面白いな。


「母親の筆跡を俺がマネたメモだ。書いた内容は…」

「この悪魔、お前なんて産まなきゃよかった。かな?」

「あ、ああ…その通りだ」

「差し迫った状況で素晴らしい選択をしたね。その内容なら家を出て行ったという解釈も出来るし、何よりお前がその時にヘタな嘘を1文でも付け足していたならシアはすんなりと信じなかっただろう」


 真実で発せられた言葉ほど心を打つ言葉はないからな。


「で、どこで働き始めたのだ?飲食店?それとも庭師か何かかな?」

「土木作業員」


 え?何それ?

 土木作業?


「それ何する仕事?家とか作るのか?」

「山とかから土や木を切って運んで、あとは」


 そんな過酷な仕事があるんだね。


「いや、もう分かったからいいよ。それで、そこでも殺しをしたのか?」

「そこで働いた先で先輩の数人を殺した」


 数人か。

 つまりはここからシアの輝かしい殺し屋伝説が始まったわけか。


「シアは真面目だが、いつもちょっかいを出される。その時も最初は仕事を少し押し付けてきただけだったが、最終的にはイジメに繋がった。相手はがらの悪い先輩たち。そして数ヶ月、エスカレートしたイジメの結果、俺が出ることになった」


 ぬるい先輩どもめ。

 シャキシャキとイジメていればもっと早く裏の人格が出てきたものを。


「その8人は事故に見せかけて殺した」

「8人…」


 結構な人数だな。

 おそらくイジメていた全員だろうが、数人ではなく全員とは恐れ入る。


「上手く殺せたのか?」

「その日は大木を根元から切り落とす作業がある日だった、だから作業が始まる前にそいつら全員を気絶させて、切り落とされる大木の下敷きした」

「よく他の作業をしている人間にバレなかったね」

「気絶した奴らの上にはカモフラージュで草や小枝を敷き詰めることによって、他の働いている人間の目をくらました」

「なるほど、少々危なっかしいが、いい計画だ」


 こいつの殺しの動機はいつも短絡的だが、殺し自体に関してはまぁまぁ頭が回る方のかな?

 それともずる賢いだけか。


「でもそいつらを殺してもまだ問題は解決しなかった」

「また他の同僚にでもイジメられたか?」

「いや、同僚じゃなくて上役の人間だ。汚ねぇヒゲを蓄えた奴、そいつは気の弱いシアにだけ給金をちゃんと払わなかった。それも数ヶ月に渡って。最後なんてピンハネとかいうレベルじゃなくて全額支払わずに自分の懐に入れるようなクズ、シアに対しての扱いだって酷かった、だからそいつも殺した。おかげで今まで働いた分以上に金が手に入った」


 おや?と、不思議な事に気が付いたマリアンヌ。

 だがその疑問を口にする前にシアが先に口を開いた。


「でもこれは慰謝料みたいなもんだろ?俺は悪く無いよな?」


 銀線の髪を掻き上げて、マリアンヌは「そうだね」と微笑み返す。


「一定量の金が手に入ったことで、その過酷な職場を辞めれたんだね」

「ああ、でも当たり前だが働かないと金がまた底をついた、そんな時に貴族の家族が幸せそうな顔をして街を歩いていた。だから次はシアの為に先に殺しをやった。シアの身体は土木作業を真面目に取り組んでいたおかげで鍛えられていたから、昔よりも簡単に殺しが出来るようになっていたからラクだった」

「貴族を狙ったという事は相当額が手に入ったのだろ?」

「家にまで入り込めたらもっと金を手に入ってよかったんだろうが、それだと警備の人間や使用人もいるから殺しの難易度も上がる。だからいつも貴族の人間が持っている金品を売って金にしていた」


 だから外に出て警護の人間がいなくなった瞬間を狙うのがミソなんだ。と自慢げに語るシア。

 マリアンヌは再び髪を掻き上げながら思う。


 気がついた時には、もう真面目に働いて、などという常識的な思考は無くなっている。

 殺しを重ねるにつれて殺人自体の罪悪感がどんどん薄れていったという所だろう。

 典型的な殺人鬼だな。

 こいつの人間性はだんだん分かってきたが、その前に


「1つ確認しておきたいのだが」

「なんだよ」

「お前がシアと切り替わる際に、その権利を有しているのは、お前ではなくシアなんだよな?」

「ああ」

「それは、当たり前だが今も昔も、という意味だよな?」

「もちろんだ」

「じゃあ、なんで死にかけているわけでもないのにお前が出てきた? 土木作業の先輩の時は話を聞いていればイジメがエスカレートしてお前が出たのは納得できるが、そのあとの給金を払わなかったうんぬんは命の危機には程遠い、貴族の一件もそうだ、なぜお前が出てきたんだ?」


 何かを隠している事があるのでは、と思い問いかけたマリアンヌであったが、シアから返ってきた言葉はシンプルなものであった。


「そんな事は知らない。気が付いたら俺だった。だから殺した」

「そうか」


 つまりどの地点からか人格の切り替えのスイッチが変化したのか?

 それとも、そもそもわれが誤解していただけで、元々人格の切り替わるタイミングは命の危機ではなく、ストレスが一定を超えた時だったのかもしれない。

 まぁどちらでもいいさ、これは素晴らしい有益な情報だよ。


「こちらの持っている、お前の資料によると最後捕まった理由が包囲されて完全に犯人と特定されているのだが、どこかで足が付くような失敗をしてしまったのかい?」

「俺の事を疑っていた兵士達を殺していた時に1人やり損ねた」


 なるほどね。


「因みに200件近く殺しを実行してきた君だが、その中には殺しの理由が不明確なものもあるのだが、それについての動機はなんだったのだね?例えば貴族でもない単なる家族を全員殺したっていうのは―」

「覚えてない」

「…そうか」


 即答だな。

 まるで最初から答える気がないとすら思える。

 こいつは口をつぐんだが、金でもなく、追われたわけでもなく、殺している人間も数多くいる。

 というか、後半はそれがほとんどだ。


 さっき貴族を狙った話をした時、わざわざ”幸せそうな”と付け加えていたところから、こいつは痛みよりも他人への妬み、嫉妬によってストレスが溜まるほうなのかもしれないな。

 妬みや嫉妬からくる不満、溜まるストレス、それが人格切り替えのスイッチと見ていいだろう。

 だが、われが強制的に切り替えたいときは痛みの方を採用した方が早かろう。

 カーナに毎回、殺させよう。ぐらい殴らせよう。


「俺は悪くない」

「ん?」


 黙り込むマリアンヌを見て、喋りすぎたかと、冷や汗をかきながら最後の最後、彼は首を何度も振りながら言った。


「俺は悪くない、俺はシアの為に人を殺してきたんだ!」


 シアの今までに殺してきた人数、未遂も含め200人程。その人数を考えれば完全に自己防衛、いや過剰防衛すら超えた単なるさ晴らしであることは誰の目にも明らか。

 実際、今こいつは口に出さなかったが、被害者の中にはただの旅の業者もいた、何の関係も無い通行人も。

 つまりは都合の良い加害者の言い訳。

 最初は自己防衛、それが過剰防衛となって、今では立派な殺人鬼。


 情状酌量じょうじょうしゃくりょうの余地すらない。

 おそらく被害者家族達は今のシアを見たら、まだ死刑になっていないのか!と怒り狂って殺しにくるだろう。


「なるほど、なるほど」


 一般的には叱り付けるのが正解なのかもしれない。

 だがマリアンヌはシアの殺人衝動を擁護ようごする。


「もちろん分かるとも。お前はもう1人のシアの事を守りたかったのだろう?仕方なくやったのだろう?」


 つまる所、こいつらは表も裏の人格も両方とも現実を見ていない。

 自己の責任の回避ばかり。

 人間は多かれ少なかれ、自分の罪から目を背けようとするものだが、こいつはその中でも酷いな、都合の良い事だけを夢見る子供のような思考回路。

 今、こいつが欲しい物は”同情”、”あわれみ”、そこから来る擁護ようごしてくれる存在だ。


「これだけ頑張ったのに死罪とは酷いものだな」

「分かってくれるのか?」

「ああ、もちろんだとも」


 分かるわけないだろ、お前の考え無しな馬鹿な行動なんて。

 死罪も妥当な判決だよ。


 マリアンヌは馬鹿じゃないの、という言葉が出かかったがぐっと耐える。

 そして空気を切り替える。


「そうだ、お前に名前をやろう」

「名前?そんなもんい」


 いらない、その自暴自棄にも似た言葉を待つ事無くマリアンヌは首を振る。


「いやいや、ゴミなんて不憫ふびんな名前、お前には似合わぬ」


 気に入らなければ殺す。

 それも躊躇無ちゅうちょなく実行する。

 やはり素晴らしい人材だ。


 そんな存在にゴミだと?

 ありえないな。


「う~~ん、そうだな~。あっ、そうだ!!クロと名づけよう! 両方シアなのだから差別は良くない、われ訳隔わけへだてなくお前達を愛しているのだからな。お前がクロ、もう1人のシアがシロ」


 だが確たる自分を指し示す名を持っていないのなら、わざわざ固有名称を付ける必要などない。


 そう…。


 特に、これから我がしようと思っていることを考えればね。

 フフフ。


「クロ、クロか」


 自分の名前を呟くクロシア。

 少し口元が緩んでいるようだった。


 マリアンヌはそれを見て考えを巡らせながら口を開く。


「クロ、お前のシロを思う献身的な行動、われは心から賞賛を与えよう」


 そしてマリアンヌはシアの肩に優しく触れる。


「安心しろ、われはお前を…、いや、お前達を助けてやる方法を知っている。その二重人格を治してやる」


 それを聞いてシアはハッと何かを思いついたように一呼吸置くと


「俺を消すつもりなのか?」

「はい?」


 肩に手を置きながらも小首を傾げるマリアンヌ。

 困惑しながら、どういう事かな?と問いかけるとシアは言った。

 その声は絞り出すように


「シアを助けるっていうことは…俺を消すって事なんだろう?俺をこの世から消すんだろ」


 言ってる意味が分かったマリアンヌ、鼻で1つ笑う。


「あ~~なるほど、なるほど。お前は何か勘違いしているのではないか? 物語の世界や空想上の話をしているんじゃないんだから、そんなに簡単に1人の人格など消せるわけないだろう?」

「じゃあ、どうやって」

「どうやってだと思う?」


 思わせぶりなセリフに不敵な笑みを浮かべるマリアンヌ。

 問われたクロシアはすぐには答えが出せないようで、しばらく考えていた。

 そして少し考えるクロシアだったが、答えが出ないことを事前に分かっていたマリアンヌ、クロシアの思考時間30秒を越えた辺りで告げた。


「消すんじゃない。1つにしていくんだ」

「1つに?」

「君達は当たり前だが別れたといっても、元々1つの人格だ。ならば戻す方が自然のなりゆきだとは思わないかね? イメージとしては、、そうだな…心の中に存在する2人のシア、その間にある大きなみぞをゆっくり、徐々に塗りつぶしていくようなものだと考えていい」


 今回はそんな時間が無いから、ちょっと荒療治あらりょうじになるがな。

 まぁ、これは君が知らなくていい事。

 知ったときには時既ときすでに遅しな事柄ことがらなのだから。


「本当に俺は消えないんだな?」

「逆にお前だけをピンポイントでどうやって消せばいいんだ?やり方があるなら是非とも教えてもらいたい」


 あくまで優しく、友好的に問い返した。

 悪意は瞳の奥に隠したまま。


「大丈夫、不安に思うことは一切無い、われに身を任せよ。われはお前を助ける方法を唯一知っている人間なのだから」

「なぜ…」


 それしかシアは口に出来なかった。

 マリアンヌは”今だ”とあらかじめ用意していた言葉を舌に乗せた。


「お前が大事だからに決まってるじゃないか。 今まで辛かっただろ? 苦しかっただろ? でもよく耐えてシアを守ったね、お前は何も悪くない」


 その言葉を聞いて死んでいた目に生気が戻る、気が付くとシアの目から自然と涙が溢れていた。

 それを間近で見たマリアンヌ、笑いがこみ上げてきたが、シアにさとられまいと鼻をこする。

 そして自愛に満ちた表情を瞬時に作った。


「今日、話を聞いてよく分かった。大丈夫、われが守ってやる。誰にもお前を傷つけさせたりはしない。これから起こる変化は恐怖ではない、恐れてはいけないよ。われを信じて付いてくればいい」


 そして会話の終了を見越すとシアに優しく「ちょっと待っていろ」と言って立ち上がる。


 聞きたい事は全て聞き終えた。

 あとは行動に移すだけ。


「カーナと一緒に色々と準備をしてくるから、ここにいなさい。あっ、それとクロ、1つだけいいかな?」

「な、なんだよ」

「いいかい”ここから、絶対に、出ちゃダメだぞ”分かったな?」


 そう言って扉は閉まっていく。

 重いガチャリという音を残して…。



閲覧ありがとうございましたm(_ _ )m

いかがでしたか?長いお話なので出来る限り読みやすくをもっとうに書いてみたのですが、皆さんに楽しんで頂けたなら幸いですw

ではまた次回お会いしましょう~(^^)/~~~




買っちゃった(*μ_μ)ポッ

まぁ、まだ予約のボタンを押しただけで実際には買っていないのですがねw以前から気になっていたペルソナ5、新価格版の予約ボタンをさっきAmazonでポチってしちゃった(笑)だってAmazonだと割引あるので4388円ですよ!そりゃ~ポチしちゃいますよw今から届くのが楽しみでならないです♪


ただ1つだけ気がかりな事があるのです(-n-;)今、ペルソナ5ってアニメ放送してるじゃないですか?ひとりぼっちの桜も毎週楽しみにしているのですが……ゲームを購入するってことは、これアニメ最後まで見たらネタバレになんじゃね?って思ったんです。

ゲームの発売は9月6日、でもアニメの先も気になるしな~(>x<)どうしよう~(汗)幸せな悩みは尽きませんよw

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