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魔女と呼ばれた少女 -少女は死体の山で1人笑う-  作者: ひとりぼっちの桜
【第7章】 一夜で滅んだ村

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144/392

12 3ヶ月前(7)

クリックありがとうございますm(_ _ )m一番好きなガンダムはゴッドガンダム!ひとりぼっちの桜ですw銃や剣でなく拳で戦う、、カッコイイですよねd(*′▽ `*)゜+.゜ェェ

もう好き過ぎて、いっそあの背中のヤツ背負いたいぐらいです(笑)


では前回の答え合わせも含め、どうぞ今回もお楽しみくださいませ~(^^)♪



 ホコリがたまった高価な文献や貴重な本たちが並ぶ書庫。

 家主やぬしである男とゲストの子供達だけが入ることが出来る特別な書庫。


 その部屋の一角いっかく、隠された扉が今ゆっくりと開かれる。

 書庫側からは決して見えない部屋の片隅の壁にツーと線が浮き上がり、ドアノブすらない扉が現れ、ズズズと小さな音を立てて開いていく。


 そして静まり返った書庫へと足を一歩踏み入れた裸の男はタオル片手に首を傾げる。


「あれ?」


 ふと、違和感に気付き足を止める。

 本の匂いが充満した部屋。

 真正面、窓際に無造作に置かれた椅子が薄っすらと見えたのだ。


 彼は腰にタオルを巻きながら更に首を傾げた。


「椅子なんてあんな所にあったか?」


 確かこの部屋にある椅子は1脚のみ。

 そしてその1脚はこの隠し扉の近くにカモフラージュ代わりに置いていたはず。

 間違っても窓際なんかには置いていないはずなのに。

 椅子を移動さした人物がいる?

 いや、そんな人間などいるわけが無い。

 だってここに入れる人間は。


 彼は目を凝らした。


「……ん?」


 気のせいだろうか? 今、薄っすらと前方の闇の中、月明かりの脇で椅子に座っている何かが見えた気がした。

 その”何か”は銀色の髪をした―


「いやいやいや」


 かぶりを振る右大臣。


 ここに来た事の無い人物の顔が一瞬見えた気がしたが、何かの見間違えだ。

 居るわけが無い。


 そう…あの女は皇帝の怒りを買ってしまった、近々皇帝争いからも消えるだろう。

 そうなったら、おそらく有力貴族、もしくは支配下にある隣国に嫁ぐ事になる。

 正直、あの女が国に嫁いだ場合、嫁ぎ先の国がどんな顛末てんまつを迎えるか、考えるに恐ろしいが、それでも自分の前に現れる事は無くなる。

 そしてそうなった場合、マリアンヌに付き従っている忌々(いまいま)しいカーナもいなくなるだろう。


 今も脳裏のうりに焼きついている皇帝とマリアンヌの目が重なる。

 ブルッと身体を1つ震わせ呟く。


「あともう少し、もう少し…少しだけ耐え忍べばあの脅迫者たちの顔を見なくてもよくなる、全ては皇帝陛下に任せていれば」

「やぁ右大臣」

「え?」


 ピタッと右大臣の動きと思考が停止した。

 そこに居たのは、月明かりが差し込む窓の下、椅子に腰を落としたマリアンヌであった。


「え?」


 あまりにも想定外の光景だった。

 はらりと落ちる腰に巻いたタオル、元騎士とは思えないだらしない全裸があらわになる。

 マリアンヌは本に目を落としたまま言った。


「カーナ、騒がしいと鎖につながれた子供達が起きてしまう、可哀相だから扉を早く閉めなさい」

「はい、マリアンヌ様」

「っぉ!!」


 再び心臓が大きく跳ねた。

 元騎士とは思えないだらしない身体で俊敏に振り返ると、そこには


「カ!?」


 カーナ・マキシマム、自分を第一線から退かした女。

 私の人生設計を大きく狂わした張本人。

 奴はその赤い髪同様、赤く揺れるランタンを持って立っていた。


「カカカカカ」


 心臓が激しく鼓動を打つ。

 緊張、焦り、困惑、驚き。

 それら全てが同時に大臣の心臓に負担をかけた。


「カぁ…ぁあ」


 いっそ心臓が止まってしまえばどれだけ幸せだっただろう。

 だが残念ながら、そんなに都合よく心臓が機能を停止させることはなかったので、全ての悪条件が揃った書斎にて右大臣は心臓に手を当てながら考えた。


 なぜこいつらはここに居るんだ?

 ここは誰にも知られていない自分だけの秘密の場所、この場所を知っているのは奴隷商を含めた数人だけ。


 いや、待て!


 この女…マリアンヌという人間なら奴隷商人を含めた全ての人間に対して無理矢理口を開かせることができるだろう。

 特にカーナという絶対的暴力を使えばより簡単に情報は手に入るだろう。

 だがそれをする為には大前提としてマリアンヌが私のやっていることをある程度事前に知っていなくてはならない。


 まさか…


 私の秘密を知っている人間が、自分から情報を漏らした?


 くそ!!何処のどいつだ!!


 というか!そもそも、この部屋にどうやって入った!?

 唯一ある扉は鍵が付いていて、屋敷の内外、この部屋以外は屋敷を警備してる衛兵がいるんだぞ!?


 どうして、どいつが…、どうやって…。


「あ、あ」

「ん?」

「え…あ…」

「ん~?」


 無言が続く室内で右大臣は無理矢理にでも酸素を吸いながら喋ろうとしたのだが、パニック状態からくる過呼吸なのか声が出なかった。

 一方、マリアンヌは勝手に入った事を悪びれる素振りも見せず、またページを1枚、めくった。


「素晴らしい蔵書ぞうしょの数だな右大臣」

「え」

「本の上に積もったほこりの量から察するに数年単位で動かれた形跡は無い、そして本自体はまるで新品、読んだ形跡が一切無いのが気になる所だが…。とても趣味が良い、これだけの物を集めたこと褒めてつかわす」


 当たり前だ、読むわけが無い。この蔵書の数、高価な書物を多数置くことによってこの部屋に鍵をつけている言い訳、カモフラージュ効果を狙ってのもの。

 全てはこの秘密の書庫の先で飼っている子供達を隠す為だけの使用しているだけの部屋なのだから。。


「え、ぉ」


 なぜ居るのか?その一言を言おうとしたが出なかった。

 唯一出たのは


「ぉ、どこか…」

「ドアから」


 何処のだよ!?

 ここ3階だぞ!?


「聞こえ」


 だが何よりも自分がやっていた事を聞かれていたのか?

 聞こえていたか?

 そう問いたかった。

 しかしやっぱりその言葉も出ない。


 酸素が欠乏けつぼうしているのか、それともパニックから脳へ上手く酸素が行き渡ってないのか、視点が定まらない、荒い息を吐きながら視界がグラつく。

 その苦しそうな姿を思うばかった部下思いの優しいマリアンヌは、本に視線を落としたまま落ち着いた声で。


「大丈夫、われは何も見ていないし、聞いてもいない。な、カーナ?」

「はい、マリアンヌ様。私は何も見ても聞いてもおりません。いたいけな少年、少女の叫び声にも似た声なんて聞いておりません」

「っ!?」

「こらこら、カーナ~。そんな言い方をしたらまるで我らが盗み聞きしていたように聞こえるではないか」

「も、申し訳ございません!マリアンヌ様までそのような汚名を背負わせるとは思わず!つい口に出してしまいましたっ!」

「いや、よいのだよカーナ。だって我らは”何も知らない”んだから・・」


 ダメだ…全部聞かれてる。

 いや、そもそもこの場所を知られている時点でこの女には全てがバレていると考えた方がいい。


 逃げたい。

 この部屋から。


 しかし。


 脂ぎった身体全体から嫌な汗が滲み出る右大臣。

 無意識に後ずさる足。

 そのかかとが壁に当たった。


「ぁっ」


 冷たい本棚に背中がくっ付く。

 それはイコール、これ以上は下がれないし逃げられないという絶望だった。


”目的はいったい何なんだ!?”


 しかし、どれだけ考えても右大臣の頭脳では答えは出なかった。

 元々彼は頭脳が明晰めいせきという訳ではない。

 彼の得た騎士の最高位、右大臣という地位にしても、自分より立場が上の人間に取り入って懸命けんめい太鼓持たいこもちをしてきた結果得た物。

 並外れた能力と言うのであれば、その人をよいしょする能力だろう。

 そんな彼にとって、この場ですぐにマリアンヌの目的を推察することは不可能だった。


 恐怖に怯えながら足元に落ちたタオルを見て右大臣は言った。


「あ、あの、、ふ、ふ、服をき着て、着てきても、よよろおしいでしょうか?」


 やっとまともに出た声らしい声に、マリアンヌは相変わらず本の文字をゆっくりと追いながら嘲笑ちょうしょうの入り混じった鼻でクスッと笑う。


「別にお前の裸なんぞ興味は無いからそのままでよい。それよりも、もう既にお前と会ってから1分近く経っているわけだが…」


 マリアンヌの瞳に急激に冷たさが宿っていく。


「右大臣よ、、どうした?先ほどまでの行為で膝でも悪くしたのか?」

「へ?」


 暗闇に一瞬走る緊張感。

 その言葉でハッと我に返ったように目を見開いた右大臣。

 自分が今、誰の前に立っているかを思い出した。

 すぐさまひざまずいて、こうべれる。

 いつも皇帝に向かってするように深く、深く。


「も、申し訳ございません!!マリアンヌ様を見下ろすような無礼を!お、お許しください!!どうか!!どうか!!」


 マリアンヌの父である皇帝を彷彿ほうふつとさせる威圧感が頭上に降り注ぐ。

 右大臣はプレッシャーに押し潰されそうになる。

 マリアンヌはそれを見て微笑んだ。


「いいのだよ~いいのだよ~。われはその程度の事で怒ったりはしないから、そう怯えるな。それに我が国の為、左大臣と共に日夜心骨を削っているお主をその程度の事で首をはねようなどとは思ってはおらん。だが…」


 その微笑みは、いつに無くほがらかに。


「次は無いぞ」

「はっ!申し訳ございません!」

「うむ…よろしい」

「………」


 その後、再び訪れたのは静寂であった。

 右大臣にとって耳の痛くなるほどの静寂。

 マリアンヌがページをめくる音だけが妙に大きく聞こえる。


 これ以上無音が続いたら気が狂ってしまう。

 右大臣はゆっくりと震える口を開く。


「い、い、、いい、つ」

「ん~?なんだい?」


 上手く呂律ろれつが回らない。


「い、い、いぃぃいつから居た、いや!いらっしゃったの、で、ですか?」

われがここに居てはマズイのか?」

「いいえ!まったく!こんなゴミのような場所にわざわざご足労頂きありがとうございます!!でも、あのいつからいらっしゃったのかな~って、思いまして…」


 するとマリアンヌは隣の椅子に置かれた2冊の本を指差して言った。


「今3冊目だ」


 その答えだけでどれだけココに居たか、どれだけ聞かれたくないことをこの女に聞かれたかを察する右大臣。

 もちろん彼はマリアンヌがどれぐらいの読書スピードなのかなんて知らない、知らないけれど。


「ああ…」


 絶望。

 圧倒的なまでの絶望が右大臣を襲った。


 何もかも知られた。


 だが右大臣は頭を振ってぐちゃぐちゃになる思考を追い払う。

 今、考えなければならない問題は『なぜこの女がここにいるか』じゃない、『何が目的か』だからだ。

 そう考え、視線を宙にさ迷わせながら失礼にならない言葉をひねり出す。


「何か御用でしょうか?」

「いや、何、ここにある本が読みたくてね」

「な、なるほど」


 とても弱弱しい声であった。

 もう、何が「なるほど」なのか、口にしている右大臣にもさっぱりだった。


「というのは冗談だ」

「なるほど」


 今、右大臣の頭の中では「知られてしまった、決して人には知られてはいけない自分の特殊な性癖を。しかもこの世において一番知られたくないと言っても過言ではない人物に」という文言が繰り返し流れてまともな受け答えが出来なかった。

 それを知ってか知らずか、マリアンヌは一瞬だけ右大臣の方を見てクスッと笑う。そして紙をめくる手を止めると、読んでいたページの端を栞代わりに折り曲げてパタンと本を閉じた。


「君に聞きたいことがあるんだ」


 右大臣の動揺を完全に無視したマリアンヌ。

 だが、右大臣としては、とりあえずこう答えるしかない。


「な、何でございましょうか?私目わたくしめにお答え出来る事でしたらなんなりと、喜んでお答えします、はい」

「いや、何、そんなに大した事では無い。父がわれに対して行おうとしている例の案件の事だが、進捗具合しんちょくぐあいはどうだね?」

「なぜそのことを!? 私も一昨日言われたばかりなのに!?」


 やはりか。

 父の性格を考えるとファゴット際が終わってすぐ、何かしらの行動を取るだろうと予想していたが、一昨日おとといとは…。

 どうやら来て正解だったようだな。


「知ってるさ。もちろん。色々とな…」


 含みのある言い方をするマリアンヌ。

 更に続ける。


「例えば、お前が父上にその件を命じられた一昨日から色々動いているという事とかな。お前も大変だな、皇帝の頼みとはいえ」

「いえ、そんな滅相も無い!私は別に」

「謙遜するな。お前には感謝しているぞ」

「あの」

「ん、何?」

「あの…何処まで知っておられるのですか?」

「なぜそんな事を聞く?」

「えっ、いや、あの、その」


 冷酷な瞳にギョッとする右大臣。

 右大臣の言葉を全くの無視でマリアンヌは話を続ける。


「なんてね、冗談だ。お前が父上から口止めされていることは知っている。それでわれがどこまで知っているか気になったんだな?」

「っ!?」


 心臓が止まりそうになった。


 確かに右大臣は口止めされていた、皇帝に。

 それも『誰にも言うな、特にマリアンヌには』と。


 この女はどこまで知っている?

 誰から聞いた?

 ここの情報もそうだが、いつもこの女はいったいどうやって、何処から情報を得ているんだ?

 情報源はいったい?


「もちろん、お前の立場も分かっているので、われの質問に対して嘘をついてくれても一向に構わない。われとて全てを知っているわけではないからな。上手く騙せるやもしれんぞ、ただし…」


 マリアンヌの瞳が月の光を受けて凶々(まがまが)しく輝く。


「嘘をつくなら上手くつけよ。もしもこちらの知っている情報との齟齬そごがあった場合、われに歯向かったと見做みなす」

「因みに見做された場合、私はどうなるのでしょうか?」


 乾いた声で問う右大臣にマリアンヌは鼻を鳴らす。


「アンジェラなる女はわれとは姉妹関係にあった」

「は、はい」

「しかし今では墓の下だ、無残にも首と胴体が離れ離れになって。な」

「っ!?」


 冷たい視線に射抜かれて右大臣がピクッと一瞬身体を震わせた。


「腹違いとはいえ、姉に対してあのような事を平気でするわれを敵に回す覚悟はしろよ、右大臣君。 とはいえ、お前にも立場というものがあるだろう。われの側につけば父に殺される、父につけばわれの敵になってしまう。『どうしよ~かな~?右大臣困っちゃう♪』ってお前は今、考えているはずだ。自分はどちらにつくべきか。だが、そんなお前に最良の方法がある」

「最良の方法…ですか?」


 怯えきった目でマリアンヌを見た。

 すると黒く塗られた口元は小さくゆがむ。


「お前はわれに情報をらしたのでは無く、誰も立ち入らないこの秘密の部屋で独り言を言った、それを”たまたま”居たわれが聞いた。言うなれば、これは偶然起こってしまった事故だ、誰も悪くない。言ってる意味、分かるな?」


 右大臣は真っ青な顔で何度も頷く。


 そう…マリアンヌが今言った通り、秘密を知られたこの絶体絶命の状況を右大臣が皇帝側、マリアンヌ側、どちら側にもつく事無く乗り切るにはそれしかない。


 マリアンヌはやや語調ごちょうを和らげて右大臣を安心させるようにゆっくりと続けた。


「大丈夫だ、バレなければ罪は罪でない、そう…お前のやっている事と同じだよ。いるんだろ?奴隷、戦争孤児以外にも、バレちゃいけない子供」

「………」

「今後の事を考えると、後ろだても欲しかろうな~」

「………」


 右大臣は黙って聞いている。

 返答も反論もせず、ただ黙って聞いている。

 最後にマリアンヌは言った。


「続けたいんだろ?この生活」

「………はい」


 これが右大臣が完全におちた瞬間だった。

 マリアンヌには聞こえた。

 彼の心の折れる音が。


「うむ、良き返事だ。では話しなさい」

「…はい、マリアンヌ皇女殿下」


 そして彼はゆっくりとマリアンヌに今後訪れる計画を話し始めた。



閲覧ありがとうございました(*- -)(*_ _)ペコリ

どうでした?前回の誰でしょう?ってやつ、当たってましたか?

ではまた次回お会いしましょう(○゜ω゜)ノジャ、マタ!!

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