31 3日目 - 午後(13)
クリックありがとうございます(^^)楽しみにしていたアニメ、オーバーロードの第2期が期待以上のクオリティで喜んでいるひとりぼっちの桜ですw1期終了からずっとこの先の展開が気になっていたので、これから3ヶ月はこの世の春ですね♪
今回のお話は本当は切ろうかな~U。・ェ・。Uって思っていたんですけど、流れが悪くなりそうだったのでそのままアップする事にしました………10ページぐらい(笑)
では今回のお話もどうぞお楽しみください♪
『おい妹!出て来い!姉がどうなってもいいのか!!!』
建物全体に響き渡る声。
それが2階の客室、その1室の扉をそ~と開けようとしていたライオネルの耳に届いた。
投げかれられた声にライオネルの背がすくみ、ドアノブを回す手は一瞬止まる。
「っ!」
一瞬、恐怖で心臓が止まりそうになったライオネルであったが。
でもこの時、彼女は自分にとってとても重要な情報を得ることになる。
ライオネルは必死に手で口を塞ぎながらも心から安堵する。
”わたしの居場所はバレていない?”
もしもわたしの居場所がバレているのなら、ファルヴィさんはすぐにでも2階への階段を昇ってきているだろう。
そしてわたしは即、捕まってる。
しかしファルヴィさんはそれをせずに「出て来い」と叫んだ、しかも「降りて来い」などでなく「出て来い」と。
これはわたしが何処にいるかの大まかな居場所すら把握出来てないと考えるべき。
…だけど。
”何でだろう?”
お姉ちゃんの話だとあの4人は凄く優秀って言ってた。
って事は今叫んだファルヴィさんも、その例外に漏れず、もの凄く優秀なはず。
本来なら、わたし1人見つけることぐらい造作も無いはずだ。
「でも…」
ライオネルは自分の足元に視線を落としながら考える。
暗闇に慣れた瞳に映るのは裸足になった足。
靴は階段下の影に置いてきた。
その時に音のなりそうな物も同時にそっと投げ捨てた。
階段を昇るときはしゃがんで4速歩行で昇りきった。
その後は壁に身を寄せて…そして今に至る。
おそらくだけど、そういったのがよかったのだろう。
じゃなかったら、わたしみたいなどんくさいのが、あの状況でファルヴィさんから逃げ切れるわけがないもん。
あっ、そういえば先生達にも気配の消し方だけは褒められたっけ?
あれは確か課外授業で森の中でかくれんぼみたいな事をやったときに、、、
いや、今はそんな事はどうでもいいけど。
今必要なのは。
いつものように。
周囲に溶け込むように。
姉の後ろに隠れるように。
気配を消す。
上手くいっているのなら尚の事、今はそれだけを考えればいい。
ゆっくりとライオネルは2階の個室、窓が半開きになっていた部屋に入るのであった。
「………」
2階客室にライオネルが入ると、湿り気を含んだ木材の匂いが充満していた。
おそらく長年半開きになって雨風に晒されていたからだろう。
人の気配はもちろん無い。
「よし」
音を殺してドアを閉める。
ドアを閉めることによって、少しだが心が落ち着いた。
生きてきた中でこれほど板一枚、ドアという存在に感謝したことはないだろう。
でも未だ恐怖は完全には拭えない。
当たり前だ、この真下には彼らが居るのだから…。
これだけ離れていてもこれだ、さっきまで間近でファルヴィさんたちと相対していた姉はどれだけ恐かったのだろう?
「凄いな、お姉ちゃんは」
改めて実の姉の心の強さを実感しながらもライオネルは1階から伸びるツタが癒着している小窓を音を最小限に引き上げる。
「ん…しょ」
錆び付きツタが絡まった小窓は重かったが、何とか音を立てずに引き上げられた。
そして小窓から下を見る。
頬を撫でる横風。
「よ、よし、この高さならなんとか大丈夫…かな?大丈夫だよね、うん」
ここまできたらそう思うしかない。
もはや自己暗示の境地だ。
「どうか怪我をしませんように」
短い祈りを捧げ、恐る恐る小窓の縁に足をかける。
「いっせ~のせ、で、いこう。うん。じゃあ、、いっせ~の、うわっ!」
バランスを崩して2階の小窓から盛大に裏通りに落ちたライオネル。
真っ逆さまに落ちたことで、思いっきり背を地面に打ち付け、堪らず声が出た。
「グフッ!!」
一拍おいて、ライオネルは重い身体を引きずるように起き上がる。
すると背中に鈍い痛みが走った。
「いっ…たぁぁいよぉ。でも」
そのおかげで下に降りれた。
そうじゃないと、きっとあの場所からは降りれなかっただろう。
ライオネルは自身が飛び降りた(落ちた)建物裏手の小窓を見上げる。
ツタが腐った外壁を絡まるように窓に向かって上る壁面は、とても、とても高かった。
「うぅう、この背骨の鈍い痛みは、降りれた代償と考えよう」
そして暖かな光が当たる大通りへ向かって走った。
お世辞にも軽快とは言い難い足取りで必死に。
事態は一刻の猶予もない。
「もう少し、もう少しだ」
さっき落ちたときの打ち所が悪かったのか、呼吸のリズムが狂って目眩がする。
心臓が胸から飛び出しそうな勢いで脈打ってる。
でも足は止まってはいけない。
だってわたしは逃げるしか出来ない。
今までそれしかしてこなかった。
”だから今ぐらいは神様、わたしに力を貸してください”
だがその時、後ろから音が聞こえた。
「えっ?」
何か重い鉄のような『ガチャリ』という音が。
そしてその鉄音は全速力でわたしを追いかけてくる”複数”の足音となって続いた。
「っ!!」
嘘でしょ!嘘でしょ!嘘でしょ!?
これわたし追いかけられてるよね!?
何でいっぱい足音が聞こえるのか分からないけど、やっぱりわたしの居場所はバレていたんだ!
わたしは振り返らずに必死に走る。
というか恐すぎる、振り返れるわけがない。
あと数メートル、あの曲がり角を抜けて大通りに出ればきっと誰か居る。
誰でもいい、人さえ居ればその人に助けを呼んでもらってそれで、それで、この恐怖から逃れれる。
そう信じて…。
「!?」
その瞬間、掴まれる感覚が腕にあった。
そして強く腕を引っ張られた。
この強さ、逃げ切れない。
咄嗟にそう感じた。
ライオネルは息を吸い込む。
「誰か助けてください!!」
誰に向かって言ったわけでもない。
ただ、誰かに助けてもらいたかった。
こんな路地裏からでは届かないかもと思いながらも叫んだ。
「わたしの名前はライオネル・クラウンです!!ムンガル卿の娘です!!誰か!!!」
それは腕を掴まれてから今までのコンマ数妙で、精一杯の勇気と知恵を振り絞った一言であった。
頭の良い姉ならどういう言葉を選ぶか、言葉を聞いた知り合いだけではなく第三者が1人でも多く耳を傾ける可能性のある言葉。
完璧だった。
が。
しかし返答は無し。
聞こえてくるのは遠くで鳴る打ち上げ花火や民衆達の楽しそうな声。
当たり前だ、この日、この辺りは人がいない。
ここに来る時に気付いていた。
わたしは。
逃げ切れなかった。
「うわっ!?」
視界と口元を覆おうとする黄金の手。
次にライオネルの細い肩や腰、足には冷たくて硬い感触。
人の匂いや体温の一切感じられない黄金の騎士達は乱暴にライオネルを地面に押し倒す。
「や、やだ!」
「フフフ」
必死の抵抗を試みる最中、クスクスと上品な笑い声が聞こえた。
ライオネルが逃げようとした先、回りこむようにして曲がり角からぬらりと出てきた人物は余裕たっぷりに言った。
「感動的な逃走劇ご苦労様だね」
「クロト…さん」
薄笑いを浮かべるクロト、眼鏡の奥から鋭い眼光が覗いていた。
そして煌びやかな洋服に身を包み、一歩、また一歩近づいて来る。
最悪だ。
もう少しだったのに、、。
目の前の道がとても遠く感じる。
もう腕を伸ばすことも出来ないだろう。
わたしは掴めなかったのだ。
クロトさんの足音が近づくたびに心臓の音が耳元で強く鳴り響く。
「僕の忠実な騎士たち、その子をしっかりと捕まえておくのだよ」
黄金の騎士達に返事はない。
だが忠実に今もクロトの命令を従事している。
彼らは熱を持たない手でライオネルの身体を、腕を、足を凄い力で押さえつけた。
「ギリギリだったね、本当に危なかった。君を取り逃がすと皆になんて言われるか分かったもんじゃないからね」
クロトはそう言ってライオネルの元までやって来ると剣を引き抜いた。
そしてそのまま、ゆっくりとライオネルの首元へ宛がう。
首元に冷たい刃が触れた。
「ヒッ!?」
ファゴット際では1度も振るわれる事がなかった剣。
それが今、ライオネルの目の前で血を欲しているかのように鈍く光る。
ライオネルは心から思った。
えっ、本当にわたし死ぬの?
嘘でしょ?
だってわたし何も悪いことしてない、嫌だし、そんな。。
”嫌だ!死にたくない!!!”
だから黄金の兵士達に地面に押さえつけられながらもライオネルは懇願する。
「ごめんなさい!ごめんなさい!絶対に言いません!言いませんから! 八百長の事なんて絶対に言いませんから!」
もはや涙や鼻水でグシャグシャな顔は何度も横へ振られる。
だがクロトは別人のように歪んだ笑みで剣を振り上げる。
刀身に反射する太陽の光。
クロトは口の端を上げた。
「申し訳ないけど諦めてくれたまえ」
その言葉は死刑宣告だった。
遂に頭さえも押さえつけられたライオネル。
地面に頬を摺り寄せたまま
「たすけ…たす…け…たす」
気が遠くなって、ろれつが上手く回らない。
消えゆくようなライオネルの最後の懇願。
だがクロトはにやり、と、この上なく邪悪な笑みを浮かべると、こう付け加えた。
「すまないね、君を生かしておくと僕の経歴に傷が付くかもしれない、だから…僕らの為に死んでくれ。なに、ムンガル将軍には良きように伝えておくよ」
ライオネルの鼓動がどくんと脈打つ。
そして鋭い音で振り下ろされる剣。
「バイバイ、ムンガル卿の娘さん」
もうだめだ。
わたしは死ぬんだな。
結局、わたしはまた何にも出来なかったのか。
なんて無様なんだろう、お姉ちゃんは立ち向かったのに…わたしは逃げて、逃げて、逃げ回った、その結果がこれ。
そしてわたしは諦めて目蓋を下ろした。
ただ死を待つしか出来る事が無かったから。
ああ、つまらない人生だった。
生まれ変わるのならわたしは…
わたし以外になりたい。
その時、音がした。
息を軽く吹きかけたような風の音が。
そしてライオネルの身体を押さえつけられた力が一気に抜けた。
「っ?」
突然自由になる身体にライオネルは涙でぬれた顔を上げる。
すると白目を剥き、グラリと地面に倒れゆくクロトの横、その人は立っていた。
「だ…れ?」
震えた声でそう問いかける。
メイド服に黒いブーツ、手にはバスケット、その中からは穂のかに甘い匂い。
そんなこの場に不似合いな人物は、面倒くさそうにライオネルを一瞥するとに自身の髪をかき上げた。
外の新鮮な風がさらさらと赤い髪を揺らす。
「やれやれ、何かめんどくさい事に巻き込まれてしまった気がしますね、私は。まったく、忙しいのに…」
暖かな光の中、目の前に立っていたのはお面屋で出会った髪の赤い女であった。
いくつもの”なぜ”という疑問符によって声を失うライオネルの傍ら、彼女は自身のスカートに付いた土ホコリを手でパッパと払うと自分の運命を呪うように口を開いた。
「何というか…今、私は面倒事に自らちょっかいを出そうとしているんでしょうね、これがムンガルの呪いですかね」
閲覧ありがとうございましたm(_ _ )m遂にカーナががっつりと(裏)に出てきましたねw次回はなぜカーナがあの場に居たかを描こうと思っています♪よかったら次回も読んで頂けると嬉しいですヾ(嬉'v`嬉)ノ
では今回もいつもの挨拶でお別れしようと思います♪♪
さ~て、次回のカーナさんはヾ(*´∀`*)ノ?
カーナです。
最近、マリアンヌ様が露骨に鶏肉料理を避けられるので理由をお聴きした所、凄く睨まれました。。凄く。はい。
さて次回は「カーナが選んだお店とは」「カエルと鶏肉ってぶっちゃけ味は似てるよね」「ムンガルの呪い」の3本立てでお送りします。
それではまた次回も観て下さいね、じゃ~んけ~ん、ポン( -_-)v。ウフフフ♪




