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魔女と呼ばれた少女 -少女は死体の山で1人笑う-  作者: ひとりぼっちの桜
【第6章】 3日物語(裏)

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27 3日目 - 午後(9)

クリックありがとうございます(^^)先日まで行われていた『モンスターハンターワールド』の体験版をやりこんで、あまりに楽しかったからすぐに製品版をAmazonでポチしたひとりぼっちの桜ですwいや~発売日が楽しみです(。>∀<。)!


ではどうぞ今回のお話もお楽しみくださいませ♪



 ライオネルは手の平から伝わって来る腐った床板から音が出ないように慎重に、慎重に扉に近づいた。


 声は出せない。

 出したらどうなるか分かるから。

 だから心の中で双子の姉に語りかける。


 やめようよ、そんな事をして何の意味があるの?

 わたしと違ってお姉ちゃんには素晴らしい未来が待ってるじゃない。

 ここだけ、今一瞬、この時だけ自分を殺せばいいだけじゃない。

 隠れていればいいだけじゃない。

 なんでたったそれだけの事が出来ないの?

 死にに行くだけじゃないか。

 本当に死んじゃったらどうするの?


「………」


 その時、少しだけ考えてしまった。

 いや、期待してしまった。


 わたしと違ってみんなに期待される姉。

 わたしみたいに日陰を歩かない、日向ひなたの道を真っ直ぐ歩く姉。

 あの強い姉が諦める姿が遂に見れるのではないか?

 膝をつくのではないか?

 生まれて初めて自分の生き方を曲げるのではないか?


 そう思うと、、

 こんな状況なのに、、

 わたしの実の姉のピンチだというのに、、


「あれ?」


 呟く口元に手をやる。

 わたしの口元は


 笑っていた。



             ×          ×



 一方、室内では…


 突然割って入って来た声に思わず動きが止まる4人。

 全員の視線が急に目の前に現れた少女に集中する。

 戸惑う声は無い、なぜなら4人は半ば唖然あぜんと目を丸くしていたから。


「どういう事だラムゼス」


 しばし訪れた沈黙を破ったのは足元を転がる大きなガレキを蹴飛ばしたファルヴィであった。

 クロト、スレインも厳しい口調で続く。


「ラムゼス君、何で君の弟子はここにいるのかな?説明を求むよ」

「ラムゼス、これは…マズイ。もう、、終わった、まったく何てことをしてくれたんだ」


 仲間の抗議にちっ、と舌を鳴らすラムゼス。


「俺は知らねぇよ、今日だってここには来ないように言ってた。そもそも、こいつが隠れていることを気付かなかったお前らの責任だろ」

「オイラは腹の傷でそれどころじゃなかった」

「俺はファルヴィの傷の心配で…」

「僕はほら、、色々あったから。仕方ない、僕は仕方ない」


 自分のことそっちのけで、茶化ちゃかす3人の言葉口にモルドレッドの目が鋭くなる。

 モルドレッドは大声で言った。


「オレの質問に答えろよ!!」


 建物に響く甲高い子供の声。

 不愉快そうな表情をする4人、その中ファルヴィは瞳をらし、溜め息のように静かに空気を吐き出す。


「黙っていてくれって言った所で無駄なんだろうな~」


 そして口の端を上げたまま、敵意と殺意が込められた視線をモルドレッドに向ける。


「ラムゼス、このガキはオイラたちの秘密を知っちまった。殺すぞ、いいな?」

「まぁ、、仕方ねぇな」

「そんな事よりもオレの質問に答えろよ!」


 威嚇するようなファルヴィの口調、自分の命の話をしている相手に一歩も引かないモルドレッド。

 臆する事無く横にいる男に質問を投げかける。


「師匠、八百長やおちょうってどういうことだよ! 師匠は八百長をして優勝したってことか!?」

「……」

「師匠!!」

「そうだ」


 ラムゼスの「そうだ」という返答に、一瞬の間があった。

 しかし結果的には悪びれる事無くラムゼスはあっさりと認めた。


「―――」


 モルドレッドは言葉を失う。

 信じていたものが全て裏切られた思いだった。

 昨日語った、クルウェイ将軍に勝ちたいから騎士になったという話はなんだったのだろうか?こんな八百長やおちょうをして勝てるわけがない。


 モルドレッドの硬く握られた拳が震える。


「カッコイイと思って憧れたのに」


 ラムゼスはもったいぶる様に言葉を止め、モミアゲを撫でた。


「そりゃ~残念だったな、理想が崩れて。でも」


 からかうように言葉を紡ぐラムゼスを睨むモルドレッド。

 続くラムゼスの言葉をさえぎるように、もう一度、問いかける。


「なんでこんな事をするんだよ」

「あぁ?」

「なんでこんな汚ねぇマネするんだよって聞いてるんだよ!」

「汚い?」

「みんな正々堂々やってんのに、お前らだけイカサマやってるんだぞ!汚い意外なんて言えばいいんだよ!」


 汚い、という言葉にラムゼスを含めた4人はせせら笑う。

 そして代表する形でラムゼスが口を開く。


「汚かろうが何だろうが、要はバレなきゃいいんだよ。俺は結果的にクルウェイに勝てりゃそれでいい」

「ははは、ラムゼスも大人になったな、うん」

「ラムゼス君を見ていると人間は丸くなるものだと実感できるね」

「そもそも聞きたかったんだけど、あんな化け物と正々堂々なんて、どうやって勝つつもりだったんだ?」

「うるせぇよ、あん時は馬鹿だったんだよ。昔の事だ、忘れろ」


 再びクスクスと笑う4人。

 すっぽり穴の開いたモルドレッドの心に4人の笑い声がこだまする。


「ふざけんな…」


 許せない。

 許せなかった。。

 全て(男)を持って生まれてきているラムゼスが簡単に諦めたことが。。


 モルドレッドは4人の男の笑い声を断ち切るような大声で言った。


「そんなことやってて勝てるわけないだろ!!この負け犬野郎が!お前なんて一生クルウェイ将軍の影でビクついているのがお似合いだ!!」


 こんなに腹の奥から声を荒げたのは初めてかもしれないぐらいの声だった。

 静まり返る室内。


 まるで胸を大きな五寸釘ごすんくぎで貫くような言葉だった。

 誰にとって?

 それはもちろん…


 ラムゼス以外の3人はラムゼスの顔を横目で見る。

 見た理由は3人には分かっていたから。

 今モルドレッドが言った言葉こそが、ラムゼスが一番触れて欲しくなかった言葉だと。


「フフフ」


 震えた笑い声が室内に反響する。

 そして、ラムゼスはピクリと顔を引きつらせるとそのまま怒りの形相になった。


「何も知らないガキが」


 その呟きは堪えきれずに漏れたものだった。

 クロトがラムゼスの雰囲気を感じ取り、鼻で笑う。


「あ~あ、ラムゼス君の悪い癖が出てきたよ」

「爵位を得た時点である程度は矯正したと思っていたのだけどな」

「ははは、それは仕方ないなスレイン。だって人間の本質はそうそう変わらないからな、うん」

「うるせぇ!お前らには話してねぇよ!!オレが話してるのは師匠―」

「うるせぇのはお前だ!!」


 岩をも砕くような右ストレートがモルドレッドの顔面を捉える。


「っ!」


 大きく吹き飛ぶモルドレッドの身体。

 激痛が頭の芯まで突き抜けるような一撃だった。

 あまりの痛みでしゃがみ込むモルドレッド。


「あぁァ…ク…ソぉ」

「俺の事を何も知らないのに、俺に意見してんじゃねぇよ!ガキが!!」


 そしてラムゼスは倒れこんだモルドレッドを踏みつける。

 何度も、何度も。

 ボールでも蹴るように、はたまた虫を踏みつけるように・・。


 怒りに身を任せる姿、それはもはやその顔は今までモルドレッドが憧れた英雄の顔ではなかった。


「何も知らねぇガキは俺の言うことを聞いてりゃいいんだよ!」


 身体を丸めて痛みに耐えるモルドレッドに容赦なく怒りのこもった足は振り下ろされる。

 そこに女の子だからとか、子供だから、といった躊躇ちゅうちょや気遣いは無い。

 頭、顔、腕、足、身体、全てがラムゼスの怒りの標的である。


 そして粗方あらかた蹴り終わった後、ラムゼスは大声で言った。


「お前みたいな何も出来ないガキは、黙ってオレ様に憧れてりゃいいんだよ!!」



            ×               ×



 扉1枚を隔てた先で震えがだんだんと大きくなっていく。

 既に笑っていたはずの口元は、その時には笑っていなかった。

 ライオネルは音にならない声で呟いた。


「ヤバイ、これ、本当にヤバイ」


 最初はファルヴィさんの『殺す』もただ言っているだけかもしれない、脅しの材料として言ってるだけで本気ではないのだと、もしくは姉の事だ今回も切り抜けるんだろ、と根拠の無いあわい希望持っていた。

 しかし、母親譲りの綺麗な顔も容赦なく蹴り付けるラムゼスさんの姿にわたしは確信した。


 このままここに居たら、わたしも殺されるかもしれない。


 いや『かも』なんてあやふやな想像ではなく、間違いなく見つかって殺されるだろう。

 もう彼らの中で八百長の事を知った人間は殺す対象になっている。

 つまり、姉の情けない姿が見たいなんて言ってる場合じゃない。


「逃げなきゃ」


 姉はどうする?


「決まってる」


 姉は逃げるなんて選択はしない。

 わたしがどんな説得を試みたところで時間の無駄だ。

 いや、そもそもあの4人から正々堂々逃げるなんて無理。


 姉は無理でも1人なら逃げられるかも。


「姉は諦めよう」


 そもそもわたしが姉を助ける道理は無い。

 自業自得、見る目が無かったんだ。

 だって、わたしは最初からあの4人を信じてはいなかった。

 自分勝手の末の結果だ。


「自分だけでも逃げよう」


 わたしは逃げるために闇に慣れきっている目で周囲を見回す。

 すると、もう聞くことがない無いと思っていた姉の声がした。


『オレと勝負しろ。オレが勝ったら八百長やおちょうを認めて優勝を辞退しろ、オレが負けたらこの事は黙っておいてやる』


 うそでしょ…。

 まだ楯突たてつくの?


 逃げるための足は、わたしの意志とは真逆にもうしばらくここに留まることを選んでいた。



閲覧ありがとうございましたm(_ _ )m


もう年末か…、最近1年が経つのがやけに早く感じる。。年かしらw

ではまた次回お会いしましょう(^_^)/~

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