21 3日目 - 午前(3)
クリックありがとうございます(☆´Ⅴ`)ノ゛小さい時流行ったハイパーヨーヨーの得意技は「ムーンサルト」ひとりぼっちの桜ですw
今回のお話は前回の1回戦に引き続きファゴット際の決勝の2回戦、これもまた前回に引き続き少しページ数がかさんでしまいましたが(9ページ)、どうぞご覧くださいませ♪
【第二試合ラムゼスVSクロト】
その魔道具は”まるで押し寄せる大波”のようだった。
第1試合、ファルヴィさんとスレインさんの魔道具も驚いたけど、今、目の前で起きている現象は既に前試合の2人の魔道具とは異質な…いや2人の魔道具より数段上位の力を持っていることは誰の目にも明らかだった。
おおー、とどよめく場内。
わたしも自然と賞賛の声が漏れる。
「何あれ…すごい」
「あれがクロトさんの魔道具だ」
目を丸くするわたしに姉は説明を続ける。
「このプルートでも数個しかない黄金シリーズの1つ。他の魔道具よりも強力で、あのクルウェイ将軍も持ってる」
「そんな凄いのを持ってる人なんだ、クロトさんて」
姉が語る”強力”という言葉よりも雄弁に、目の前の光景がわたしにクロトさんの持っている魔道具の力を思い知らせてくる。
でもクロトさんの強さを知れば知るほど、本当に凄いのはそれを涼しい顔で捌いているラムゼスさんかもしれない…。
× ×
始まりはこの言葉からだった。
戦闘の開始を告げる銅鑼の大音と共に左手の甲に備えられた黄金の篭手を前に突き出すクロトさん。
《僕に従いし16の軍勢、その先兵たる8名よ、我が前にいでよ》
そして行使される能力。
クロトさんの前方の空間がぐにゃりと歪む。
するとそこから『ガチャリ』という鎧特有の金属音を地面に響かせながら出てくる黄金の兵士たち、その数8体。
一点の染みも無い鎧を身に着けた彼らはとても神々(こうごう)しく、自分達は生命の持たない存在だと言わんばかりの黄金の肌が特徴的だった。
彼らはクロトさんの前へ。
そして従属を示すように横一列で佇む。
装備は全員同じ、手には簡素な剣と盾、もちろん黄金に輝いている。
クロトさんは眼鏡をクイッと上げると言った。
「さぁラムゼス君、正々堂々、いざ尋常に勝負だよ」
「何が正々堂々だよ、どの口が言ってんだクソが」
× ×
《ゆけ》
主人の命を受けた黄金の兵たちが一斉に動き始める。
そして兵士達は次々とラムゼスさんに剣を振り下ろしていく。
それを丁寧に1つ1つ捌いていくラムゼスさん。
激しい金属音を響かせ両者の剣と剣が激しくぶつかり合う。
卓越されたラムゼスさんの剣技だったが、所詮は8対1。
8本の剣に対して1本の剣で応戦、当然だが数の優位をひっくり返さないといけない。
まずラムゼスさんがやったのは先頭の兵士に蹴りを1発。
そしてすぐにそいつを斬り伏せる。 が、他の兵士たちも斬りかかって来る現状だと踏み込みすぎるわけにはいかなかったのだろう。
その結果、斬られた兵士が反撃するために剣を持つ手に力を入れる。
その時だった。
ラムゼスさんは普通は防御で使う盾で黄金の兵士をぶん殴ったのだ。
「っ!?」
その後も殴打、殴打の連続。
近づいてくる他の黄金の兵士を殴打。
剣よりもむしろ盾による殴打の方が多かったかもしれない。
素手で殴るように盾を使う格闘技なんて見たこともない、少なくとも騎士学校では教わらない。
おそらくだけどラムゼスさんのオリジナルなんだろう。
たまらず黄金の兵士の1体が刃を振り上げた、少しの隙だっがのだったのだろう。
が、ラムゼスさんは見逃さなかった。
振り上げたと同時に首を一閃、頭部が吹き飛ぶ。
そして背後から襲い掛かろうと今まさに剣を振り上げた兵士に、その程度の実力で差が埋まるか、と言わんばかりに振り向きざま盾で横顔を殴りつける。
床に転がった兵士、青天井を見上げる間もなくラムゼスさんは剣を胸部に向かって突き刺した。
2体撃破。
黄金の兵士たちはまるで煙のように消えていった。
「ラムゼスさんってめちゃくちゃ強い。一瞬で2体」
残り6体、2体減ったことでの意味は大きく、1体、また1体倒す。
黄金の兵士達は決して弱いわけではない、むしろ強いと言っていいだろう。
少なくとも騎士学校の実地訓練で見た中堅クラスの騎士ぐらいの強さはあると思う。
しかし今もまた1体、ラムゼスさんの盾によるアッパーからの首元への剣の切り上げで消え去った。
これは単純にラムゼスさんの戦闘力が秀でてるってことだろう。
ただ、絶命時に苦しむ素振り1つ見せずに消えていく兵士達、そして間近で起こる仲間の死に怯えるどころか怯む事無く他の黄金の兵士たちがラムゼスさんに向かって行く姿はどこか気持ち悪かった。
そして遂に半分を越える5体目をラムゼスさんは倒した。
残り兵士数3。
するとクロトさんは離れた位置でこう言った。
《僕に従いし2人のナイト、いでよ》
「うそ!?次は馬に乗ってるのが出てきた!」
次に出現したのは黄金の馬に乗った2体の騎士だった。
雄雄しく馬に跨る騎士。
手には大きなサーベルを持っていた。
なぜ騎士と称したかというと、先ほどの黄金の兵士が持っていた剣や盾はもちろん、装備が一般兵の物と違って上等だったから。
鎧の上に羽織られたマントがひらひらと風に舞う。
「せっかくラムゼスさんが5体も倒したのに、これだとプラス2体されて残り5体、しかも追加された2体は馬に乗ってるって」
どう考えても反則だ…。
しかしそれでは終わらなかった。
クロトさんの余裕のこもった声は続く。
《続いて命ずる、僕の為に倒れた5名の兵士よ、再び度いでよ》
消え去った5人の兵士達が再び何も無い空間から現れる。
彼らは先ほどラムゼスさんに殺された、、まぁ死の概念があるかは分からないけど。
でも何事も無かったかのように剣を構える。
傷はもちろん無し。鎧にも傷無し、無傷。
「えぇぇ!?そんなんありぃ?」
驚くわたしに姉は言う。
「因みに驚いてるみたいだけど、クロトさんのアレ、まだ4種類ぐらい控えてるから。そして最初に出てきた8体の兵士が一番弱いから」
「…………」
絶句です。
もう、意味分からない。
そんなのもう反則じゃん、1対1って何?
正々堂々、という言葉に最初ラムゼスさんが悪態をついた訳が分かった。
「それにしてもクロトさんの服装って一昨日の酒場とほとんど同じだね」
さっき戦ったファルヴィさんとスレインさんも当たり前だけど、各々(おのおの)の装備を着けていた。
目の前で戦っているラムゼスさんは剣に盾、軽装備を着けている。
だがあのクロトという男の人は一昨日酒場で会った服装そのままに、装飾品を追加し”私は貴族だ!”という自己主張の強さを思わせる、気品ある舞踏会に居てもおかしくない服装だった。
申し訳無さそうに腰に差されている剣が、一切振るわれない事を嘆いているようだ。
疑問を含んだ声に直ぐ横に居る姉が「あ~それはな」と説明を始めた。
「クロトさんは毎回あんな感じなんだよ」
「あんな感じって…普段着?」
姉は頭を掻きながら再度口を開いた。
「前回も、前々回もファゴット際では剣も使わずに魔道具の力だけで勝ち上がってくる感じの人だから、ぶっちゃけ服装なんてなんでもいいんじゃないかな~?腕に着けている金の篭手さえあればいい、みたいな」
「ええ~」
姉が冗談を言っているようには見えない。
周囲の観客もクロトさんの服装を不思議がっている様子も無い。
つまり、事実ということだ。
あの人は武闘大会という名称の大会にも関わらず毎回、ほぼ私服で出場する。
「凄い人だね」
人の目を気にしない勇気っていうか…うん。
これに関しては少し見習ってみたいと思わなくもない。
その後、呆然と眺めていると色々と掴めて来た。
馬に乗った騎士2体が歩兵に先攻してサーベルを振るう。
身を乗り出してサーベルを振るう騎士。
手の届かない高い位置からの攻撃に受けるでもなく、しゃがむようにして掻い潜るラムゼスさん。
そして2体目の剣を掻い潜ると、そのまま馬の足を切り裂く。
つるりと足を滑らすようにバランスを崩す黄金の馬、そして落ちてくる乗っている騎士。
下で剣を構えていたラムゼスさんが剣先に殺意を込める。
胸に深々と突き刺さる、そしてそのまま頭に向かって切り上げた。
「うへぇ~、人じゃないと分かっていても恐いなぁ」
アレが人だったら流血ものだよぉ。
頭バーンだよぉ。
とてもじゃないけど見ていられなかっただろうな。
「に、しても…」
お姉ちゃんが師匠と呼んでいるラムゼスさん、あの人の体術は確かに他の3人を大きく上回っている。
距離を詰める時の速さ、攻撃を避ける時の足捌き、持っている武器や盾を扱う錬度、どれもがこれまで騎士学校で見てきたどの先生たちよりも上。
「あんなに凄い魔道具相手なのに全然引けを取ってない、それに」
ラムゼスさんは未だに魔道具を”使っていない”
魔道具を使わずに手数において圧倒的な優勢を得れるクロトさんの、あの強力な黄金の篭手からなる魔道具をかわしていた。手にした剣と盾だけで。
ただ、倒しても倒しても、またクロトさんが”新しいのを”増やすのできりが無い。
今も、気がつけば馬に乗った黄金の騎士に歩兵が3人の計4人まで減らしたラムゼスさんだったが、しかしというか、やはり。
《僕に従いし…》
「あ~エンドレス」
次々と出現する黄金の兵士たち。
試合開始から15分ほど経過した。
既にクロトさんの魔道具は激しさを増してリング場はクロトさんの魔道具でいっぱいになっていた。
っていうか黄金の騎士たちが犇めき合っていた。
目がチカチカします。
「あれっ?ラムゼスさんは?」
あまりのクロトさんの魔道具の猛攻にラムゼスさんを見失ってしまった。
お姉ちゃんは…
そっと横を見る。
すると姉も視線と首を泳がせていた。
どうやら姉もラムゼスさんの姿を見失ってしまったようだ。
まぁ、でもそれも致し方ないのかもしれない。
だって、、、
「リングの中がほとんどスレインさんの魔道具でいっぱいだもん」
「ライオネル、師匠いたぞ」
「えっ、ほんと、どこ?」
流石は姉、観客の人より先に見つけるとは。
そう思って指差される方向へ視線を向けた。
その時だった。
黄金の騎士たちに紛れ込むようにしてクロトさんの影まで忍び寄ったラムゼスさん。
とん!と、背中を押されるような見事な一撃だった。
だけど決して弱いわけではない。
一刀両断。
その言葉がよく似合うような一撃だった。
もしも彼が剣を手にしていたなら、間違いなくクロトさんの首を落としていただろう。
でもラムゼスさんの手には何も握られていない。
手にしていた剣は腰に。
鋭利な手刀、ゆえに意識を断たれて倒れこむクロトさん。
「うわぁ凄いな。あんなに綺麗な手刀初めて見たよ」
因みにわたしは手刀は出来ません。
あれは見た目以上に結構、難しいのです。
もちろん手刀が出来る主席の姉が続いて言った。
「手刀もそうだけど、クロトさん、魔道具で兵士を生み出しすぎたな、こんな狭いリングに10体以上って…同士討ちしてくれって言ってるようなもんだよ」
術者を失ったことで存在ごと薄れていく黄金の兵士たち、そしてそのままリングを埋め尽くされていた彼らは1体残らず消え去った。
リングから避難していた審判の女性が足早にリング上に戻ってきた。
「勝者!ラムゼス卿!!此度決勝、最終試合に進むのはファルヴィ卿とラムゼス卿に決定しました!!ラムゼス卿は大会5連覇もかかっております!最終試合は今からきっかり1時間後!!皆様、どうぞお楽しみにしていてくださいませ!!」
下馬評通りラムゼスさんが勝ち残ったことによって、クルウェイ将軍以来の5連覇が真実味を帯びたのだろう、アリーナ全体のボルテージは最高潮を迎えていた。
「うぅぅ周りの歓声がうるさい」
でも何で…
「何でラムゼスさんは一度も魔道具を使わなかったんだろう?」
第1試合ではそう数は多くないものの、ファルヴィさんもスレインさんも魔道具を使っていたっぽかった。それに今のクロトさん何て魔道具しか使ってなかった。
それはやっぱり使用の程度に差はあれど、使わないと勝てないと考えたからだろう。
でもラムゼスさんは使わなかった。
「どう考えても魔道具を使ったほうがいいような…」
怒号のような声援の中、小声でそう口走ったわたしの言葉を姉はあっけらかんとした顔で返す。
「使ったら一瞬で終わっちまうからだろ」
「え?それは…いい事じゃない、の?」
「師匠の魔道具はすっっごっっい!スピードで動ける魔道具なんだけど、本気でそんなの使ったら試合がすぐ終わって興醒めになるから使わないんだよ。この大会は皇帝陛下も見てるし」
当たり前だろ、という顔をする姉。
まぁ確かに言われてみればこの試合って皇帝陛下も見てるんだっけ。
直ぐに試合が終わったら興醒めか…。
見栄えも大事ということか。
「強くなりすぎるってのも大変なんだね」
「そりゃ師匠は最強だからな」
「あ、ああ、うん」
そしてインターバルを1時間ほど置いて、遂に決勝戦が始まろうとしていた。
【決勝ラムゼスVSファルヴィ】
閲覧ありがとうございました<(_ _*)>
パワプロ・サクセススペシャルにて遂にダン&ジョン高校、通称「ダンジョン高校」が追加されましたね。しかし私はというと…どうやら、ひとりぼっちの桜にはダンジョン高校は合わないようです(>_<)2回やってもうお腹いっぱいだよw
早く「天空中央高校」来ないかな~(・ω人)”))




