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魔女と呼ばれた少女 -少女は死体の山で1人笑う-  作者: ひとりぼっちの桜
【第6章】 3日物語(裏)

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09 1日目 - 午後(3)

クリックありがとうございます<(_ _*)>

今日が誕生日だったひとりぼっちの桜ですw


せっかくの誕生日だし、なんかそれっぽい事したかったので押入れにしまっていたwiiを引っ張り出してピザ&ゲームパーリィ~♪をやってみました(笑)

任天堂スイッチには未だ未練はありますがwiiも良きゲーム機ですね(○´∀`).。o

でね、ピザ片手に昔買ったマリオパーティーをやったんですけど凄く面白かったです(^^昔のゲームも馬鹿にできませんねw皆様も誕生日の際には是非やってみてね☆


え?誰とやったかって?

…マリオパーティーって1人でやるゲームじゃないんですか?



今回のお話ですが、、すいません(><;;10ページ越えてしまいました!て言うか15ページ(ボソ)当初、半分に切る事も考えたのですが、これは切ると流れが悪くなる、と思ったのでそのままアップすることにしました(>_<)汗

因みに今回のお話は「【第5章】 3日物語(表)の06 1日目 - 午後(3)」を読んだ後に読むと更に面白くなるような仕掛けをしているので、よかったら先にそちらを読んで頂けると嬉しいです。


では長い前口上になってしまいましたが、今回のお話もどうぞお楽しみください♪



 ――うそだろ

 ――気のせいだよな

 ――何かの間違いだ

 ――ありえない


 それは”ありえない人間”からの予期せぬ発言で得た感想であった。


 ………

 ……

 …


 浮かれた雰囲気など一切無く、周囲を満たす絶望感。

 4人はうつむき、視線は自然とテーブルの木目を数える。

 足は地面に引っ張れているかのように重く、たまに聞こえるのは身体に溜まった疲労を吐き出すような長く重い溜め息。


 いつものように酒場ディーンに集まった4人。

 昼前、褒美という名の恩恵を得る為に意気揚々と城に向かって踏み出した1歩、あの軽やかな足取りが今ではとても愛おしい。


 運ばれた料理は手付かず、その代わりにあるのは『不安』『怯え』という精神的ストレスから来る「ハァ~~」という長い溜め息の連鎖だけ。


 彼らにとって今日という日は激動の1日であった。

 皇帝陛下の呼び出しで王の間へ、なぜかそこにはマリアンヌ第一皇女の姿が、その美貌びぼうに見惚れる間もなく言いつけられたクルウェイ将軍との試合、茫然自失ぼうぜんじしつの4人特にラムゼスだったがマリアンヌが言った試合相手の変更、変更相手はカーナという女。


 そして…

 そして…

 放たれた発言


 長く続いた沈黙。

 やがて根負けしたかのように沈黙を破ったのは今回の御前試合の主役、額を押さえたい衝動にかられながらも視線を上げたラムゼスであった。


「何で知ってるんだ、皇女殿下は?」

「そんなのオイラが聞きたいよ!いい値を払うから誰か教えろ!」

「ファルヴィ君、前からずっと言いたかったんだけど、金で何でも解決出来ると思うその考えはそろそろ改めたほうがいいと思うんだ」

「金で解決出来ないならこの世はもうお手上げじゃんか!」

「ちょっ!3人とも声が大きいぞ。下の階の人に聞かれる、昼と違って今は客がいるんだぞ」


 本来ならこの場において話題となるのは、昼会ったマリアンヌのことになるはずだった。


 王の間におもむいた4人、まさかそこに居るとは思っていなかったマリアンヌという存在。

 膝をついていた自分達に近づいてくるマリアンヌ。

 めったに表に出てこない皇族であり、美の化身とさえ思えるほどこの世のものとは思えないほど美しい外見。

 一歩、また一歩、近づいて来るごとに黒いドレスと銀に輝く髪がふわりと宙を舞う。

 そして少し手を伸ばせば触れられる距離、白い首元に心が奪われた時であった。

 マリアンヌの黒く塗られた唇が音を紡いだ。


 《要求を飲まねば八百長やおちょうをバラす》


 その時放たれた言葉は4人の身体を硬直させた。

 正直な話、そこから先は全員の記憶が曖昧だった。


 自慢のモミアゲをさすりながらラムゼスは心配そうな表情で言った。


「俺たちの演技が下手だったか?」


 ゴクリと唾を飲み込むファルヴィ。

 即答にて返す。


「ははは、もう2年以上やってるんだぞ、何試合やったか考えてみろよ。それならもっと早くに誰か他の人間に指摘されているな、それに事前にオイラ達は毎回あれだけ練習してるんだ、倒れ方、魔道具の発動タイミング、完璧、例え相手がクルウェイ率いる近衛騎士団だったとしても騙しとおせる熟練度だったはず」


 見破れるわけが無い。

 今まで裏カジノにおいて数々のイカサマを見抜いてきたファルヴィ、その自分がイカサマを仕掛ける側になった、ならばそこに些細であろうがミスなどあろうものか。


「そもそもマリアンヌ皇女殿下は城からほどんど出られない方だ、俺たちが八百長をやってきたアリーナに来たことすら無いはず、試合を見てもいない人間がどうして八百長を見破れる?」

「ならハッタリか?皇女殿下は俺たちにカマをかけようとしたのか」

「そうだ!いっその事、実際に聞いてみてはどうだろう?僕の力を使えば謁見えっけんの許可ぐらい取れるかもしれないよ」

「ははは、笑えない冗談だなクロト。何て聞くんだよ?”八百長やおちょうの証拠でも有るんですか?”って聞くか。そんな事言ってみろ、相手は皇族だぞ証拠を偽造される可能性もあるから止めろよ、絶対だからな! それとラムゼス、カマはもう謁見えっけんした時かけられて、既にかかってんだよ、皇女殿下はオイラたちに話しかけた後、俺たちの…特にお前のあの反応で確信したはずだ、八百長をしている事実にな」


 ああー確かに、とうなづき納得するラムゼスとクロト。

 クロトはラムゼスの方に顔を向けると眼鏡をクイッと上げた。


「しかし、物は考えようだぞラムゼス君」

「あ?どういうことだよクロト?」

「だってあのままだったら君はクルウェイ将軍と戦わなければならなかった」

「で?」

「そうなったら名誉もへったくれも無いぐらいボコボコにされてたじゃないか」

「うっせぇな!!」


 思わず苦笑するファルヴィ。


「ははは、お前らのそういう会話ほんとなごむわ~。そういえばラムゼス、魔道具の交換、何のために皇女殿下はあんな事を言ってきたんだ?」


 曖昧に太い首をかしげるラムゼス。


「いや、俺に分かるわけねぇだろ」

「だろうな」

「だろうな!?」

「スレインはどうみる?」

「可能性は…3つあるな」


 スレインはキリキリと痛む胃の辺りを押さえながら


「まず1つ目の可能性、10英雄が持っていた魔道具が弱かったらこれを機に交換したかった。 詳しくは知らないが今皇族内では次期皇帝争いが行われているらしい、もしマリアンヌ皇女殿下が他の兄弟たちに勝つために自身の陣営の戦力を増強したいならうなづける可能性だ」

「でもさスレイン君」


 話の腰を折って申し訳ないけど、と付け加えてクロトは口を開く。


「アトラスの10英雄が持っている魔道具が弱いなんてことあるのかい?」

「……ラムゼス、ファルヴィ、2人はどう思う?」

「実際に10英雄なんて会ったことねぇけど、たぶん弱かぁ、、無いだろうな」

「ははは、右に同じ」


 スレインも同じ意見なのだろう、即可能性を切り替えた。


「じゃあこの可能性は無いな、では2つの可能性、その魔道具がどうしても欲しかった」

「ラムゼス! も…もしかしてと思うんで聞くけど、その魔道具凄く高価なんてことは」


 なわけねぇだろ、という顔で見返すラムゼス。

 スレインは補足する。


「ファルヴィ、皇族の人間がお前と同じように物の価格をいちいち気にするわけがないだろ。それにクロトの黄金シリーズならともかく希少価値としてラムゼスの魔道具は他よりどうこうっていう品物じゃない」

「ということは皇女殿下はこう考えてるわけか『例え10英雄の使っていた魔道具を失ったとしても手に入れたい能力がその魔道具にはある』と」

「そう…なるな。失ったとしても全く問題ない、それだけの能力的価値がそれにある、、ことになる」


 自然と全員の視線は机の上に無造作に置かれたナイフに向う。

 少し大振りのナイフはむきだしで刃先がテーブルに突き刺され鈍い光を放っていた。


「ラムゼス君の魔道具の能力って確か…」

「直線上の超加速する、だったはずだ」

「ははは、前から言おうと思ってたんだけさ~ラムゼス。 お前の魔道具って弱くない?」

「弱くはねぇよ!」

「ラムゼスの言う通り”弱くない”と思うぞファルヴィ。実際、奇襲の類の作戦なら上位に位置する魔道具だろう」

「良く分かってんじゃねぇかスレイン!ファルヴィ、スレインの言葉を良く聞いとけよ」

「ただラムゼスには合ってない気はする」

「えっ!マジ…で?」


 スレインはスッとラムゼスのナイフを掴むと刃の部分を窓から差し込む夕日の明りにあてがいながら言った。


「この魔道具の使い手に一番求められるのは体感だと思うだ。急加速して止まったときに自分の体制を戻すバランス感覚、お前はそれを無理矢理力ずくでやってる感じがする、だから俺たちと戦った時にも隙が生まれて反撃するだけの猶予が生まれる。ファルヴィが弱いと感じたのも魔道具で十分対応出来る、反撃出来ると感じたからだろ?」


 そのと~り♪、とファルヴィは空笑う。

 そして付け加える


「そもそもさ~それを手足のように使いこなせる人間がいるかも分からないのに、わざわざ10英雄の魔道具と交換してまで欲しがる理由が無いだろ」


 ファルヴィは言う、だから2案も棄却だ。と。

 そして続けて3つ目は?とスレインに問いかける。

 するとスレインは


「最後の可能性だけどな、これが一番可能性が高いと思ってる」


 静かな瞳のスレイン、奥に宿る思考、その回転率を更に加速させる。


「魔道具なんてどうでも良かった、皇女殿下があの場所で言ったとおり自分の従者であるカーナという女とラムゼスを戦わせたかっただけ。魔道具の交換を持ちかけたのはラムゼスが話に乗ってくるようにするための餌。それ以上の理由は無い」

「そこまでして俺と戦って何のメリットがあるんだ?」

「大会5連覇、ラムゼスに自分の従者が勝つことで皇帝争いが有利に動かすことが出来るから…ぐらいしか思いつかない。それでもカーナがラムゼスに勝ったら10英雄の持っていた魔道具を失うことになるから交換条件としてはマイナスな気がする。だから腑に落ちない」

「ははは、でもさ、それは逆にそれだけ皇帝争いが切羽詰った状況だとしたら有り得るんじゃねぇの?」

「可能性は高くなるな。10英雄の持っている魔道具でも”たかが魔道具”、と割り切ったとしても納得できる。でもな…」


 そこまで言うと少しだけスレインは記憶を辿だとる。

 思い出そうとするのは、もちろん王の間での1コマ。

 マリアンヌの悪魔のような一言。

 意図せぬ場所からハンマーで頭をぶん殴られて消去した記憶。


「みんなに聞きたいことがあるんだ」


 そしてぼやのかかった欠片を1つずつ拾い集めるように言葉を紡ぐ。


「いや…ちょっと八百長やおちょうのことを皇女殿下に言われてから、どうも前後の記憶が曖昧なんだ。あのさ、みんなあの時、皇女殿下は最初”この勝負において彼女にも旨みがないと”みたいなこと言ってなかったか?」


 一瞬戸惑う3名。

 その後、『え?言ったっけ?』と、視線を飛ばす3人。


「記憶が曖昧で断言できないんだが、その後、急に交換の話になった気がする。。そうだった場合」


 考え込むように黙る。

 そして


「俺の一番可能性が高いと言った最後の3つ目の予想は完全に外れる。そしてその場合は…ラムゼス、皇女殿下の目的はお前とカーナを戦わせる事なんかじゃない。この魔道具って事になる」


 スレインは手にしていたラムゼスの魔道具をラムゼスの前に置いた。


「そしてこれを是が非にでも奪いに来てる」


 雲の上の存在である皇族、その1人が一介の騎士である自分の魔道具を奪いにきている。

 そんな現実味の沸かない話にラムゼスは胡乱うろんな瞳で口元に手を当てる。


「なんで、これ…を? 俺、たぶんだけどこれ使ってる所、皇女殿下に見られたこと無いと思うぞ」

「だからそれは分からないって言ってるだろラムゼス、情報が少なすぎる。因みにファルヴィの意見は?」

「オイラの?お前以上の考察なんてオイラには出来ないぞ」

「いいんだ、お前の意見は俺が物事を考える上で参考になる。今は出来る限り多角的な意見を聞きたい、思いついた事があるならなんでも言ってくれ」

「僕の意見は聞かないのかい?スレイン君」

「お前の意見なんて参考になんねぇよ。そんな事より俺の考えによるとだな」


 良い事、思いついた!!と、いう顔をするラムゼスとクロトにスレインは「うんうん」と同情のこもった視線を向け


「いや、お前達2人はいいよ。おとなしく座って、できれば黙っていてくれ」

「「なんでだよ!!多角的な意見って言ったじゃねぇか!!」」


 無慈悲な戦力外通告を受ける2人を尻目にスレインは再度ファルヴィに言った。


「ファルヴィ頼むよ、必要なんだ」

「オイラの推理はスレインのと違って勘に頼る所が多い。参考にはならないと思うんだけどな」


 それでもいいのか?と、問いかけてくるファルヴィにスレインはそれでもいいと先を促す。

 するとファウルヴィはサイズの合っていないぶかぶかの袖で宙に適当な絵を描きながら言った。


「率直に言ってヤバイ気がする」

「ヤバイ?」

「話の流れがスムーズ過ぎる気がするんだよな」

「スムーズ…、予定調和って事を言いたいのか?」

「ああ、特に王の間で皇女殿下が試合の話を持ち出してから試合が決定するまで流れ、オイラたちの八百長の試合みたいだ、練りこまれてるそんな感じだな。今オイラたちがこうやって話している事自体も誰かの手の平で踊らされているだけ…そんな気すらしてくるよ」

「それは言いすぎだろ、確かにマリアンヌ皇女殿下のことは色々噂では聞くけど流石にそんな」


 ラムゼスは無理矢理、口元を笑わせる。

 だが内心穏やかではなかったのだろう、ちまたで噂される魔女という噂、額は冷や汗がじんわりとしたたっていた。


「例えばだけどなラムゼス。例えば…これがオイラの得意なポーカー、ブラックジャックのたぐいのゲームだった場合なら、間違いなくオイラは勝負を降りる、自分がどれだけ有利な手札だったとしてもだ、オイラの勘が言ってる、これは”負け試合”だ」

「じゃあ降りるっていうのも選択肢として入れてみてみたらどうだろう?」


 ファルヴィは視線を窓へ向けた。

 夕日はとても綺麗だった。


「クロトよ~、馬鹿は休み休み言えよ。オイラ達は今マリアンヌ皇女殿下に首元にナイフを突きつけられている状態なんだぞ、どんな要求であろうが飲むしかないんだよ」


 そう、不正をバラされたら自分達は罪に問われる。

 極刑すらも十分ありえる。

 全てを失う。

 だから3人は納得するように各々頷いた。


「勝てるのか」


 4人の内の誰かが呟いた。


 しかし当のラムゼスも含めて誰も答えない。

 しばらく沈黙だけが横たわった。

 そして更に時間を置いた後、ファルヴィが重々しい口調で


「ははは、相手が魔道具を持たない、しかも女、普通に考えればこっちに負ける要素は無いな」

「でもファルヴィ君、こっちも魔道具が…」


 クロトはそう言うとラムゼスを見る、遅れる形で残りスレイン、ファルヴィも追従する。

 そして代表する形でスレインは恐る恐る質問した。


「一応聞いておく、ラムゼス。魔道具の方は…」


 ラムゼスは黙って首を振った。

 スレインは重ねて問う。


「まったくか?」

「ああ。最近になってからは更に酷いな、正直勝負とか関係なくこんな魔道具と交換してくれるっていうなら誰でもいいから申し出を受けたいぐらいだ」

「そう言えばあのカーナとかいう女、10英雄を1人倒したって言ってたが」

「クロトぉよ!」


 ラムゼスの怒りのこもった視線がクロトに刺さる。

 急ぎ弁明べんめいするクロト。


「いやいや!そんな女の話は兄達からは聞いていないぞ!」

「本当だろうな?」

「本当だとも!僕が聞いたのはダイアル城塞をマリアンヌ皇女殿下率いるムンガル隊が勝利したということだけだ」

「たぶんそれは本当だろう」


 スレインの透き通った美声、だけど今日この時ばかりは相当冷たい声。

 彼は自身の情報を整理するように淡々と語る。


「側で聞いていた、皇帝陛下、大臣の両人がその話を皇女殿下がおっしゃった時に驚いていた。ということは、まだその情報は末端まで降りてきていないと考えたほうがいいだろう、いくらクロトの兄の1人が皇帝直属の近衛兵の1人だとしても情報を得ていたとは考えづらい、つまりその弟であるクロトは知らなかったと考えられる」

「スレイン君の言う通りだ、分かったかなラムゼス君。いつもいつも僕に責任を負わせようとするそいうとこは君の悪いところだと僕は思うよ!」

「分かった分かった、悪かったよ。今後は気をつけるよ」


 まだ手の付けられていない豪勢な食事をただボーと眺めるファルヴィ。


「で、話を戻したいんだけど、カーナって奴の実力だけど…。魔道具無しで勝ったらしいけど、、、ぶっちゃけカーナ誰だ?」


 その問いにおぼろげにだが答える事が出来たのはクロトであった。

 彼は自身の名家と呼ばれるその家柄から得た情報を口にする。


「確か…あの一件でそんな名前を聞いた気がするよ」

「あの一件?」


 余りにもぼかした言い口に明確に言えよ、と眼を細めるファルヴィ。

 するとクロトは、周囲に視線を泳がせ、そして口の前に手を置いた。


「アンジェラ皇女殿下の…」


 とだけ言った。


「あっ…そう、なるほど」


 もちろんこのプルート内において緘口令かんこうれいのようなものが引かれているわけではない。

 しかし、その案件については立ち入ってはいけないというのが近頃のプルート内の暗黙の了解になっていた。

 そしてその結果、カーナという人間はプルート内においてはまだ無名に等しい存在だった。


 クロトは続ける。


「何かその一件…事柄?で、その名前を聞いた気がする」

「あ、うん、なるほど、もういいぞクロト、その話止めよう。それで問題はカーナが強いかどうか、それだけだ」


 無茶な話題変更だったが全員、阿吽の呼吸で納得。

 全員察した。


「でもだよファルヴィ君、皇女殿下はまぐれで勝ったみたいな事を言ってなかったかい?」

「クロト、お前はまぐれで10英雄に勝てるのか?」

「不意打ちとかじゃねぇの?」

「ラムゼス、お前は不意打ちで10英雄に勝てるのか?」


 渋い顔をする両名。

 それを見兼ねたのだろう、スレイン。


「そもそも聞いた話だとアトラスにおいて10英雄になる条件は領土内において別けへだてなく強い順だそうだ。そこに血筋やら家柄やら、生まれは含まれない、万全ばんぜんたる実力至上主義。我々と同程度の国土を所有するアトラス、そのトップ10人の1人、そんな人間が不意打ちを喰らうとは思えない」

「単に弱くなっただけじゃねーの?アトラスなんて田舎に住んでるイモ野郎共が俺たちのプルートといつまでも同列の力があるなんて思えねぇな」


 弱体化してるのでは?というラムゼスの問いに、「いいや、それは無い」と、スレインは直ぐさま否定する。


「それなら既にプルートがアトラスを攻め落としている。100年に1人の逸材いつざいとまで言われるクルウェイ将軍。プルートの至宝しほう、少なくともクルウェイ将軍が健在である現環境を考えると皇帝陛下がアトラス攻めをしない理由は無い」

「そりゃ…そうだな」

「確かに」

「ははは、てか、ちょっと前に10英雄の誰かが城を落としたという報告があったそうだし、弱いわけないだろ」


 常識考えろと吐き捨てるように笑うファルヴィ。


「導き出される結論は10英雄は未だにその力を保っている。にもかかわらず、カーナという女は10英雄の一角を落とした、しかも魔道具無しで。どうやったんだろうな?」


 不意打ちでもなく、弱くなってもいない、おまけに魔道具も使用していない。

 そのちぐはぐな、なぞなぞのような問題に解を出したのはファルヴィであった。

 彼はその小さな身体で言った。


「魔道具を使用したのか」


 何を言ってるんだ?とクロト、ファルヴィの両名。


「何を言ってるんだファルヴィ君、今それは無いって結論になったじゃないか」

「ファルヴィ、背が小さいから栄養が脳までいってないんじゃないのか?」

「ははは、馬鹿はお前らだよ。皇帝陛下の前でアレだけの啖呵たんかを切ったんだ、今さら使いたいなんて言えるわけが無い。そんなこと分かってるわ。少なくとも見える形でな、、そういう事だろスレイン?」


 その通り、スレインは頷く。


「つまりスレイン君はカーナ、いや皇女殿下は10英雄討伐時も秘密裏ひみつりにカーナに魔道具を持たせている可能性があると考えているわけか」

「俺はそう思っている。そしてマリアンヌ様のあの啖呵たんかぶりを考えると、その魔道具は少なくとも見破られない自信がある魔道具」

「見破られない自信がある魔道具って何だよ!魔道具はだいたい使えば目立つだろ」

「色々あると思うけどな、例えば気付かれないように毒を散布させることが出来る魔道具とか」

「ラムゼス君、明後日毒殺されるのか」

「されねぇよ!息止めて戦ってやるよ!」

「ははは、2人ともスレインは例え話をしてんだよ。実際に1対1で戦ってるところでラムゼスが急に倒れたら不自然すぎるだろ、それと使うとしても1度か2度、それ以上は使わないと思うぞ」

「何で1度か2度?」

「バレたら皇女殿下も終わりなんだろ?だったら1度か2度だ、それ以上はリスクが大きくなるだけだ」


 じゃあ1度か2度防ぐか避ければいいのか、と安堵の息を漏らすラムゼスにファルヴィは逆だよ、と首を横にする。


「1度か2度、それだけで10英雄を殺す事ができる魔道具だぞ。しかもその魔道具は気付かれずに発動でき、発動中ですら周囲から気付かれづらいと考えれる、オイラだったらこれ以上に恐い魔道具は無いな」

「ファルヴィこれぐらいにしよう、これ以上うだうだ話し合ってもあちが明かない」


 一口、水を含むスレイン。

 だが言葉とは裏腹うらはらに不安がお腹にきているのだろう、少し苦しそうにお腹をさする。


「今ある情報を統括して一番可能性が高いのは、①マリアンヌ皇女殿下の目的はラムゼスとカーナを戦わせる事 ②カーナは何か暗殺めいた魔道具を持っている、の2つだ。皆それだけを頭に入れておけ、先入観を持ちすぎると周りが見えなくなる」


 そして続ける。


「で、今から試合までの間にすることは全員で正体不明の女、カーナという女の出来るだけ細かいデータを収集すること、出身、今まで何をしていた人間なのか、戦闘スタイル、現在どこに住んでいるか、交友関係、好物、何でもいいから取り合えず集めろ。ただしあの”一件”については調べるな、調べている事がバレたら俺たちの命が無くなるかもしれない」

「それは調べねぇけどよ、食べ物の好き嫌いが何の役に立つんだよ」


 スレインは首を即座に振って否定する。


「重要度が高いかどうかは俺が後から判断する、元となるデータが無いことには相手の分析も満足に出来ない、4人いれば何かしらアタリを掴めるかもしれないしな」

「スレイン君、具体的にここでいうアタリってどんな情報なんだい?」

「一番欲しい情報はカーナの使う魔道具の種類だけど…それを掴みにいこうとすると皇族の領域に踏み込む可能性があるから、ここでいうアタリは使う武器なんかだな」


 武器…か。

 3人それぞれが呟く。


「主体として使う武器が剣なのか槍なのか、はたまたナイフなのか、そういったことだけでも事前に分かればラムゼスなら十分に対処できる。そして本番は俺たち3人がアリーナの中で3方にバラバラに分かれて目立つような形でラムゼスとカーナを見よう、そうすれば不自然な事があったらすぐに指摘できる」


 更に念押しする。


「ただし、指摘するときは間違いが無いときだけだ『すいません間違っていました…』なんてこと皇族に対して許されないから確信を持ったときだけだ。マリアンヌ皇女殿下もバレたらまずい状況でそう何回も魔道具を使わせないはず」


 最後にスレインは付け足す。”俺たちの目的は魔道具の使用を指摘することじゃない、使わせないことだ”、と。

 因みに今にも胃に穴が開きそうなストレスからだろう、コップを持つ手は少し、、いや、だいぶ震えていた。


 一方、自分の中で覚悟を決めたのだろう。

 ラムゼスは覇気を持って言った。


「俺はカーナに勝つ、それだけでいいってこったろ?」

「ラムゼス君、それを言ったら元も子もないのでは」

「ははは、でも真理だな」

「ああ、それが一番良い結果だ。そうなるように祈りたい、ほんと、マジで」


 そして後はどうやって各自情報収集するかという方法論を話そうとしたその時であった。古臭い木製の階段を昇る足音と振動が伝わってきたのは


「っ!?」


 真っ先に気付いたのはラムゼス、コンマ数秒遅れてスレイン、ファルヴィ、その後だいぶ遅れてクロトが音の飛んでくる方向に目をやる。


「今の話、聞かれてたか!?」

「いや!店主には常日頃、誰も2階に上げるなと言っている!それになんで盗み聞いてた奴が昇ってくるんだよ!」

「えっ、ええええええ!?」

「スレイン君!ちょ、落ち着ついて!」


 階段を全力で昇ってくる、その人間が話を盗み聞きしていたなら、どうしてその人物はわざわざ昇ってくるのか?

 そのまま逃げればいいのではないか?

 問い詰めるためか?

 はたまた皇女殿下と同じように俺たちを脅すため?

 という事は敵か?


 全くもって状況の理解が追いつかない4名。

 だがそこは曲がりなりにもプルートの騎士、次の瞬間には4人は即座に頭を切り替え、唇を引き締め、ラムゼスを含めて全員が自身の魔道具に手をかけた。


 もしも…話を聞かれていたなら即座に昇ってきた人間を消せるように。


「っ!?」


 凝視した先、飛び出すように階段から出てきた影に4人の目が点になる。

 なぜならそこには立っていたのは1人の少女だったから。


 少女は肩で切り揃われたダークブラウンの髪で真っ直ぐこちらを見てくる。

 とても真剣な瞳。

 そして間を置かず少女がもう1人階段を昇ってきた。


「待って!お姉ちゃん!」


 顔、髪の色も先に昇ってきた少女とよく似ている。


「………」

「………」

「………」

「………」


 どういう事なのか、まだ頭が正常に動かない4人。

 先に階段を昇ってきた方の少女は必死な形相で大きく息を吸い込んだ。


「ラムゼスさん、弟子にしてください!!」


「「「「ヘ?」」」」



閲覧ありがとうございました( v^-゜)Thanks♪

ではまた次回お会いしましょう(^^





遂に来ましたね(T_T)

ええ、8月26日パワプロの日ガチャ、40連ステップアップガチャが…そして新キャラ実装。

その名も「十六夜瑠菜」通称ルナたん←(私が勝手に呼んでるだけですw)


パワプロサクセススペシャル初のオリジナルキャラ、しかもアプリ版でも実装されていない変化球の選手兼彼女キャラ……引くしかないがな┓(´Д`)г=3

現在、私のパワーストーンの数は1044個、40連引く事は可能。

しかも今日、8月26日は私の誕生日、これは運命!☆);゜△゜)これを引かないなんて選択肢があろうものか!


って事で今から引いてきます(^v^ゞ


もしも、万が一、億が一ですが、私が道半ばで倒れた時は皆さん、私の骨は火葬した後、粉砕、ローラにかけて完全に灰にして現在絶賛放送中の「恋と嘘」の真田莉々奈が映ってるシーンで一時停止、灰を画面に塗り込んでくださいm(__)mあの世でりりなと結婚するんだw


では、、ルナたん迎えに行ってくりゅ~!ヽ( @_@)ノ

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