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魔女と呼ばれた少女 -少女は死体の山で1人笑う-  作者: ひとりぼっちの桜
【第6章】 3日物語(裏)

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05 1日目 - 午前(1)

クリックありがとうございますm(_ _"m)ペコリ

先ほど1万人記念の短編をアップしたひとりぼっちの桜です♪


後書きにてタイトルを発表しようと思っているので、ぜひ今回も最後まで見ていただけると嬉しいです(人'w'●)

ではどうぞ~♪



 父の名はムンガル・エクスキュート。

 ちまたでは『鉄壁のムンガル』とも呼ばれ、攻め入るいくさよりも守る篭城戦ろうじょうせんを得意とする将軍。

 魔道具も無しに将軍の地位まで上り詰めた猛将。

 その名を知らない者の方がプルートでは少ないだろう。


 だが少し前、敗戦したという知らせがプルートに届いた。

 そしてダイアル城塞を取り戻すために帰還すぐに再び敗走した兵を率いて出陣するということを父ムンガル自ら聞いた家族。


 年端もいかない2人の愛娘まなむすめにも分かった。

 父は皇帝陛下の怒りを買い、敗北した見せしめとしてダイアル城塞に行くのだと。

 つまり父はもう二度と帰っては来ない。


 妻にとって、娘2人にとって、ムンガルは誇りであった。

 爵位が失われて家や召し使いを失う、そしてなにより父ムンガルという人間が死ぬことの方が辛かった。

 見送る時、妻と妹は泣いていた。

 勝気な姉ですら涙ぐんでいた。


 永久とわの別れ…


 それが数日前、マリアンヌ率いるムンガルの部隊が勝利という知らせが届いた時は家族で抱き合ったほど喜んだ。


 ワクワクして帰りを待った娘達。

 だがマリアンヌ帰還のパレードをえて帰ってきた父ムンガルが開口一番、娘2人に言ったのは「ただいま」ではなく、「騎士学校を退学させた」であった。

 それから今の今まで言い争い、召し使い達が食事の用意をせっせとしている中も言い争い、妻や妹止めようとしても言い争いは終わらなかった。


 ………

 ……

 …


「ふざけんなクソオヤジ!!」


 朝の爽やかな食卓にその声が響き渡った。

 吐き捨てるように凄い剣幕で扉を後にする姉。


「待って!お姉ちゃん! えっと…あの…、ご、ごちそうさまでした!」


 礼儀正しく頭をぺこりと下げて急いで姉を追いかける妹。


「ちょっと待ちなさい!2人とも! まだ話は終わってないぞ!」


 しかし、時、既に遅し。

 ムンガルの呼び止める言葉虚しく、2人の背中は家の玄関を後にしてしまっていた。

 置手紙ならぬ置き暴言を残して。


「うっせぇ!クソオヤジ!誰が待つか!!」


 貴族街の一等地に住む住人全員の朝の眠りを呼び起こすような大声が轟いた。


 ………

 ……


 残された夫婦。

 いつも着ているごつい鎧ではなく上質で高そうな服に身を包んだ服装。

 父、ムンガルが溜め息混じりに椅子に座りなおす。


「まったく誰に似たんだ、あんな言葉遣いを」


 一般市民には手の届かない高価なテーブルに並べられたほとんど手付かずの料理。

 本来なら、一家の大黒柱であるムンガルの帰還を祝してみんなで仲良く笑いながら食すはずだった…。


「あなた…何も退学させることは無かったんじゃない?」


 妻がムンガルに話しかけた。

 やんわりとした、優しそうな声。

 だがムンガルはその言葉に即座、首を振る。


「お前まで何を言ってるんだ」

「だってもう少しで卒業って話ですし」


 だからこそだ、とムンガルは野太い声で続ける。


「あそこを卒業したら、そのまま騎士になるしかなくなるんだぞ。今ならまだ間に合う」

「騎士学校の先生のお話だと、モルドレッドは大変優秀な成績で主席だっておっしゃられていたわよ」


 八方美人の言い口に、敵をつくらなそうなおっとりとした声質の妻。

 ムンガルは荒くなった息を整えながら、悩ましそうに額に分厚い手の平を当てる。


「確かに主席は凄い、当時の私ですら12歳の卒業時に主席にはなれなかった。私に隠れてそれなりの努力もしたのだろう。それは認める」


 そこで少し誇らしそうに口元を緩めたムンガルであった。が、すぐに痛ましい表情に変わった。


「騎士なんて出世すれば金にも名誉にも困らないが、いつ死ぬか分からないものだ」

「そうだとしても、せっかくあなたが生きて帰ってきた日に何も…」

「私はあの子たちに普通の女の子としての幸せを生きてもらいたいんだ。普通に結婚して、出産して幸せになってもらい。騎士なんて…絶対に許さんぞ」

「あなた…」



            ×             ×



 プルートには大きく別けると一般市民たちの住む城下町と主に爵位を持った貴族が住む貴族街がある。

 貴族街にある建物は歴史ある建造物から真新しい物まである、そこは住んでいる人間が爵位を手に入れた時期と同期しているのだろう。

 だた新しかろうが古かろうか、共通している点を上げるとしたら城下町と違って1つ1つの建物自体が大きく敷地が広い事だろう。

 そしてプルートの中央に位置するマリアンヌや皇族が住む城を中心に近いほどその特徴が顕著けんちょに現れる。


 そんな貴族街を2つの影が歩いていた。

 年の頃は2人ともピッタリ12。


「あーむかつく!」


 先行して綺麗に舗装ほそうされたレンガ道を歩くのは姉、名をモルドレッド・クラウン。

 父と同じダークブラウンの髪を怒りを吐き出すようにグシャグシャと掻きむしる。

 肩まで綺麗に真っ直ぐに伸びているショートヘアーの髪が乱れ、ガラス玉のような丸い瞳は剥れる。


「待って、、お姉ちゃん」


 消え入りそうな声。

 前を歩く姉には到底聞こえないような声。


 姉から伸びる影を追い越さないように小走りで付いていく小動物のような妹、名をライオネル・クラウン。

 こちらも父親と同じダークブラウンの髪だが姉と違ってくせっ毛。

 彼女はうつむき、くせっ毛が伸びた前髪の隙間からにごったガラス玉のような瞳を覗かせて前を歩く姉を見ていた。


 父親には似ても似つかないスッと通った鼻筋に整ったパーツが勢ぞろいの顔。

 おそらくは母親のDNAを100%継いだのであろう。

 むさ苦しさは皆無。

 だが2人とも正真正銘ムンガルの実の娘である。

 将来は間違いなく美人になるであろう彼女たち。

 本当に髪質以外は良く似た2人。


 外見だけを見れば良く似ている姉妹。

 でも2人の印象は真逆であった。

 例えるなら『光』と『闇』。


 自信の有る無しでいうなら、姉モルドレッドは歩き方1つを見ても実にハキハキとしていた。一方、妹のライオネルはまるで見えないロープで姉に引っ張られているような、そんな歩き方。

 服装にしても同じような貴族の子供だと判断できるフリル付きの服であったが、妹はそのまま素直に着て、姉は着崩し独特のファッションになっていた。



「10時かぁ」


 遠くに見える時計塔、目を細めて文字盤を見るとまだ午前10時。

 ライオネルは誰にも聞こえない声で呟く。

 勢いで姉と一緒に出てきてしまったから朝ごはんを食べ損ねてしまった。


 そもそもなんでわたしは付いて来てしまったのか?

 というか、昼ごはんはどうするのか?

 お腹減ったな~。


 そんなことに思いをせながら、ライオネルは口を開く。


「どこまで行くの?」

「……」


 無言の姉ははたから見てもイライラしていた。

 後ろからでは見えないけど、きっと今お姉ちゃんは眉間に寄ったシワがヤバイことになってるはず。

 経験上、こういう時はあまり話しかけてはいけない。

 嵐が過ぎ去るのを待つ、それが一番良い。


 少し歩いた。


 そうこうしているうちに、2人は貴族街にある時計塔下の広場に着いていた。

 天気も良く、近々行われる武闘大会も相まって広場には人が結構いた。

 程よい感覚で植えられている木々の隙間から薄っすらと光が差し込みが心地良い。

 出店の準備をしている人もちらほら。


 2人は手入れがしっかりと行き届いているささくれ1つ無い木製のベンチに腰掛けると姉モルドレッドは遂に口を開いた。


「なんなんだよアイツは!」


 この”アイツ”が父親であるムンガルを指していることはライオネルには瞬時に分かった。


「あ、うん、そう、、だね」

「ふざけんなよアイツ」

「う、うん」

「オレたち何かオヤジに迷惑かけたか?」

「いや、別に…かけて、かけてない…かな」

「オレたちの為に退学させた?オレたちの幸せはオレたちが決めるっつーの!」


 とめどない言葉攻めにライオネルはいつものように浅い微笑みを返す。

 これこそ争いごとを回避するために生み出した処世術しょせいじゅつ


「う、うん、そうだね。お姉ちゃんの言う通りだと思う、よ」

「てか!てかだよ!そもそも退学にする前に一言ぐらい何かがあってもいいだろうが!?」


 確かに今朝の父の言い方は一方的なものだった。


『私に黙って騎士学校に通ってたそうだな。昨夜、退学にしておいた。そんなくだらない事をしている暇が有ったら他の事に時間を使いなさい。』


 その一方的な物言いは事後報告でエゴイスティックとも思えた。

 これではこの強気な姉が怒るのも無理はないだろう。


「そ、そうだよね。お、お姉ちゃん頑張ってたもんね」

「オレだけじゃねぇよ、お前だって頑張ってたろ」

「あ、あん、うん」


 わたし頑張ってた…かな?

 主席のお姉ちゃんと違って筆記試験、実技試験、共に最下位のわたしですけど。


「お姉ちゃんは先生達から期待されてたし、ふく…学?頼めるんじゃないの?今から学校行く?」


 姉の事だきっとこの後は上手いことするだろう、そうすればこの件は解決だ。

 幸い、騎士学校は貴族街にあるし、ここからも近い、お昼ご飯には間に合う。


 だがそんなライオネルの楽観的な言葉を姉、モルドレッドは即答で首を振った。


「たぶん無理だ」

「えっ、、な、何で?」

「あのクソオヤジの事だ、オレたち2人が復学出来ないように教師連中に言ってると思うんだよな。言い方としては…私が退学させたあとまた2人が入学したいと言ってきても取り合うな。って感じじゃねぇかな」


 ああ、なるほど。

 確かにお父様ならそうするだろう。

 何て言ったってお姉ちゃんのこの性格を良く知ってるんだもんね。


「先生たちがオレたちの入学を認めたのは、オヤジがオレたちの入学を押しているっていう前提があったからだ。それが昨日の晩にオヤジの了承を得てないことがバレたとするなら、もう教師連中がオレたちの入学を認めることは絶対に無い」


 そして呟くように付け加える。


「もしそれが叶うとするならオヤジよりも偉い奴がオレたちを押してくれたときぐらいだろうな」


 お父様よりも偉い人?

 爵位を持ってる将軍以上って、そんなのって数えるぐらいしかいないんじゃ…


「じゃあ…どうするの?」


 肩をすくめながら、頼りない線の細い身体で問いかけたライオネル。

 しかし姉、モルドレッドはそれを聞いて仏頂面で黙った。

 いつも快活な姉にしては珍しい。

 人差し指を淡い色の唇へ押し当てている。


 ライオネルは心の中で溜め息をついた。


 きっと今お姉ちゃんはわたしの考えつかないような事を考えているんだろう。

 ならわたしは黙って待ってるしかないよね…。


「………」

「………」


 背に感じる木の感触。

 ライオネルは遥か高くに浮かぶ文字盤をチラチラと目の端で追いながら、かすかに鳴る腹の音に肩を落とすのであった。



閲覧ありがとうございましたm(_ _ )m


では短編のタイトルを発表します!

タイトルは「銀翼の戦乙女が夢見た理想郷」です。

小説家になろうの検索画面でタイトルを入力して頂けると見れると思うので、ぜひ読んでみていただけると嬉しいです(^^♪♪



ちなみにたぶん短編を読んだ時、皆様こう思うと思うんですよ(^_^;)

「あらすじに人数とか書いたら、また初見減っちゃうじゃんw」ってw

私も思いました。これ書いちゃうと敷居が高くなって初見の方が見なくなっちゃうだろうな…って。思ったんですよ。書かない方が得だなって…。


でもね、ブックマークや評価を押してくれた人のために書いたって高尚な事を言ってるのに書かなかったら、私が今言ってる「皆のために書いた」←これ嘘にならない?って思ったんです。

本気で今ブックマークを付けてくれている75名の方、評価を付けてくれている9名の方(2017年05月03日現在)の為に書いたのに、私のそういう下心で皆さんの付けてくれた気持ちや、何より頑張って書いた作品を汚してしまう、そう思ったんですよね。。。だから書いちゃったw

どうやら私は自分が思っている以上に不器用な人間のようですねw

あ~あ、人生損してるな、私w

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