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03 4人の若獅子(下)

クリックありがとうございますm(_ _ )m

3ヶ月500円キャンペーンに飛びついて「PS+」に加入した、ひとりぼっちの桜ですw

いや~いいですね♪オーバーウォッチをPS+加入すぐに買ったんですけど、ひとりぼっちの桜初のFPSゲーム、めっちゃ楽しいでござるよ\(◎∇◎メ)/

今の私の趣味はバスティオンを使って敵プレーヤーを蜂の巣にすることです(笑)


では今回のお話もどうぞお楽しみ下さい(^^



 ――どういうことだ??


 ほぼ無傷。

 そう聞こえた。


 今日、下の階にマリアンヌ皇女と共に三日月峠に向かった兵士たちが居るのは知っていた。

 はたして爵位を持っている人間が死んで彼らは『ほぼ無傷』なんて表現を使うだろうか?


”シグレは死んだんじゃなかったのか?”


 そうファルヴィ、クロト、スレインの3人が口にする前にラムゼスは行動に起こしていた。

 2階の手すりから大きく身を乗り出す。


「おい!そこのお前!今の話は本当か!? お前だよ!おお、そう! お前、今ムンガル隊が『ほぼ無傷』って言ったな!それは本当か!?」


 下の階から緊張した青年の声が返ってくる。


「は、、はい」

「あんな戦いでほぼ無傷だってのか!?」

「ああ、はい」


 信じられない。

 三日月峠のダイアル城塞の戦いについては何となくは聞いていた。

 ムンガル将軍が敗戦、完全武装されたダイアル城塞にマリアンヌ率いるムンガル隊が報復戦ほうふくせんに出かけたった1週間足らずで見事奪還した。


 通常攻める側よりも守る側の方が断然有利である事は騎士の常識であり、この軍事大国プルートにおいては子供でも知っていることだろう。

 それを敗戦したばかりの部隊だけを用いて攻略、しかも期間1週間…。

 これを今朝がた聞いた時、ラムゼスは率直にこう思った。


”そんな困難な状況でどうやったら短時間で奪還出来るのか、それが理解できない。マリアンヌ皇女殿下は軍神にでも愛されているのか?、と”


 それだけでも十分理解できないのに。

 それを部隊がほぼ無傷!?

 正直、ほとんどムンガルを含めて部隊が壊滅していても不思議じゃない状況。

 それが無傷??

 まるで御伽噺おとぎばなしを聞いている錯覚に陥る。


 だがラムゼスにはその戦いの詳細よりも先に兵士に聞かなくてはならないことがあった。

 いや、彼だけじゃない。

 ラムゼスの後ろで椅子に座りながらも背もたれにどっしりと座ることは出来ず、聞き耳を立てている3人も足して4人にとっての懸案事項。

 代表する形でラムゼスは問う。


「シグレ卿は…ご存命か?」

「シグレ?」


 見上げる青年兵士は頭の上に疑問符を浮かべる。

 ええい!まどろっこしい!、とラムゼスは声を荒げた。


「何で知らねぇんだよ!? ムンガルの部下にいただろ!」

「おい、ラムゼス!敬称略するな!」


 1階からは見えない2階の奥から聞こえる叱責する少年のような幼い声。

 すると今まで偉そうだったラムゼス態度が少し軟化していった。


「ぐっ…すまん、ファルヴィ。 そこの君、ムンガル将軍の部下にいなかったかな? 黒い髪で肩までぐらいの長さで、たぶん後ろで1つに括ってる、細身だ、あっ、いつも皇族典範を持ってる。口やかまし…じゃなかった、色々口出しをしてくる奴だ」


 よほど早く情報を聞き出したかったのであろう、ラムゼスは喉元まで競りあがってくる焦燥感しょうそうかんを無理矢理押さえ込みながら矢継ぎ早にシグレという男の特徴を羅列していく。

 しかしその内のどれもピンとこない青年兵士。

 だって彼はほとんどマリアンヌしか見ていなかったから。。

 だから首を軽く傾げる。


「分かりませんが、今回の戦いで戦死されたのは爵位の持つ中だと副官のミシバ卿だけだったはずです」

「クソッ!」

「くそ?」

「いや、何でもない。楽しんでいるところ悪かったな、ゆっくりと楽しんでくれたまえ」


 手すりに乗り出した身体を再び椅子に下ろすラムゼス。

 天国から地獄とはまさにこの事。

 テーブルの上で頭を抱える。


「生きてやがるのか、シグレの野郎」

「悪魔が、悪魔が」

「ダメだ…苦笑いも出来ない。ん?どうした、スレイン?」


 常日頃つねひごろ笑みを絶やさないファルヴィですらその顔から笑みが消失している中、今までほとんど黙っていた無口でクールなイケメン、スレインはスーと立ち上がる。

 その顔は真っ青だった。


「スレイン?」

「お腹痛い」


「「「は?」」」


「ちょっとお腹痛いからトイレ行ってくる!」


 振り向いて2階にあるトイレに向かって駆け出すスレイン。

 呼び止めるようにラムゼスはその太い腕を伸ばした。


「え、お前が居なかったら計画が」

「相談は後から乗る!」


 よほどだったんだろう…。

 そう言い残し、そして遠くでドアが勢い良く閉まる音が聞こえた。


「まだシグレの野郎がダイアル城塞から帰ってくる前だぞ。なのに今から腹痛って…どんだけ精神が弱いんだよ」

「ははは、、いつもの事だろ」

「まったくスレイン君にも困ったものです」


 取り残された3人は料理に手を付けるわけでもなく、過去を思い出しながら頭を抱える。


「思い返せば俺たちが色々配属された部隊の中でムンガル将軍の部隊が一番良かったな」

「ハハは、確かに。ある意味、一番優しかったな」

「色々な事を教えてもらった。頼もしいムンガル将軍、冷静沈着なミシバ卿、優しくて冗談が面白いヒナタ卿、よくご飯をおごってくれたアプリ卿、素晴らしい人たちだった……あいつを除いて」

「俺は強さにも色々あるんだと知らされたよ」

「あの頃のラムゼス君は暴力で全て解決できると思っていましたからね」

「そう言えばあれからだっけ?お前がシグレを見たら過呼吸気味になるの」

「うるせぇ、お前らだって大差無いだろうが」

「シグレが生きてるだけでも億劫おっくうなのに、しかもミシバ卿が戦死だなんて」

「寡黙だけどいい人でした。何度かチェスのお相手をしてもらいましたが…僕は一度も勝てませんでした。勝ち逃げされましたね…」

「お前が知能系のゲームで他人に勝てる方が珍しいわ。でも確かに最後にもう一回ぐらいは会いたかったな」

「シグレが代わりに死ねばよかったのに」


 3人は顔を見合わせ、同時に溜め息をつく。

 シグレ死去という吉報きっぽうさかなに乾杯するはずだった大ジョッキだけがシュワシュワとむなしい音を立てる。


「………」

「………」

「………」


 再び訪れた沈黙、しばらくしてラムゼスが口を開いた。


「まず、誰の責任かを追及する必要があるな。誰がシグレが死んだと言い始めたか」

「今スレイン君はトイレに行っているぞ。責任を追求するならスレイン君を待つべきじゃないかな?」

「ハハは♪面白い冗談だな♪スレインじゃね~だろ?あいつは知ったかとかしないし」


 ラムゼス、ファルヴィ、両者は自然と犯人の方向に視線をやる。


「ぬか喜びさせやがって」

「ははは、まったくだよ。今日の祝賀会はシグレが死んだって聞いたからやったのに…」

「ちょっと待て君達、なぜ2人とも僕の方を見て言うんだ」


 言わなきゃ分からないのか?と2人の視線は言っていた。


 友人からの無言の圧力というのは実に恐いものだ。

 咎められるように眼鏡をクイっと上げるクロト。


「今朝、我が家の使用人がダイアル城塞の顛末について噂話をしているのを聞いたのだ。その中で爵位持ちの騎士が1人亡くなったと」

「うん」

「ああ」


 続きを聞こうとする2人の相づちにクロトは無言だった。

 目を見開く両者。


「「えっ!それで終わり!? それで何でシグレが死んだって事になるんだよ!」」

「いや、、、かな~って、思って、、、さ」


 テーブルを叩きつけるファルヴィ。


「ふざけんなテメー!今回ここの料金いくらしたか分かってんのか!?」

「た、大した金額じゃないだろ、僕達からしたら、そんな大袈裟な…」

「金額の問題じゃねーよ」

「ふざけんなラムゼス!金の問題だ!クロト、今朝喜んだ気持ちの代償金を払え!」


 この後、少し3人は言い争いをした。

 そしてこの言い争いで3人が得た物はただ1つの感情。


 不毛だ…。


 だからだろう、ラムゼスは過去のトラウマを打ち壊すように拳を握り締める。


「そもそも何で俺たちがあんな魔道具も持ってないシグレの野郎に怯えなきゃいけねぇんだ?お前ら本当に情けねぇわ」


 偉そうに、一番ビビってんのはお前だろうが、過呼吸野郎。


 2人はそう思った。

 クロトはクイっと上げる。


「そこまで言うなら、シグレが帰ってきたらラムゼス君が言ってみてごらんよ『俺たちは貴公と同じ将軍の地位にある。これからは同等として扱っていただこう』てね」

「キャハッハ!クロトの言う通りだ♪ それ言えたらお前に金貨3枚くれてやる。絶対言えよ、分かったな」


 すると今までの強気な態度が嘘かのように震えだす鍛え上げられた強靭な筋肉。

 ラムゼスはカタカタと振るえ上がる歯で言った。


「無理無理無理無理」


 心的外傷後ストレス障害とも思えるトラウマに人一倍犯されたラムゼス。

 彼は2人に問う。


「計画は?シグレが生きているなら…」

「だったらどうだって言うんだ」


 ファルヴィはダボダボの袖から手を出して、器用に袖にかぼちゃのスープが付かないように口に運びながら言う。


「こんな所でやめたら笑い話にもならない。もう少しなんだ、もう少しで手に入るんだ」

「ファルヴィ君の言う通りだラムゼス君、自信家の君らしくない」

「自信家はお前だよ、クロト」

「安心してくれたまえ、合理性に凝り固まったプルートの頭でっかち達に僕の数年越しの計画が見破られるわけがない」

「ハハは、偉そうに言っているが計画を立てたのスレイン」

「そうともいうね。そう言えばスレイン君遅いね」

「ん~、まぁいいじゃん。時間はあるんだしゆっくり待とうぜ」

「キャハッハ、それもそうだ」


 わざわざ口にはしない。


”計画は最後までやり通す”


 まるでそう言っているように、少しの笑いが起こった。


「それにしても、まったくクロト、お前は」

「ほんとだよ1金貨にもならない嘘つく理由が分からん」

「僕達は4人で1人、だからスレイン君が考えてくれた計画が僕の功績だと言ってもあながち嘘ってわけでもないだろう」

「物は言いようだな」

「その言い訳の才能をもっと金儲けに生かせよ」


 昔は仲が悪かった4人。

 出会った当初は互いに自分以外の3人を殺してやろうと思った4人。


 1人は爵位持ちの家に生まれたのにわざわざスラム街の悪ガキどもと一緒にプルート内で好き勝手に暴れ周り、過去に悪童と恐れられた男。

 1人はプルートでも指折りの優秀な人材を続々と輩出している貴族の家の3男坊として生まれ周りから期待されたが、優秀な兄弟達と違って特技も何も持ち得なかったプライドの塊。

 1人は没落して金も爵位も全て取り上げられた元名家を子供ながらたった1人で再建させた元裏カジノで名をせた天才賭博少年。

 1人は小さいときから誰よりも厳しい騎士の英才教育を受け、騎士学校を主席で卒業したエリート、しかしここ一番でいつも失敗する本番に弱い残念な美形の男。


 こんな何かが足らないデコボコな4人が出会ったこと、それ事態が運命とは実に酔狂なものだと物語っていた。

 しかも今は無二の親友。

 息のあった3人は一緒に口を開いた。


「「「俺達は夢を絶対に叶える。そう…俺達の夢は」」」


 3人はテーブルの上で拳を合わせる。

 全員で心を1つにして野望を燃やしてまで夢見た理想は


「金」「クルウェイに並ぶ」「名誉」


 バラバラだった。



閲覧ありがとうございました♪


次回のお話から、この章の本当の主人公のお披露目になるのですが……

現段階でそれが誰だか分かる人はいるかな?色々複線は張ってきましたが…分かった人がいたら、ひとりぼっちの桜から「エスパー」の称号をプレゼントさせて頂きますw

ではまた次回お会いしましょう(^_^)



1万人達成企画、自分の中で「ああでもない、こうでもない、もっと良く出来るんじゃないか?」などと呟きながら、どんどんペンが進んでおります。_〆(`・ω´・)・゜・

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