ふたりの距離
学校では物足りなくなったのか美紗が「家に遊びに行っていいかぁ?」などと聞いてきた。
「あぁ」
この言葉には自分が一番びっくりした。
いつのまにか美紗を友達と認めているからだ。
そして美紗は学校から直接家に来た。
親はいない、俺が自分の家が欲しいというとここに住むよう言われた。
ありがたいが、愛情なんか感じないいままここに来た。
家はそれほど広くなく一人ではちょうどよかった。
「ここに住んどるん?」
「あぁ」
「何も無いんやね」
「別にいらないから」
「でも本ばかりはあるね」
「好きだからな」
そんなことばかり言う美紗がその辺歩き回った。
俺はコーヒーを入れてやった。
「でも親とかいいひんの」
「あぁ、まだ言ってなかったな、一人暮らし」
「大変やな?」
「別に、親から毎月金は入るから」
「そうなんや、私ここに泊まってえぇ?」
「何で、家があるだろ」
「家にあまり帰りたくないんよ」
あまりに淋しい顔になったから断れなかった。
「仕方ないなでも、親からの了解もらってからだからな」
「うん、ありがとう優しいやねぇ」
美紗がそういうといきなり親からの了解をもらった。
その夜俺はバイトが入っていた。
そのことを美紗に言うと。
「そんなんや、すまんね」
「別にいいよ」
「でもなんでバイトなんかしてはるん?」
「親からもらうのは少し気が引けてほんとにきつい時しか使わない」
「えらいやね」
「うるさい、えらいんじゃなくて当然なの」
そういうとバイトに行った。
7時から始まり12時頃に帰ることを美紗に話した。
バイトが終わり家に入るといい香りがした。
中では美紗が料理を作ってくれていた。
「お帰り、ご飯作ってみましたー」
「ありがとう」
「どういたしましてぇ、さぁどうぞ」
渡されたご飯を受け取って、椅子に座った。
初めての気持ちで戸惑いが隠せなかった。
自然と美紗のことが信頼できる友人になった。
ご飯を食べ終えた。
「うまかったし、久しぶりに普通のご飯食べたよ」
「やーうれしいわ、またゆくったるさけぇ」
「料理できたんだな、人は見かけによらないな」
「失礼やわ、私だって料理くらいできるぇ、以外なのは裕樹やよ、学校とは全然違うんやもんそっちのほうが驚きやね」
「そんなに違うか」
「うん」
「まぁいいか」
美紗を俺の部屋に連れて行きそこで寝るように言った。
他の部屋に行き布団を出した、無駄に布団だけ持っていた。
俺の部屋はベットになっていた。
寝ていると、ふと美紗との近すぎる心の距離にきずいた。
ここまで人を信じたことも無い、何もかもが不思議で考えられないことだった。
翌朝目が覚めるとまたもや美紗がご飯を作っていた。
「ありがとう、今日も作ってくれるなんて思わなかった」
「ご飯ぐらいいつでも作ったあげるぇ」
こんな生活がこのまま続けばいいと思っていた。
学校にもふたりで登校した。
今日も一日の授業終わり、美紗がまた俺の家に泊まりに来た。
俺も了解をえれるのならいつでも一緒にいたかった。
美紗は家に帰らずここに毎日泊まるようになった。
登校も一緒なのか学校で噂になった。
付き合ってると。




