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帰り道

作者: 高杉

冬も半ば、いや終わりかけか。

二月になる頃の夕方は薄暗く気分が落ち込むが、その色に対する低い夕日は胸に刺さるほどに明るく綺麗だ。


迎えがない、と。諦めている。


居候しているという理由だけで、いつも、あんちゃんは徒歩には少し遠い病院まで迎えに来てくれる。

迷惑だと、思わせてもないし思わない。けれど、それでも苦労をかけているとは思う。

病院通い、でも足が悪いわけじゃないし。ただの喘息。

なのに心配されるのは、理由があるとしか思えないほど、あんちゃんは私に親切にしてくれる。


そんな杏ちゃんが迎えに来ない。


病院が終わる時間は、毎週決まっていて。遅くてもその十分後には杏ちゃんが病院に迎えに来てくれるのが常だ。

でも今日は、病院で三十分待っても来なかったし、携帯に連絡もない。杏ちゃんに予定があるとも聞いて無いし、もしかしたら今日は来てくれないのかも…。なんて思ってしまう。

それでも向かってきてくれてることを祈って、いつも二人で歩いている帰り道を一人で歩く。


寒い中、一人で。


コートとマフラーはあるものの、手袋を忘れて。かじかんで赤くなった手が痛い。ほっぺたも風に打たれて痛い。寂しい。

それでも帰り道はまだ半分もある。

このまま一人で帰るのか、なんて思ったとき携帯が鳴る。杏ちゃんから電話。

色々な考えが頭をよぎるものの、出なければ何も始まらない。

「もしもし?杏ちゃん?」

呟くように問う。

『うん、ごめんね今日、迎え』

「ううん、いいの。いつもありがとね」

『ふふ、前向いて歩きなさい』

悪戯気に言われる。言いたいこと位すぐ分かった。

顔を上げると、予想通り杏ちゃんが居る。


嬉しかった。目の前に居る、それだけで。


「杏ちゃん!」

「ごめんね、遅くなっちゃって」


夕日に照らされた河川敷で、夕日に照らされた杏ちゃんが、とても暖かく見えた。

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