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魔法屋ガトールークと姫の憂鬱  作者: ハモリナ
6/15

Ⅴ:王の目指すもの

魔法屋の薄い木の扉が、ちょうつがいの甲高い音を立てて、開いた。



「よっ、マイ・スウィートエンジェル」



ガトールークは、顔を上げた。


電球の黄みがかかった光の中に入ってきた男。

カチューシャで上げた前髪、黒い眼帯…

右手には焦げ茶の革のトランクを提げている。


「ゼロシキ!」

ガトールークは、紙に文字を書きつける手を止めた。

「お前のために店開けて待ってたんだぞ」


そばに置いたティッシュで、ペンについた青いインクを拭き取る。


男は、長身をかがめ、カウンターの上に置かれた、紙の束に目をやった。


「魔法書か」

「そう。

補充しとかないと、なんとなく心もとないっていうかさ」

「マメだなあ。

この商売、儲けなんかほとんどねえだろ」


「まあ、店自体の儲けは確かにないけど、元手もほとんどゼロだから、赤字でもないんだよな」

彼は、カウンターの上を手早く片づける。


「しかも、たまに城から直接頼まれて仕事したりするから、そういうときは手当て金みたいなのがもらえるんだ。

おかげで、生活には困ってないよ」

「へえ、そりゃいいな。

で、何に使ってんだ?」

「みんな教会に入れてるよ。

だって、俺が持ってても使い道ないからさ」


「かーっ、欲がねえなあ!」

ゼロシキの大きな手が、ガトールークの頭をかきまわすようになでる。


「おめーはホントに商売向きじゃねえよ」

「なんだよー、大きなお世話!」

「だがそこがいい」

「…なんだそれ…」

「つまりお前が可愛いってことじゃねえの、マイ・スウィートエンジェル?」



支離滅裂である。



ガトールークは、ため息をついた。



…と、


そのとき。



「ええ─────っ?!」



裏口の方から、セレスティーナの叫び声がした。


ガトールークは振り向く。


セレスティーナは顔を真っ赤にして、口を押さえている。


「が、ガトールークさん、その人とそういう関係だったの─────?!」

「は?

…え?

…ちょ、とりあえず落ち着けセレスティーナ」

「嘘でしょ、僕まさかガトールークさんが男の人好きだと思わなかったー!」

「あー、いや、だから!」



そのあと、セレスティーナをなだめすかし、“マイ・スウィートエンジェル”はある団体内での自分のニックネームであることをわからせるのに、多大な時間を要したことは言うまでもない。




事の次第を飲みこんだセレスティーナが、ようやく彼の伝えに来た案件を口にした。


「…あ、そうそう、

…もう、ごはんできるってよ」


「…あのさあ、それ、早く言えよな」

「えへへっ、ごめーん…

だって、あんまりびっくりしちゃって…」


「おっ、メシか?」

ゼロシキが、にっと笑った。

「うまいんだよな、お前のじーさんのメシ」


「え、前にもここに来たことあるんですか?」

「ああ、ガトールークが兵士隊に入る直前に一回な。

じーさんとも顔見知りだぜ」


「そ、そうなんだ…

変な誤解してすみません」

セレスティーナが、頭をかく。


「さっ、晴れてオレ様の嫌疑も解けたとこで、メシだメシ!

オレ様は腹減ったぞ!」

ゼロシキはカウンターを乗り越えて、ガトールークを肩にかつぎ上げた。

「よし行こうエンジェル、セレスティーナも、早くしろよ!」


…うん、と言いかけて、


セレスティーナは、首をひねった。


「えっ、あの…

僕がセレスティーナって、どうして…」


「ガトールークから聞いてるからさ。

ほら、お前、『武具店零ノ屋』から、弓買わなかったか」


「──────…」


ゼロシキ。

零ノ屋。


「───────あ…!」


ゼロシキはいたずらっぽく微笑する。


もやのかかったようなセレスティーナの頭は、やっと、すっきり晴れた。





「うーす、じーさん、ご無沙汰!」


二階に足をかけながら、ゼロシキが呼びかける。


台所の方から走ってきたのは、ロコだ。


ゼロシキを見上げ、飛びはねる。

「わあ、おきゃくさん、おきゃくさん!」


「おおっ、ホビットじゃねえか!」

ゼロシキはロコをつまみ上げた。

頬を引っ張ったり、 頭をさすったりしている。

「すげえなあ、オレ様も飼おうかなあ」


「飼ってるっていうか、うちに手伝いに来てるって名目なんだ。

イエローホビットの、ロコさ」

ガトールークは、彼からロコを受けとって、腕におさめた。

「ちょっとまあ、いろいろあってな」


「ほーう、なるほどねえ」

ゼロシキが腕を組む。



「お前か?

“銃剣・紅蓮”は」


その声にゼロシキは、顔を上げた。


法衣をまとう赤毛の男が、彼を見つめている。


ゼロシキは、ガトールークに尋ねた。


「おい、エンジェル。

あれ、雇いの神官か?」

「うちの新しい家族。

フェニックスっていうんだ」

「家族?

へえ、しばらく来ねえ間にずいぶん変わったもんだな。

こりゃ賑やかでいい」


ガトールークは、フェニックスに向き直る。


「フェニックス、こいつが“銃剣・紅蓮”、ゼロシキさ」

「ゼロシキ…が、本名でいいんだな」

「うん、ゼロシキ=クレハ」


ロコが、腕をばたつかせる。

「ゼロシキ!」


「おー、ちび、覚えがいいな」

「ちびじゃないもん、ロコだもん」

「すまんすまん。

ロコはちっちぇーな」

「いいんだヨ、ガトールークも、ちっちゃいもん!」


ゼロシキが、腹をかかえて笑いだした。


「あっはっははは、言われてやがんの!

こんなちっこいのにまでからかわれてりゃあ世話ねえな、マイ・スウィートエンジェル!」

「そんなに笑わなくたっていいだろ?!

っていうか、うちでエンジェルって言うのやめろよな!」


むすっとするガトールークを腕の中におさめ、ゼロシキは満足げだ。



と、そこに、



「ひとり増えただけでずいぶん騒がしくなったのう、 マイ・スウィートエンジェル?」


低くどすのきいた声が、ガトールークの耳を貫いた。


「じ、じいさん!」

「なんじゃ」

「マネすんなよっ、じいさんが言うと気持ち悪いだろ!」

「神官に向かって気持ち悪いとは何事じゃ、マイ・スウィートエンジェル」

「ああもうっ、だから!」


頬を赤らめるガトールークをよそに、ジェニファントは、机にロールキャベツの大皿を下ろした。


「お前たち、突っ立ってないで、早く座らんかい」


ゼロシキが、頭をかいた。


「わかったわかった。

まったく、じーさんには敵わねえなあ」

「当たり前じゃ。

お前を客人扱いするつもりは毛頭ないからの」






ジェニファントが、総じて空っぽになった皿を無造作に重ね、一度にキッチンに運んでいく。



突然きれいになった机上。



「よっ、と」


ゼロシキは、足元に置いてあったらしい、茶色のかばんを、そこに乗せた。



「さあて、本題に入っていいか、ガトールーク」


ゼロシキの問いに、彼は、うなずく。


ロコが、顔をしかめた。

「ほんだい?」


「うん、あのね、ゼロシキさんが、ガトールークさんに話さなきゃいけないことだよ」

セレスティーナが答える。


フェニックスが、腕を組んだ。

「まあ、聞いていてもかまわないだろう。

どうせロコにはわからん話だ」


「ぼく、むずかしいの、わかんなーい」


両腕を広げたロコに、ゼロシキは微笑する。



彼は、切り出した。


「エンジェルお前、ガルシアが人を飲みこんだって言ったろう」

「…うん」

「情報屋に電話して聞いてきたんだが、それ、魔界でも新手の魔法だぜ」


新手の魔法。

それならば、ガルシアのやっていることに見当がつかないのにも、ガトールークはうなずけた。

よく考えたら、数々の歴史書を読みあさってきた彼自身に、思いあたる節がまったくないというのも、変な話である。


ゼロシキは、続けた。


「ちなみに、もうガルシアは、人間じゃねえ」

「えっ?」

「その魔法ってのが、かなり地の魔力が必要なんだ。

魔物でもめったに持ってねえくらいのな。

まず人間のヤワな体じゃ受け皿にはなれねえ。

とするとおそらく、魔族に転生済みだろう。

その上で、食べたものから魔力をしぼりとる術を身につけて、今ためこんでる最中なんじゃねえか」


「…ねえ」

セレスティーナが、口をはさんだ。

「ガルシアが何かすごいことをやろうとしてるって いうのはわかったけど…

何を?」


「魔神になるのさ」


ゼロシキが、目を細めた。


「魔神に…?」

「そうだ。

つい最近、氷づけになった、大地の魔神の、アトラスってヤツの肉体が見つかったらしいんだ。

それを元手に、魔神サマのお力をちょっと拝借ってワケさ」


「…ちょっと拝借どころじゃないだろ」

ガトールークは眉を寄せる。

「アトラス…

あいつが、そんなのの力を使えるようになりでもしたら…」


「ああ」

ゼロシキがうなずく。

「まず、人間界で天変地異が起きることは間違いねえ。

ヤツの都合のいいように、世界を作りかえるつもりかもしれねえな」


ガトールークは、聞いた。

「…その魔法に必要なのって、アトラスの体だけなのか?」


「いいや」

「他には、何がいるんだ?」

「ほんのちょっとでいいんだが、アトラスの体の一部を自分の体に組みこまなけりゃならねえ。

そのために、ホーンカンパニュラ─────ほら、 お前もよく使うあの花。

あれが必要になるんだ」


「…ほんとか」


「ああ。

それから、難しいのはこっちなんだが…」


ゼロシキは、低く強く、しかしまた静かに、言葉を刻んだ。


「…アトラスのもつ組織を抜き取るのに、娘の心臓と、その髪が必要なんだ。

髪は金髪じゃなきゃならねえうえに、長さと量もかなりいる」



───────!!!



つながった!



ガトールークの、はっとした顔を、ゼロシキは見のがさない。


「心当たりがあるみてえだな、マイ・スウィートエンジェル?」


ガトールークは、うつむく。


「…今日、城に行ったとき、ホーンカンパニュラ、でっかい花瓶のすみっこに、飾られてた」

「飾られてた?」

「…うん」

「そうか、それじゃ、ガルシアが持ってきたんだな…

どうも、飾られてるっつーのが腑に落ちねえが」


「…ゼロシキ」

「ん?」


しぼりだすようなガトールークの声に、ゼロシキは向き直る。


「多分、その、金髪の娘っていうの、姫様だ」


「…姫だって?」


「…俺、そもそもフランメール姫に頼まれてガルシアのこと調べはじめたんだけど…

…姫様、今、ガルシアに言い寄られてて、

…それじゃあ、あいつは、姫様を殺して、金髪と心臓を手に入れるために…」



「よくできてんな…」

ゼロシキが、苦笑した。

「姫様を嫁にもらっといて、病気かなんかで死んじまったことにすれば、

あとはずっとカンオケに入れて墓の 下、か。

ちょろいもんだよな」


「それだけにとどまらない」

フェニックスが、顔を上げた。

「フランメール姫は一人娘だ。

したがって、籍を入れたとなれば、ガルシアはここの領主も同然…

つまりこのロッキンラインは、一瞬で、事実上の占拠状態という事だ」


「…せんきょ…?」

首をひねるロコ。

「ガトールーク、せんきょ、なにー?」


「土地を奪い取ることさ」

ガトールークが、ロコを膝に乗せ、そっと頬をなでる。

「この国が、ガルシアっていう、悪い王様のものになっちゃうってこと」


「えー、やだ!」

ロコがくちびるをとがらせた。

「わるいひと、きらーい!」


「…その、カンパニュラを持ってきたってことは、それをすぐにでも使う可能性があったからなのかな?」

セレスティーナが、息をついた。


ちげえねえ」

ゼロシキの口元からは、いつのまにか笑みが消えていた。

「だって、ガトールークに王様を調べてくれなんて頼む姫だ。

ガルシアが変だってことに感づいてはいる ─────

ガルシアだって、そのくらいわかってるんだろうな。

確信を得た姫が抵抗するなら、その場でやる覚悟ってことだ」


「…姫様が、危ない」

なかばつぶやくような、ガトールークの言葉。

「でも、なんとかしようって急いだことに感づかれたら、ガルシアは黙ってないだろ…

どうしたらいいのか、わかんないよ」


「姫様とガルシアが接触するまとまった時間は、気をつけなきゃいけないね」

セレスティーナが、顔を上げる。

「姫様、明日は、ガルシアと直接接触する機会はあんまりないと思うけど、

…明後日は、舞踏会がある」


「そこがヤマだな。

とにかく、なんとかして姫様をガルシアから遠ざけるしかねえよ」


目配せをしてきたゼロシキに、ガトールークは、うなずいた。



ふと落ちた視線に、黄色い影が映る。



いつのまにか机に乗っているロコ。


ゼロシキの目の前に置かれた、かばんの錠をいじっている。


「ロコ、人の荷物、いじるなよ」

「かぎ、きれいー」


ロコは、装飾の細やかな、銀の南京錠に見入っている。


ゼロシキが、ロコをつまみ上げた。


「ロコ、危ねえぞ」

「あぶない?

あぶなくないヨ、かばんだもん」

「それが、そうでもねえんだな」


ゼロシキは、ロコからそれを取り上げ、


─────口を大きく開けて、平らになるように広げた。


三人と一匹は、そこをのぞきこむ。


「…うわあ…」

ガトールークが、思わず声を漏らした。



トランクの片面は、いたって普通だ。

黒地のポケットがいくつもあり、様々なものが無造作に突っ込まれている。


そして反対側は、


──────なにやら、液体のような、そうでないようなもので、満たされていた。


かばんの底は見えない。

青黒い空洞が、ずうっと奥まで、続いている。



ロコが、難しい顔をして、ガトールークの肩にのぼった。


「はっはっは、怖くなっちまったかあ?」

ゼロシキは笑う。

「このトランク、無限にモノが入るんだぜ。

なかなかオツだろ」


彼は、奇妙に広いその空間に、腕を突っ込み、


──────大きな包みを、引っ張り出した。


普通、どう考えても、この包みはかばんに入るサイズではない。



「すごいんだなあ、これ」


ガトールークも、腕まくりをして、異空間に手を差し入れてみた。


別に、液体に似た面を通るときに、なにかに触れたという感覚は起こらない。

ただ何もない場所に手を突き出しただけのように思える──────


──────だが、彼の白い指は、しっかりと、空間内の青い光を浴びていた。


「わあ、面白いなあ!」

「だろ?

魔界の友達からもらったんだ」

「へえ、そっか!

どういう仕組みなんだろ?」


「はいはい、そりゃ、また今度にしようや」

目を輝かせるガトールークを、ゼロシキは小突いた。

「それより、土産食おう」


彼は、今しがた取り出した包みを開く。


そこには、



…丸い、やわらかそうな生地の、何か。

色は、白とピンクの二色だ。

大きさは、ちょうど両手におさまるくらいだろうか。


大量に積まれたそれに、ガトールークとセレスティーナ、それにロコは、じっと見入った。


ゼロシキは笑う。


「さあて、コレはなんでしょうか、マイ・スウィートエンジェル?」

「わ、わかんないよ。

こんなの、初めて見た」

「おっ、やっぱりエンジェルは初見だったか、よしよし」

「それを狙って買ってきたのか…」

「ったりめーだろ?

いつもいつもお前が何でも知ってると気味(わり)いからな」


ゼロシキは、セレスティーナとロコにも振ったが、 無論、彼らも見たことはなかった。


洗い物を終えて居間に戻ってきたジェニファントも、テーブルの上を見て、


「…はあ?

なんじゃ、こりゃあ」


…すっとんきょうな声を漏らした。



「驚いたな、じーさんも知らねえのか、こんなウマいもん」


ゼロシキが腕を組む。



「本当だ。

いくらか人生を損したな、ジェニファント」



その声に、ゼロシキは振り返る。



フェニックスが、微笑をたたえていた。

ゼロシキの真後ろから、いたって目立たないように、事の次第を傍観していたのだ。


彼は、机に歩み寄り、白く丸いそれを、ひとつ取り上げる。


そして、言った。


「酒饅頭だろう、ゼロシキ?」


「おっ、ご名答!  

一人知ってたか、そりゃあ喜ばしい」


「かさまんじう?

…プギュッ」

机上のロコが、首をかしげすぎて、真横にこけた。


「違う、ロコ、さかまんじゅう、だ」

「さかまんじう」

「…まあ、いいだろう」

「フェニックス、かさまんじう、なに?」

「平たく言えば、小豆の餡を、小麦粉の皮で包んで蒸した菓子だ。

それから、かさまんじうでなく、さかまんじゅうだ」


フェニックスが、手に持つ“酒饅頭”を、ふたつに割った。


「ありがたく頂くぞ、ゼロシキ」  

「おう」


片方を、ロコに差し出す。


それを受け取ったロコは、皮に包まれた、紫の濃いような餡を凝視する。


ひとしきり眺めたあと、

…彼は、それにかぶりついた。



「んー!」


ロコが声をあげたのは、それからまもなくだ。


「おいしい、おいしい!

ゼロシキ、かさまんじう、おいしいネ!」


「そうか、そりゃあよかった」


ゼロシキが目を細めながら、桃色のひとつを手に取り、


「ほれ!」

「…っ?!」


…あぜんとしているガトールークの口元に突っ込む。


饅頭を自分の手に持ちかえ、咀嚼して──────


ガトールークは、目を見開いた。


「ふわっ」

「どうだエンジェル」

「すっげーうまい、確かにこれは知らないと損だな」

「じゃー今回はオレ様の勝ちってことでいいな」

「ふふっ、なんの勝負だよまったく」

「それは食ったあとに考えりゃいいの」

「なんだそれ?!」


いつのまにか、セレスティーナとジェニファントも、饅頭に手を伸ばしている。


「わあ、ホントだ!

おいしいね、ジェニファントさん!」

「確かにのう、見た目は単純じゃが、味は深い」



ふいに騒がしくなった居間。



明るい話し声に紛れて、ゼロシキが、隣に座るガトールークの肩に、腕をまわした。



「…思ったより元気そうで安心したぜ、マイ・スウィートエンジェル」

「電話口の声そんなにやばかったか、俺?」

「ああ、もっと枯れ木みてえになってるかと思ったな」


ゼロシキの大きな手が、緑髪をなでた。



彼は、それにかまわず、酒饅頭の桃色の皮にかぶりつく。



餡の優しく穏やかな甘さが、余すところなく、彼の体を満たした。


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