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妖探索研究部!の活動  作者: 井中 蛙
第二章 雪女
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六話 雪合戦と楽しい一時

 その後、先輩達だけ準備があるからと言われたので、三人で庭に出て待っていた。しかし今夜の為に体力温存しなくて良いのだろうか?と思うアヤだが、先輩達がやる気になってるので仕方ない。


「ルールはどうするんだろう?」

「ただ単に投げ合うだけかな?それでも面白いから良いけど…」


 色々話していると後ろから先輩達がやって来た。


「お待たせしました。準備に少々手間取ってしまって…」

「「「 ! 」」」


 三人は一瞬目を疑った。三脚の上に1m程の長さの黒光りした筒がセッティングされ、こちらに向けて構えられていた。なんと先輩達は改造した回転式自動機関銃ガトリングガンを持ってきたのだ。但し一般のと違いそれは銃の後ろにボタン付きで口の開いた大きな箱がくっついており、そこからパイプを通して銃本体とドッキングされていた。そして銃口は野球ボールが入るぐらいの大きさだ。

 これを見てアヤは思わず叫ぶ!


「何やってるんですか!二人とも!!あの何個もあった荷物ってこれが入ってたんですか?」

「えぇ、そうですよ。これは我が社に、雪国で遊ぶ為だけに作らせた一品。その名も≪スノリングガン≫!まだ一回も動かしてなかったので、試運転を兼ねて持ってきました!」


 この人何言ってんの!?会社で作らせたって?すると今度は真琴が叫ぶ!


「部長!会社ってどこのですか?」

「あぁ、ミノリの会社って世界でも有名な美原工業なんだよ。色々手広くやっててね、何を隠そうあの≪妖怪具現灯ようかいぐげんとう≫もミノリの開発研究所で作らせた物なんだよ!」


 何て事でしょう。親の会社を私物化していいのでしょうか?と、今度は良が叫ぶ!


「すごく格好良いですね!幾らしたんですか?」

「リョウ!其処は別に聞かなくてもいいよ!!」

「200万です!」

「高!!」


 雪合戦をする為だけにお金を掛けるとは流石お嬢様といったとこでしょうか。そこでミサキ先輩が雪を流し込み、部長がボタンとハンドルを操作し始めた。


「では私達二年生と貴方達一年生とで始めますよ!」

「ストップ部長!一方的ですって!」

「せめて女であるワタシはそっち側でお願いします!}

「ちょっと真琴、何逃げようとしてるの?}

「二人とも!早く雪玉を作ってくれ!俺が先頭で投げ返すから!!」

「「何でリョウアンタはやる気になってるんだよ!!」

「は~い、ではスタート!」


 ミサキ先輩の合図で≪スノリングガン≫から一気に放たれる雪玉。アヤと真琴は避けるのに必死で何もできず、リョウは近くにあった庭木を盾にしながら投げ返し抵抗する!…が、程なく一年生全員KOで幕を閉じた。…当然ですね。




 楽しい?時間はあっという間に過ぎ、そろそろ夕飯の支度に取り掛かる時間だ。


「ふぅ~、楽しかったですね。≪スノリングガン≫の動きも良かったですし、最初にしては上出来でした。皆さん、又改良しましたらその時は是非付き合って下さいね」


 微笑みながら満足げに語る部長に、二人は何も言い返せない。唯一人、リョウだけはスッキリした顔で返答した。


「勿論です!次は勝ってみせます!!」

「「もう、やめてー!」」


 二人の悲痛な声だけがこだました。


「さて、遊びはここまでにして夕飯の準備でもしますか。ウチは料理出来ないから、ミノリと…後この中で料理できる人いる?」

「僕は簡単な料理なら作れますけど…凝ったのは無理です」

「ワタシは普通に出来ます」

「俺は出来ませんので、皿洗いを手伝います」


 それを聞いて部長が少し考える


「では私と真琴さん、後ミサキとで支度しますから、お二人はお風呂の準備をお願い出来ますか?この寒空の中で体も冷えてますし、作るのに時間も掛かりますから順に入って下さい。」

『はい!』


 早速二手に別れて行動する。料理担当組は先ず冷蔵庫の中を確認すると、中には肉や魚、野菜など色んな材料が入っていた。


「一杯ありますね!部長、何を作ります?」

「そうですね、お米は既に洗ってジャーの中にありますから後は炊くだけですね。…では鮭がありますので、それを塩焼きに。後キノコが沢山ありますから、それで味噌汁を作りましょう。それと豆腐にほうれん草、こんにゃくとで白和えに。最後は豚の細切れと生姜を使って生姜焼きを作れば、体も温まって良いかもしれませんね」


 流石さすが料理ができるだけあって部長はすぐ献立を決めていった。


「はい。ではワタシは焼き物を担当していいですか?」

「えぇ、お願いします。では私が味噌汁と白和えを。ミサキは材料を切るのとお皿を並べるのを手伝って下さい」

「了解!」


 各々準備に取り掛かる頃、風呂を任された男二人は薪を焚き口に入れ火を焼べていた。


「薪で焚いて風呂を沸かすなんて初めての体験だな」

「そうでしょう。僕は小さい頃から見てるから普通なんだけどね、やってると結構楽しいんだよ」


 リョウが持ってきた薪をアヤが火の廻りが良くなるように入れていく。焚き口の中は真っ赤な炎が燃え上がり、煙突から煙がモクモクと上がっていく。


「リョウ、温度見てきてくれる。多分大丈夫なはずだから」

「解った」


 リョウは一旦家の中に入り風呂場まで行き温度の確認をする。手を入れて確認すると丁度の湯加減になっていた。


「アヤ、丁度いい湯加減になったぞ」

「良し。それじゃあ女子から順に入るように呼んできてよ。僕はここで火の番してるから」

「了解」


 窓越しに頼まれたリョウが女子を呼びに行き、暫くして誰かが入って来た。


「へぇ~、昔ながらのお風呂なんだぁ。何か新鮮な感じ。アヤ、リョウから聞いたけど絶対その窓から覗かないでよ!覗いたら正拳突きお見舞いするからね!」

「覗かないよ!それより湯が冷めたら言ってよ。すぐ炊き直すから」

「うん」


 その後たわいのない話をして洗い終わった真琴が風呂から上がり、次に入ってきたのは部長だった。


「まぁ、素敵ですね!一般家庭のお風呂とはこのような造りだったのですね」

「ここを一般にしないでください!普通にガスで沸かしますよ、最近のは!!ここは古いだけです」

「そうでしたか。ところでシャワーは無いのですか?一度体を流したいのですが、これも古いからなのでしょうか?」

「そうですよ!」


 どこかズレてる部長(お嬢様)はこの後も色々聞いてきたので、一つ一つ丁寧に教えていった。

 次に入って来たのは当然ミサキ先輩。体を洗い、湯に浸かり、気持ち良さそうにこう言った。


「ふぅ~、いい湯加減!アヤ、うちの体で良ければ見てい・い・ヨ♥」

「見・ま・せ・ん!」


 全く誘惑しないで頂きたい。理性を保つのがどれ程大変なのか解らないのでしょうか。全く。


「ところでアヤ、お昼の時から気になってたけど、ここに祖父母は住んでないの?」


 不意に聞かれたのでアヤは返答するのに少し遅れた。


「…はい。爺ちゃんは俺が生まれる前に他界しましたし、婆ちゃんも歳でこの山での生活も大変ですから、麓の村に家を借りて住んでいます」

「寂しくないのかなぁ~」

「大丈夫みたいですよ。近所の人達と楽しんでますし、叔父達も家が近いからよく泊まりに行ったりしてますから」


 そかそか。とミサキ先輩は納得し上がっていった。別段聞かれても困らないけど何かシンミリしてしまった。そこへ最後に来たのはリョウ。


「アヤ、覗きたかったらいつでも覗いてくれ!」

「アホか!!誰が好んで男の裸なんか見るか!」


 ミサキ先輩から吹き込まれたのか、それとも只ボケたのか。…多分前者でミサキ先輩が僕の事を想って仕込んだんだと思いたい。それから男二人楽しく語り合った。


「最後はアヤだから、俺が火の番を代わるよ」

「大丈夫だよ。このまま置いとけば僕が入ってる間は冷めないから。リョウは料理の手伝いに回ってよ」


 アヤはみんなが待ってるし、お腹も空いてるのでサッと体を洗い大広間へと向かった。




「「おお~!!」」


 アヤとリョウが席について感嘆の声を漏らす。目の前には美味しそうな料理が並んでいた。


「では皆さん、冷めないうちに頂きましょう」

「「「「いただきま~す!」」」」


 アヤは先ず汁物に箸をつける。一口啜ると口一杯に茸の香りが広がり、又胡麻の香りも合わさって濃くのある深い味わいだ。次に鮭の塩焼きを口にする。程よい脂加減にご飯が進む。そして豚の生姜焼きは甘めの味付けに生姜の爽やかな辛味が絶妙に合っており堪らない。そして一休めに白和えを食べ、口の中を落ち着かせた。


「どれもこれも美味しいですね。この味噌汁は胡麻の香りが効いていいですよ」

「それは茸を炒める時に胡麻油を使いました。それによって香りも味もより引き立つと思いまして」

「成程」


 部長は作った料理を喜んでくれたのが嬉しいみたいだ。その隣の真琴はあまり箸が進んでおらず、アヤの方をチラチラ見てくる。


「ねぇ、他のはどう?例えば…生姜焼きとか?」


 やはり自分が作ったのを気に入ってもらえてるのかなと気になってる様子だ。


「うん、この甘めのタレって好きなんだ。そこに生姜の風味が丁度いい感じに合わさって美味しいよ」

「ホント!良かったぁ。ほら、まだ一杯あるからどんどん食べてよ。ご飯もお代わりする?」

「じゃあ、お願い!」


 アヤに喜んでもらえたのが余程嬉しかったのか、真琴も食が進み一緒にお代わりをする。傍から見るとまるで彼氏彼女のように見えるのは気のせいかな?


「アヤ、こんなに美味しいなら真琴か部長を嫁に貰ったらどうだ?毎日食べられるぞ」


 リョウの一言にアヤも同じ気持ちだ。


「そうだねぇ!毎日食べたいよ!」


 この言葉を聞いて真琴は思いっきり顔が赤くなった。


「な、何言ってるのよ!まだ結婚なんて早いわよ!もうちょっとお互いを知ってからの方が…」

「へ?料理の話なのに何で結婚の話してるの?」


 どうやらアヤが同感したのは料理だけのようだ。そうとも知らず勘違いしてしまった真琴は又顔が赤くなる。最初のは照れからくる赤だが、多分今はそれに怒りも混ざってると思われる。


「アヤのバカッ!」

「いてッ!」


 言葉と一緒に叩かれる。一体何故叩かれたのか分からないアヤと、さっきの事は忘れようと食事に集中する真琴を、他の三人は微笑ましげに見ていた。





 さて、食事が終わり後片付けも済んだので、お茶を飲みながら一服する。


「それじゃ、今夜の段取りを説明しますか」


 ミサキ先輩がそう言ってバックから妖怪具現灯を出して持ってきた。


「最初に言った通り、アヤには当時雪女に会った場所で寝てもらう。その横の部屋でウチが見張りをして、後の三人と遊はここで待機。仲間にする方法は相手との誓約を交わすか、それに順する行為をする事」

「具体的にはどうすればいいんですか?」

「詳しくは私達も一緒にするから心配しなくていいよ」


 どんな言葉、もしくは行為をするのか詳しく聞きたいアヤだったが、ミサキは話を進めた。


「それでここが一番大事なんだけど、もし彼女が有無を言わずに暴れらしたら、その時は遊を使って彼女を封印。正しくは退治する事になるから」

「封印すると、又これを使って出現させるんですか?」


 真琴の言葉にミサキは首を横に振った。


「残念だけど一回封印すると二度と現れないのよ。正確には他の場所の雪女は大丈夫だけど、ここに出てくる彼女は無理って事。だから慎重に事を運ばなければいけないの」

「…大丈夫かな?心配になってきた」


 彼女と一番に接触するアヤは段々緊張してきた。万が一自分の所為で失敗したら申し訳がたたない。


「大丈夫ですよ。彼女はアヤ君にもう一度会いたがってます。つまり彼女には今の所敵意はなく、貴方が彼女と話しながら仲間になるよう説得して頂ければ最悪のケースにはなりませんよ」


 部長が微笑みながら言ってくれたので、アヤは少し気が楽になった。そうだ。あの時会った彼女は最初寂しそうだったけど、話してた時は楽しそうで優しかった。多分大丈夫だ!と自分に言い聞かせるアヤだった。


「よし。では早速準備に取り掛かりますか。みんな覚悟はいいか!?」

「「「はい!」」」


 待ちに待った雪女かのじょとの再開に、アヤは気合を入れた。

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