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妖探索研究部!の活動  作者: 井中 蛙
第一章 憧れの妖探索研究部
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二話 部室に潜入!

 校舎に入ると目的の場所を確認する。前に一回部室に行った事はあったけど、それっきりなので記憶が曖昧なのだ。幸いにも玄関の近くに<校内見取り図>が大きくあり、そこから記憶にある場所と照らし合わせる。


(確か図書室から近い場所にあったはず…)


 図面から図書室を探すと特別棟・三階にあった。ただ図面には当然部室までは記入されていないので先ずは図書室に行ってみる。その後は手当り次第探すしかなさそうだ。人に聞くことも出来るが、今日は校内立ち入り禁止だと真琴が言っていたから自力で何とか探しかない。

 今アヤがいるのは一般棟。主に生徒達が授業を受けるクラスや、職員室・保健室などがある場所。逆に特別棟は図書室や実験室・家庭科室などがある場所だ。なので特別棟に行くには外から廻って玄関から行くか、中の渡り廊下を通るかの二択になる。しかし今外に出ると二人に捕まってしまうので論外!となると、渡り廊下を通って行くしかない。


(職員室は二階にあったから一階か三階の渡り廊下から行くことにしよう。もし両方とも鍵が掛かっていたら、その時は諦めて帰るか)


 そんなことを思いながら先ず一階の渡り廊下に来てみた。戸が閉まっており、一応押したり引いたりしてみたが開かなかった。


(やっぱり開けておかないよなぁ。こんな日は職員室がある一般棟だけしか使わないだろし…。でも、もしかしたらってのもあるし、三階に行ってみるか)


 一旦元来た廊下を引き返し途中にあった階段へと行く。もしここで先生方や先輩方に見つかるとややこしいので、念のため上がる前に耳を澄まし気配を探って、その後一気に三階まで上がっていった。

 三階に来て左右を確認してから慎重に渡り廊下まで進んでいく。ふと教室の入口にあるプレートを見ると一年のクラスだと解った。今年からこの階で勉強する事になるのかと思いながら、三階渡り廊下に到着する。ちなみに渡り廊下があるのは全五階建てでこの階まで。つまりここで駄目なら本当にどうしようもない。


(頼む。開いてくれ!)


 そう祈りながら押してみると……開いてくれた!後は向こう側の扉も開いていれば目的のとこまで行ける。アヤは渡り廊下を通って特別棟側まで行き、そこの扉を引いてみた。…ギィィィっと音と共に開いたのだ。


(よっし!これで後は目的の教室の場所と、そこの鍵が開いていれば!)


 かくして何とか特別棟に入ることができ、一安心するアヤ。そこから先ず図書室に向かってみる。図書室は突き当たりにあり、大きな扉から中を窺うと中央に4~5台のテーブルと、その奥に沢山の本棚があった。その量は中学のとは比較にならないぐらい多かった。この学校が特別なのか、それともこれが普通なのかは分からない。でもこれだけあれば妖怪に関する本がいくつかあるかもしれない。休み時間はここに通ってみるのもいいかも、と思いながら当初の目的である部室を探す。その場所にも妖怪に関する本があるのだ。というよりも妖怪・・の本だけ・・しかないのだ。


(…確か図書室から少し歩いた場所だった気がする)


 ゆっくりと探していると、三番目の教室の扉に張り紙がありそこに目的の名前があった!


ー妖探索研究部ー


(あった!後は鍵が開いていれば目的達成だ)


 そして恐る恐る戸をゆっくり押すと、


(開いた!)


 中に誰もいないのを確認しながら入ると、そこは昔とあまり変わっていなかった。中央にテーブルと三人は座れそうなソファーが二あり、その両側の壁には大きめの本棚がある。そして奥の窓際には一人用の大きめな机と椅子があった。一つだけ前の時と違うのは机の隣に細長い灯籠が置かれており、火袋(火を灯す場所)からうっすらと明かりが漏れていた。誰もいないのに火を付けてるのかと思ったが、下をよく見るとコードが伸びておりコンセントに繋がっていた。どうやら電気で明かりを付けるタイプみたいだ。……初めて見たなこんなの。


(……でもやっぱり変わってないなぁ。見学会の時以来だ)


 そう、あれは去年の夏の時だった。




 はっきり言ってこの時の僕は、高校はどこでもよかったのだ。ただ学校見学会だけは見ておくよう教師に言われたので、家から近いここに来たのだ。その時は真琴は女子校の見学会に行っていたので、リョウと一緒に女の先生による学校の説明を聞いていた。


「やっぱり新設だけあって綺麗だなぁ。アヤもここに決めたらどうだ?家からも近いし」

「確かにイイかもだけど、今の僕では絶対無理だよ。成績は普通だし、勉強もそんなにしてないから受かる可能性はほぼ無いよ。もっと身の丈に合った高校に行くよ」

「そっか、俺は受けてみるよ。ここからなら家の手伝いに支障が無いからな」


 そんなことを小声で話していると先生の説明が終わった。


「さて次は校内を案内します。皆さん私に付いてきて下さい。くれぐれも勝手な行動は慎んで下さいね」


 そう言って見学者たちを誘導し始めたので、僕たちも後方から付いて行く。


 先ずは一般棟の職員室から順に五階まで案内されたが、一学年しかないため殆どの教室は空いていた。その後特別棟へと向かって一階から順に上がっていく。僕はあまり興味がなく考えなしに歩いていたが、リョウはしっかりと話を聞き一つ一つ確認していた。

 そんなこんなで三階の廊下を歩いていると、ふとある張り紙に目が止まった。その紙には<妖探索研究部>と書いてあり、気がつくと無意識に足が止まっていた。みんなはどんどん先に行き、リョウも熱心に先生の説明を聞いてたので立ち止まってる僕に気付かない。


(やばい!ココすっごく気になる。でもみんなどんどん先に行くし……どうする?)


 考えること数秒。


(やっぱこっちが優先!)


 決めると扉を押してみた。幸いにも鍵は空いていたので中に入っていった。

 そこはテーブルと大きなソファーが二つ、窓際に大きめの机、そして両壁が本棚に囲まれた内装だった。

 僕はその本棚にある中から一冊の本を取り出した。タイトルは<地域による妖怪の誕生・北海道編>とあり、そのシリーズだけで本棚二列分を埋めていた。


(これはスゴイ……他にも色々あるなぁ)


 しばらく呆然と眺めていたが、やがてこれらを読んでみたいと欲求が沸き上がり、時間を忘れて読み始めた。

 何冊か読ん見終え、ふと時間を確認するため携帯を見たら数十件もの電話やメールが入っていた。マナーモードにしてたので全く気付かなかったのだ。相手はリョウでメールには【今どこにいる?こっちは先生達がアヤを探し廻っているぞ!】とあった。


(やば!早く戻らないと!)


 急いで本を元あった場所に戻し部屋を出た。そこから突き当たりまで行くと図書室があり横に階段があったので一気に一階まで降り、一般棟に行こうとしたら先生に呼び止められ、そのまま職員室まで連行された。そこから約半刻ほどお説教を受け、帰る頃には夕方になってしまった。

 職員室を出て玄関まで行くと、リョウが携帯で話しながら僕を見つけて手を振ってくれた。僕が本に夢中になり、その後説教を受けている間、リョウはずっと待っていてくれたのだ。申し訳ないと謝罪し、一緒に帰る途中で僕はリョウに言った。


「来年ここを受験することにした!否、絶対受かってみせる!」

「……ハァ?一体何があった?どうして朝と今とで考えが変わったんだ?」

「実はここは僕にとって一番最適な場所だったんだ。もうここ以外考えられない!まさか妖怪に関する部活があったとは、見学会に来て本当によかった。さぁ、帰ったら早速勉強だ!リョウ、教えて欲しいことが山ほどあるし、明日休みだから君の家で泊り込みで勉強会しよう!真琴も呼んで三人でやろう!」

「ちょっと待て!やる気なのはいいが何でウチなんだ?それよりもホントに何があった?妖怪?って、ちょっと待て話を聞け!オイ!」

「今は一分一秒でも欲しいんだ!早く早く!」


 そう言い走りながら僕は心の中で来年絶対ここに受かり、あの部に入ることを再度決意したのだった。




 今思えば本当によく受かったもんだとアヤは思ってしまう。あの後徹夜でリョウ達に付き合ってもらい、毎日普段よりも多く勉強に励んだのだ。去年の事なのにすごく懐かしく感じてしまう。


(よく考えたら、あの時も今も勝手にここにお邪魔しるけど、ここって鍵掛けないのかな?)

 そもそもこんな事自体してはいけない行為で、本当は反省しなければいけないのだが、でもこの本を目の前にしたらそんなのは些細なことだと思ってしまうのは仕方ない事なのだ。


(やっぱり来たからには一冊ぐらい読んでいこう!)


 結局アヤは一冊本を取り出すとソファーに座って読み始めた。


(真琴やリョウは怒っているはずだけど、それは後で何とかしよう。今は本に集中だ!)


 そう思いながら読んでいると、トントン、と肩を叩かれた。でも本に集中したいので無視。すると又、トントン、と叩かれた。仕方なく本を読みながら返事をする。


「なんですか一体?いま本読んでるんで放っておいてくださいよ」

「見知らぬ人がいるのに放っとけるかぁ!!」


 バシッ!ッと、今度は勢い良く頭を叩かれた。さしものアヤもこれには驚き振り返ってみると、ショートでアホ毛が一本伸びた女子がそこに居た。


「…誰?」

「それはこっちのセリフだ!なんで他校の生徒が、しかも堂々と本読んでるの?さっさとここから出て行け!!」

「そうだ、僕部外者だった!すみません!許してください!!」


 勢い良く土下座をし謝り、そして続け様に言い訳を試みる!


「ホントごめんなさい!僕今日合格発表見に来たんです。そしてその流れでこの部室に来て本を読んでただけなんです!」

「全く辻褄が合ってないよ!何故合否を見に来た奴がここで本を読むことになるの!?}

「つまりですね、何と言いますか…あの…その…!」


 完璧に天パっているアヤ。そんな彼を見て彼女は少しだけ察してくれた。


「ハァ~、つまり君は受験生って事だけは解った。後は落ち着いて、ゆっくり分かるように説明しろ」

「…はい」


 こうしてアヤは正座したまま、ここに来た経緯を細かく説明した。

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