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星空のキャンパス

作者: わっふる

 星をしっかりと眺めた事はありますか?

 どんな簡単なものでも星を紡いだ事はありますか?

 あなたは星にどんな思いをよせますか?

第一話  Star dream


 風に吹かれたければ海に行けばいいし。綺麗な空気が欲しければ山に登ればいい。

星を見たいのなら――見上げればいい。

 

 いつも通りに授業終了の鐘を聞き、僕は少し重たい部室のドアを開く。 

十一月のこの寒空の中で、少し強めの冷気を孕んだ部室は、人がいなくガラリとしている。

 天文部。その概要は地学の中にある天文学である。星や月の動きを観測し、レポートにまとめる。そして年に二回行われる県の観測会にも参加したりしているから、それなりに天文部としての名前は売れている。

 というのもこれは僕みたいな一年生の頑張りじゃなくて、今は受験が忙しく、たまにしか来られない三年生が、天体のレポートを観測会の大本である協会に送ってその実力が認められた事でいまの知名度がある。 

「早いなぁ隆樹」

 つかの間の一人の時間が過ぎた。

静寂を切り裂いたのは一つ歳上の陽先輩。おっとりとした口調に細長い体躯が特徴の先輩。

「お疲れ様です。先輩」

「うん~お疲れぇ、でも今日は観測会の日だから今のうちに寝ちゃってね」

「わかってます」

 観測会。県で行う観測会ではなくうちの部活だけで週に一回、金曜日に屋上の使用許可を取って天体観測をする。

「じゃあ俺は先に眠るから」

 そう言って先輩は奥の部屋に入って行った。基本的に観測は夜。そのため、夕方の内から眠っておいて一日中起きている事になる。もうそろそろこの変則な昼寝にも慣れてきたが、それこそ一年の最初の頃なんかは夕方眠れないし夜は眠くなるしで結構大変だった。

「さて、僕もそろそろ寝るか……、他の人も後から来るだろう」

 大きな欠伸を一つして、奥の部屋に入り、すぐに深い沈黙の中へ誘われていく。

 少しだけ、夢を見ていた。ぼやけた視界の中で、僕は道を歩いている、その少し前には女の子がいて空を指さして何か言ってるように見える。

 そんな彼女の指を追って見上げた空は、ぼやけた視界から曇りガラスが外されたように鮮明に色濃く僕の目に映っている。

面白い空だった。真っ黒の空というキャンパスの中に黄色の点が描く絵は流星群。黄色い点が流れては消えを繰り返しキャンパスを埋める。

 ねぇ。と彼女の口が開いたのと同時に僕は目を覚ました。

「おっ、起きたね隆樹」

 正確には起こされた だった。僕の夢に出てきた女の子は多分この僕の上に馬乗りで座っている女の子、ゆずき。

 僕と同じ一年生で、小学五年の時、後に幼馴染と呼ばれる関係になった。つまりは引っ越してきたのである。

 無邪気で子供のような好奇心と低い身長に控えめな胸のふくらみ他に特徴は……特に無いな。

「今、失礼な事考えたでしょ?」

「何を言うか失礼な」

 僕が棒読み気味に言うと、ゆずきは僕を布団から引っ張り出して「早くいこっ」と手を引いて行った。

 屋上に向かう途中で少し話した。

「夢にゆずきが出てきたよ」

「Hなやつ?」

 思春期だなぁ。

「違うけどな」

「そう、つまんない。でどんなの?」

 つまんないって……。

「多分流星群」

「曖昧な夢だねぇ」

 屋上のドアを開けるのと同時にそこで会話は終わった。

 屋上に足を踏み入れる。

 ひんやりとした冬の空気がそのまま寝起きの肌に突き刺さって少し痛い。静かな暗がりの中で三年生と二年生の先輩と残り二人の同期が僕とゆずきが来るのを待っていた。

「それじゃあ全員そろったし、そろそろ始めるか」

 言い出した部長の言葉で皆が少し賑やかになり、お祭りでも始めるかのように天体観測の準備に取り掛かる。望遠鏡を組み立て、パソコンを使って星座の位置を確認。

「よし皆聞いてくれ」

 先ほどまで望遠鏡を組み立てていた部長が声をあげる。

「今日観測するのは南の空にある、ペガススの大四辺形、そしてこれのレポートを観測会の資料にしようと思う」

「大四辺形でいいんですかぁ?」

「本当は冬の星座にしようと思ったんだけど他の学校とかぶりそうだから」

「分かりましたぁ、じゃあ気合いれていかないといけませんねぇ」

陽先輩の喋り方で気合とか言われると少しふきだしそうになる。いや失礼だな。

「じゃあ九時から、八時半以降は蛍光灯とか見るなよ」

「では、コンビニに行ってきます。部長何がいいですか?」

「おぉすまんな隆樹、ん~麻婆豆腐、無かったら適当にサンドイッチ」

「分かりました、行ってきます」

★★★

「たっだいまっ!」

「ゆずき、近所迷惑だぞ」

「隆樹はカタすぎるんだよ」

 いたって普通の思考だと思うがな、パソコンで星座の位置調整をしていた部長がビクッてなってたぞ。

「皆お帰り、セットは終ってるぞ」

「お疲れ様です。ありましたよ麻婆豆腐」

 コンビニの袋から麻婆豆腐を取り出し部長に渡す。少しにやけた部長は、鼻歌交じりにパソコンに戻っていった。

 その後三十分間食事をして観測が始まる。

「隆樹、もう少し南よりに下げてくれ」

「はい――これくらいでいいですか?」

「うん、陽! 残りの皆と一緒に雲の状況を確認して、風速の状況も」

「了解でぇす」

 散らばる皆を横目に先輩のパソコンの近くに置いてあったノートに目をやる。

 ペガススの大四辺形。それだけ書かれたノートの一ページを見るとこれから観測会が始まるって気がする。

 最後の準備を終え、空を見上げる。黒のキャンパスに黄色い絵の具がぽつぽつと見える。その強調された絵の具の一つ一つを線で結ぶ。

「無事に見れて良かったな」

「ですね」

 ぽんっ、と僕の肩に手を置いた部長はホッと一息と言うような感じで微笑み、空を見上げる。

 ペガススの大四辺形がその姿をどんどんあらわにしていった。

「部長! 隆樹! 早くこっちだよ」

 手を大きく振ってシートに呼ぶゆずきを、近所迷惑だといったのに。なんて少し説教臭い感想を抱きながら四角い形にとどくようになんて手を伸ばしてそっと下ろす。

「何やってんだ?」

「いや特に意味はないです」

 部長は「そうか」と頷くと白いノートに文字を書いていく。

「隆樹~ちょっと来てくれ」

「あっはい」

 雲の位置を見ていた陽先輩が僕を呼ぶ。先輩が指差した方向に目をやると少し厚い雲がそこにはあった。

「風の向き的にこっちに来ちゃうんだよね」

「あれが来る前にレポートを書けばいいんですね?」

「実際にはそうじゃないよ、あの雲がずっとのこってるわけじゃないからね」

「どういう意味ですか?」

「まぁあの雲が過ぎたあたりにいいものが見れるよ」

「はぁ」

意味も分からないまま、あはははと笑って部長と一緒にレポートに取り掛かる、その姿を見て他の一年生もレポートを書き出した。

「おっと、僕も書かないと」

 その後暫くして雲が覆いかぶさり屋上が真っ暗になる。

「ここら辺で一回休憩だな、一年寝るなよ」

 冗談交じりに言った部長はシートの上に横になった。

 貴方が寝るんですか? と言いたくなったがこの人がこんな感じで寝た事は一回も無いのでスルーしておいた。

「これ隆樹?」

 僕の服の袖をギュッと掴んでくる。

「いや見えないのは分かるけどな、で何?」

「さっすがあたし! はいコーヒー」

 多分手渡し、(他にどんな方法があるのか逆に聞きたい)で僕にコーヒーをくれる。

 手で包むとほんのりと暖かいスチール缶がカイロの変わりになってくれる。

「サンキュー」

「いえいえ、気の利く幼馴染ですから」

 それから暫く話し込んでいると、先輩の声が屋上に響く。

「一年生~、東の空を見てごらん」

 陽先輩の指示通りに東の空を見上げるとそこには。

「凄いね隆樹、夏の大三角形だよ」

「あっあぁ、秋に見るのはなかなか、これなものが有るけど」

 すると後ろから陽先輩がやってきて、「見られなかったからな」と言って僕たちの横に腰掛ける。

 空に瞬く図形が二つ、四角と三角を見ながら朝がやってくる。



 第二話 May be I love you


「ねぇ隆樹」

「なんだよ」

 観測会が終った次の日の夜、電話でゆずきに呼び出された僕は屋根伝いにゆずきの家の屋根まで行った。

 幼馴染故にお互いの家まで玄関から行けば十秒、屋根伝いなら約五秒で着く。

「星、見えないね」

「都会だからね」

 僕が言うと、再び「ねぇ」というゆずきの問いかけに再び「何?」と返す。

「流れ星とカノープスってどっちが好き?」

「違いと共通点は?」

「ん~、一瞬で終るかそうでないか、共通点は――見つけにくい所かな」

 一息溜めてそう答え、僕は少し沈黙する。

カノープス。冬の一定の時期に、しかも水平線ギリギリまで見えないと見つけることが出来ない赤い星。

流れ星、何の変哲もない星の移動。だけど少しの遊び心が詰まったそれ。

「流れ星」

 何故? という風に首をかしげて僕を見てくるゆずきに。

「場所が決まってるものより不確かなものの方が面白いから、かな」

 自分でもくさい事を言っているのが分かり、ハニカンで少し照れる。そんな僕の顔を覗き込んで、目が合って恥ずかしくなるゆずき。

「あぁもう! 今日はお終い! おやすみ!」

 屋根から下りて直ぐに自分の部屋に入るのを見送ってから自分の部屋に戻る僕。

「それにしても寒いな」

★★★

 翌日。

「ん~、今日はなんか変だな」

 いつも通り授業を受けて、部室にいる皆と話しているのに。

「何が変なんだ?」

「部長、いやなんかいつもと違う気が」

「それはお前、テスト三日前だからだろうよ、皆ピリピリしてる」

「あぁそうか、もう直ぐテストか」

「「「そだよ」」」

 満場一致の答えが返ってきて、思わず笑ってしまう。

それにしても早いなぁ、もう直ぐ一年か。今思い返して見るといろんなことがあったな。

高校最初のテストでは部室で話して終わり、その次も同じ、その次も……。

「いやいやいや! そうだよじゃなくて皆勉強は?!」

「やばい! 隆樹がキャラ崩壊だ!」

「ごめんなさい、で皆勉強は?」

 口を猫のようにして、勉強なにそれおいしいの? 的なことを訴えてくる。

 あぁ、そうか毎回これだったのか、そしてそれが日常になって当たり前に……。だからこそ、午前授業が珍しく感じられたのか。

 慣れとは非常に恐ろしいものである。

「……結局勉強はしないんですね?」

「隆樹もたまには赤点採りなよ」

「ゆずきはたまには赤点採るなよ」

「あははぁ、無理!」

 断言されてはどうする事も僕には出来ない。テストが終ってその一週間後くらいから追試を受けるのだが、その追試教室の中には必ずゆずきの姿を目視する事ができた。

 廊下から少しその様子を眺めてるといつも放課後に見る面子がぽろぽろと頭を掻き嘆いては先生に注意を受ける。

 そんな中部室では、必ずノー勉の部長がぶつくさ言いながら星の辞典を見ている。

「確かに隆樹の言うとおりだ」

 何時の間にか話に入ってきた部長はその次に、「これから毎日勉強するように、そして勉強した部分を俺に見せること! いいな」

 かっこいいです部長。

 そんな部長のまさか発言に一瞬驚いた部員達は少し諦めモードに突入してしぶしぶ了承していた。

 その日の夜。

 当然のように僕の所にゆずきから「勉強が分かりません」電話が来て、屋根伝いに部屋に行くと、部屋の掃除をしているゆずきと目が合う。

「いや、これはその……ねっ? ほら部屋の模様替えとかしたくなる時あるでしょ?」

 ねっ? って言われても勉強に飽きたのは分かるが余計汚くなって見えてしまうのは僕だけだろうか? いや違うだろう。と勉強になぞって反語を使い心の中で言い聞かせると。灯りが点いたままの机の上に絵が書かれたノートを見つける。第一問『女の子の絵』というような感じである。

「とりあえずやったところ見せて」

 結果は分かっているけど一応聞いておく。

「えっ? ほらその机の上に」

 予想外でした、これで勉強したつもりになっていらっしゃるよこのお姫様は。

「第一問。SINθ=1/2、0度以上360度以下の時、次の等式を満たすθの値を求めよ」

「えっと。女の子が~」

「帰る」

「ごめんなさい! お願い見捨てないでぇ! 今回採れなかったら留年の危機なんだよ~」

 涙ながらに帰ろうとする僕のズボンを引っ張る。パジャマ同様の部屋着だったため、いとも簡単に落ちた僕のズボンはゆずきの手に連れ去られた。

「…………」

 無言のまま僕はゆずきからズボンを取り返し、履き、そして再び。

「帰る」

「まってぇえ!」

         ★★★

「つまりここの式は」

 結局教える羽目になってしまった。そしてこの教える時にも最大の問題があった。

 それはどこが分からないのかがまず分からないこと、一つ一つ「これは?」と聞くと「分かるような、分からないような」という感じで解かしてみると、間違える、割合にすると分かる問題が二割、分からない問題が八割。凄まじい正答率である。これがこのままテストに出たとしたらゆずきは二十点前後しか採れない、確実に赤点なのは火を見るより明らかだった。

「じゃあとりあえず公式を書いておくから憶えて、それが終ったら今度はワークを解くから」

 そう言って僕はゆずきに紙を渡し、自分の勉強に入る。

 後ろでうんうん唸っているのが少し気になったが、とりわけうるさいわけでもないので自分の課題に取り組む。

 三十分、一時間と時間はどんどん過ぎていき、十一時を回った頃。

「止めよう!」

「そのほうがいいな」

 二人で意見をあわせて勉強を終了。

 そして光の如き速さで時間が過ぎていき、テストを全て終えた。

 当然結果は惨敗、というわけでもなく赤点にならないギリギリのラインでゆずきは止まっていた。

 余談だが部長に結果を聞くと九十以上の数字がリピートされるだけだった。

 そしてまた僕はゆずきに呼び出され、いつものコースで部屋に行くと赤点ギリギリのテストを額縁に入れて満面の笑みで壁にかけているのを見る。

「えへへ、赤点じゃないよ」

 部屋に入る僕に驚くことなく話かけてくる。

 その話は既に五回ほど聞いた気もするがあまりにも喜んでいるので初めて聞くかのようにしておめでとう、と連呼していた。

「でっ? 今日はどうしたんだ?」

「うん、普通に世間話」

 「ここに座って」とベッドに腰掛け、一人分のスペースをつくる。

 言われたとおりに腰掛け、ゆずきへと顔を向く。

「…………」

「…………」

 あれ? 話があったんじゃないのか? と思い沈黙に驚きを抱き、まぁ話が無くても呼ぶのはかまわないよなぁ、なんて考えているとゆずきが口を開いた。

「いやぁ、今回は赤点ギリギリだったけど厳しかったね」

「僕を呼び出して勉強したのにな」

 少し笑って言うと。

「隆樹がいると緊張して出来ないんだよ~」

「何だよそれ、僕のことが好きみたいじゃないか」

「うん、そうだね。 ねぇ隆樹」

「何?」

「あたしの事――好き?」

「――はっ?」

 思わず聞き返してしまった事で完全に逃げ場を失った僕は動揺を隠しきれなかった。

「だから、あたしの事、好き?」

「えっと、そのおっお前はどうなんだよ?」

「あたしは、隆樹のことがたぶん好き」

「たぶんって曖昧だな」

「分かんないだもん! しょうがないじゃん! ただ隆樹が近くにいると凄くドキドキしてそれがたまらなく苦しくて、それでも目線は外せ無くて、あぁもう!   わかんないよ! こんなの初めてなんだから!」

「ごっごめん」

 僕が今、何に対して謝っているのか、何故今この状況になっているのかも分からず、口からでた言葉はそれで、僕は自分自身がどうしようもなく情けなかった。

「あたしこそごめん、取り乱した」

 僕の一言でとりあえず我に返ったゆずきは頬を赤く染めて下を向く。

「あの……さ」

「返事は、観測会の日に聞かせて」

「あっあぁ、今日はもう帰るな」

「うん、おやすみ」

「おやすみ」


 その次の日から暫く顔を合わすたびに恥ずかしくなって部室でも離れた位置にいた。

 僕はゆずきの事をどう思っているのか、自分に言い聞かせるように目を閉じ時が過ぎる。














第三話 Like a Firework


 何時の間にか太陽は西の空へと傾き始め、空の色が青から赤に変わっていた。

 観測会当日、既に会場には多くの生徒が集合していて受付を済ませていた。

「じゃあちょっと行ってくるな」

 部長が受付に向うと、主催者の天文部部員がパンフレットを手渡して来た。

 それを開いて見ると、今日見る内容が書かれていた。

 ふたご座流星群。日本では一般的な流星群の一つで、十二月の半ばあたりがピークである。流れてくる星の数もそこそこ多くて見栄えがいい。

「よーし行くぞ」

 上へと続く階段を上りきると、周りが一望できる屋上へとでる。

「ではクジを引いてください」

 係りの人に言われるがままクジを引くと三十二と書かれた紙が僕の手の中に収まった。

「同じ番号の人を探して、ペアで観測してください。では、よい夜を」

 交流が目的でもある観測会ではありふれたやり方だった。

 僕の相手はと言うと、何の因果かはたまた神の悪戯かゆずきとペアになった。

「よろしくな」

「うん」

 今日、久しぶりにゆずきの声を聞いた。

★★★

 時計の短針が十を指した合図の鐘を聞き、観測会が始まった。

「どうするゆずき、月の入りを待ってからにする?」

「それでもいいけど今の内から観測を始めようよ」

 ということでシートと毛布の上に横になる。

 二人の間に会話という概念は全く存在せずに星が流れてくるのを待った。

 他のペアが次々と星を観測していく中で流れてこない流星群に祈りを込めては直ぐに泡となる。それを暫く繰り返していると。一人の生徒が声をあげた。

「流れてきたぞ!」

 皆が一斉に空を見上げる。風のように過ぎていく黄色い点を見たかと思うとその数分後にまた流れてくる。

「ゆずき」

「流れてきたね」

「あぁ、それでさ」

「うん」

「僕もゆずきのことが好きだよ」

「本当?」

「たぶん」

「曖昧だなぁ」

 懐かしい感じが僕の中に満たされていく。

「でもさ、思ったんだ」

「何を?」

「とりあえず、付き合う付き合わないとかじゃなくて、僕たちはまだこのままの関係でいいと思う」

「うん、あたしも実はそう思ってた」

「ホントか?」

「たぶん」

言って笑って、空を見上げる。一時間に約八十の星が流れては消えを繰り返す。その光は、花火のように綺麗で儚い、ここを絵にしたらきっと黒と黄色で埋まるんだろうな、とか思いながらその光景に心を躍らせる。

夢の軌跡か、現実か、おかしくなりそうなほどに僕は感動していた。

そんな時ゆずきが心の感動を声にする。

「キレイ」

「そうだな」

「花火みたいだね」

「僕もさっき思ったよ」

「でもあたし達はきっとカノープスだね」

「その心は?」

「ちゃんと見ないとだめだよ」

「お後がよろしいようで」

 八重歯をだして笑うゆずきが立ち上がり。

 「星を見よう」と、君は言った。

 


 翌月二人で見た赤い星を目印に二人で新しい一歩を踏み出し、空を――見上げる。


                                           Fin


あとがき

 どうも、はいこんにちは、わっふるです。

今回はとにかく自分の好きな物を書きました.故に九割がた自己満ですww まぁ気にしない方向性で行きたいんですけどもね。


 さて、もう分かってると思いますが、この作品のテーマは星です。私の趣味でして、これを読んでくださった皆様が少しでも星に興味が沸けばなぁ、なんて考えています。良く内容がわからなくなるのは、一等星とか書かれると訳が分からなくなりませんか? 簡単に言うと明るさのことなんですけどね。私も星に興味を持ち始めたのは中学の終わりぐらいの時でね、あまり観測にも行けてないんですけど。星はいいですね、まだ完璧に結べない星が幾つもありますけど……。

 おっとあとがきのつもりがどんどん変わっていってしまいましたね。

 趣味の話はさて置きここからは内容に触れます。解説と言う奴です。

カノープスとか星の名前を使ったのは本当に人間の状態を表せるからです。意味がわかりませんね、正直私もです。でもカノープスとは作品中でも説明しましたが、ちゃんと見ないと分からないものなのです。しかししっかりと見ればその瞳には赤い星が写ります。これが人の恋愛に似ているという私の馬鹿げた、そして安直な発想でこのような形にしました。もし星のことが間違えていたら指摘してくださいねww

 さてなかなかに短い説明になってしまいましたがそろそろですね。

 読んでくださった皆様には多大なる感謝の念をお伝えします。 

 それではまたどこかで、さようなら。



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