勘違い2
「あ、雪乃さん。おはよう。」
雪乃さんだった。
「おはよう、翠。それから香奈も。」
おっはよ~と元気な声で返す香奈華ちゃん。そして微笑んでいる雪乃さん。
(今日もきれいだなぁ・・・。)
いつも雪乃さんを見るたびに思うことだった。着物を着せたらすごく似合いそうだ、なんて暢気に着物姿の雪乃さんを想像していると、
「で、いったい誰が何を好きなのかしら?」
「っ!?」
・・・・・今、自分の顔が引きつったという自信がある。
(雪乃さんまで何をいいだすの~!?)
動揺しまくりの私に気づいた雪乃さん。その眼が私の視線を捕まえる。私はその眼から視線を逸らすことができなくなった。雪乃さんの黒い瞳。ずっと見てたら吸い込まれそうだ。
「で、翠。いったい何が好きなの?」
きれいな笑みを浮かべる雪乃さん。完全にターゲットにされちゃったよ・・・。
「違うんだよ、雪乃さん!これは香奈華ちゃんが勘違いしてるだけで、まったくもって事実じゃないのっ!」
必死に説明するけど、分かってくれるかどうか・・・。けれど雪乃さんは
「翠、何が好きなのか言ってくれなければ何の話か分からないわ?」
と、今度は困ったような笑みをうかべ頬に手をそえる。まだ何の話か分かってなかったみたい。
(良かったぁ・・・。これ以上ややこしくなったら大変だもん。)
ホッとした私。しかし何やら香奈華ちゃんが手招きをしている。呼んでいるのは雪乃さんのようだ。
(何してるんだろう?)
二人で内緒話でもするかのようにコソコソと話している。不意に雪乃さんが私を見る。そして・・・
「水臭いわねぇ~、翠。教えてくれてもよかったのに。恥ずかしがることないじゃない。」
・・・香奈華ちゃん。雪乃さんに何でわざわざ教えちゃうの!知らなくてよかったのに!!
「私たち友達じゃない。ねぇ、香奈?」
「そうだね~。水臭いねぇ~。」
二人で話している雪乃さんと香奈華ちゃん。強力タッグできちゃったよ。逃げられる気がしないよ!!香奈華ちゃんなんて、すでに意地悪そうな笑みうかべちゃってるよ!?
「だから違うんだってば!!私は別に森下君が好きなわけじゃなくて・・・。」
「えっ?何いってるの翠?」
・・・・・・・・えっ?
不思議そうな顔をする雪乃さん。私が森下君のことを好きって香奈華ちゃんに聞いたんじゃないの??
「え・・・と、雪乃さんは香奈華ちゃんに何て言われたのかな・・?」
「確か、『翠は、ベジタリアンって言ってるけどホントはお肉が大好きなんだって!!』って言われたわ。」
・・・・・・何それ!?
「香奈華ちゃん!?」
香奈華ちゃんを見れば、してやったりとものすごくうれしそうに笑っていた。
(あぁぁぁ・・・・!!自滅しちゃったよ、私!!)
「で、翠は森下君が好きなの?」
「いやっ、だからそれは香奈華ちゃんの勘違いで・・・・・。」
「隠さなくていいのよ?恋をしてこそ女というもの。全面協力するわ!」
(だから違うって!!勘違いしすぎだよ、この二人!!)
獲物を見つけた猛獣みたいな目でウフフッと笑う雪乃さん。なんか怖いですよ?
「森下君ね・・・・。いい趣味してるわ、翠。」
「はいっ!?」
「彼、顔は悪くないし、頭も運動もそこそこ・・。気取ってるわけでもなく、冷静沈着。派手な訳でもなければ地味でもない・・・・。」
・・・・・・勝手に話を進められても困るのですが・・・。
雪乃さんは森下君を品定めするかのようにじっくり見ては評価を下していく。どっかの社長さんみたいですよ?
「いい男じゃないの!」
そう言ったのは香奈華ちゃん。元はといえば香奈華ちゃんがあんなこというから、こんなことになってるのに・・・・。本人はそんなことお構いもなしにケラケラ笑ってる。すっごい上機嫌だね、香奈華ちゃん。そんなに楽しいですか?
「翠、ひとつ助言をしておくわ。」
「なんでしょうか。雪乃さん。」
もう反論する気力もなくなったよ・・・。私は、半ばやけくそになっていた。そんな私に・・
「告白するなら、中庭のあの大きい銀杏の木の下がおススメよ?何でも、あそこで告白すれば恋愛が成就するってジンクスがあるらしいわ。」
・・・・私の頭は完全にショートしました。
読んでくださった方ありがとうございます!
更新がだんだん遅くなってしまってますが、できるだけ早く更新していきたいと思っています。