友情
(あの時はすごくうれしかったんだよね・・。)
初対面の私に声をかけてくれて、友達になってくれて、すごくうれしかった。でも、あの日香奈華ちゃんが遅刻しなければきっと今も友達にはなれなかった気がする。そう思うと香奈華ちゃんの遅刻癖は私にとってはいい事なのかもしれない。そんなことを思っていると、横から視線を感じた。見上げれば香奈華ちゃんが不思議そうな顔をしている。
「どうしたの?香奈華ちゃん。」
「ん?いや、翠が笑ってたから何かな~と思って。」
「うそ、私笑ってた?」
「うん。ばっちり。」
笑ってるつもりはなかったんだけど、どうやら顔には出ていたらしい。
「何考えてたの?エッチなこと?」
「もう!!香奈華ちゃんたら!」
ニヤッと香奈華ちゃんは笑った。
(香奈華ちゃんてば、いつもそっちに話を持っていくんだから・・・。)
「違うよ。入学式の日の事思い出してたの。」
ゲッと香奈華ちゃんの顔がゆがむ。
「忘れてよ。あのときの事は。」
すっごく恥ずかしいんだからと顔を赤らめる香奈華ちゃん。でも私はそうは思わなかった。
「そうは思わないけどな・・・。」
「なんで?初日早々遅刻ギリギリだよ!恥ずかしいに決まってるじゃない~。」
「そうかな?だって、あの日香奈華ちゃんが遅刻ギリギリで来なかったら私香奈華ちゃんと友達になれなかった気がするんだもん。」
そう、あの時香奈華ちゃんが遅刻ギリギリで来なかったら、彼女はきっと私の後ろの席ではないほかの席に座っていたはずだ。もしそうだったとしたら彼女に声をかけられることも私から声をかけることもなかったはずだ。
「だから、恥ずかしくなんかないよ?香奈華ちゃんと友達になれてよかった!」
すこし照れくさかったけどそう言った。本当にそう思ってる。香奈華ちゃんと友達にならなければ、今話すことなんてできなかった。
香奈華ちゃんはというと、さっきからずっと下を向いて黙ったままだ。香奈華ちゃんはめったに口を閉ざしたりしない。ほうっておけば一人でもペラペラ話しちゃうような人だ。
人の少ない駅のホームに沈黙が訪れる。それが10秒だったのか1分だったのかは分からない。フッと香奈華ちゃんが顔を上げる。怒ってしまったのかと思っていたその顔は、赤く紅潮しているが怒っているというよりも泣きそうなのを必死で我慢しているようだ。
「香奈華ちゃん!?」
軽くパニックになる私。しかし彼女は、
「ありがとぉ~~!!」
といって私に飛びついてきた。
「わぁっ!?」
いきなりのことでよろける。ホームに激突する!と思ったが何とか耐える。香奈華ちゃんは、私に抱きついてえぐえぐと泣いている。
「ど、どうしたの?」
香奈華ちゃんはその赤く紅潮した顔をあげた。涙でぬれてしまっている。しかし彼女はその顔とは反対にすごくうれしそうな声で、
「そんな風に思ってくれてたなんて・・。翠ありがとぉ!!大好き!!」
といってくれた。
私はびくっりしたが、彼女が感動して泣いてくれていたのだと知ってホッとした。だから私も、
「私も香奈華ちゃんのこと大好きだよ!!」
と香奈華ちゃんに言った。
よそからみたら駅のホームで抱き合う高校生は異様に見えたが、当の二人はそんなことお構いなしだった。
お気に入りにしてくれた方々本当にありがとうございます!!
なんか恋愛というより友情の話になってしまっていますがもうすこしお付き合いください。