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あっぷる×ハート  作者: なか卯
6/8

唯香と龍馬

何とか連れて帰ってこれた。

家の門の前でそんな事を考えていると、いつまで手を握ってんのよ?と困った様な声。

「ん・・・うぉ!?」

さっきから勢いで掴んだままだった腕をを急いで離す。

我ながらなんて大胆な行動だったなと思う。

いたたまれなくなって、照れ隠しに「うるさいな」と言いながら家に逃げ込んだ。

中に入ると、夏海は部屋の入り口に突っ立っている。

座りなよ?とか、何か食べる?と聞いても何も答えない。

「それじゃあ」と風呂をすすめようとした時、やっと口を開いた。

「・・・敏之のバカ・・・お風呂。」

それだけ言うと、返事も待たずに行ってしまった。

可愛く無い奴・・・まぁ戻ってきた事だし、あいつのワガママ聞いてやるか。





「どこ行ったのよぉ・・・」

お風呂から上がった夏海は、ピンクのジャージ姿で敏之を探していた。

リビング、寝室、トイレ何処を観ても姿がない。

コンビニにでも行ったのかと靴を確かめるが、数に変化は無かった。

一体どういう事だと途方に暮れていると、物置からぐ〜と変な音が。

まさかと扉を開くと、敏之が布団にくるまって寝息をたてていた。

どうやらさっきの音はこの人のイビキらしい。

しゃがんで寝顔を眺め、やっぱり馬鹿だと呟く。

気を遣ったのか、わざわざ私の要望通り物置に引越すなんて。


夏海はぐうすか眠る敏之の前に、チョコンと正座して「お世話になります」と頭を下げた。



「ん・・・寝ちゃってたのか。」

スッキリとした目覚め。

そういえばここは物置だったなんて、天井の裸電球を見つめながら寝タバコをする。

今は多分、昼間くらいのはずだろうと、優雅に時計を確認するが、夕方5時半。

嘘だろ・・・

さっきの余裕は何処に行ったのか、飛び起きて洗面台に走り歯を磨きながら着替えをすます。

最悪だ。二日間急に欠勤した上、今日も遅刻だなんて目も当てられない。

慌ただしい廊下の様子に夏海がリビングから顔を出す。

「おはよ・・・って、どしたの?」

「よぉ!俺バイトだからさ、行ってくるな。」

大変だねなんて、まさしく他人事を言っている夏海を尻目にドアに手をかけるが、そういえば。

手を出してと言って、ある物を出す。

「これ。」

目をまん丸にして鍵を受け取る夏海。

それじゃあと家を出ようとすると「敏之!」と呼び止められた。

「な、なんだ?」

「・・・い、いってらっしゃい。」

なにが恥ずかしいのか、小さくモジモジと喋る。

「い、いってきます。」

なんだろう、このぎこちない感。

こっちまで恥ずかしくなって、足早に家を後にした。

そんなこんなで久しぶりの出勤をしたわけだが。

俺のバイト先は駅前の居酒屋。

まさしく予想通り、店長の長い説教から始まった。

二日間、人数足りなくて大変だったとか、今日は社長出勤だなとか。

うぅ・・・おっしゃる通りです。

最後に頼むぞと背中を叩かれようやく開放された。

事務所から出ると、人の不幸が大好きな2人が走り寄ってくる。

「うへへ、何言われた?」

「プププ、龍馬、そんな事より」

「あ、そうだな唯香。お前クリスマスに何があったんだ?」

この嫌らしい笑いを浮かべた2人は高橋 龍馬≪たかはし りゅうま≫と中野 唯香≪なかの ゆいか≫


龍馬は黒髪短髪、日サロで焼いた肌も黒く、オラオラした服装を好むチャラけた奴。

中野はたれ目に少し派手な化粧、ミルクティー色の巻き髪でバイト先一と称される美人。

二人とも高校時代からの友達だ。

浮いた話が大好きなこいつらが、クリスマスの謎の欠勤を見逃すわけが無かった。

勤務中だと言うのに、横にぴったりついて双方「女か?女か?」としつこく詰め寄る。

どうせ言い逃れなんか出来ないしと、夏海の話をしようとするが、2人共突然そそくさ仕事に戻って行く。

なんだよとふてくされていたが、龍馬が目で合図を送ってくる。

目線の先を観ると・・・

腕を組み、顔をしかめた店長とバッチリ目が合った。

「宮瀬?」

「・・・すいません。」


どうにか営業時間が終わり、閉店作業をしていると龍馬がまた近づいてくる。

「なんだよ?」

「終わったらファミレスな?」

後ろでニヤけている中野を見て、話の続きだなとOKした。




「それで・・・何があったんだ?」

ファミレスに入って開口一番。よっぽど気になるらしい。

興味津々に待つ二人に、ゴホンッと咳払いして話し始めた。

あいつの家の事情や家出の事は伏せて、たまたま出会った事にして。



「本当によかったな・・・。」

「うん。あんたクリスマスの度に失恋してたけど、まさかその日に彼女が出来るなんて。」

大事なところが抜けているので、結果、感想がおかしい。

完全に誤解を呼んでいるが、勝手に話は進む。

「しかもいきなり同棲かぁ。この幸せ者がぁ!」

祝福の声をあげる二人にだからと、ちゃんと聞けよと。

「夏海は彼女じゃなくて・・・」

なんて関係なんだ?なんと説明すれば・・・

「夏海は友達だ。」

「・・・一つ屋根の下暮らす、血のつながっていない女が友達って」

失笑気味にそう言うが、本当にそうなんだ。

最終的に納得してくれたが、本音は半信半疑だろう。

「よし、それじゃあ夏海ちゃん見に行こう!」

中野の一声に、当然龍馬も賛成する。

もちろん少数派の意見は淘汰され、みんなで家に行く事になった。
























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