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夢夜行

初夢

掲載日:2026/02/22

 それは暗闇である。ただ見渡す限りには、暗闇である。何処であろうか。現実であろうか、私には解らない。






 「遅刻するよ」


 気付けば、私の意識は、この身体に引き戻されている。あれは一体何なのであろうか。夢と言うには、私の意識は明瞭であった。しかし、何なのかは解らない。ただ、居たという実感だけが、私に訴えかけてくるのである。





 朝食を済まし、私は高校へと向かう。この高校は、この辺りでは進学校と呼ばれるそうである。大したことはない、田舎のしがない高校である。




 今日の授業は国語であった。髭を肥やした教師が、教科書を読上げている。教科書に乗る文章は、全て読んでしまっていたので、私は心底退屈に思った。





 それは暗闇である。ただ見渡す限りには、暗闇である。何処であろうか。現実であろうか、私には解らない。






「遅刻するよ」


 気付けば、私の意識は、この身体に引き戻されている。近頃、この夢をよく見るようになった。夢なのかは解らない。悪夢とするには、少々退屈である。






 この日も、私は高校へ向かう。高校へは毎日通っている。中坊の頃から、学校を休んだことは一度も無い。しかし、授業は退屈なので、私は授業を寝てばかりである。




 今日の授業は数学である。数学はそれなりに心得ているが、其れ故、教師のやる授業に、真面目に付き合う気など更々無く、この日は寝て過ごしたように思う。







それは暗闇である。ただ見渡す限りには、暗闇である。何処であろうか。現実であろうか、私には解らない。






「……」


 ここ数日、毎日、暗闇の光景を見る。何時からであったろうか。恐らくは、年が明けてからだったように覚えている。夢と言うには、意識は明瞭である。しかし、どうにも、私は此の事を、昼間には忘れるようなのである。これは夢なのであろうか。まだ解らない。






 この日は、高校は空いていなかった。大雨である。思い返せば、ここ数日は、雨が少なかったように思う。そのせいだろうか、この日の雨は、太陽が傘を差したように、空を暗く染めるように、降り続いた。







それは暗闇である。ただ見渡す限りの暗闇である。私は当てもなく彷徨った。





 長く永く歩いたようである。然し、長く歩いても、行き先がある訳ではあるまい。目の前は常に暗闇である。地図でもあれば良いのだが、用意してくれる相手など、いる筈も無いのだ。






 私は、歩きながら考えた。ここは何処なのであろうか。夢、と考えるのが、自然なのであろう。然し、今、手足の先まで至る私の細胞が、それを否定している。それくらい、感覚が明確なのだ。頬を抓れば、私は痛みを自覚できる。暫く走れば、私は息切れを覚える。ただ、この場所は、心地良ささえ覚える場所であった。今思えば、それが逆に、薄気味悪く感じた。






 何日歩いたのであろうか。私は一向に、元の意識に戻れないでいた。普段は、母親の声で起きているのだが、それが一向に聞こえてこない。いや、元々聞こえなかったのかも知れない。私がこの暗闇を離れる時、途中でどんな事が起きているのかは、今まで考えたことが無かった。覚えて等いないのである。そもそも、此処は何なのであろうか。夢であるならば、目覚めて欲しい。初めてそう思った。




 私が、これを夢と断定出来ないのには、もう一つ理由がある。私は今まで、夢と云うものを見たことが無かったからである。普段、人間が見る夢は、こんなにも鮮明に、物事を感じ取れるものなのであろうか。私には知るすべは無い。

 







 それは暗闇である。ただ、延々と続く、暗闇である。私は、ずっと此処を彷徨っている。或いは、本当は目覚めているのかも知れない。もし目覚めているのなら、記憶を持ってこれなくなったのだろう。何方にせよ、私には解らない。






 それは暗闇である。この世の果てまで続く暗闇である。鮮明に、時間が過ぎてゆく感覚だけが、私をずっと凝視しているようである。最近気づいたのだが、この場所では、大きな怪我をしたりすることは出来ないようである。歩く時、多少の疲れは感じるが、犬のように転げ回って、傷だらけになったつもりであったが、私に傷が付くのは許されていないらしい。







 それは暗闇である。唯の暗闇である。私はきっと、此処から抜け出すことは無いのであろう。此処は何なのであろうか。呪いか、或いは祝福なのか。私には、もはや解らない。







それは暗闇である。或いは、暗闇である。きっと暗闇なのであろう。いや、暗闇なのかも知れない。私はこの世界で、ただ一人である。とにかく、暗闇である。






 それは暗闇である。一つ、至った結論がある。きっと、此処は夢なのだろう。目覚めることの無い夢。唯暗闇。死ぬことも、老いることさえ許されない、唯暗闇。これが、私の初夢なのであろう。私は、戻れることを夢見て、今日も彷徨う。ただ、それは暗闇である。

気味の悪い夢ってありますよね。よければ感想お願いします

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