接敵、共に倒すために
(ナレーション)
――ざり。
闇の奥で、石を引きずる音がした。
水滴が止み、洞窟が息を潜める。
足音が一つ、止まる。
(草薙)
止まれ。この先、何かいる。
(ナレーション)
合図と同時に、白巫女も歩を止める。
揺れていた身体の動きが、ゆっくりと収束する。
だが、完全には止まらない。
胸の奥の鼓動が、洞窟の静寂の中ではっきりと響く。
ぶるん――
闇が、形を持った。
岩陰から、ぬらりと影が這い出る。
細長く、湿った輪郭。
触手の魔物だ。
(白巫女)
……来ました、主様。触手型の妖魔です。洞窟の湿り気に紛れ、こちらへ忍び寄っていました。
(ナレーション)
妖魔は、まず草薙を見る。
その視線が、ゆっくりと背後へ滑る。
狙いは――明確だった。
(草薙)
下がれ。ここは俺が前に出る。
(ナレーション)
草薙が一歩踏み出す。
拳を構え、進路を塞ぐ。
白巫女は半歩だけ後ろへ下がり、その位置を固定する。
狭い洞窟の空間で、法装が腿に沿う。
身体の線がはっきりと浮かぶ。
だが、視線は妖魔から逸らさない。
(白巫女)
……主様。妖魔の視線が、こちらに向いています。私めを捕らえるつもりのようです。
(草薙)
気にするな。前は俺が持つ。
(ナレーション)
妖魔が、舌鳴りのような音を立てる。
湿った呼吸。
空気が、ゆっくりと歪む。
(白巫女)
主様……距離が詰まっています。触手が、地面を滑るようにこちらへ伸びています。
(ナレーション)
草薙が踏み込む。
足音が洞窟に反響し、闇を切り裂く。
その瞬間――
妖魔が動いた。
(白巫女)
来ます、主様。触手が一斉に動きました……拘束を狙っています。
(ナレーション)
白巫女が胸に手を当てる。
法玉へ意識を集中する。
洞窟の空気が、わずかに震えた。
(白巫女)
浄化の力、整いました。主様が前で受けてくだされば、私めが後ろから祓いを重ねます。
(ナレーション)
前に立つ主。
背後で支える巫女。
触手が闇の中でうねる。
洞窟は、二人を試すように。
深く、暗く、口を開けていた。




