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異世界チート配達員、無双しながら本日お届けに参ります

作者: 紫煌 みこと


「デリバー、あなたが今日から配達員をするの?」

「えぇ、ぜひやらせてください」


 僕はデリバー。という名前を付けてもらった、異世界転生者。

 ゲームでいう最強スキルを授かったまま、普通の平民の家庭で育った。


 大人になった僕が、職業として選んだのは「配達員」。

 なぜかって? 僕は旅をしたり、車でのドライブが好きだったんだ。

 配達員になれば、この広大な異世界を、お金を稼ぎながら楽しめるかな、と思った。




 僕を雇ってくれたのは、ラーミラというヴァンパイアの女性。夜に町の外に出かけたら、ラーミラさんの店をたまたま見つけたのだ。

 魔の素材とかを扱ってるから、世界中に届けてくれる人を探してるとのことだった。まさに僕と相性の良い相手だ!


 でもラーミラさんは、心底僕に驚いているようだ。


「……人間のあなたが、私のところに来るなんて思ってもみなかったわ……。私は吸血鬼よ? 怖くないの?」

「別に……気にしていないですけど。それより僕に仕事をくださいよ」

「変な人……。まぁいいわ、最初のお願い。これらの魔果実を、ヒナタ森に住むオオカミに届けてきてくれないかしら」


 ラーミラさんは、紫に輝く魔果実を詰めた箱を出してきた。

 へぇー、これが魔果実ね。不思議な色だなぁ~。肉食でも食べられるらしい。

 ヒナタ森に住むオオカミに届ければいいんだね? よし、ちゃちゃっとやろう。


「わかりました。明日の朝に届けてきますね」

「……は? マジで言ってるの? 冗談で頼んだつもりだったのだけど。人間のあなたには……」

「冗談だったんですか? いやいや、これくらい余裕ですよ」


 僕は魔果実の箱を持って、部屋から出て行った。




◇Day 1◇




「ヒナタ森ってどこにあるんだろう。風の加護を使って調べてみようかな」


 僕はチート級の能力を得て、この世に転生している。今まで思う存分能力を使えることはなかったけれど、一人で配達員となったことで、いろいろじっくり楽しめそうだな!


 僕は3つの女神による加護を持っている。炎、水、風の加護だ。

 その中の一つである風の加護……「行先いきさき風向(かざむ)き」を使うことで、僕はあらゆる場所の方角がわかる。


「風の加護……発動!」


 僕が手を上げると、草原に風が吹く。

 うん……西の方角に吹いたな。空にいる女神様、ありがとうございます。

 でも西を見つめても、森っぽいものは見えない。かなり遠い場所なのかも。うーん、ちょっと面倒だけど、頑張って走るしかないね。これも配達の仕事であり、旅の一環であるということで……




 結局、森までは10キロも離れてた。走ったら5分もかかっちゃったよ。

 僕の体力のステータスは9999で、この世界における最大値なんだけど、走っただけじゃ10しか減らなかった。

 ヒナタ森。名前の通り、日の光が綺麗に入っている。素晴らしい絶景スポットだ。


 森に入ると、さっそくオオカミを見つけた。

 オオカミは灰色の巨大な体を持っている。僕を見つけると、ぎょっとしたように目を大きくした。


「……ギャッ!?」

「お届け物です。箱に魔果実を詰めておきました。オオカミさんたちであっていますね?」

「……」


 受け取りに来ない。僕が人間だからかな。仕方ないから、地面に置いていこう。

 僕が背を向けると――突然、背後から一匹のオオカミが襲い掛かってきた。


「グルルルル……ガアアアアアアッ!」

「!!」




 あーぁ、やってしまった。

 急に襲ってきたものだから、軽くぶっ飛ばしてしまった。

 僕の攻撃力は9999で、これも世界最大級。ちょっと殴っただけで、オオカミの巨大な体は森の中を突っ切るように吹っ飛んだ。死んではないようだけど、木に衝突して気絶してしまった。


 他のオオカミがポカンとした表情をする。次の奴が僕を襲いに来ることはなく、仲間たちが箱を持ってコソコソと引っ込んでいった。

 お客さんを殴ってしまったけど……僕から攻撃したわけじゃない。それにちゃんと、荷物は届けたし。


 さて、ラーミラさんの店に帰ろう。




◇Day 2◇




「ちゃんとオオカミに届けておきましたよ!」

「……嘘でしょ、マジで言ってるの」


 ラーミラさんが呆然とした表情で僕を見つめてきた。

 まぁ、驚くだろうね。僕は普通の人じゃ持っていないような、チートスキルを持っているんだ。3人の女神様から気に入られて生まれ、最初からステータスも頂点。僕にできない配達なんてないですよ!


 初の給料は、金貨3枚だった。銅貨とかじゃなくていきなり金貨!? 一週間くらいの三食が手に入るじゃないか! 嬉しくて僕は飛び上がった。


「普通、人間にできるような仕事じゃないわ。だから給料は高くしておくわよ。……あなた、人間の姿をした魔物だったりして」

「違いますよ! 早く、次の仕事をください」

「……仕事を自分から求めてくるなんて初めて。どうして、率先して仕事をするの?」

「配達が楽しいからです」


 僕は笑顔を浮かべた。だって、それが心からの本音なのだから。


「ちなみに、正当防衛のつもりで、オオカミを殴ってしまったのですが……」

「殴っただけで解決したの!? オオカミたち、人間が大好物で、みんなで襲い掛かってくるはずなのに……まぁいいわ。デリバーを普通の人間と考えちゃ駄目ね」

「で、次の仕事はありますか?」

「うーん……さすがに無理だと思うけど、これをもしできるのならすごいわ。誰も引き受けてくれないから、やってくれると嬉しいのだけれど。海の中に住んでいる人魚に、光の真珠を届けてくれる?」





 ということで、僕の次の目的地は海。

 嬉しい! 僕が育った町は山奥だったから、この世界での海に行くのは初めてだ。

 でも海とは言っても、その範囲は膨大すぎる。さすがに今回は、事前にラーミラさんから人魚の住んでいる地域を教えてもらっておいた。


「この辺りって聞いたけど……。うわっ、夜の海の景色、すごく綺麗!」


 前世の世界にあった海も美しかったが、異世界の海は、水が宝石のように月光で輝いているのだ。幻想的な景色。僕が一度は見たいと切望していた光景だった。


「人魚は、水の中にいるのかな。そうか、海の底まで届けに行かなきゃいけないから、誰も引き受けない仕事だったのか。潜水艦なんでない世界だし」


 海の中に潜るのは大変だものね。前世の僕は、水泳が苦手だったし。

 あと聞いた話だと、人を襲う厄介者の巨大サメもいるだとか。そりゃ誰も届けにこないな。


 ……でも今の僕は、女神様の加護を受けている!

 水の加護「流水りゅうすい操者そうしゃ」を使うことで、僕は水中呼吸ができるようになるんだ。


「水の加護……発動!」


 僕が手を上げて叫ぶと、身体が水色の光に包まれた。

 荷物を置き、僕は光の真珠だけを持つ。持つ者に幸福を与えてくれる真珠らしい。

 そして僕は背中から、海に勢いよく飛び込んだ。



「はぁ~、ダイビングは楽しいな」

「ちょっ、なんなの!? あの人間!!」


 僕が海の中を自由に泳いでいると、底から驚いたような声が聞こえた。

 加護のおかげで、水中でも体が軽い。海底は20メートルほど。思ったよりも深くなかったな。

 泳いでいくと、数人の人魚の女性が僕を見つめていた。ごめんよ、人魚さん。人間の僕が、人魚の領域に入ってきてしまって。


「誰よ!?」

「僕、配達員です。ラーミラさんに頼まれて、光の真珠を届けに来ました」

「あら、ありがとう。これで私たちの神聖な儀式が……って、どうして人間が届けに来てるのっ!? どうやって呼吸しているのよ!」


 人魚たちは怯えたような目で僕を見ている。悲しいなぁ。怖がらせるつもりはないのに。早く帰ってあげようかな。


「じゃあ僕は帰りま――」

「あっ、ちょっと、後ろ!!」

「?」


 泳いだまま後ろを振り返ると――大口を開けた巨大なサメが、僕目掛けて突撃しに来ていた。

 大きなサメ! 悪いけど僕、食べ物じゃないから!



「水の加護!」

「シャアアアアッ!!?」


 僕は両手を広げ、勢いのある水圧をサメにぶつけた。

 もともと、水の加護はこうやって使うものだ。サメは生み出された水の力に押され、諦めて逃げ出した。


「……」


 人魚たちは、口をポカンと開けながら僕を見つめ――やがて、大きな声を上げた。


「すごぉっ! あの狂暴なサメを追い払ったわよ!」

「人魚でも無理だったのに、あの人間はすごいわ!」

「真珠をありがとう、配達員さん!」


 歓声を上げる彼女たち。まぁ配達員として、高評価をくれるのはうれしいな。

 さて、日が昇る前にもう一度海の景色を見たいし、早く岸に上がろう。




◇Day 3◇




「ラーミラさん! 海の人魚たちにも、真珠を届けてきましたよ」

「待って待って待って、さすがにおかしい。本気で言ってんの??」


 ラーミラさんの店に戻った僕。

 店で新しい品を管理していたラーミラさんは、僕が帰ってきただけで驚いたような目をしていた。


「どうやって人魚の住んでいる海に潜ったのよっ! できないと思って、人魚の依頼を諦めようと思ってたのに!」

「誰もできないなんて言ってないじゃないですか。早く次の仕事をくださいよ」

「……」


 次に貰ったのは、金貨20枚。うわぁ、一気に給料が跳ね上がった!


 ラーミラさんは大量のメモが書かれてある紙をめくりながら、ため息をついた。


「仕事仕事って言ってもねぇ、今できる依頼は……あ、魔王城の……」

「えっ、今何て言いました?」

「いや、なんでもないわ。聞かなかったことにして」

「今、魔王城って言いましたよね!? 詳しく聞かせてください!」


 もし魔王城に配達だとすれば、僕の最大級の憧れだ。大きな城、一度近くで見てみたい!

 するとラーミラさんが、ため息をつきながら言った。


「……魔王様が住んでいる魔王城に、魔石を届けるっていう仕事。でもこれ、魔王城にたどりつける配達員が誰もいなくて、困り果てていたのよ。でもそろそろ誰かにやらせないと、私が魔王様に怒られちゃうから、どうしようかなって……」


 誰も魔王城にたどり着けない? 魔王城のある地域が、過酷すぎるのかな。

 それは大変だ。魔王様を怒らせたら、世界に影響があるかもしれないし。


「魔王城まで配達ですか? なら、僕にまかせてください」

「……は? ねぇ、自分で何言ってるかわかってるの!?」


 ラーミラさんは机を叩き、立ち上がって僕を睨んだ。


「魔王様は、危険すぎる地帯に住んでるの! マグマが噴き出ていたり、古代の罠があったり……。人間が踏み込めるような場所じゃないわよっ!」

「大丈夫ですよ。もう今日中に行ってきていいですか?」

「話を聞いてっ……」

「魔王城の危険度はよくわかりましたよ。でも僕には、あまり関係ないですから。届ける魔石を僕にください」


 ラーミラさんは僕を無言で見つめ、やがて肩をすくめた。

 棚を漁り、黒くて禍々しい光を帯びる石が入った箱を出してきた。これが魔石か。魔力が詰まっている石らしい。魔王様は、これを何に使うんだろう。


「……もう意味わかんない。でもあなたを止めても無駄みたいね。命を落としても知らないわよ」

「大丈夫です! 行ってきまーす」


 やった! ラーミラさんの了承を得られたぞ。

 僕は箱を抱えると、ステップを踏みながら店から出て行った。





 風の加護を使い、魔王城はすぐに特定できた。東の果てにあるらしい。

 長い道のりを圧倒的な体力と速度で疾走し、湖や海があれば、水の加護を使って泳いでいった。今までの配達で一番長い道のりだったため、途中で休んだりもした。


 食事をしながら、美しい山、魚が透けて見える湖、ホタルがいる森。どんな景色も、僕の記憶に残る素晴らしいものだった。




「あれが魔王城?」


 やっと、魔王城が見える場所までたどり着いた。

 黒と紫のデザインで造られた魔王城。見上げないと、その全体像は視界に収まらない。城は、高い山の頂上に建てられていた。


「すごくかっこいい……! あそこに魔王様が住んでいるのか」


 普通に考えたら、人間の配達員が魔王城に来るなんて、聞いたことないな。

 でも僕は人間という幅を超え、最強ステータスを持った配達員、デリバーなのだから!


「どんな感じ……うわっと!」


 山を登り始めた僕。さっそくだが、急に開いた落とし穴に落ちそうになった。

 なんだこれは! 覗き込むと、針がある。落ちたら即死だろう。

 なるほどね……。古代の罠って、こういうことか。魔王様、ちゃんと罠を片づけないと、僕以外の誰も魔王城に来ませんよ。


 でも、さっきのはまぐれ。

 僕のステータス……体力や攻撃力だけでなく、「運」というスキルも9999だ。

 これは罠の回避率などが上がるもの。僕は直感で歩いていくだけで、殆どの罠を回避できた。



 山の中腹辺りに来た頃。段々、気温が上がってきたと思ったら……

 そこには、マグマの湖が広がっていた。

 ここを超えないと進めないのか。人間が入ったら、即燃えつきて死ぬだけだろう。


 よし、ここで3つ目の加護の出番だ。

 炎の加護……「獄炎ごくえんまい」。炎を自在に操ることができ、熱に対しての耐性を得る。

 僕的には、これが一番強い加護なんじゃないかなぁって思ってるよ。


「炎の加護……発動!」


 そう叫んだ瞬間、地面から青白い炎が出現し、僕を囲った。

 そして消える。この瞬間に僕は、どんな熱さも効かない体になったのだ。


「よっと」


 マグマの湖は底が見えないけれど、案外浅い。膝までしかつからなかった。

 加護のおかげで熱さを感じない僕は、さっさと湖を渡り切ってしまった。




 でも今のところ、空を飛べる人だったら、特に問題のない事態だ……。

 なぜ誰も魔王城にたどり着けないんだ? そう思っていた僕に、答えはすぐに提示された。


「おぉっ、なんだこいつ!」


 僕の前に現れたのは、見上げるような大きさの巨大なドラゴンだった。

 魔王城の近くなのに、こいつが現れるなんて。きっと勝手に住みついてしまっているんだろう。ドラゴンは空中に火を放ち、咆哮を上げている。空を飛んでいて炎に直撃されたら、たまったもんじゃないな……。


 ドラゴンは僕を睨むと、炎を吐こうとしてくる。僕は身を転がし、燃え盛る炎をかわした。

 敵対する気か。だったら仕方ない、追い払うしかないな!


「炎の加護!」


 僕は手を頭の上に出した。今度は赤い炎が集中し、巨大な球の形になっていく。

 この僕の魔力も、9999の最大値。その全力を放出し、やがてドラゴンより巨大な炎を作り上げた。


「グオオッ……!?」


 ドラゴンは目を丸くした。

 慌てて逃げようとするが、大きな巨体で素早く動くのは難しい。その前に、僕の火球が放たれた。


「ギャアアアアアッ!!!」


 火を吐くドラゴンも、僕が生み出した火球の熱さには耐えられない。攻撃に直撃され、あまりの熱にのたうちまわった。

 ……さて、最後の技だ。巨大なドラゴンがいたら、魔王城にはたどり着けない。


「風の加護発動……『みどり疾風しっぷう』!!」


 僕が叫ぶと、その場に激しい風が舞い起こる。

 竜巻のような風は、倒れているドラゴンの体を、いとも簡単に巻き上げた。


「……アンギャアアアア!?」


 いくら大きくても、女神の加護が宿る風の力には逆らえない。

 ドラゴンは悲鳴を上げながら、山の上から遠くへと飛ばされていった。




 ふぅ、ごめんなさい、ドラゴンさん。大けがは負っていないことを願います。

 俺は静かに、山の上から世界の広さを見渡した。

 町や都市、遠くに見える氷山や火山。まだ見ぬ景色がすべて見える。魔王様は、こんな素晴らしい絶景を見れる場所で暮らしているのか。僕は凄く羨ましいと思った。


 さて、配達の仕事に戻らないと。





「そういえば、前にラーミラに依頼した魔石……いつまでも届かないな……」


 魔王城の中、玉座に座り込んだ魔王は、一人でため息をついていた。

 数週間前から頼んだのに、ずっと届けに来ない。もしや、依頼を放置されているのでは……



 そう思った時、魔王城の入り口が開いた。


「誰だ? もしや、配達員か?」


 魔王は体を乗り出す。

 やっと来た。しかし、ここまでの道のりは大変だっただろう。どんな強者が配達員としてやってきたのか……。



 しかし、笑顔で歩いてきたのは、たった一人の人間の青年だった。


「魔王様! 遅れて申し訳ございません。配達員のデリバーです。魔石を届けに来ました!」

「……」


 魔王は表情が固まったまま、人間を見つめている。

 どういうことだ? 人間……が? どうやってここに来た?


「魔王様、初めて見ました。すごく威厳のある姿ですね。ところで、魔石を何に使うんですか?」

「……え、あぁ、俺の魔力を増幅しようと思ってただけだが……」

「そうですか! もっと強くなるんですね。頑張ってください。では」


 デリバーと名乗った男は、魔石を置いて、さっさと城から出て行ってしまった。

 魔王はしばらく何が起こったのかわからず、ただ呆然とする。


「……人間って、怖っ」


 この世で一番侮ってはいけない生き物は、もしや人間ではないかと……魔王は肩を震わせたのだった。




◇After that(その後)◇




「ラーミラさん! 魔王城に魔石を届けておきました!」


 僕が店に戻って声を張り上げた瞬間、ドンガラガッシャンと、誰かが盛大にずっこける音がした。

 奥を見ると、棚で品を整理していたラーミラさんが、はしごから落ちたみたいだ。


「ゲホッ、ゲホッ……ごめん、今なんて?」

「だから、魔王城に魔石を届けてきました」

「……嘘でしょおおおおおおお!!??」


 甲高い声を上げ、ラーミラさんが興奮気味になる。


「ねぇ本当!? それ嘘じゃないわよね!? 無事に魔王城までたどり着いたの!?」

「もちろんです! あぁ、いろんな景色を見れて楽しかったな」

「もうあなた、吸血鬼や魔王様より怖いわ……。渡す給料がなくなっちゃうからやめてよ、トホホ……」


 ラーミラさんは頭を抱え、机に突っ伏した。

 僕に渡す給料がなくなるだって? 確かに、今回渡されたお金は、巨額の金貨100枚。いや、嬉しいけどさ……。僕、大金を求めてるなんて言っていないんだけど。


 それより僕は、配達員を続けたい。

 このチートスキルがあれば、魔物や環境は何の脅威にもならないのだ。

 そして、普通なら相当の努力を積み重ねないと見ることすらできない、世界の絶景。僕はそれを見られるだけで満足さ。


「ラーミラさん、次の仕事をお願いします!」

「ねぇ嘘でしょ……!?」


 いつか僕は、この異世界のすべての景色を見た人間になりたい。配達員として、届けるものはしっかり届ける。これが、世界の景色をめぐる僕への使命であって、生きる理由だ。

 きっと女神様も、僕がこういう生き方ができるように、加護を与えてくださったのだ。



 僕は今日も配達員として、異世界の外の空気を吸っている。

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