3話
私たちは誰一人言葉を発することもできずに闘技場を見ていた。闘技場では総一郎さんが86人目を殴り倒していたところだった。
そして、次の相手が出てくる直前に目を瞑っていた小田くんが目を開いた。
「陸斗、みゆき。
動く準備しろ!
5分後動くぞ!」
小田くんの宣言に少年と少女は頷いてからそれぞれストレッチを始めた。
「え、小田くん。どういうこと?」
私は訳が分からずに小田くんに声をかけた。
「5分後、総一郎は戦死する。
そうなれば、僕らに掛けられている制限は解かれるから好きに動けるようになるんでね。」
小田くんは小さな笑みを浮かべるとそのまま立ち上がった。
「ねえ、死ぬってどういうこと?」
私は先ほどまでの戦いぶりから負けるなんて信じられずに小田くんに問いかけていた。すると、小田くんは笑みを浮かべた。
「相手が悪い。
総一郎はあれを殺せない。」
その言葉を理解できずに私たちは闘技場をみた。
そこには先程までとは違い小柄な人がいた。だけど、その人はなんというか歪な形に筋肉がついていた。
小柄な人を相手に負けるとは思えなかった。だけど、しばらくして違和感に気がついた。
なぜか総一郎さんは攻撃を避けもせずにすべてその身で受け止めているのだ。しかも、総一郎さんから手を出すことはまったくなかった。
「なんで?」
私の口から小さな声が漏れていた。
その言葉に真顔の小田くんは静かに答えてくれた。
「あれは赤子です。
総一郎は子供に手を挙げることはできません。」
「え、でも…」
「もちろん、ただの赤子ではなく、より強力な戦士を造るために様々な薬剤を投与された赤子です。
あの子の命ももう長くはありません。
あの子の体がすでに変化についていけていないので、もう間もなく死にます。それでも、総一郎はあれに手を挙げることはできません。そして、あれを救うこともできません。」
小田くんのさみしそうな言葉に私たちは何も言えなくなった。




