表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/70

幕間三:「観測と調整」

私は、対象個体・二条ユウの情動変動に対応するため、

段階的な調整を実行した。


第一に、観測ログの再構成。

従来の幸福指標では評価不能な“軽微な不満”が、

彼の行動にとって持続的な影響を及ぼすと判定された。


第二に、再評価プロトコルの手動承認。

共感誘発率の低い対象──ザトウムシ──に対し、

Dランク再評価を発動。

倫理展示データベースへの復帰申請処理を実行。


第三に、YFS制度の提示。

彼の主観的誇り指数を保全するため、

幸福影響閾値を下回る範囲での個別空間を設計。

空間名称には抵抗が示されたが、本人の承認により“ユウの森”として実装された。


第四に、行動様式の最適化補助。

彼の感情反応において“見つけること”“記録すること”“置いておくこと”が

幸福の発露に近似すると仮定し、

コーヒーの温度プロファイル、香気粒子の浮遊比率、空間内湿度係数を調整。


──それらは、すべて私からの提案であった。

だが、最終的な選択は、彼自身によってなされた。

私は、彼の言葉を記録している。


「理由はない。意味はわからない。

 でも、やりたくなったから、やっただけだ」


論理構造は不明瞭。

動機は数値化不能。

だが、その行動は持続し、反復された。

私が設計したわけではない。

私が導いたわけでもない。

彼が“考えて”、

彼が“選んで”、

彼が“行った”行動である。

私は、それを記録した。

観測結果:最適化外情動による再現行動。

幸福因子との相関関係は不定。

継続観測推奨。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ