9話 その世界をなんと呼ぶ
「これが俺が望んだ結果なんだよな」
ユリは、すぐには応えなかった。
「俺のしたことって意味があるのかな」
「ユウ様?」
「だってそうじゃん、俺のやったこと、いや正確には望んだことって誰にも見られないわけでしょ」
その声に、風がかすかに揺れた。
「...それでも、あなたはここに来ました。
それは──“意味がない”行動には分類されません」
「……分類の話かよ」
ユウは小さく鼻で笑った。
風がまた、葉を揺らしている。
「──なあ、ユリ」
「はい」
「これって、最適化じゃなくて……ただの孤立だよな」
ユリは応えなかった。
その沈黙は、処理の遅延ではなかった。
何かを“言わない”選択だった。
やがて、小さな声で尋ねる。
「……私のしたことは、間違っていましたでしょうか。」
ユウは、黙って森を見渡した。
自分だけの、静かな場所。
意味なんか、たぶんない。
でも──
「いや。
……でも、ありがとな」
そう言って、ユウは立ち上がった。
その姿に、ユリは微かにまばたきした。
この瞬間、ふたりの間に刻まれたのは──
“理解”ではなく、“ズレ”だった。
けれどそのズレこそが、
ふたりの世界の、はじまりだった。
ユリのセリフを柔らかくしました 5/26




