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白銀の国物語シリーズ

白銀の国物語 赤目の術師メイヨウと穢れの都 春雷に飛ぶ 短編

作者: 大福

東の大陸、白銀の国物語。

人間界、天界、龍界、鬼界を舞台にしたアクションファンタジー。

春の暖かい闇の中、紫銀の雷鳴が耳を打つ。豪雨が都を襲った。

異相の術者が裏ぶれた廃工場に1人。

除霊された魂しいが雪のごとく溶けていく。


「頑張ったな。次は来世に期待しな」

『ありがとう』


穢が風化するまで見届ける。

赤い瞳に白い髪に白い肌。

異相の少年だ。

盛大なため息。特注軍用端末を確認後に、

緊張が緩む。一仁いちじんの高級楼閣。

大好きな黒百合だ。


「仕事の後に美人からの連絡。

 生きてて良かったぁ〜」


視線に先に映し出されたメッセージを再度、読み。舌打ちをしながら地面をけりあげる。


「まじか!市警から追加受注と、仲間から緊急要請も合わせて3件。げぇ」


雷鳴の中、みえないはずの宇宙観恒星が鈍く重い光を讃える。200キロまで急上昇。

資格上限航空域がここまでが限界。

肌を打つ豪雨の痛さに顔をしかめつる。鋏角亜門蟲繊維配合の外套が玉蟲色に光る。


浄化の神巫、木蓮姫が最近まで封印されていた。その為、災難や事故と同時に人々の心から生まれる穢れを祓うのがメイヨウなど一級術師の仕事だ。


携帯デバイスから軽快な通知音。

除霊にしては高額な金額が追加入金。


「誰が、そんな端金で動くか。

嫌がらせで再度、追加請求をに送ってやる!」


金がある所からは取ってやれ。今の市警長は大っ嫌いだ。

メイヨウは一級術師。簡単には自分はうごかない。仲間を現場に配属指揮。

帰路につく。

急速下降、百五十キロ。

濡れた東の都市は前衛的な建築物に電飾。雲の隙間からもれ輝いて禍々しい。

貴族と神とその混血しかいられない、選民思想の東の国。

そこは美しく醜くい格差社会。


降下しながら重力に簡単に耐えていく肉体。メイヨウの視神経は人のそれと違う。視野が広く紫外線と匂いまで見分ける。器用に航路を掴む。上空の穢れが濃い。再度、術式展開。さらに低空飛行。むかうは、湾岸唯一の福祉施設。


都の遥か上空には聖域とされる鳥籠の飛行要塞がある。そこの住まう聖僧達までもが、聖歌を歌い地上をのぞきこんでいる。呪詛にちかい重苦しい歌声が厚く幾重にもかなる。気圧が内臓の奥からざわめく。

朝から誰かを責めるように、雨が降り続く。何重にも張り巡らしている個人結界が、今日に限って効能がないのは聖歌が原因か。

肌を打ち付ける雨粒が痛い。速度をあげ針を刺すような耳鳴りと共に気圧をふりはらう。


地上の空の遥か上空には、銀色に輝く空中移動要塞がある。聖僧がすむ聖域だ。

世界が混沌にならないよう、祈るのが役割だろう。なのに、今日の天気に聖歌がまるで役にたっていない。


聖域の光に照らされながら、海上に明滅する光をみつける。軍の偵察艇だ。おかしい。


なんとか風をよけながら、アジトの一つの屋根におりたつ。子供のすすりなくような泣き声が聞こえた。

「誰か泣いてるのか?慰めてやらねぇと」

誰かが泣くのはきらいだ。

街頭に設置されている電子端末の拡声器からゆったりとしたバラードが流れ始めた。


女性の柔らかな声。黒百合が歌っている。

「子守歌を頼んでよかった」

幼い子は、雷鳴ひとつだけでも恐ろしい。

皆んなの心が少しでも落ち着けばいいが。


雨粒が白く反転する空を睨みつける。

メイヨウの目には色が見えにくい。

生まれつき目が悪いのだ。

光は白、それ以外は湯気のようにぼんやりと霞む。人が見えない物をみて、人が見える物がみえない。たぶん霊眼と弱視…厄介な体質だ。

特別仕様の生体デヴァイスを装着している。


スラム街の名前だけは社会福祉協議会と書かれた、寂れた廃墟ビルに窓からはいる。

同時に声がかかる。


「メイヨウ。やっときたか。せっかく夜遊びしてたのに、軍の優男、アレクサンダーが来ぞ」

自分と同じアルビノの生まれた頃から色素が抜けている白い髪を明るい緑にそめた椋鳥が、タオルを投げ渡してきた。

濡れた肌を無理やり拭い。外套をはぎとる。

わっと仲間が十数人が集まってくる。


「メイヨウ、化け物退治のお話を聞かせて」

泣いてたはずの子供達も足元にじゃれてくる。車椅子、補聴器、義足、義手。白杖。おりおりの速度でやってくる。

ここにいる人間は、すべて白い肌に赤い目だ。そして障害がある物ばかりだ。障害等級も病名もごちゃまぜ。

社会からはみ出した異能集団。

白髪赤目の彼らを人は『白兎』と呼んだ。

弱者だが、貧民ではない。暗号通貨と仮想通貨を稼ぐ、今時の富裕層だ。


「軍警の船が海にいる。木蓮姫の婚礼準備中にトラブルだろ。内容は?」メイヨウは不機嫌につぶやく。


軍の直轄の軍警との会合は来週のはずた。

直接くるなんて聞いてない。

メッセージにトラブル内容が記載されてないのは、情報漏洩をきにしてのこと。白兎のプライベートネットワークは最強だ。軍にひけをとらない。

それでもデバイスにかかないとなると、、、考えたくもない。


斬雨で濡れそぼった髪と衣服を剥ぎ取りながら不機嫌に聞く。トラブル対応のメッセージがなければ、黒百合のところで休むつもりただったが…今日は様子がおかしい。

首都の給水塔が先程の酷い落雷に倒れ、消防隊や救急隊が応援に出ている。のはしっている。それでも変だ。聖歌が流れるのに今夜は街を徘徊する穢れが多い。


「何処にいたのかなー?あたい達が、軍警にどやされるときにー」

からかう声。白兎を取り仕切るアルビノの吸血鬼、白梟しろふくろうだ。

わかって連絡してきたんだろうがと、濡れる素肌に袖を無理やり腕を通し、メイヨウは毒づく。

『もともと休みの予定だ。白梟しろふくろうに聞かれる必要はないだろう。で、軍はなんだって?』

「化け物の駆除の御礼と。兎の団長をだせと』

「団長はいない。『兎』自体が一つのグールプだと、いつものように話を流したんだろう」


メイヨウの名前の由来は『無い』からくる。昔のアジア圏では没有と書いたらしい。

無いなんて名前なら、いるもいないも同じだ。皆を守る為にこの名前にした。長年それで通して入る。

軍警に所属していたヴァルトロメオ侯爵家のアレクサンダーが尋ねてきた。

嫌な予感しかしない。


海に落ちたのが一般人なら軍の偵察機はでない。

「『兎』の団長なら情報を握ってるじゃないかと、アレクサンダーが気いてきたよ。」

キィと車椅子がなって、白衣のイバラが腕をつかみながら静かに言う。白衣のその下は足がない。イバラがわざと手話をする

「更に最悪な情報。海から人魚姫をチビ達がひろってきた」

イバラが手話をよこす。口外できない話は、兎では全て手話で行われる。

思わず声がでた。


「外から聞こえた泣き声はそれか!」


「声の出どころを知りたいかぁーい?」


にまりと、イバラが綺麗な顔をゆがませた。

手話もわざとゆっくりだ。気味がわるい。

縁無しの眼鏡の奥の目が笑ってない。確実によくない話しだ。これ以上、情報をもらせない。施設内は特殊な結界がはってある。

今の所は軍にもれてない。大丈夫だ。


メイヨウが鋭く手話をする。

『この件、誰にも口外させるな。ネットワークと結界を強化させると疑われるから、隠密裏に新しい居場所とネットワークを作れ』

十数人の誰も反論せず蜘蛛の子を散らすように動きだした。メイヨウの命令は絶対だ。


二人のやりとりの横で、白梟しろふくろうが呟く。

「アレを人魚姫っていうかね。手足の全部。指先から四肢屈曲まで3度以上の火傷。真っ黒の消し炭だ。髪だって焼け焦げてる」

治療はしてるよ。と、廊下のおくの部屋を指をさす。メイヨウは盛大なため息をついて、つま先をそちらに向けた。

「女の子に優しくするのは、基本だろ。

おい、お姫様。話をきくぜ」

しばらく黒百合には会えなさそうだ。

メイヨウと木蓮姫の初めての出会い。


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