カフェ
都内の古いカフェ。テラス席で二人の若者が対面していた。一人は五十合トシオ、もう一人は早坂カエデだった。二人は大学時代の友人であり恋人でもあった。
「トシオ、卒業後はどうするの?」カエデはコーヒーを飲みながら彼に問いかけた。
「実は…」トシオは言葉を選ぶように、ゆっくりと話し始めた。「登山をしばらくしてみたいんだ」
カエデは驚いた。「本気で?」
トシオはうなずいた。「うん。でも、それが終わったら、またここに戻ってくる」
カエデは微笑んだ。「戻ってくるのは当たり前じゃない?山で暮らすわけじゃないんでしょ」
トシオも微笑んだ。「平地の生活があるから、山が楽しいんだ、またここでコーヒーを飲もう」
二人は手を握り合い、その約束を固くした。
数年後、カエデはそのカフェに一人で座っていた。トシオは彼女の約束を果たすことができずに、行方不明になってしまったのだ。
「トシオ…」カエデはトシオがいない席をみながら、昔の約束を思い返していた。
その時、彼女のスマートフォンが振動した。それは、統合管理室からの機械による自動連絡メールだった。カエデは、注意深くそのメールを確認した。
「このコード番号…」カエデは驚いた「トシオ」
すでに涙によって、詳細情報はみれなくなっていた。