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いただきます

 空を飛ぶのはワイバーン。

 飛び降りてきたのは巨駆の騎士。


 片膝をつくような猛烈な着地で、黒竜の前に降り立つ。

 両手には立派な戦斧が握られていた。


「先ほどの魔力弾、貴様だな?」


「おやおや、ずいぶん乱暴な物言いだなぁ」


「誤魔化すな。俺は陣で見ていたのだ。よくも神聖なる戦いに横槍をいれてくれたな」


「戦争を一時でも早く終わらせてあげた。そしてワタシは食事にありつけた。お互いウィンウィン、っというわけにはいかないか。ハッハッハッハッ」


「減らず口を……。────我が名はレザリアス公国随一の戦士ガルドロフ! 白騎士よ、名はなんと言う?」


「あ、これはどーもご丁寧に。名乗り遅れました。ワタシは黒竜フェブリス。今日復活を遂げたばかりなのだよ」


「なに────? ぷっ、フッハッハッハッハッハッハッハッハッ!! そうかそうか、あの黒竜の生まれ変わり名乗るか狼藉者が」


「ちゃんと名乗ったのに笑うだなんて、ひどいなぁ」


 少し間をおいてから爆笑するガルドロフの様子を見ながら、ジークリンデは冷や汗を流す。

 ガルドロフは魔王でさえも一目置いている猛将。


 魔物相手にも引けをとらず、一騎当千の強さを見せる護国の英雄なのだ。


「武器を取れ! 勝負だ」


「武器? 必要ない。ホラ、かかってきたまえ」


「なんだと?」


「かかってきなさいと言っているんだよ」


「言わせておけば!」



 人間技とは思えないほどの脚力。

 一気に黒竜に肉薄し、巨大な刃が振るわれる。


「黒竜様!」


 ジークリンデが叫んだと同時に刃は黒竜の首筋に直撃した。


「……な、に?」


 数多の魔物を斬り倒し、どんな装甲すらも紙のように斬り飛ばしてきた斧が首筋で完全に制止したのだ。


「まぁ、こんなものだろう。安心したまえ。別に君を弱者と言うつもりはない。そういうのには懲りたつもりだからねぇ」


「な、な……」


「だが、ちょっと相手が悪すぎたかな」


 ガルドロフが次の一手を打つより先に、彼の首を掴み持ち上げる。

 もう片方の斧で何度も黒竜を打ち付けようとするも、次第に力が弱まっていった。


「君の魂、う~んイイ匂いがするね。生き残りをさばいていくよりずっと効率的だし手間もかからない。いただくよ?」


「あ……が……」


「ん? なにか言いたいことでも?」


「化け物めぇ」


「化け物……違う。ワタシは黒竜だ。世界を破壊するために生まれた絶望そのもの」


「お前なぞ……戦乙女様が、すぐに……」


「ほう、君の国には戦乙女がいるのかい? それは良いことを聞いた。情報提供感謝するよ。君は良い人間だねッ!」


「くたばりやがれぇええ!!」


「さようなら」


 黒竜の腕がガルドロフの分厚い鎧と肉体を容易に貫いた。

 先ほどよりかは上質な魂だったということでご機嫌になる黒竜。


「リンデ君、早速彼の国に行こうじゃあないか」


「戦われるのですか?」


「勿論。戦乙女の魂はより上質だ。それに、是非ともその性能を見てみたい」


「かしこまりました。ではレザリアス公国までご案内いたします」


「お願いするね」


 ジークリンデの案内のもとまた歩きだす黒竜は、今いるであろう戦乙女に想いを馳せた。

 人間の強さ、可能性に大いなる好奇心を抱いている彼は、戦乙女との会合を楽しみにせずにはいられない。


(人はなぜワタシを倒せたのか。もう一度確かめたい。あれが人間の強さや可能性の極点なのか、それともあの女のただの実力なだけだったのか)

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