表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/6

あたらしい時代の始まり

「このワタシが……────これが、人間の、力だと言うのかァァァアアアッ!!」


 聖なる光刃が『黒竜フェブリス』の胸を貫くと同時に、その肉体はボロボロと崩れていく。

 対して星屑のようにその身を粒子化させて天に昇るのは、星雲の戦乙女。


 致命の一撃を放った彼女は自らの命と引き換えに世界を守った。

 世界を破壊せんと舞い降りた黒竜を倒したことにより、世界に再び平和が戻ると思われていたが……。



 ……ズリ、ズリ、ズリ、ズリ。


 かの戦場から離れるように、無様に這いずり回る歪な欠片ひとつ。


 鉱物とも生物ともとれない、(もや)がかったナニカ。

 周囲の自然物や人工物と比較しても場違い極まりない異物。


 物も言えず、抗う術もなく、誰にも見つからないようにするそれは、黒竜の一片。


 ()()()()()()()


 行く当てもない逃走劇の中、運命的な出会いを果たす。


「黒竜様、黒竜フェブリス様」


 森林地帯を這っていたときだった。

 ふと女の声が聞こえる。


「こちらでございます。右です。もっと右、はいそう。そこから真っ直ぐ。申し訳ございません。わけあって気配を薄めておりますので」


 視覚がないので竜時代に培った超感覚で察知する。

 

「ご安心ください。私はアナタ様の味方です」


『味方ねぇ。このワタシになにかようかな? 今ちょっと忙しくてね』


「! これは……テレパシー。……私はジークリンデ。黒竜様、アナタに忠誠を誓うダークエルフです」


『ダークエルフ? 名前だけは知っているが、君のような存在に忠誠を誓われるようなことをした覚えはないねぇ。人違い、いや、竜違いじゃあないかな』


 黒竜は努めて冷静に話す。

 本来ならこんな言葉に耳を貸さずに一撃で葬り去るのだが、状態が状態なだけにそれはできない。


 むしろ今のパワーでは雑多な魔物はおろか、猪やら狼に勝つことも難しい。

 ゆえに無駄な消費を避け、ジークリンデの様子をうかがう。


 テレパシーで少し繋がったことにより、ジークリンデはダークエルフの少女であるとわかった。

 黒いフードの下には暗殺者のような軽装甲をまとい、肉付きは良く、どれほどの修羅場をくぐってきたのか想像はつく。


『ワタシに忠誠を誓うと言ったが、具体的になにをしてくれるのかな?』 


「アナタの復活を私は望んでいます。そのために一時的な肉体をご用意しております」


『ほう』


「私は、アナタに世界を滅ぼしてほしいのです」


 嘘はついていないようだった。

 テレパシーをしていると、そういうのがわかる。


 ジークリンデは本当に世界の破壊を望んでいるし、なにより黒竜を誰よりも必要としているのがヒシヒシと伝わってきた。


 とりあえずは信用はしていいだろう。

 どちらにしてもこの状態ではなにもできないのだから。


『ハァ~。どちらにしろこの姿ではなにもできない。いいだろう。君を信じようじゃないか』


「ありがたき幸せ。ではこちらに」


『なにそれ?』


「壺です」


『いやわかってるよ。それに入れと?』


「……そのお姿では他者の目につきますので。それに私が持ち運べばすぐにアジトへ着きます」


『まぁ、仕方ないか』


 ひょいっと軽くホールインワン。

 意外にずっしりとした重みを感じながらもジークリンデはアジトへと疾走していった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ