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大丈夫。何があっても私が守るよ sideナサニエル

誤字チェックがてら読み返したらすっごく中途半端だだったので予約取り消してさっさと更新。

あまり1ページの文字数に差がないようにしてるんですが、差が出てもキリがいいところまで書き切ってしまうのとどっちがいいんでしょう……

 「娘、陛下の質問に答えよ。質問を質問で返すとは礼儀も知らないらしい。それとも答えられぬほど下賤の生まれなのか」


 自身の欲しかった情報が何も出てこなかった苛立ちか、それとも王、並びに宰相である己を軽んじられたと感じたか。あるいはその両方か。

 茉莉花の出自を揶揄し、鼻で笑う宰相――ノルディック公の顔は不快そうに歪められている。


 「不敬には問わないと仰って頂きましたので。私個人については、回答の必要性を感じませんので省かせて頂きました。なにより、私が嘘で塗り固めた偽りの経歴を申し上げたところで、確認する(すべ)はないのでは? 確認できるとしたら、すでに全てご存知のはず。私に直接尋ねる意図をお教え願いたいくらいです」


 あまりに不躾な言い分。

 宰相は額に青筋を浮かべているし、王は間抜けにも口を開けて呆けている。しかしただ一人、ナサニエルは笑みが溢れるのを止められなかった。


 「偉大なる国王陛下、あなた様の寛大な御心を信じているからこそ、不躾にもお伺いしているのです。陛下は先程、私は龍神殿の客人だと仰いました。しかし私は客人としてこちらを訪ねることに承諾した覚えはございませんし、ここは私の知る世界とは言語も文化も違うようです。なぜ私はここにいるのでしょう?ご存知のことを教えていただけませんか?」


 今この場を支配しているのは茉莉花だった。ナサニエルにはそれが堪らなく嬉しい。

 王の最初の発言。その真偽がわからないなら、真実にしてやればいいだけなのだ。人の真意など、神でないのだから分からなくて当たり前。そんなものを推し測り時間を浪費するなど無駄でしかない。言質を盾に、相手の行動を縛る――交渉術の基本中の基本。


 ――欲しいな。


 龍の血ではなく、幼い頃より培われた王太子としての自分までもが魅了されていくのを感じる。

 頭の回転が速く、胆力もある。そしてなりより、恐怖を自ら抑え込み、なんでもないように振る舞える自制心。


 「手を開いて。大丈夫。何があっても私が守るよ」


 茉莉花の膝の上、軽く合わされているように見える手の下側――右手の人差し指の爪は不自然に親指に食い込み、血が滲んでいる。

 囁き、これ以上傷を増やさないようその手を握り込んでおく。微かな抵抗を感じたけれど、逃がしてはあげない。離せばまた同じことの繰り返しだ。これ以上くだらない話のために、彼女が傷つく必要などない。


 痛みで恐怖を誤魔化していたのだろう。当然と言えば当然。怖くないわけがない。一国の王という絶対的な権力者相手に、なんの力もなく対峙しているのだから。気が変わったと言われ投獄されてもおかしくない状況で、必死に自分の立ち位置を模索している姿はいじらしい。


 「殿下! その小娘をお離しください! 殿下がそのような態度だから、小娘が調子に乗るのです!」


 先程からキャンキャンと煩いと思っていたが、ナサニエルが茉莉花を見つめる間にも悉く相手にされず、我慢の限界なのか矛先がこちらにまで向かってきたことに辟易する。


 「か弱い淑女(レディ)を小娘だなんて、少し口が過ぎるのではないかな? ノルディック公。私的な空間とはいえ、人の目がないわけじゃないからね。自身の品位を疑われる真似は控えた方がいい」


 「――っ!! ……失礼いたしました。しかしっ!殿下のお優しさを盾に、無礼な振る舞いをする娘を捨ておくことは、この国の宰相として見過ごせません。どうか娘とは適正な距離をお取りください!」


 せっかく優しく注意してやったというのに、彼はどうしても自分と茉莉花を引き離したいらしい。

 単純な苛立ち半分、次期王妃の父の座を逃しかけている焦り半分。醜悪なほどに歪められた顔は、今すぐにでも血管が切れてしまいそうなほどだ。

 娘との婚約は何度も断りを入れているというのに、それでも諦めないのだから、うんざりを通り越してその執念には感服する。


 「そうだよね。常に宰相として国を憂い、私たち親子を気にかけてくれている君には感謝している。けれどなんの害もなさそうな淑女に声を荒げるなんて、少し疲れているのではないかな。今日はもう休息を取ることをお勧めするよ。――エリアス、宰相閣下がお帰りだ。馬車まで送って差し上げろ。屋敷に先触れを出すのも忘れるなよ」


 「はっ!」


 「殿下っ!?」


 エリアスに退出を促され、慌てふためいているが知ったことではない。

 ナサニエルの気持ち如何の前に、茉莉花はこの国の守り神の呼び出した客人だ。その彼女を貶めるような言葉を、宰相という立場に就く者がどうして吐けるのか理解に苦しむ。


 「父上、マリィカ嬢には私から説明します。ノルディック公(あれ)を止められなかった時点で父上も同罪なのはおわかりですね?速やかに御退出を」


 ため息をつき退出する直前、縋るような目を向けられたが見なかったことにした。シルヴェストの怒りが怖いなら、さっさと黙らせればよかっただけだ。

 実際は彼が怒るわけがないのだが、そんなことは教えてはやらない。


 そうしてようやく愛しい妖精と心置きなく会話ができると意気込み、彼女に対する疑問がさらに増えた。


 


 愛しの妖精は、不機嫌そうにナサニエルを睨みつけていた。

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