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やっと見つけた side???

ふわっと設定のゆるっと投稿

誤字脱字があったらすみません

 ――やっと見つけた。


 まさか他の魂を押しのけ、肉体を奪うような輩がいるなど想定外だった。

気づいた時には愕然とした。本来加護を授けるはずの娘に別の魂が入っていたのだから。

急ぎ行方を追ったものの、発見できないどころか気配すら辿れない。

見つけてみれば当たり前の事。



 目的の魂は異なる世界へ渡っていた。



 見慣れない建物。見慣れない服装。恐らく価値観や常識がまるで違う世界。

天高く(そび)える建造物に人がひしめき合っている。

どうやら移動手段は馬や馬車ではないらしい。

人々からは一切の魔力を感じないのに、それでも自身が知る世界よりよほど発展しているように見える不思議な世界。

 そんな世界に娘はいた。見たところそれなりの環境の元で生まれることが出来たらしい。

知性の宿る瞳は、きちんと教育を受けた者のそれだ。

これならば、そう苦労する事なく馴染むこともできるだろう。


 一人になったところを見計らい、娘の足元へ道を繋げる。同時に魔力も付与してやる。身体が馴染むまで少し時間はかかるだろうが、魔力も持たせず連れ帰ることは出来ない。それでは探し出した意味がない。

 一瞬にして景色が変わり、床に伏す娘の安否を確認する。

気を失ったようで目覚める様子はないが、呼吸に問題はないし魔力もきちんと付与された。

適正も問題なさそうだ。魔力の付与は出来ても、適正というのは魂の在り方によって大きく変わる。

穢れることなく育ったことに安堵していると、ようやくと言っていいほどの時間を置いて、遠くから騒がしい足音が近づいてきた。

多少の距離があるとはいえ、随分と呑気なものである。


 バンッ!!


 大きな音を立てて開け放たれた扉の前には、色合いがそっくりな二人の男。


 「騒がしいぞ。何様のつもりだ」


 意識して低く咎めれば、初老の男は目に見えて怯え震えている。相変わらず凡庸な男だ。


 「失礼致しました。ご無礼をお赦しください」


 対して優雅に腰を折り謝辞を述べる若い男は、床に寝そべる娘が気になって仕方ないだろうにそんな気配は見せないのだから大したものだ。

これで二人が親子なのだから恐ろしい。


 「王太子、お前の(つがい)は異界へ渡っていた。くれてやるから今後も励め」


 返事は聞かずに姿を消す。いかに神と崇められようと所詮は末席。異界から人を一人連れてくるのは大仕事だ。少し眠っても許されるだろう。

しかしこれで最悪の事態は免れた。


 「……神になどなるものではないな」


 思わず漏れた本音はきっと疲れているからだ。自身にとってのかけがえのない唯一、その彼女が愛したものを守り続けると決めた。

その選択に後悔なんてしてはいない。してはいけない。

狂うことも、追いかけることも許してはくれなかった残酷な番。


 『彼女が生まれ変わったその時には、共に生きた時とは比べものにならないほど豊かで平和な世を贈る』


 地獄のような悠久の日々を耐えるための核。揺らぐことのない絶対の指針。

 その為に、あの王太子には頑張ってもらわなければ。

血が薄まり、加護を受け取れる者が減り、そんな中で生まれた希望の人間。

アレが血を繋げられなければ、恐らく未来はないのだから――。

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