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小さい頃、両親に連れられてきたお茶会で私は初めて出会ったリディア王子に一目惚れした。
彼は頭が良くて物知りでいろんな人から好かれる人だった。
だから彼に婚約者が出来た時はショックで長い間泣き暮らした。両親や兄弟達は必死に私を慰めてくれたが私の心は晴れなかった。
それほどまでにたった一瞬の出会いで私はリディアに惹かれていたのだ。
数年後のある日、気晴らしにと無理矢理両親に連れていかれたパーティーで私はリディアとその婚約者に収まったシンディに出会った。
見た目こそ美男美女でお似合いだけどリディアの表情はずっと暗かった。なのにシンディはリディアの様子にも気が付かないで彼を振り回してる。
私からリディアを奪っておきながらリディアを大切にしない彼女が許せなかった。
幸い、私はシンディと同じ爵位だ。彼女を注意することくらいは出来る。それでシンディがリディアを私よりも大事に愛してくれるなら黙って身を引こうと思っていた。
私はシンディが化粧直しの為に使用人と移動して二人になった隙を狙って話し掛けようとした。
しかし
「や、止めてくださいお嬢様……っ!どうか……どうかお許しを!!」
悲痛なメイドの声が聞こえて思わず足を止めた。
化粧室のドアからこっそり覗くとシンディがメイドの髪を思いきりひっぱってハサミでザクザクと切り落としているのが目に入った。
「あんたの髪にこんな綺麗な髪飾り似合わないわ!こんなものつけられないように私が全部切り落としてやるんだから!少しでも動いたらその目玉、このハサミで潰すわよ」
「ひっ……!」
狂気、という他なかった。
泣きじゃくるメイドの髪をあらかた切り落として満足したシンディは、メイドのつけていた髪飾りをポケットにしまうと私がドアの陰に隠れていることにも気がつかないまま出ていってしまった。
シンディが立ち去るのを確認して私はすぐにメイドに駆け寄った。
すぐに助けたい気持ちもあったがハサミという凶器を手にしたシンディを相手にできる気がしなかった。見ていることしかできなかった自分が許せなくて凄く悔しかった。
「大丈夫……?」
「うぅ……っ……」
メイドは私と歳の変わらない少女だった。一瞬びくりと体を強ばらせたが私がシンディではないと分かると安心したのかボロボロと泣きながら頷く。
よく見てみれば頬や手に真新しい痣がある、これもシンディがやったのか。
私はメイドをぎゅっと抱き締めて慰めた。
私達貴族は仕えてくれる人達がいて初めて生活ができるのだ、貴族だけじゃない。どんな人間でも誰かに支えられて生きている。なのに生活を支えてくれる人にこんな仕打ちが出来るなんて信じられなかった。
シンディがこのまま王妃になったらリディアだけじゃなく、この国も酷いことになる。
この時、私はシンディに地獄を見せてやると誓った。




