初めての告白
何かに扮して人をからかうのもちょっと飽きてきた。
俺は能力が使えることを誰かに告白したくなった。
・・・が、初めて能力を使った小学校の同級生は
それ以来怖がって俺に近付かなくなった。
知り合いに告白したら今までの関係が壊れる可能性がある。
となると赤の他人に、ということになるな。
でも赤の他人って誰よ・・・・
わからん。
悩んだ時はビールでも飲むか。
台所に行って冷蔵庫を開けて愕然とした。
ビール無いじゃん。
仕方ない買いに行くか・・・
俺んちは代々タバコ屋だが、時々酒屋にしようかと思うことがある。
しかし絶対商品に手を付けるだろうと思い自制してきた。
でも、この暑さの中買いに行かなくてはいけないのかと思うと、
自制してきたことを後悔する。
俺は一旦店を閉めコンビニに向かった。
その途中、歩道の左側に職業安定所がある。
なんとなく出入りする人を見ていると男が一人出て来るのが見えた。
俺と同年代位だろうか?いやもうちょっと若いか・・・
ボサボサ頭にGパンにTシャツという出で立ちだが、Gパンはチーバイスのロックウオッシュだ。
珍しいのを履いているな。
結構なマニアに違いない。
妙な親近感を覚えた俺は思わず念を送ってしまった。
『すみませ~ん』
奴は後ろを振り返るが誰もいないので、再び前に目をやる。
そして正面の歩行者を確認しながらこっちの方に・・・・顔を向けた。
俺の顔を見るなり奴は”まぎら建造”をイメージしやがった。
”まぎら建造”は往年のフォーク歌手だ。偉大な歌手だがビジュアルの方はちょっと・・・
なので思わずイラついてしまったがここは我慢だ。
『こっちこっち』
再度念を送り、手招きをした。
奴は俺の姿を幻覚か現実か判断し兼ねている。
どうやら確かめに来るようだ。
おそるおそる数メートルの所まで来た。
”まぎら建造”にそっくりだ、とか思いながら
人の顔の無精ひげまで具に観察し出した。
いくらなんでも近すぎだろ。ちょっと恥ずかしい・・・・
注意の意味で念を送る。
『キスはだめ!』
奴はびっくりして3メートル程後ろに吹っ飛んだ。
良いリアクションだ!
お前はザリガニかって!
面白かったが、奴はちょっとイラついている。
一応謝っておくか。
『冗談だよ!脅かしてごめん。俺テレパシーが使えるんだ』
『え!?なにそれ?だからなに?それがなに?』
状況が分からずパニクっている奴に俺は続けた。
『実は俺、お供を探しているんだ』
『なんだ?お供って?あんた桃太郎か?きび団子でもくれるってか?』
そんな物持ってる訳ねえじゃん。
ちょっとからかうか。
『きび団子は無いけどこれをやってもいいよ』
俺は自分の履いているGパンを指差した。
奴はこれがチーバイスの54年物だとすぐ分かったようだ
やっぱりマニアだな。
『え?ホントに?』
『何なら今あげても良いよ』
と念を送りながら俺はGパンを脱ごうとした。
奴は慌てながら止めに入る。
『ちょっ・・ちょっと待って!』
へへっ脱ぐ気ねえよ。
奴はからかわれたことに気付くと怒って向こうに行こうとする。
そこで俺は念を送る。
『冗談、冗談!ちゃんと時給あげるから』
『え?時給いくら位?』・・・奴は振り返り俺に近付く。
『500円』
『馬鹿らしい』・・・再び俺に背を向け行こうとする。
『冗談!千円でどうよ』
『千円ならいいかな』・・・再び近付く。
『交通費込みでいい?』
『交通費ぐらい出せよ』・・・行こうとする。
俺の顔を見ながら近付きーの、顔を残してUターン・・・ってランウェイじゃねえよ!
こいつ面白いなあ。
その内奴は本当に帰りだした。
別れ際に念を送った。
『じゃあ気が向いたら来なよ。ここから真加町交差点を左に曲がった所のタバコ屋にいるから!』
こっちは再びコンビニを目指す。
あいつ面白い奴だったなあ。
でも、俺テレパシー使えることあいつに告白して良かったのか?
なんで俺は咄嗟にお供を探してるなんて言ったのか?
お供が欲しかったのかなあ・・・・
他人の心は覗けても自分で自分の本心が分からないことに気付いた。
能力なんて関係ない。
結局人生なんて分からないことの答えを探し続ける旅なんじゃないか。
答えなんて見つかるか分からない。
そもそも存在するのかも分からない。
もしあるとしたら風の中さ・・・
なんて、ボブ・ディランみたいな事を言っちまったぜ”まぎら健三”のくせに。
・・・・って”まぎら健三”じゃねえよ!
終




