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風の中にあるのは  作者: 佐久田恵孝
7/8

成功無き挑戦

俺は最近能力(テレパシー)を使っていたずらするのが面白くなってしまった。

今日も街に出て良いネタが無いか探していると・・・

白いプレハブ小屋の前に来た。

住居という感じでも無いし工場という感じでも無い。

敷地に塀は無く雑草が伸び放題になっている。

以前から何の小屋か気になっていたが、

今日はこっち側にある窓が開けっぱなしになっている。

中には白衣を着た男がいた。

妙に手造りっぽい機械の前で佇んでいるが、何の機械なんだ?

白衣の男に意識を集中すると・・・

なんと!

植物と会話が出来る機械らしい。

本当だったら凄いな。

へ~テレビ番組見てて思い付いたんだ。

それから30年掛けて作り上げたと・・・

ご苦労さんでしたねえ。

まあ、あんたの思う通り、成功したらノーベル賞も夢じゃないでしょうが・・・

なんか・・これから動かすみたいだ。

面白そうだからちょっと見ていこう。

ヘッドギアを付けて・・・スイッチを入れました・・・

スイッチはちゃんと入りましたねー。

そして?・・・・パラボラアンテナをポトスの鉢植えに向けてと。

なんかツマミを調整しているみたいですが・・・・

・・・ってやっぱだめそうだな。


その時いたずら心が芽生えてきた。

じゃあ俺が植物になっちゃおうかな~

奴に向かって念を送る。

『みず・・・』

おっ気付いたみたいだな・・もう一回言ってみよう。

『みず・・・』

まだポトスの声かどうか半信半疑のようだ。

そして・・・・・・水差しを持ってきた。

で、その水を・・・やりましたと。

次は何するのかな?

「他に欲しい物はある?」

話しかけましたね。

『・・・にっこう』

と、答えると奴は鉢を日の当たる場所に移動して話しかけた。

「これでいいかい?」

『いい・・』

「うおーーーーー!!」

奴は両拳を突き上げて叫んだ。

「植物との会話に成功した!」

奴の頭の中は”ノーベル賞”だとか”大金”だとかがグルグル回り始めた。

面白いなあ・・・もうちょとからかってやるか。

『分け前くれ・・・』

「え?・・・いまなんていった?」

『金だよ金!』

「かねがわかるのか?・・」

『分かる』

あっ!ひっくり返った!

そりゃあポトスが金を要求してきたらひっくり返るよな。

「なんでかねなんてしっているんだ?」

『ネット』

「パソコン使えないくせになんでネットに繋がるんだよ!」

『ワイファイ』

我ながらふざけ過ぎだとは思ったが奴は信じた様だ。

ついでに植物はテレビやラジオの電波も受信出来て

世界情勢まで既に把握している事を笑いをこらえながら教えてやった。

それを聞いた奴は植物が世界各地で行われている環境破壊に腹を立てたりしないのか心配しだした。

そして以前観た映画を思い出していた。

それは植物が未知の力で人間の脳をコントロールして、世界中の人々を自殺に追い込むという話だ。

俺も見たことがあるが恐ろしい話だった。

奴は植物が人類に制裁を加えようとした時、この装置が植物の力を増幅してしまうことを危惧した。

相当悩んでいるが・・・長年かけてせっかく造った物を無駄にしたくはないし

・・・かといって植物に殺されるのも嫌だし・・・


とりあえず装置のスイッチを切って一休みするようだ。

ちょっと脅かしてやるか。

『切るな!』

奴はびっくりして手を引っ込める。

『スイッチを切ってはいけない・・・』

威圧感を出して念を送ったら・・・・

あら~気絶してしまった。

これはまずい逃げよっと。


**************


翌日。

逃げて来たのは良いけど、昨日の発明家のことがどうも気になる。

まさか気絶するとは思わなかった。

もしかしてショック死してないか・・・

心配なので、様子を見に行くことにした。


そのプレハブ小屋に向かいながら、

パトカーや救急車なんかが集まっていて規制線が張られている場面を想像していた。

やきもきしながらも、近付くにつれ昨日と変わりない小屋の周辺が見えて来た時、

取りあえずホッとした。

そして・・・・窓は昨日と変わらず開けっぱなしのままだが奴は・・・・

起きてた!

良かった~

なにやら例の機械を覗き込んでいる・・・

何やってるんだろう?

奴に意識を集中すると・・・

機械の壊れている箇所を見つけた様だ。

壊れたおかげで脳をコントロールされずに済んだと思っている。

最初から植物の信号なんて拾って無かったんだけど・・・

まあいいや。

もう帰ろう。


奴の発明は失敗に終わった。

もう諦めたみたいだ。

奴の挑戦を

30年も困難に挑戦し続けたと見るか。

30年も掛けて何の結果も出せなかったと見るか。

・・・・一般的には後者だろうな。

努力を褒められるのは子供のうちだけだ。

大人になれば結果が求められる。

「挑戦し続けました!」

なんて台詞言い訳にしかならない。

ただ・・・馬鹿にしていたけど、1つのことをそんなに長く続けるなんて俺にはできない。

周りの評価に流されず自分の信念を貫くのも1つの生き方なんじゃないか?

奴ならいつかは成功できると思う。

それなのに、なんで諦めちまうんだろう?


・・・って俺のせいか。

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