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持たざる者の叛逆記  作者: 綾蓮
1章 持たざる者
4/107

1ー2 家庭教師ライブラ

オルドリアの世界観の説明などを前書き、後書きに補足はせていただきます。読まないでも大丈夫ですが、背景設定などオルドリアの世界をすこし深読みしたい方は是非お読みください♪


注H31,01,20,21:47に、改稿部分とし刻印師→【刻印術】と変えさせていただきました。


H31,1,25 17:21 大幅に改稿しております。感想をいただき非常に参考となるご意見をいただいた為です。

シドが産まれてまもなく5年の年月が経とうとしている。


この約5年の間、両親だけでなく城の人間、領内の皆からシドは愛を受けて何不自由なく育まれてきた。

その事がシドを明るく快活に育ててきた。


またシドはヴァラン家の長男として、シドニスが専属でつけた優秀な家庭教師達のもと次期当主としての英才教育を施されていた。


その中でも特に優秀な家庭教師の名は大賢者ライブラであった。


彼は魔導師であり、また同時に素晴らしい知恵者でもある。

壮年に見えるが魔道をたしなむ者にとって、老いは誤魔化しが効くもので、実際の年齢は不明であった。寿命すら欺き、魔力が続く限り永遠の命を生きる事ができる魔道士がいる。彼もそうした魔道士の1人であった。


そうした誰もが羨む環境下で育ったシドは非常に聡明で優しく強い子供へと成長していたのである。


そんなシドに対し、ライブラが授業をつけている。


「シド、まもなく判別の儀です。貴方には色々な事を身につけさせてきましたが、判別の儀を迎えるとギフトにスキル刻印を行う事が可能となります。」


スキルの刻印についてはシドは前にも説明を受けていた。

「はい、先生、よく覚えております。ギフトにスキルを覚えさせる事ができる技術ですよね、覚えてますよ先生!」

と自信満々で得意げに答える。


ライブラは頷きながら続ける。


「貴族として産まれた貴方には、1からスキルを習得するのではなく、【刻印術】により、数々のスキルを身につけてもらいます。貴方のお父上や、先代様のようにね。それはギフトにかなりの負担を強いる事になるでしょう。」


「先生、そのお話も何度も聞いております。もちろん覚えてますってば。だからそんなお話より今日は決闘の訓練をしましょうよ。僕は剣術が大好きです、先生!」


シドはライブラに目を輝かせてお願いする。

いかにもわんぱくな少年に育っているように思えるがこのくらいの男の子であれば普通であろう。身体を動かす事が大好きなのである。


ライブラは首を横にふり、その代わりにシドの頭を優しく撫でながら諭し始める。


「いいえ、今日は儀式の事、その重要性をもっと話さねばなりません。あなたは貴族のご世継ぎです。それを肝に銘じ聞きなさい。貴族には血族の集大成ともいえる血統スキルがあり、それを絶やさない事が貴族として最大の責務です。なので、儀式が終わり次第、血統スキルを受け入れるための前準備として必要なスキルを刻印していくのです。」


「血統スキルを覚える為になんで他のスキルが必要なのですか?」


シドは珍しく疑問を口にする。わからない事があり、少し授業に興味を持ち始める。


ライブラはシドの旺盛な知識欲に軽い笑みを浮かべつつ、ゆっくりした言葉で説明しはじめる。


「それはですね、貴族の血統スキルは代々の当主にのみ引き継ぐ秘伝だからです。その秘伝を悪意ある他人によりスキルを奪われて他者にスキル刻印をされたらどうなりますか?」


「それは大変な事です先生!」

シドは聡明だった。ライブラの質問の意図にすぐ気付いたようだった。


「ふふ、正解ですよシド。そうゆう事です。なのでその血統スキルを身に刻むために、貴族達は条件を施しているのですよ。命より大切な代々の遺産ともいえる血統スキルを守るための貴族の知恵ですね。その為に必要な下準備を行う事がとても大切です。」


暑い陽射しがシドとライブラを照りつける。シドは汗を拭い更にライブラの話を漏らすまいとライブラを真剣にみて大人しく耳をかたむけている。


「決闘訓練、剣技などは剣術や魔道などに役立つ技能系のスキルを身につけてからで十分です。まずは知識を身につけておきなさい。時として知識は万物における最高の武器となるのですよ。人はそれを叡智と呼ぶのです。」


シドは座学は嫌いである。苦手なのではなく、嫌いであった。それなのにライブラはしきりに知識の必要性を説くのである。すこし仏頂面をする。


いかにもこういったところは子供であり、シドの愛らしさを全面的押し出すのである。


シドは、子供にしては非常に目鼻立ちがしっかりしており、非常に将来が楽しみな可愛い少年であった。

このまま成長すれば後10年もすれば、女の子が放って置かない素敵な美少年になるであろう事は明白だった。


シドは自身が散々そのように持て囃されるために自分の可愛さを最大の武器として少しあざとい部分もあったのだが、ライブラにはそういった手段は一切通用しなかったのである。


ライブラは構わずに続ける。


「そして今貴方が学ばなければならない事は貴族の礼節と儀式の知識です。儀式を正確にやり遂げる事は貴族としての品位を他家に示す事につながるのです。失敗は許されませんからね。」


ライブラは最後はからかうようにシドの膨らませた頬を抓りながらいう。


シドは本当はライブラにからかわれた事の方が嬉しいのだが、わざと嫌そうな顔をしながら抓られてしまった頬をさすっている。


「でも、判別の儀は貴族だけじゃなく5歳を迎えた子供全員が行うものですよね、どうして貴族だけがそこまで形式に縛られないといけないの?」


疑問を素直に口をする、そして一度教わったことは忘れないのがシドであった。

ライブラからしたら教え甲斐のある生徒である。


シドは貴族のしきたりが正直嫌いだった。面白くないというのが一番の理由である。


ライブラは子供の素直な思いに苦笑いをしながら答える。ライブラも貴族のしきたりやプライドについては実は好意を持ち合わせていなかった。


「それは単に貴族の誇示ともいえますね。ギフトの器の大きさは産まれた際に決まっており、ギフトは成長しません。ならば、なぜ産まれた時に判別しないのでしょうか?」


さすがのシドでも考えが及ばない、シドはお手上げのポーズをとって、ライブラに答えを早く教えてとせがむ。


「それはギフトがスキルを生成するからです。産まれたばかりではスキルは例外を除きまだ存在しません。産まれてからどのように過ごし、また何を学んだかでスキルは生涯を通し、経験をもとに身についたり成長をしていくのです。」


ライブラはシドに丁寧にゆっくりと説明する。

初めて教える物事はいつもこうだった。


「貴族達はいかに自分の子が優れているかを対外的にも競い合います。見栄でもあり、また政略的にもです。その為に今の貴方のように子供の時から英才教育を施し、判別の儀でギフトと身につけたスキルを競う場とする事で互いを褒めあい、また同時に牽制しているのですよ。」


ライブラは説明するが、さすがにシドは難しい顔をしている。

聡明な子ではあるがそうした貴族の誇りや見栄までは素直であるがゆえ、理解しずらいのであろう。


「5歳という年齢はそのスキルの個性が出始め、身につき、その子の最低限の才能や資質を見極める事ができる年齢なのです。もろちん異端者(・・・)はいますがね。」


遠い目をふとライブラが浮かべたのをシドは見逃さなかった。

しかし、すぐに表情がもどり、なにも言わないライブラを前にシドはあえて追求することをしなかった。



「儀式の件ですが、リムージアの貴族達は勿論、王室の方、他国の有力貴族も。ヴァラン家の長男の判別の儀とあればお越しになられるでしょうからやはり粗相のないよう務めなければなりませんよ。

それがヴァランに産まれた貴方の最初の貴族としての仕事ですよ。」



オルドリアの世界では、【刻印術】というスキルを持つ者はギフトからスキルを具現抽出し、刻印化する事が可能である。


スキルを抽出された者はスキルを失うが、逆をいえばギフトにスキルを刻印された者はスキルを苦労せずに身につける事が可能なのである。


貴族は金銭に物をいわせ、スキルの売買をし、スキルを集めている。


その為、スキルは高く取引されるのである。


オルドリアの世界では手に職をつける事はスキルを身につける事につながり、非常に重要視されている背景はそういった理由の為である。



さらにライブラから色々な事を教わったシドであるが、

「判別の儀かぁ、父上、母上、先生の期待に応えられるといいな。それに弟のジュリアスにも良いところを見せたい、先生儀式の手順をもう一度しっかりと復習しよう!」


シドにとって、家族の為に、また愛する父と母の期待に応えたいという想いこそ一番強かったのである。


ただ、この時のシドには判別の儀で訪れる残酷な運命など知るよしもなかった。


ギフトやスキル刻印などの話は分かりにくい部分もあり、大分説明文書となってしまいました。

読みにくく申し訳ありません。


背景設定の補足ですが、スキル売買は犯罪ではなく、むしろ自分の死の直前だったり、職を引退する際などに継承させていくものとしての考え方がオルドリアでは一般的です。


ただし、犯罪行為としての刻印化もあります。

それは誘拐や監禁など暴力的な状況での刻印です。オルドリアでは貴族はお互いのために戦時下でもあれスキルの剥奪はしないよう協定されております。逆をいえば精神的抵抗よりも刻印収奪者の技量が高ければできます。


そしてもう一つ血統スキルについてですが、貴族は血族をあげてスキルを継承し続けている血統スキルがあります。

このスキルは家柄毎に違うのですが、スキルを精錬し続けて当主にだけ引き継いでいるスーパースキルとなります。

その血統スキルを身につけるためには必要スキルを満たした上で血統スキルをギフトに刻む必要があるのです。


たとえばヴァランの血統スキルは後ででてきますが、必要スキルは【剣術】のスキル、【破壊術】のスキル、更に【剛術】のスキルといったスキルを覚えている事が前提となったりしています。


またスキルはコストといってしまえば分かりやすいのでコストという言葉で対応しますが、ギフトには容量があります。


その為、ギフトの容量を超過するコストのスキルは身につける事ができません。


ギフトの容量は産まれた時に決まり、大きくはなりませんが、貴族はギフトの素養が高いもの同士で婚姻を結び、より才能豊かな子供を産み出す事を至上としています。

もちろん狙った通りの素養になるかは決まっていませんが才能豊かなもの同士の方がギフトの容量は大きくなりがちではあります。


またヴァラン家ですが、弟ジュリアスが産まれ、さらにイジュースは身籠っている状況です。


この後起こる悲劇がヴァラン家にどのような未来をもたらすのかお楽しみに♪

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