序伝
耳をつんざく爆音とともに炎の渦がいくつも立ち昇る、大地が熱で溶けマグマが流れる。
さらに天からいくつも閃光が降りそそぎ、地面を貫き大地を砕く。
いずれの術も《破壊術と光術の系統のスキル》を極めた者だけが辿り着く極地の術であった。
オルドリアのような動乱の世界でもこれ程の規模の戦闘は数百年単位で見ることはなかった。
先程の攻撃は全て1人の人間が行ったものである。
一体何と闘っているのであろうか?
地形に影響を及ぼすような攻撃であり、あきらかにこのような攻撃の連撃を前に生きていられる者などいようか?
そうだとしたら、それこそ人智を越えている神々だけである。
しかし…人間の男は生きていた。
炎の渦は周囲の酸素すら焼き尽くし、立っている足場は原型などとどめていない、普通であれば生き物は生きていられるはずがない。
それでも皮膚を焼き、身体の所々に穴をあけ血を噴き出しながらも立っているではないか…
攻撃を仕掛けた人物がため息をつく。
「はぁ、呆れたスキルだぜ、【絶対強者】、これでは今世ではもう手はないな。」
観念したように男は言う。
攻撃を受けた男は斧槍を構えながら猛進してきている。
一瞬で距離を詰める男に対し、
「またな」
抵抗をやめて、微笑を浮かべながらぼそりと呟く。
その一言を聞いた男はピクリと軽い反応をしたものの、そのまま斧槍で凄まじい横薙ぎの一閃を奮う。
その一撃は男の身体を両断していた。
「まただと…」
男の死体を見下ろしながら勝利した男は呟いた…
そして、数十年の月日が流れ…
物語は始まる
前日譚の前に、歴史に語られることのない戦闘を追加させていただきました。
第10部分まですでに投稿してありましたが、割り込み投稿させていただきました。