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日も沈み、月が空に浮かぶ夜の刻。


イクトはガイとともにある目的のためにとある場所へ向かっていた。


ある目的……それは姫神ヒロムの殺害依頼をしてきたキキトについて詳しく知ること。


その目的のためにイクトはガイとともにキキトについて詳しく知るための情報が手に入るであろう場所に向かい、そこで自身に依頼をした情報屋について知ろうとしていた。


「今から向かう場所に情報屋について詳しくの何かがあるんだな?」


どこに向かうかは詳しく聞かされていないガイはイクトに確認するように訊ね、イクトもそれについて答えた。


「今から向かう場所はオレもキキトもよく行く場所で、そこのマスターはキキトのことを昔から知ってる元・情報屋なんだ。

その人に会って話を聞けば分かると思うんだ」


「……その人物がキキトについての情報を隠す可能性は?」


「そうなったら力づくで聞き出すだけだよ。

……加勢してくれるよな?」


さぁな、とイクトの言葉に対してガイは適当な返事を返すと彼に向けて言った。


「手頃な武器があれば考えてやらんでもない」


「ええ……丸腰なのか!?」


ガイの言葉から彼が武器になりうる物を持っていないと分かったイクトは驚いて思わずそれを声に出してしまうが、そんなイクトに向けて補足するようにガイは伝えた。


「万が一戦闘になったら手頃な武器見つけてそれ使うから問題ない」


「いやいや、言っておくけど今から行く所に刀とか無いからな!?」


「……道中鉄パイプでも拾えばいいか?」


「どこの不良だよ!?

仕方ねぇな……」


ガイの言葉に呆れるイクトはため息をつくと指を鳴らした。


するとイクト足下から出ている彼の影の一部が膨れ上がると、そこから一本の刀が姿を見せる。


「……おお!!」


刀の出現にガイはどこか嬉しそうな声を出し、早速現れた刀を手に取った。


鞘に収められた刀身を確かめるようにガイはゆっくりと刀を抜くと、鞘から姿を見せた刃を眺めた。


「……ちゃんとした真剣じゃないか」


「万が一の時のために予備の武器として隠しておいたんだよ。

まさかこんな形で使うとは思ってなかったけど……」


「さっきのもオマエの能力なのか?」


「そっ、オレの「影」の能力で影の中に特別な空間をつくってるんだ。

そこに色んなもの隠したり、最悪敵地へ潜入する際はこの中に協力者を忍ばせたりもする」


「便利な機能だな」


「かなり応用が効くからな。

どうした、羨ましいだろ?」


全然、とガイは刀を鞘に収めながら自身の能力について語るイクトを置いて歩いていこうとする。


「……せめて刀の礼ぐらいくれよ」



ーーーー



イクトはガイとともに少し歩いた先にある裏路地へ入っていき、目的地へ向かって進んでいた。



人気もなく、明かりという明かりもない薄暗い路地の中を進んでいくとある場所でイクトは足を止めた。


「着いたのか?」


「ああ、ここだよ」


イクトは目的地へ到着したと言い、ガイもそれに該当するであろう建物に視線を向けた。


五階建てのビルの裏口にあたるであろう扉、その扉の上には「BAR」と書かれた看板が貼り付けてあった。


「よし、作戦通りにオレは影の中に……」


「いやいや、ここでやってもバレるって。

というかここのマスターはオレの能力を知ってるからここではやらないからな?」


「……なるほど」


「とりあえずオレの話に合わせてくれれば何とかなるから、アンタは何もしなくていい」


「そうか。

だが万が一にも……」


「力づくで事を進める方向になったらその時は頼む」


分かった、とガイの返事を聞くとイクトは扉を開け、ガイとともに中へと入っていく。


建物の中に入るとそこは看板に書かれていた「BAR」の通り酒場となっており、薄暗い照明の中で男たちが静かに酒を飲んでいた。


バーカウンターに二人、その周りに配置されたテーブル四つに計十人ほど。


バーカウンターの奥にはここの店主だと思われる中年の男がいた。


イクトとガイが入ってきたことで中にいた全ての人間の視線は一瞬で二人に向けられるが、その視線もすぐに元々向けられていた方へと戻っていく。


それを確認するとイクトはガイを引き連れて陽気にバーカウンターの方へと向かっていく。


「ハロー、マスター。

調子はどうだい?」


「よぉイクト。

連れがいるとは珍しいな」


「オレの新しい協力者。

ちょっと次の仕事の用意をしようとしてるんだよ」


「新しい協力者か。

その若さで賞金稼ぎになるとは苦労してるようだな。

とりあえず、なにか飲むか?」


「いつも通りコーヒーで。

あっ、コイツの分も頼む」


分かった、とマスターは軽く返事をすると注文されたコーヒーをつくろうとし、イクトもカウンターの席に腰かけた。


そんな中でガイは席につくなり周囲に視線を向けた。


好奇心からではない、万が一の可能性に備えての視察だ。


店にいる男全員に順に視線を向け、そして一通り見た後にガイはあることを感じた。


(コイツら……オレたちのことを賞金稼ぎのガキとして見てないな。

まるで……獲物を狩るために神経尖らせてるような目だ。

つまり……)


「何だよ、そんなに珍しいか?」


「いや、ここにいるヤツら……」


男たちを観察するガイにイクトは面白そうに声をかけるが、ガイはため息をつくと何か言おうとしたがそれを邪魔するようにイクトは彼にのみ聞こえるように言った。


「ここにいるのは全員賞金稼ぎだ。

マスターから情報を買ってるヤツらだけど、同時にキキトとの繋がりもある」


「つまり……場合によっては大きな手掛かりになるってことか」


「場合によっては、な」


「ほら、コーヒーだ」


二人で話をしているとマスターがホットコーヒーを二人に渡した。


いただきます、とガイはコーヒーを飲むためにカップを取ろうと手を伸ばしたが、イクトはそれを止めるとマスターに質問した。


「マスター……オレら人探してるんだけどいいか?」


「オレの知る範囲なら答えてやるが……どんなヤツだ?」


「緑色の髪に猫のヒゲを思わせるような両頬のキズ。

身長はオレより低いくらいの男だ」


「……何のつもりだ?」


「何のつもり?

分かってるなら答えてくれよ……キキトは今どこにいる?」


先ほどまでの陽気さは微塵も感じさせないほどに冷たい視線をマスターに向けながらイクトは問い詰め、問われたマスターはため息をつくとコーヒーに目を向けた。


「どうせ話を聞くならせめてコーヒーを飲んだらどうだ?

せっかく入れたのに冷めて……」


「アンタの手口は理解してるんだよ。

その上でコーヒーを注文したんだ」


イクトはガイが手に取ろうとしたコーヒーのカップをマスターの前に置くと告げた。


「ここでホットコーヒーを出されるのはアンタが賞金稼ぎに殺すよう依頼したことを教えるサインだ。

ホットコーヒーなのは長話させて油断させるためだろ?

もっとも……冷めて飲もうとすれば青酸カリを入れられてるから賞金稼ぎに殺されるかアンタに殺されるかだ」


「……キキトに何の用がある?」


「質問してるのはオレだ。

キキトは今どこにいるか……答えろ」


マスターとイクトの互いに譲ろうとしないその流れにテーブルを囲むように座る男たちが立ち上がって懐から何か取り出そうとした。


「!!」


何か来る、そう思ったガイは立ち上がるなり刀を構えようとしたが、イクトはため息をつくとマスターに告げた。


「……最後だ。

キキトの居場所を教えろ」


「極秘の仕事を失敗したオマエが何を偉そうに言ってやが……」


先ほどまでの優しそうな雰囲気から一転して気性の荒い話し方になったマスターは拳銃を取り出そうとしたが、マスターの足下から突然影の腕が伸びてくると首を掴み、力を強めながら首を絞め始めた。


「が……う……!!」


「……やるのか?」


「いや、悪いけどオレだけで十分だ」


戦う姿勢を見せるガイに対してイクトは告げると男たちに向けて挑発するように言った。


「金が欲しいならさっさとかかってこいよ腰抜け共が!!」


「テメェ!!」


「ガキが調子に……」


男たちは一斉に銃を取り出すとイクトに狙いを定めるように構えるが、構えたと同時に黒い刃のようなものが銃身を一瞬で斬り落としてしまう。


「「!?」」


「……あのさ、賞金稼ぎならもっと相手を圧倒できるものが無いと生きていけないよ?」


黒い刃のようなものはイクトのもとへ向かっていくと、それは彼の影の中へと消えていき、挑発するようにイクトは男たちに言うと立ち上がり、彼らの方へと向かって歩いていく。


「テメェ!!」


銃を破壊された男たちは壊れた武器を捨てると殴りかかろうとイクトに襲いかかろうとするが、イクトが指を鳴らすと無数の影の腕が現れて彼らの体を次々と拘束していく。


その時間わずか一瞬、一秒に達してるかも疑わしいほどに速かった。


「な……」


「いい歳した大人がガキに手こずって恥ずかしくないの?」


「調子に乗るなよオマエ!!」


バーカウンターにいた二人の男はナイフを取り出すとイクトとガイを刺そうと動き出すが、イクトが二人の男に視線を向けると彼の影の中から無数の黒い刃が放たれ、男たちの体を抉ると別の影に溶け込むように消えてしまう。


「ぐぁっ!!」


「影飛刃……。

悪いけど影が操れるかぎりは無敵なんだよ」


「くっ……」


影の腕に首を絞められるマスターは締めつけられる痛みに耐えながらも拳銃を手に取るとイクトに向けて弾丸を放つが、イクトは避けようともしない。


それどころか影の腕が新たに現れると弾丸を掴んで防いでしまう。


「オマエ……こんなことして……」


さて、とイクトは弾丸を掴んだ影の腕に指示を出すように指を鳴らし、それを受けた影の腕は弾丸を捨てるとコーヒーの入ったカップを手に取り、そしてそれをマスターの顔に近付ける。


「答えろよ、キキトはどこにいる?」


「こんなことしてどうなるか分かってんのか!!」


「さっさと答えろ!!

答えねぇならこのコーヒーテメェの口にぶち込むぞ!!」


(コイツ、こんな事言うやつだったのか!?)


マスターに対して強く言い放つイクトの姿に驚くガイだが、そんなガイなど気にすることなくイクトはマスターにさらに告げた。


「無駄な殺しはしたくないから答えろ。

キキトは今どこにいる?」


「……答えるわけな……」


答えるわけないだろ、マスターがそう言おうとした時だ。


イクトとガイが入ってきた扉が勢いよく開くと無数の炎の弾丸が飛んできて店内の壁を次々に破壊していく。


「な……!?」

(まさか新手か!?)


「……オマエらいつまでやってんだ?」


外から誰かがゆっくりと中へと入ってくる。



そして入ってきた人物は不機嫌そうにイクトとガイを睨み、入ってきた人物を確認するとイクトは驚いた顔を見せた。


「オマエは……相馬ソラ!?」


「さてはオマエ……オレらを騙したな?」

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