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VI



「……オレは半分「八神」の血を宿してる。

そして、オレはその「八神」から「無能」と呼ばれている」


ヒロムのこの一言、これを聞いたイクトは一瞬何が言いたいのか分からなかった。


宿す?


血を宿すということはつまり、その体に流れてると言いたいのだろうか?



「えっと……「八神」ってあの?

「十家」に属するあの「八神」のことか?」


「オマエの中では他にあるのか?」


「いや、他にはないけど……。

でも「十家」の血が流れてるなら何で……」


「何で命を狙われるのか、か?

そりゃヤツらにとってオレが邪魔だからだよ。

「十家」の頂点に立つ上ではオレの存在は汚点でしかないんだよ」


イクトの疑問を解決するように淡々と答えてるヒロム。


自分のことを冷静に、そして顔色一つ変えずに語るヒロムの異常な落ち着きようにイクトは内心少し恐ろしさを感じていた。


「自分が狙われてるって自覚はあるのか?」


「……四年前に「八神」の次期当主に殺すと予告されたからな」


「次期当主に!?

何でそんな……」


「さぁな、本人に直接聞け。

アイツにとってオレは忌むべき存在でしかないんだろうな」


「理由となく殺されることに何の違和感も感じないのか?」


「そんなの今更感しかねぇよ。

どうせヤツらがオレに対して何かをするのに理由なんて持ってねぇよ」


「八神」の行いに疑問を抱くイクトとは裏腹に渦中にあるであろうヒロムは他人事のように興味すらないように語る。


が、そのヒロムの態度がイクトには理解出来なかった。


「なんで自分のことなのにそんないい加減なんだ?

命を狙われてることがどれだけ大きなことか……」


「ヤツらにとって事の大きさは重要じゃない。

オレの命を奪い取ることに成功すれば終わり、失敗すれば更なる手段を取る。

オレが消えないかぎりアイツらは止まらない」


「なんでそんなこと……」


もういいだろ、とヒロムは面倒くさそうに言うと話題を変えるようにイクトに告げた。


「オマエがオレのことを何も知らないのは何となく理解した。

誰の依頼かは知らないが、うまく利用されて可哀想だとは思うよ」


「可哀想だと!?」


「で、だ。

オマエと戦ってる時にオレのことをずっと見てたのはオマエの仲間か?」


「オレの……?」


ヒロムからの質問、それについてイクトはすぐに答えられなかった。


彼が何を指してそう言ってるのか、それが分からないというのもあるし、何よりイクトはあの時一人だった。


周囲にそれらしい人物はいなかったはずなのに、なぜ彼はそんなことを質問してきたのか……?


その理由をヒロムに尋ねようとしたイクトだが、ふと頭の中をある人物の姿が過ぎった。


それは今回の姫神ヒロムを狙うきっかけとなった人物だ。


「キキト……?」


「あ?

仲間だったのか?」


思わずその人物の名を口にしたイクト、そしてそれを聞いたヒロムはもう一度質問する。


ヒロムの質問、それに対してイクトは少し訂正するように説明した。


「仲間……というよりは協力者だ。

賞金首の情報を提供してくれる情報屋。

オレはキキトから情報をもらって仕事をこなしてたんだ」


「他人の情報だけでか?」


「いいや、いつもならそれにプラスしてオレの独自で調べた情報を照らし合わせて相手の対策を練る。

けど今回の件に関しては理由は聞かされず、オレが調べたりすることは禁止されてたんだ」


「その情報屋が何か危険を感じてたのか?」


イクトがヒロムに説明をする中、その話を聞いていたガイがイクトに質問をした。


「情報屋自身が「八神」に何か弱みを握られていてそれが理由でオマエの行動を制限してた可能性はないのか?」


「いや……オレが話を受けた時の感じだとそんなんじゃなかった。

オレがアイツから……キキトから聞いた時の感じだとアイツからはそんな気配はなかった」


「つまり……そのキキトってのも「八神」の可能性があるよな?」


イクトの言葉を聞くなりソラは彼のことを警戒するように睨みながら言った。


「極秘で動けば報酬を増やすとそいつは言ったんだろ?

ならそう思うのが自然だよな?」


「なんでキキトが「八神」の……」


「ヒロムを狙うように指示を出したのが「八神」ならその情報屋に詳細を伝えると思うか?

万が一にも捕まって弱みを握られることにでもなればヤツらは自分たちを追い込むことになる」


「だからって……」


もういい、とイクトとソラが激しい論争を繰り広げそうになる中でヒロムはそれを阻止するように言うとイクトに言った。


「その情報屋のことはこっちで調べさせてもらう。

だから帰っていいぞ。

帰って好きな事してくれ」



「おい、何言って……」


「落ち着けソラ。

しばらくは監視役としてガイに見張ってもらう」


「けど……」


大丈夫だ、とヒロムの判断に不満を抱くソラを安心させるようにガイは言うと、続けて彼に告げた。


「コイツのことはオレが責任を持って見張る。

だからヒロムのことは任せた」


「……納得いかねぇな」


「仕方ない。

ヒロムの判断だからな」


「あ、あの……いいのか?」


ソラとガイが話す中、イクトは恐る恐るヒロムに確かめるように尋ねるとヒロムは即答した。


「オマエが心の底からオレを殺したいと思ってるわけじゃないなら別にいいさ。

今気になるのはオマエに依頼した黒幕のことだしな」


「オレが逃げると思わないのか?」


「逃げたきゃ逃げろ。

その代わり、何かあった時は……覚悟しとけよ?」


「ああ、わか……」


「話は終わったな。

じゃあ何かあったら連絡する」


ヒロムの言葉に対する返事をしようとするイクトの言葉を遮るようにガイは彼を連れてリビングから出て行こうとする。


「ちょ……あの……!?」


強引に連れて行こうとするガイに戸惑ってしまうイクトだが、そんな彼をリビングから連れ出したガイはリビングから離れるようにしばらく歩き進むと立ち止まってイクトに言った。


「さて……行くか」


「いや、どこにだよ!?」


「決まってるだろ?

情報屋を探しに行くんだよ」


何言ってんだよ、とガイの言葉に反論するようにイクトは言うが、ガイ真面目な顔でイクトに伝えた。


「ヒロムとソラはオマエが受けた依頼を出したのが誰かを調べるはずだ。

だからオレたちはキキトって情報屋を探すんだ」


「何のために?」


「知ってることを吐かせるためにさ。

オレとオマエの強さなら可能だろ?」


ガイは自信満々に言うが、イクトには理解なんて出来ない……いや理解など出来るはずがなかった。


ガイはキキトについて何も知らないはず。

なのになぜこんなにも余裕があるのか?


それにガイはイクトと戦っている。

そんな簡単に信用してくれるような関係性では無いはずなのに……


「……アンタとオレならやれるのか?」


「ああ、これでもオレは強いからな」

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