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XXXXIX


 キキト捜索の際に遭遇し、ソラが必要以上の尋問をした情報屋・グリズリーが姫神ヒロムに恨みがあるという傭兵と手を組んでイクトの前に現れて彼を襲おうとしていた頃……

 

 姫神ヒロムからイクトの国外逃亡の情報が何者かによって外部に洩らされていることを知ったソラとガイはイクトが入院に利用していた病院を飛び出ると彼を探すべく走っていた。

 

 二人の後ろに続くように姫神ヒロムも走っており、ソラは走る中でガイに対してぶつけどころの無い文句を言う。

 

「ちくしょう!!

タイミング悪すぎんだろうが!!」

 

「落ち着けソラ。

ヒロムが病室に来る直前にイクトが出たことを考えたらそこまで遠くには行ってないはずだ」

 

「バカなのかオマエ?

アイツは見た目あんな感じだが名の知れた賞金稼ぎ「ハンター」だぞ!!

ここら辺の地理に詳しいどころかオレたちは知らない情報屋しか知らないような抜け道とかも持ってるとなれば短時間での移動距離はオレたちと比べ物にならないくらい速いことになる!!

そんなに時間が経ってないとか流暢なこと言ってる場合か!!」

 

「いや、オレは時間じゃなくてそんなに遠くには行ってないはずだって……」

 

「揚げ足取りご苦労!!

オマエが昔からの付き合いじゃないなら今すぐ殺したいくらいだよ!!」

 

「とにかく居場所を特定しよう!!

ソラの携帯のGPSで追跡……」

 

「やめとけ」

 

 ソラがイラつく中でイクト捜索の案を出すガイだが、後ろを走る姫神ヒロムが彼の提案を却下する。

ガイの提案を姫神ヒロムが却下するとソラはストレスがさらに溜まったのか急ぐ状況下で走る足を止める。

 

 ソラが足を止めるとガイと姫神ヒロムも足を止め、ソラは姫神ヒロムに不満をぶつける。

 

「アイツは今後役に立つって話を拒んだオマエは黙ってろ!!

国外逃亡の案を話したくせして外部に洩れるような無様なことしたんだからオマエも何かアイデアを出せ!!」

 

「アイデアの前に教えてやる。

黒川イクトの国外逃亡を知った何者かが今アイツの前に現れて交戦になったとして、ヤツがそれを振り切って逃げるとなればGPSか携帯の電話を切ってる可能性がある。

敵に遭遇してなくてもさっきのオマエの連絡で何かあると感じた場合、少なくとも「姫神」の捜索を逃れようと同じことをするはずだ」

 

「だからヒロムはオレの案を?」

 

「GPSの機能が有効でないなら無意味だからな。

それにGPSが切られてなくても敵がジャマーを発動させていたら電波は遮断されて見つけられないから同じことだ」

 

「ならどうするんだよ?

このまま時間かけて探せってか?」

 

 落ち着け、と姫神ヒロムはイライラしているソラを宥めるように言うと続けてイクト捜索について姫神ヒロムは今考えられる方法について話していく。

 

「黒川イクトがオレや「姫神」から逃げるとすればどうするか、そこを考えろ。

人混みの中に紛れてもそこに「姫神」の人間がいれば時間稼ぎにもならない。

ソラの言う通りアイツが賞金稼ぎ時代に利用していた抜け道を使う他にアイツ自身の影の能力を使って移動したとなれば移動距離は予測できない」

 

「……影の能力による移動、たしかに厄介だ。

他人の影に潜めるならアイツがキキト捜索の際に言っていた乗り物などの影に潜む方法があるらしいから簡単には見つけられないな。

だが、だとしても探さない理由にはならないぞ?」

 

「探さなくていい」

 

「何?」

 

「まさか「姫神」がアイツに追跡装置を?」

 

「それはアイツの入院中にオレが黙って「姫神」のサーバーから通信を切ってるから関係ない。

ソラ、電話した時に爆発音がしたんだよな?」


「ああ、バカみたいにデカい音だった。

それがどうした?」

 

「爆発音がしたならここら辺まで音が響いていてもおかしくない。

だが見ての通り、誰もそれに気づいてない。

つまり、黒川イクトはここよりかなり離れた場所で襲われたことになる」

 

「だからその場所を突き止め……」

 

「オマエ、オレのやり方忘れてないか?

アイツの居場所なら……ちょうど今見つかった」

 

 

 

***

 

 

 その頃……

 

 

「ぐぁっ!!」

 

 街から離れた場所にある今は使われていないであろう採石工場、グリズリーと兵士の手から逃れるようにイクトはそこに逃げていたが、追っ手の追跡は途切れることなく迫っていた。

 

 そして迫ってきた追っ手の兵士の攻撃を受けるイクトは爆発に巻き込まれると吹き飛ばされてしまう。

 

「くっ……そ……」

 

 吹き飛ばされたイクトが傷つきながらも立ち上がろうとする中、機関銃を手に持つ男が彼に歩み寄る。

 

「悪く思うなよ小僧。

オマエがあのクソガキと繋がりがあるって聞いたからこわな手荒な真似をしてんだ」

 

「クソガキ?

姫神ヒロムがアンタらに何かしたのか?」

 

「オレたち「ジルフリート」を壊滅まで追い詰めた。

隊長たちは任務を果たすために行動したのにヤツは邪魔をした!!

そして仲間のほとんどを再起不能まで追い詰めたあの悪魔をオレは許さない!!」

 

「悪魔……?

勝手なこと言うなよ!!」

 

 男の言葉にイクトは強く叫びながら言うと自身の影を操作して無数の拳を生み出すと男の体に影の拳の連撃を叩き込み、さらに機関銃を奪い取ると男の両足に一発ずつ弾丸を撃ち込む。

 

 影の拳の連撃を受け、両足を撃たれた男は倒れる。

男が倒れるとイクトは影の拳で機関銃を破壊し、周囲を見渡すとどこかに隠れようとするべきかどうするかを頭の中で悩む。

 

(どうする……?

今のオレの体力じゃ潜伏時間は長く持たないけど、ヤツらが諦めるまで隠れるか?

それともこのボロボロの体で大鎌と影の能力で立ち向かうか?

相手は……あの口振りだと姫神ヒロムが壊滅寸前まで追い詰めたあの「ジルフリート」の生き残りだ。

「ジルフリート」の生き残りと言ってもおそらく今のオレじゃ歯が立たないくらい強いはずだ。

今倒したコイツは一瞬油断したから倒せたけど……囲まれたらオレは……)

 

「見つけたぞ!!」

 

 イクトが頭の中で考えを悩ませていると彼の後ろでグリズリーが大きな声で叫び、イクトがグリズリーの方へ振り向くとグリズリーが拳銃を構えて立っていた。

 

 グリズリーの構える拳銃の狙いはイクトに定められてることはたしかで、イクトは息を飲むと影の中から大鎌を出現させて手に持つと構える……が、万全ではないイクトの体、その体はすでに限界が近いのか大鎌を構えてもフラつきつつあった。

 

「くっ……」

 

「抵抗するな、その体じゃ死んだ方がまだ楽だろ?

オマエもキキトに雇われた身として仕事を忠実にこなしていればこんな思いもせずに生きられたかもしれないのに、逆らったからこうして死ぬことになる」

 

「……うるせぇ。

どうせ言う通りにしても捨て駒扱いであの世行き確定だったんだ。

オレはまだやりたいことがあるし、あの駒扱いのまま死ぬくらいならオレのやったことに後悔はない」

 

「やりたいこと?

家族を襲った悲劇から目を逸らすために金稼ぎをしてきたオマエが他に何をやるんだ?

国外逃亡して新しい人生でも始めるつもりか?

そうやって賞金稼ぎらしく他人から得られるものを得ては乗り換える日々を続けるのがオマエらしい。

一人の情報屋の命を奪い、そしてオレから仕事を奪うような真似をした!!

そんなオマエが今更何かを求めて手に入れられると思うな!!」

 

グリズリーはイクトに対する感情を爆発させると銃の引き金を引いて弾丸を放つが、イクトは出せるだけの力を出して大鎌を振って弾丸を弾く。

 

 弾かれた弾丸はどこかへ飛んでいくが、大鎌を振ったイクトはもはや体力が限界なのか膝をついてしまう。

 

 イクトが膝をつくとそのタイミングを見計らったかのように彼の周囲にグリズリーと手を組んだ兵士が機関銃を構えて現れ、兵士がイクトを包囲するとグリズリーは笑みを浮かべながらイクトに告げる。

 

「どうやらオマエの体は限界らしいな。

無駄に足掻いた愚か者の末路としては充分だ」

 

「クソ……」

 

「さようならだ、死神。

オマエのその「ハンター」の名は誰かが引き継ぎ、そしてその度に誰かに利用される地位となる。

ご苦労だったな黒川イクト、最後は華々しく……」

 

 グリズリーがイクトに向けて別れの言葉のように話していると何かが勢いよくグリズリーに接近し、接近した何かはグリズリーの顔面に拳を叩き込むと勢いよく殴り飛ばす。

 

 殴り飛ばされたグリズリーは勢いよく壁に叩きつけられ、叩きつけられたグリズリーが殴られた顔を押さえながら視線を向けるとそこには姫神ヒロムが立っていた。

 

「オマエは……!?」

 

「よぉ、情報屋のアライグマ。

あまりに簡単に吹き飛んだからグリズリーなわけないから名前合ってるよな?」

 

「オレの名前はグリズリーだ!!

オマエらコイツを殺せ!!」

 

 姫神ヒロムに顔を殴られた上に名前を間違えられたグリズリーは怒りを表に出しながら兵士たちに指示を出し、指示を受けた兵士は手に持つ機関銃の狙いをヒロムに定めて次々に弾丸を放っていく。

 

 だが、姫神ヒロムは動じない。

それどころか姫神ヒロムは拳を構えると自分に向けて飛んでくる弾丸を全て殴り潰していく。

的確に、素早く、迫ってくる弾丸に臆することなく全て殴り潰していく姫神ヒロム。

 

 兵士が機関銃に込められた弾丸を全て撃ち終えた時、本来なら蜂の巣になっていてもおかしくない姫神ヒロムはその身に傷をつけることなく立っていた。

 

「ば、バカな……!?」

 

「何なんだよコイツ……!?」

 

「オマエら、「ジルフリート」の傭兵だよな?

なら知ってるはずだ……オレの実力についてはな」

 

「何してる!!

さっさとそいつを……」

 

 だまれ、とどこからか声がすると巨大な炎がグリズリーを黙らせるように襲いかかり、炎に襲われるグリズリーは苦しそうに炎から逃れようと藻掻く。

 

「ぎゃぁぁぁぁあ!!」

 

「そのまま丸焼きになって山で食われてろ、駄肉が」

 

 グリズリーが炎に苦しんでいるとソラが炎を纏いながら現れ、さらに姫神ヒロムのそばへ刀を持ったガイが現れる。

 

「さすがはオレたちのリーダー。

用意周到な手際でイクトを見つけ、敵の攻撃も見事に防いだな」

 

「茶化すなよガイ。

この程度造作もない」

 

「まぁ、そうだよな。

ヒロム、次はどうする?」

 

 決まってる、と姫神ヒロムは呟くと首を鳴らしながら拳を構え、姫神ヒロムが構えるのを見るとガイとソラは何か指示を受けることもなく構える。

 

「目の前の敵はぶっ潰せ!!」

 

 姫神ヒロムが叫ぶと彼とガイとソラは兵士を倒すべく走り出し、イクトは姫神ヒロムの姿に魅入っていた。

 

「あれが……姫神ヒロム……」

(オレがここにいるのをどうやって知ったかは知らないけど……ガイやソラが何の指示も受けずに彼と同じように動いてるってことはそれだけ信頼してる証なのか……。

彼は……それほどまでに強い男ってことなのか)

 

「オレは……」

 

 兵士を次々に倒す姫神ヒロムの姿を見るイクト。そのイクトの中である思いが……

 


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