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XXXXII


「いくぞ!!」


ソラが叫ぶと彼とイクト、ガイはキキトを倒すべく武器を手にして走り出し、三人が動き出すとキキトはバイザー越しに冷たい目で彼らを睨むと言葉を発する。


「無駄なんだよ。

このシェンショウジンの前ではどんな力も無力なのさ!!」


走り来るイクトたちに向けて言うとキキトは周囲の空間を歪め、空間を歪めると彼らの前から姿を消してしまう。


「!?」


「消え……」


空間の歪みが消えるとキキトは三人の背後に現れて右手を構え、構えた右手から魔力をビーム状にして放たれてイクトたちに襲いかかろうとする。


「なっ……」


「瞬間移動だと!?」


「させるか!!」


ソラとガイが驚く中でイクトはキキトの放った魔力を止めるべく自身の影を隆起させて影の壁を生み出そうと……したが、キキトが左手を動かすとイクトの影が突然歪んでイクトの思惑に反するように崩れてしまう。


「なっ……」


「影が……崩れてる!?」


それだけではない。

キキトがさらに左手を動かすとイクトの崩れた影はイクトたち三人を拘束するかのように影の帯となって襲いかかり、突然の事で不意をつかれた三人は影の帯に捕らわれて動きを封じられてしまう。


「くっ……!!」


「おいイクト!!

何とかしろ!!」


「む、ムリだソラ……!!

影が……オレの能力を拒絶してる……!!」


どうにかして振りほどこうとするガイとソラ、ソラは影を操れる能力を持つイクトに何とかするように指示を出していくがイクトは何度やろうとしても影はイクトの能力を受け付けずに彼らを強く纏うと締め付ける。


「な、何で……!?」


「無駄だよイクト。

このシェンショウジンの力の前では並の能力では太刀打ちできないのさ」


影をどうにかしようとするイクトにキキトはあえて教えるかのように言うと右手を動かし、キキトが右手を動かすとキキトの放った魔力は無数に分裂して矢のごとくイクトたちに襲いかかっていく。


「ぐぁぁあ!!」


分裂して矢のごとく襲いかかってくる魔力を前にしてイクトたちは影の帯に縛られて逃げることも防ぐことも出来ずに全て直撃で受けてしまう。


魔力にイクトたちが襲われていると彼らを拘束する影の帯は彼らを拘束するのをやめると素のイクトの影へと戻っていき、影の拘束がなくなったイクトたちは魔力に襲われた際の衝撃によって吹き飛ばされてしまう。



吹き飛ばされた三人は負傷しながら倒れてしまい、倒れたイクトたちに更なる攻撃を放とうと右手に魔力を集めていく。


「くっ……!!」

(このままじゃ……)


「力の差を思い知れ……!!」


「そんなことさせるか!!」


キキトがイクトたちに向けて魔力を放とうとすると向上内から風の如く天晴が走って来て手裏剣を投げ飛ばし、投げられた手裏剣はキキトが放とうとする魔力に命中して暴発させる……が、魔力が暴発するとキキトは左手を軽く動かすと暴発した魔力をどこかへと消してしまう。


「なっ……」


「残念だったな、傭兵・天晴。

オレ本体ではなく放とうとした魔力を狙っての暴発による自滅攻撃は驚きだったよ。

けど……今のが最後のチャンスだった」


「最後のチャンスかどうかは試さなきゃわかんないだろ!!」


キキトの言葉を否定するかのように天晴は両手で印を結ぶと煙とともに天晴と容姿がそっくりな分身を数人出現させ、分身を呼び出すと天晴は分身とともに忍者刀を構えてキキトを倒すべく走り出す。


天晴が分身とともに走り出すとキキトはイクトたちに背を向けると天晴の相手をするかのように動き出し、ガイとソラはキキトが背を向けた隙に立ち上がると武器を構えて走り出す。


が、キキトはガイとソラが走り出しても気づいていないのか天晴の方へと進んでいく。


「!!」

(気づいてない!?

いや、下手したら気づいた上であえてスルーしてるのか!?)


(気づいてようが気づいてなかろうが関係ない!!

コイツの纏うあの装備を破壊しちまえば……)


キキトに背後から迫る中でガイとソラはそれぞれが武器を持つ手に力を入れ、キキトの纏うシェンショウジンのレプリカの鎧を破壊しようと考える。


……が、キキトの背後から迫ろうとすると背を向けたままのキキトの両肩の紫色の結晶体のアーマーが変形して四本のマニピュレーターを持つアームのような造形となり、変形したそれはガイとソラの方に向けられるとアーム周囲の空間が歪み出し、ガイとソラが持つ武器が前触れもなく変形して粉砕されてしまう。


「なっ……」


「オレたちの武器が……!?」


「他愛もない」


武器が破壊されたことにガイとソラが驚いているとキキトは呟き、彼の言葉に反応するようにアーム周囲の空間の歪みが消える。

空間の歪みが消えると突然無数の衝撃波が発生してガイとソラを吹き飛ばしてしまう。


「がっ……!!」


「ぐぁっ!!」


「オマエ〜!!」


ガイとソラが吹き飛ばされた中天晴は分身とともにキキトを倒すべく忍者刀で攻撃を放とうとするが、キキトの顔を覆うバイザーが一瞬光ると天晴の周囲の空間が歪んで彼の動きが止まり、分身たちの体は歪に歪んで煙となって消されてしまう。


「か、体が……動かねぇ……!!」


「忍者の末裔たる証の忍術は見事なものだ。

しかし……それ故に単純だ」


キキトが指を鳴らすと天晴の周囲の空間の歪みが消え、歪みが消えると天晴は鋭利な刃物で全身を切られたかのような負傷を負ってしまい、負傷した天晴は勢いよく飛ばされてしまう。


飛ばされた天晴は工場の壁に叩きつけられ、その衝撃のせいか気を失って倒れてしまう。


「ガイ、ソラ……!!

天晴……!!」


「やめろ、黒川イクト!!」


三人が吹き飛ばされ、うち一人が気を失った中イクトは負傷した体を何とかして起き上がらせると大鎌を構えるとキキトを倒すべく動こうとしようとした。


が、動こうとするイクトをネクロは止めるように言うと彼に忠告した。


「何の策もなく突っ込めば天晴の二の舞だ!!

雨月ガイや相馬ソラの負傷が今浅いのも運が良かっただけ、次はないんだぞ!!」


「だけど……」


「ここは一度体勢を立て直して……」


不可能だ、とキキトは自身の周囲の空間を歪ませるとネクロの前へと瞬間移動し、そしてネクロに右手をかざすと彼を吹き飛ばす。


「ぐっ……!!」


吹き飛ばされたネクロは何とかして受け身を取ると杖を用いて吹き飛ばされた衝撃を殺し、衝撃を消すと杖を持ち直してキキトを睨んだ。


「やってくれたな……キキト」


「やってくれた?

今のオレとオマエが同格だと言いたいのか?

このシェンショウジンの力……レプリカとはいえこれほどの出力と性能を有している。

その力がオマエと同格だと言いたいのか?」


「落ちるところまで落ちたかキキト。

今のオマエは力に溺れた愚者だ」


「情報に欲を奪われたオマエが言えた口か?

まぁ、所詮情報なんて力の前では無意味だ」


「仮にも情報屋を演じていたオマエが情報屋の本質を否定するような言葉を言うとはな……。

なら、力には力で分からせるしかない」


ネクロが杖で地面を叩くとキキトの足下から無数の光の鎖が現れて彼を拘束しようと襲いかかり、さらにネクロの周囲に無数の魔力の槍が現れて矢のように撃ち放たれる。


「……無駄なんだよ、何もかもが!!」



ネクロが放った攻撃に対してキキトが叫ぶと放たれた攻撃の全てが歪められて自壊し、そしてネクロの体は無数の魔力の帯に拘束されてしまう。


「!!」


「その程度では止められない!!

この力を甘く見るな!!」


キキトは拘束されて動けなくなったネクロに向けて魔力を放ち、放たれた魔力がネクロに襲いかかろうと……したその時、音もなくクランがネクロの前に現れると身を呈してキキトの攻撃からネクロを守った。


「がっ……!!」


「クラン!!」


ネクロを庇って攻撃を受けたクランは激しく負傷し、吐血しながら倒れてしまう。


「クラン!!クラン!!

しっかりしろクラン!!」


「ハハハハハハハハ!!

滑稽だよ滑稽!!」


魔力の帯に拘束されていたネクロは動くことも出来ず彼の名を叫ぶしかなく、その光景にキキトは笑っていた。


「力が無いくせに出しゃばるからそうなるんだよ!!

無駄なんだよ、無駄!!

何をやっても……」


「それは……どうかな……?」


キキトが余裕を見せて高笑いしていると吹き飛ばされたはずのソラが立って炎を右手に纏わせて構えていた。


いや、ただの炎ではなかった。

赤黒い炎、それを纏わせるソラの右手は肌が徐々に焼けていたのだ。

自身の能力のはずなのに、何故か肌が焼けていた。

それを見たガイは彼を止めようと叫んだ。


「やめろソラ!!

その力は……その力はダメだ!!」


「黙って見てろガイ……!!」


「何をしても無駄だ。

自分の限界を超えた力で攻撃しようとしてもこのシェンショウジンの前では無意味だ」


「なら試してみるか?

並の能力が通用しないのなら……それに該当しない力で攻撃するだけだからな!!」


ガイが止めようと叫び、キキトが余裕を見せる中でソラは赤黒い炎を強く燃やさせ、イクトは何が起きてるのか分からずに見てるしか無かった。


「ソラ、一体何を……?」


「受けろや……炎の「魔人」の力だ!!」


赤黒い炎を強く燃え盛らせるとソラは一気に解き放ち、解き放たれた赤黒い炎はキキトに向けて飛んでいく。


「そんなもの……」


キキトは左手を赤黒い炎に向けてかざして空間を歪めようとするが、赤黒い炎の周囲の空間は歪もうとした途端に元に戻ってしまう。


「何!?

シェンショウジンが干渉できな……」


予想外のことにキキトが戸惑っていると赤黒い炎はキキトに襲いかかろうとし、キキトは何とかして避けようとするも左腕が炎な飲まれてしまう。


「ぐぉぉぉ!!」


赤黒い炎に飲まれたキキトの左腕のアーマーは破壊されてしまい、アーマーの下のキキトの腕は酷い火傷を負ってしまう。


キキトの左腕が火傷を負うと赤黒い炎が消え、炎を放ったソラは倒れてしまう。


「ソラ!!」


ソラが倒れるとイクトとガイは彼に駆け寄り、ガイはソラを抱き上げるも抱き上げられたソラは気を失っていた。


「……気を失ってる」


「ガイ、今のは……?」


「……ソラの中には「魔人」の力が宿ってるんだ」


「えっ……「魔人」ってあの……!?

天使と同列の力と対を成すっていう都市伝説じゃ……」


「詳しい話は後だ。

とにかくソラは完全に制御できない力で拘束されてした反動で気絶してる。

残ってるのはオレとオマエだけだ」


「……」


ソラが気絶し、キキトを倒せる可能性がある人間がイクトとガイだけとなった。

絶体絶命の危機、そんな中イクトの脳裏にヒロムの言葉が浮かび上がる。


『今のオマエは戦士として強くとも人としては弱すぎる。

そんなヤツを巻き込んでまでオレは「八神」を潰したくない。

出来ることならオレはオマエにはどこかで心を休めてほしい』


「……人としては弱い、か」


「イクト?」


「……ごめん、ガイ。

オレ一人でやる」


「なっ……何言ってんだ!?

アイツを一人で倒すなんて……」


「大丈夫、ソラのおかげで作戦が思いついたから」


イクトはガイに言うと大鎌を手に持って立ち上がり、そしてキキトの方に向けて歩き出す。


「……ごめん、姫神ヒロム。

アンタの優しさは嬉しいよ。

でも……キキトを倒した後のことは、オレの手で決めるから」


キキトの方へと歩く中でイクトは歩みを止めると大鎌を地面に刺し、そして全身に魔力を纏わせる。


そして……


「……オレの中の力、聞こえてるなら力を寄越せ!!

今守りたいものがここにある!!

それを守れるだけの力がほしい!!」


イクトが何かに向けて叫ぶと彼の纏う魔力が徐々に紫色に染まっていき、紫色に染まった魔力は次第に瘴気のように変化していく。


「力を……力を……!!

あの時の恐怖は乗り越えてやる!!

だから……オレに守るためのチカラを寄越せ!!」


「死に損ないが!!

無駄だと教えてやる!!」


イクトが叫ぶ中、キキトは右手に魔力を集めるとそれをイクトに向けて放つ。


放たれた魔力はイクトに向かっていく中で巨大化していき、避けようともしないイクトに襲いかかると大きな爆発を起こす。


「イクト!!」


魔力が爆発しイクトが飲み込まれる。

ガイは彼の名を叫ぶが返事はなかった。


「まずは一人。

継はオマエだ雨月ガイ」


「くっ……」


「オマエもアイツのもとへ送って……」


キキトが次にガイを倒そうとしようとしたその時だった。

爆発が起きた魔力が突然何かによって吹き飛ばされ、魔力が吹き飛ばされると紫色の瘴気のようなものが天に昇るかのように大きく膨れ上がっていく。


そして……


その中心でイクトは瞳を金色に光らせ、髑髏を模したような白い仮面をつけて立っていた。


「……何?」


「キキト……まだオレは死んでねぇよ……」

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