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XXXX


「どういう意味ですか……?」


ヒロムの言葉に戸惑うセイナ。

彼女は思わずヒロムに聞き返してしまう。


「今のだと彼女を……あの子を危険に晒す可能性を高めるんじゃないのですか?

アナタの先程までの考えと真逆の意味に聞こえるのですが……」


「言葉通りの意味だセイナ・フローレス。

アンタには愛咲リナを今言った通りにしてもらいたい」


「ですがそれだと……」


「ここを戦場にするくらいならオレが囮になって向かってくる敵を引きつける。

ジルフリートだか何だか知らねぇがガキだとナメたらどうなるか思い知らせてやる」


「無謀すぎます!!

それではアナタが……」


「時間を稼ぐだけだ。

頃合いを見てアンタは合流した仲間と加勢に来て残存兵を倒してくれ。

そのタイミングでオレは愛咲リナを回収する」


「ですが……」


ヒロムの指示、そして言動に戸惑うセイナ。

そんな彼女にヒロムはある事を伝えた。


「迷うのならやらなくていい。

アンタがいなくてもオレはいつも通り一人で何とかする」


「で、ですが……」


ヒロムの言葉、それを受けても尚セイナは迷いを断ち切れない。

ヒロムの指示、その指示一つでセイナの心は乱されている。


「……」

(どうすればいいの……?

この人の指示の通りにすればジルフリートを壊滅させられるかもしれない。

だけどそれだとこの人が危険に……。

でも私が指示を受けないってなったら……)


「迷うくらいなら戦う意思を持つな」


「え?」


思考を働かせて悩むセイナに一言告げたヒロム。

その一言に驚くセイナにヒロムはさらなる言葉を発した。


「迷う時間があるなら前に進む!!

オレの成すべきことのために……オレはオレの道を行く!!」


「成すべきことのために……」


「アンタがやりたいことは何だ?

一人の女の命を見捨てることか?救える命を見捨てて生きることか?

それとも目の前の事に選択も決断も出来ずに立ち止まることなのか?」


「違います!!

私は……」


「なら答えは出ているはずだ。

少しでも守りたいと意思が働いたのなら……愛咲リナはアンタに任せられる」


「……私でいいんですね?」


「ああ、問題ない。

アンタなら必ずやり遂げてくれるさ」


「……無理はしないでくださいね」


「普段通りだ。

命を狙われるのなんて……慣れてるさ」


「……ご武運を」


セイナはヒロムに頭を下げるとここまで走ってきた道を戻るように行き、学校の中へと向かっていく。


その様子を見届けたヒロムは一息つくと首を鳴らし、ヒロムがやる気を見せると彼のそばに金髪の少女の精霊・フレイが現れて彼に声をかける。


「マスター、よろしいのですか?」


「何がだ?」


「今回の件、彼女たちとともに敵を倒せば多くの人にマスターの功績を知ってもらえます。

ジルフリートの部隊の壊滅、それを世間に知らせればマスターの今は……」


「オレの今は変えられたとしても彼女の今も変えることになる。

「無能」に手を貸して傭兵集団を打ち倒した……なんて知れ渡ったら彼女たちの今後の活動に支障が出るだけだ」


「マスター……」


「大丈夫だ。

オレには……フレイたちがいる」


「……分かりました。

ご命令を」


「簡単な事だ。

とにかく……」




***



姫城中学半径四キロ圏内にある道路。


その道路を武装された軍用車両が四台、姫城中学へ向けて走行していた。


『目標の男のいる学校まで残り三・五キロ。

作戦実行は到着と共に即時に実行する』


「了解。

隊長、そちらの方は?」


『こちらはすぐに合流する。

相手は能力もないのに異名を与えられた子どもだ。

くれぐれも油断するな』


了解です、と軍用車両の一台を運転する男は無線機の相手に言うと続いて他の車両にも伝えようと回線を切り替える。


「総員、作戦開始まであとわずかだ。

各自すぐに作戦に参加できるように武装を整えて……」


『な、何だあれは!?』


「どうした!?」


『前方より何かが急速接近している!!』


男が無線機で指示を出す中、別の車両を運転する男が何かを見つけた。


何を見つけたのか指示を出す男は無線越しに何かを見つけたことを伝えて来た通りに前方を確認しようとした。


その時!!


何かが目にも止まらぬ速さで男の乗る車両に接近し、そして車両を吹き飛ばしてしまう。


「何!?」


吹き飛ばされた車両は何度も地面を転がって倒れ、倒れた車両から脱出するように急いで男と他の乗員が降りる。


武装した彼ら……ジルフリートの兵士たちだ。


「何が……」


車から脱した男は車両を吹き飛ばしたものを確かめようと視線を向け、視線を向けた先にいたもの……いや、人物に驚いていた。


「何……!?

そんな馬鹿な……!?」


武装した車両を吹き飛ばした人物……それはヒロムだった。


拳を強く握りながら構えたヒロムが立っていたのだ。


「何故ヤツが……!?」

(いや、それよりもヤツがやったのか!?

何の力も無いガキのはずだろ!?)


『轢き殺してやる!!』


「……!!

待て、早まるな!!」


先程まで無線機で通信していた別の車両の男がヒロムを轢き殺そうと車を走らせるが、男はそれを止めようと無線機に叫ぶ。


……が、遅かった。


ヒロムは向かってくる車両へと音もなく接近して拳を叩き込み、車両はヒロムに殴られると勢いよく殴り飛ばされる。


『うわぁぁぁあ!!』


「なっ……殴った……だと!?」


本来ならありえない。

人が走行する車を殴って無傷なことも、走行する車が人の力に負けることも、殴られた車が物理法則などを無視して殴り飛ばされることも……とにかく今ヒロムが目の前でやったこと全てがありえないことなのだ。


「おい、応答しろ!!」


『こ、こちら……負傷者は……』


殴り飛ばされた車両は横転し、男は安否を確認すべく無線機越しに問い、車両内の男はそれに答えようとした……が、男の言葉の途中で精霊・フレイが大剣を手に持って横転した車両の前に現れ、現れたフレイは大剣を振り上げると刀身に魔力を纏わせながら一閃を放つ。


「はぁっ!!」


放たれた大剣の一閃は横転した車両を両断し、両断された車両は激しい爆発音を響かせながら爆発していく。


「おい!!

応答しろ!!」


爆発の起こる車両内にいる男に呼びかける兵士。

だが爆発の中で男は無事ではないらしく、無線機越しの返事はなかった。


二台の車両が横転し、うち一台が爆破された。

残る二台は急停止するとヒロムとフレイを倒すべく中から兵士が続々と出てくる。


爆発した車両を見る兵士は感情が抑えられないのか無線機を握りつぶしてしまい、そしてヒロムに向けて銃を構えた。


「貴様……よくも仲間を!!」


「……先に仕掛けようとしたのはオマエらだろ?

たかだか数人の命が散ったくらいで傭兵がウダウダ言ってんじゃねぇよ」


「貴様だけはぁ!!」


ヒロムの言葉に怒りが抑えられなくなった兵士は引き金を引いて弾丸を放とうとする……が、ヒロムはそれよりも速く兵士に接近すると拳撃を放ち、放たれた拳撃が兵士を殴り飛ばす。


殴り飛ばされた兵士は飛ばされた先で倒れ、兵士が倒れるとヒロムは他の兵士たちに向けて告げた。


「覚悟がないなら失せろ。

オマエらが束になろうとオレには勝てない。

ここからは戦争……一方的な蹂躙だ!!」




***



同じ頃……


リュクスの口からヒロムが狙われていることを知らされたイクトは焦りを抱いていた。


「ヤバい……どうすれば……」

(アイツは今多分愛咲リナの護衛をしてるしガイやソラはオレとこっちに来てるから無防備のはずだ!!

そんな状況で傭兵集団を相手にするなんて……!!

迂闊だった!!キキトとジルフリートの関係性については多少警戒してたのに……!!)


「……黒川イクト、集中しろ」


焦りを抱くイクトに対してネクロは集中するように言い、そしてその上で彼に伝えた。


「その姫神ヒロムという男が誰かは知らないが、ハンターとしての名を馳せたオマエが今仕えているほどの相手なら多少は問題ないはずだ。

影という力を駆使してこれまで数多の能力者を倒してきたオマエが仕えるというのならその男は相当の手練なんだろうな。

ならばオマエはその男を信じろ」


「でもネクロ……」


「オマエは強い。

そのオマエが信頼している男なら十分な力を持つはずだ。

ならば信じて今は目の前の的に専念しろ」


「ネクロ……」


「オレがオマエに力を貸してるのは利益のためだけじゃない。

今回の件にオマエが関与してるからこそ手を貸している。

誰よりも強いオマエだからこそオレはこうして言っている……それを頭に入れておけ」


「……っ!!

分かった……ありがとな、ネクロ」


ネクロの数々の言葉にイクトの中から焦りが無くなり、焦りが無くなるとイクトは大鎌を構え直してリュクスと戦う姿勢を見せる。


イクトがやる気になるとネクロは少しだけ微笑んで杖を構え、イクトとネクロの戦おうとする姿を前にしたリュクスはため息をついてしまう。


「……なんか無駄にやる気になってないか?

せっかく大切な情報を与えてやったのに……これじゃあ意味ねぇじゃねぇか」


「残念だがオレもコイツもキキトという共通の敵がいるかぎりは立ちはだかる相手を前にして背を向けるようなま寝はしない」


「共通の敵、ね……。

その共通の敵にオレは含まれないんだろ?

せっかく優しく教えてやったのに……無駄にするのか?」


「無駄にはしない。

オレを信じてここに向かわせてくれたアイツが今やるべき事をやってるのならオレもキキトを倒すためにやれる事をやる。

その行く手を阻むなら……オレはオマエを倒す!!」


「……やる気は十分、止まる気もないってわけか。

これは困ったねぇ……」


「リュクス様、どうしますか?」


ネクロとイクト、それぞれのやる気と意思を示されたリュクスは面倒くさそうに呟き、彼に仕えているジャスミンは彼の指示を求めようとした。


ジャスミンに指示を求められたリュクスは面倒くさそうに頭を軽く掻くとジャスミンに伝えた。


「仕方ない。

こうなったらジョーカーとランスロットの力を借りるか……」


「了解しました。

では……」


「ああ、やろうか!!」


イクトとネクロ、二人を前にしたリュクスは面倒くさそうな態度から一転してやる気になり、そして彼のそばに道化の仮面をつけた男と西洋の騎士を思わせるような黒い鎧に身を包んだ青年が現れる。


「紹介しよう。

道化の化身・ジョーカーと王道貫く騎士・ランスロットだ」


「黒川イクト、あの男……もしかして……」


「ああ、間違いなく……」


「精霊使いだ」


ネクロの問いにイクトが答えようとするとどこからか誰かが代わりに答える。


誰が答えたのか、それが気になったイクトやネクロ、リュクスが声のした方に視線を向けると……その先には……


「オマエ……!?」


「まさか向こうから現れるとは……!!」


「へぇ……何しに来たんだ?

オマエの出る幕じゃないだろ?」


黙れ、と声の主……男はリュクスに返すと続けて言った。


「裏切ったオマエもオレのことを嗅ぎ回る蛮族もここで消す。

グリズリーの消息もわからぬ今……まさかオレ自らが手を下さなければならないとはな」


「キキト!!

今日でオマエとの関係に……因縁にケリをつける!!」


男……キキトが冷たい口調で言葉を発する中イクトは大鎌を強く握りながら叫ぶ。


が……イクトの言葉を聞いたキキトは何故か不気味な笑みを浮かべていた……

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