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IV


「本気でやらねぇとやべぇな!!」


ヒロムとヒロムが呼び出した精霊のフレイ、マリア、アイリス。


この四人を前にしてイクトは少しばかり恐怖を感じていた。


(やべぇ……未知の経験だろこれ!!

今までに精霊使うやつはそれなりに見てきたつもりだけど……一度に三体出すとか初めてだ)


「……最高のショータイムになりそうだ」


「残念ですが、そのショーはすぐ閉幕してもらいます」


すると大剣を持った少女の精霊・フレイが武器を構えながらイクトに告げた。


「マスターに害なす者は排除しますので、お覚悟を」


「はい、わかりました……とはいかねぇな」


イクトはヒロムたちに対抗するように影より何かを出現させる。


出現した何か、それは影から伸びた黒いもので、人の腕のような形をしていた。


それを見たヒロムは感心したように眺めていた。


「……影を自在に操るってのは形もなんだな」


「驚くことないよな?

そんなスゴ技持ってんだからよ!!」


イクトは大鎌を振ると走り出し、ヒロムに襲いかかろうと迫る。


が、狙いに定めたヒロムを守るようにフレイが立ちはだかり大剣で斬りかかってくる。


「うおっ!!」


イクトは慌ててフレイの大剣の一撃を避けるが、イクトが避けた大剣は勢いよく地面を抉ってしまう。


「体に似合わねぇ馬鹿力だな……」


「あの……私も女なので傷つくのですけど!!」


フレイは大剣を振り上げると再び斬りかかるが、イクトは大鎌で斬りかかることで攻撃同士をぶつけて防いだ。


「避けないのですか?」


「悪いね……精霊の数にはビックリしたけど、アンタみたいな大剣使いの懸賞金かけられた能力者は何回も倒してるんだよ!!」


イクトは何度も大鎌で斬りかかり、フレイはそれを大剣を盾のようにして防ぐことで手一杯だった。


「どした、どした!!

こんなもんか!!」


「……なめないで!!」



フレイはイクトの一撃を弾き返すと、大剣で思いっきり斬りかかるが、イクトはそれを避けると同時にフレイたちに蹴りを入れる。


「!!」


「悪いね、誘いに乗ってくれて助かるよ!!」


蹴りを受けたフレイは後ろへと蹴り飛ばされ、追撃を加えるようにイクトは大鎌を振り下ろした。


が、それを防ぐようにアイリスがフレイの前に立つと槍で大鎌を防いだ。


「アイリス、助かりました」


「いいえ、大丈夫よ。

相手は強敵なんだから」


「いいよ……何人相手でもオレは……」


「余所見してんじゃないわよ!!」


アイリスに攻撃を防がれたイクトはやる気になっていたのだが、ふとした拍子に大きなスキが生まれてしまい、三人目の精霊のマリアの接近に気づけなかった。


「しま……」


「くらえ!!」


マリアはガントレットを纏った拳を強く握るとイクトを殴ろうとしたが、それと同時にイクトの前に黒い壁が現れてマリアの攻撃を防いでしまう。


「!?」


「影壁……防御もこなせるのさ」


するとイクトの周囲に無数の影の腕が現れ、それらは拳を強く握るとフレイたちに殴りかかる。


「影連撃・黒月柳!!」


無数の影の腕は無数に分裂しながら加速し、雨のように止まることの無い連撃を放っていく。


「くっ!!」


フレイはアイリスとマリアを庇うように大剣を盾にして防ぐが、勢いを増す拳は力を増し、気づけばフレイをアイリスやマリアとともに吹き飛ばした。


「よし、後は……」


「悪いがまだだぜ?」


「何?

どういうことだ?」


ヒロムの言葉を聞いたイクトは何を言っているのかわからない顔で不思議に思っていると、イクトの左側にオレンジ色の髪を持つ少女が銃をイクトに向けて構えていたのだ。


まさか、そう思ったイクトは慌てて大鎌を構えたが、少女は銃より雷の弾丸を放ってイクトに襲わせる。


「雷!?」


少女の登場もだが、突然の雷の力に驚かされるイクトは再び影の壁を出現させて雷の弾丸を防ぐ。


が、イクトの右側に銃剣を手に持った銀髪の少女がマントを翻し、肩や脚を顕にするような衣装を身に纏って現れる。


「!!」


「アルカに気を取られて私に気づかなかったようですね」


「まさか……五体目!?」


「やれ、テミス!!」


ヒロムの言葉を合図にテミスと呼ばれた銀髪の少女は銃剣を構えながら走り出し、炎の弾丸を次々に放っていく。


「この野郎が!!」

(そうか……これが理由なんだな、キキト!!)


イクトは大鎌と影の腕で炎の弾丸を順番に破壊していくが、迫り来るテミスは銃剣を持ち直すとイクトに斬りかかった。


「くらうかよ!!」


イクトは影の壁を出現させて銃剣の斬撃を防ぐと距離を取ろうとした。


が、そうしようとしたイクトよりも先にヒロムが走り出した。


「……来るか!!」


「……避けろよ?」


ヒロムはイクトに一言告げると加速すると音もなく消えてしまう。


「……はぁ!?」


イクトはヒロムの姿を捉えようと探し始めるが、それよりも先にイクトの腹に痛みが走る。


「が……!?」


何が起きたのか?

目の前を見るといつの間にかヒロムがおり、ヒロムの拳がイクトの腹に命中していたのだ。


「いつの間に……」


「避けろって言ったろ?」


ヒロムはさらにイクトを殴り、そこから連続で拳撃をイクトに食らわせると回転して蹴りを食らわせる。


「こ……」

(コイツ……どこにこんな力が……!?)


「悪いな……加減する気はねぇ」


ヒロムは攻撃の手を緩めることなくイクトに猛攻を仕掛け、イクトも抵抗出来ずにすべて受けてしまう。


それによりイクトは大鎌を手放すこととなり、気づけばボロボロになって倒れるか倒れないかのギリギリの状態になっていた。


「……とどめだ」


ヒロムは倒れそうなイクトに向けて渾身の一撃を食らわせようと一撃を放とうと動く。


「この……」

(くそ……金に目がくらんだか……)


「やめて!!」


どこからともなく聞こえてくる少女の一声。


それによりイクトを殴ろうとしたヒロムの拳は止まり、一撃を免れたイクトは膝から崩れ落ちてしまう。


「……?」


誰かがイクトのもとへ駆け寄ってくる。


イクトはそれが誰なのか確かめようと薄れゆく意識の中で視線を向ける。


「キミは……」


「黒川くん!!」


駆けつけた誰か、それは姫野ユリナだった。


なぜいるのか?

それが気になったイクトだが、意識が遠のいてしまってそれどころではなかった。


「くそ……」



完全に意識が消えた。


イクトは消える意識の中で悟った。

自分の人生はここで……


***





『 やめろ!!』


『 やめて!!』


声が響く、周囲の景色は暗く、冷たい。


「何が……」


『 いやぁぁぁあ!!』



悲鳴にも似た声により意識が覚醒し、イクトは起き上がる。


「ここは……」


先程まで戦っていたはずなのに、気づけばどこかの暗い部屋に立っていた。


が、身に覚えはあった。


「まさか……」


何かに気づいたイクトは体を震えさせながら確かめように部屋に出ようとしたが、気づけばイクトは外に出ており、背後には炎に包まれた民家があった。


「あ……ああ……」


『お兄ちゃん……』


背後から声がした。


確認するように振り返ると、そこには返り血を浴びた少女が右手に包丁を持って立っていた。


そしてその後ろには二人の大人、男と女が倒れていた。


二人は血を流しているとはいえ意識はある様子だが、少女は不敵な笑みを浮かべながらイクトに迫っていく。


『 イクト……逃げるんだ!!』


『 私たちはいいから逃げて!!』



「……父さん……母さん……」


倒れる二人の大人……父と母を目の当たりにすると動けなくなり、少女が包丁をイクトに向けているのに何も出来そうになかった。


「やめろ……ヒナタ……」


『 お兄ちゃん……それで私を殺すの?』


少女……ヒナタがイクトを指さしながら尋ねてくる。


恐る恐る確認すると、イクトの手には大鎌があった。


「違う……やめてくれ……」


『 ひどいよ……私は……こんなことになりたくなかったのにぃ!!』


ヒナタの体から紫色の瘴気のようなものが溢れ出始め、ヒナタは悲鳴を上げながら襲いかかってくる。


「やめろ……やめてくれ……」


どうにかして止めたい、イクトはそう心で願うとともに何かが心の奥底からイクトを支配しようとする。


「嫌だ……オレは妹を……ヒナタを……」


イクトは瞳が金色になると共に大鎌を振り上げていた。


その狙いは確実にヒナタだった。


「待ってくれ……頼むから……」


イクトの言葉とは裏腹にイクトの体はヒナタを襲おうと大鎌を振り下ろしていた。


「やめてくれぇぇえ!!」

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