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XXXVIII


リュクスは全身に魔力を纏うとどこからか槍を出して構え、構えた槍の切っ先をイクトたちに向けながら彼らを強く睨む。



「答えないなら殺してでも聞き出す。

死にたくないなら……グリズリーを寄越せ」


「オレらがグリズリーの居場所を知ったとして……グリズリーを差し出せば退くのか?」


「素直に差し出せばだ、黒川イクト。

オレの望みたる物を追い求めるためにはグリズリーから情報を聞き出すのが最速だからな」


「……」

(キキトが目的じゃないのにキキトと通じてるグリズリーを狙ってる。

熱海の時もだけどコイツは何を企んでるんだ……?)


「……もういいか?」


リュクスの目的が気になるイクトが考え込んでいるとクランは彼に声をかけるなり短剣を構えてリュクスを睨む。


「これ以上は待てない。

ネクロの指示を聞かずに突入した以上、コイツの相手を長々として失態を犯すわけにはいかない」


「クランの言う通りだ、イクト。

オレたちの目的はコイツじゃなくて武器工場を破壊してキキトを炙り出すことだ。

コイツの目的は無視して……」


「二人は先に行ってくれ」


クランとソラがリュクスの相手ではなく本来の目的を優先すべきだと言う中、イクトは二人の意に反するように大鎌を構えながら前に出てリュクスの相手をしようとする。


が、クランはそれを許さなかった。


「待て。

オマエの目的はキキトを始末することのはずだ。

「八神」に加担するアイツに利用された汚名を晴らすためにオマエは……」


「熱海の集会所の時にコイツが現れて、キキトを追ってる今もこうしてまた現れた。

こんな言い方はしたくないけど、アイツとオレのあいだには運命というか因縁みたいなのがあるらしい。

ならオレはその運命と因縁に従ってコイツの相手をして終わらせる」


「バカな事言ってんじゃねぇぞ?

オレたちの目的は……」


「キキトを倒すこと、だろ?

分かってるさソラ。

だからこそ肝心な時に邪魔されないようにここで終わらせたいんだ」


「オマエ……」


「大丈夫、死んだりはしないから。

アイツを倒すか撤退させたら後から追いつくから先に行っててくれ」


「……別にオマエが死のうがオレは気にしないけどな」


「え!?

酷くない!?

オレたち仲間なのに……」


「ただ……オマエがそこまで言うなら止めようとするどけ無駄だと思っただけだ。

どうにかすると名乗り出たからにはで倒せよ?」


「任せなさいって。

宣言したからには必ず倒すさ」


「……そうか」


いくぞ、とソラはイクトの言葉を受けるとクランに言うと工場内に入っていこうとし、クランはそんなソラを止めようとする。


「待てソラ。

アイツ一人に敵を……」


「オレたちの目的は武器工場の破壊だ。

イクトは独断でそれを放棄して勝手に行動した……それだけだ。

オレとオマエはネクロの当初の指示に従って行動するぞ」


「本当にいいのか?

アイツは……」


「行動を共にしてる相手だ。

それ以上でもそれ以下でもない。

……ほっとけ」


「……」


「いくぞ、クラン。

ネクロと合流するぞ」


「……わかった。

イクト、さっさと終わらせて合流しろ」


ソラはネクロと合流しようと工場内に入っていき、クランはイクトに言葉を残すとソラの後を追って工場内に入っていく。


「あらら……交渉決裂なら行かせるつもりは……」


させないよ、とイクトは指を鳴らすと影の腕を無数に出現させてリュクスを捕らえようとするが、リュクスは手に持つ槍を軽く振って影の腕を切り払って捕らわれるのを防いだ。


「……邪魔するのか?」


「ソラがどう思っててもオレにとっては仲間。

その仲間が目的のために動いてくれるならオレはアンタの邪魔をする」


「邪魔、か。

熱海の時は手も足も出ないひよっこだったオマエがオレの邪魔をするのか?

笑わせるなよ」


「笑いたきゃ笑えよ。

オレがひよっこのままか成長してるかでその目で確かめろよ!!」


イクトは大鎌を強く握ると走り出し、走り出すとともに影の腕を出現させて再びリュクスを捕らえさせようとする。


「同じことを……芸がないのか?」


リュクスは槍を振って迫り来る影の腕を切り払って防ぐと走って向かってくるイクトを突こうと槍を地面と水平に構えて攻撃を放てるように体勢を整え……るが、リュクスの構えた槍は突然何かによって破壊されてしまう。


「何!?」


「はぁっ!!」


槍が突然壊れたことに驚くリュクスに迫るとイクトは勢いよく大鎌を振って攻撃を放つが、リュクスは壊れた槍の柄を盾にするようにして防ぐ。


「何やら細工でもしたようだが……何をした?」


「マジシャンはタネ明かしはしない。

知りたきゃ自分で調べな!!」


イクトは大鎌を振り上げるなりさらに攻撃を放つもリュクスはそれを避けると後ろに飛んで距離を取ろうとする。


「逃がすか!!」


イクトは指を鳴らすなり三度影の腕を出現させてリュクスに襲いかからせる。


「確かめろってなら確かめてやるよ!!」


リュクスは壊れた槍を捨てると新たな槍を出現させて影の腕を防ぎ、攻撃を防ぐと槍を見つめる。


槍をよく見ると細かだが槍にヒビのようなものが入っていた。


「ふーん……最初からオレ狙いじゃなかったってことか。

防御されること前提の攻撃だったってわけか」


「もう見抜いたのかよ……!!

どうせ避けるか防ぐかされるなら程度だからいいけどさ!!」


攻撃の狙いを見抜かれたイクトはリュクスに接近して何度も斬撃を放とうと斬りかかるが、リュクスは槍を投げ捨てると両手に魔力を纏わせて手刀で大鎌を止めてしまう。


「!!」


「どうした?

これも防ぐか避けるかされる前提の攻撃じゃなかったのか?

それとも大鎌を振れば当たるとでも思ったのか?」


「アンタ……本当は何が狙いなんだ?」


「ん?」


「熱海の時のキキトのあの反応、あれは昔からアンタを知ってるかのような口振りだった。

アイツはアンタを信用してたらしいけど、アンタは違うのか?」


何を今更、とリュクスは大鎌を弾き返すとイクトに蹴りを入れて突き飛ばし、突き飛ばされたイクトが体勢を立て直すと彼に告げた。


「黒川イクト、オマエと同じだよ。

賞金稼ぎになり「ハンター」に仕立てあげられたオマエがキキトを信頼していたのに真実を知ろうとして裏切ったのと同じこと。

オマエがキキトを裏切ったようにオレもアイツを見限って好きにしてるだけさ」


「裏切っただと?

オレはオレの意思に従って真実を知ろうとしてるだけだ!!」


リュクスの言葉を否定するようにイクトは大鎌を構えて走ろうとするが、走ろうとするイクトを邪魔するようにリュクスの前に突然一人の女が現れる。


仮面をつけて素顔を隠し、そしてメイド服に身を包んだ女。

イクトはこの女のことを知っていた。


「アイツは……熱海でオレとガイを攻撃してきたリュクスの仲間の!!」


「リュクス様、ここはお任せください」


「ジャスミン、頼むよ」


リュクスは現れたメイド服の仮面の女・ジャスミンに頼むと後ろに少し下がり、ジャスミンは両手にガントレットを装着すると走ってくるイクトに殴りかかる。


「させるか!!」


ジャスミンの攻撃をイクトは難なく避けると大鎌を振って反撃しようとするが、ジャスミンはイクトが振ろうとする彼の体を掴むと投げ飛ばしてしまう。


投げ飛ばされたイクトは地面を転がってしまい、ジャスミンは地面を転がるイクトに向けて次々に魔力をエネルギー波にして放っていくが、イクトは倒れた先で立ち上がると地面に手をかざして影を隆起させて壁をつくってジャスミンの攻撃を防いでみせる。


「少しはやるようですね」


「そっちこそな!!」


イクトが指を鳴らすと攻撃を防いだ影の壁が変化して銃の砲門となり、イクトがもう一度指を鳴らすと影の砲門から魔力の弾丸がジャスミンに向けて放たれていく。


「シャドウ・バレット!!」


「……安直な名前ですね」


イクトの放った魔力の弾丸が迫る中でジャスミンはイクトの技名のダサさにため息をついてしまい、ため息をついたジャスミンはガントレットを装備した両手で全ての攻撃を簡単に防いでしまう。


「この……シャドウ・キャノン!!」


攻撃を防がれたイクトは影の砲門を一つにまとめると巨大な魔力の弾丸を放ってジャスミンを倒そうとするが、ジャスミンは片手でそれを止めると天に弾き飛ばしてしまう。


「くそ……!!

ソラみたいな遠距離攻撃は上手くいかねぇな!!」


影の砲門を消すとイクトは大鎌に魔力を纏わせながらジャスミンに接近して攻撃を放とうとするが、ジャスミンは両手のガントレットに魔力を纏わせるとイクトの放つ斬撃を手刀で防いでいく。


「この女……!!」

(ガントレット単体でオレの下手くそな射撃防ぐだけじゃなくてリュクスと同じことを……!!)


「なるほど……大鎌を伝わってくるこの感覚……。

前回お相手した時よりはマシになってるようですね」


「偉そうな言い方が腹立つけど……アンタの方が強いってことは確かだよな!!」


イクトはジャスミンの言葉に腹を立たせながらも大鎌を大きく振りながら斬撃を放つが、ジャスミンは同じようにしてガントレットに魔力を纏わせて防ごうとする。



……が、ジャスミンが斬撃を防ごうとすると彼女の影が突然隆起していき、隆起した影は帯のようになるとジャスミンの体を拘束していく。


「これは……!!」

(まさか私に接近して何度も斬撃を放ったのは囮!?

私の動きを封じるために私の陰に細工を施すために……!!)


「どんだけ防げても動けないなら無理があるよな!!」


影の帯に拘束されたジャスミンに対してイクトは大鎌を勢いよく振り下ろして斬撃を放ち、放った斬撃を喰らわせようとしたが、ジャスミンは首を鳴らすと烈風を巻き起こして斬撃を吹き飛ばしてしまう。


「なっ……」


「手足を封じた程度なら何の問題もありません」


驚くイクトに説明するように言うとジャスミンはさらに烈風を発生させてイクトを吹き飛ばし、さらに烈風を刃のようにして影の帯を切るとジャスミンは自由を取り戻して動けるようになる。


烈風に吹き飛ばされたイクトは影の壁を咄嗟に出すとそれをクッションのようにして吹き飛ぶのを最小限に抑えると立ち上がって大鎌を構え直し、そしてイクトはジャスミンを見つめながら大鎌を強く握ると彼女に問う。


「アンタは何でその男のために戦う?

同じ目的のために戦っているのか?」


「……愚問ですね。

私の全ては既にリュクス様に捧げています。

故に私の全てはリュクス様のためにある」


「それだけの力があるのに全てを投げ捨ててまで仕える価値があるのか?

アンタなら……」


わかってないな、とリュクスはイクトの言葉を遮るように言うと彼にある事を告げた。


「彼女は何があってもオレのために戦ってくれる。

今までもこれからも……オレの意思が彼女を動かす」


「まさか……オマエは……」


「そう、オレはオマエが今力を貸しているあの男と同じなのさ」

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