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XXXVII


情報屋・グリズリーから情報を得た……いや、抜き取る形で得た情報により賞金首やテロリスト、果ては海外に密輸される武器を流通させている武器量産工場の場所は判明。


そしてネクロの指揮の下でその工場にある表と裏の入口の両サイドから攻めることになった一同。


搬入口のある表側を担当となったイクトはソラとクランとともに侵入する方法とタイミングを探るため工場の見える位置で考えをまとめようとしていた。


「……どうするよソラ?」


「ネクロの指示通りにオマエの影にオマエ自身とオレとクランが隠れて侵入するのが正攻法だが……オマエの影を利用した方法でやるならあの工場へ進入する動く物が必要ってことだよな?」


「オレの影に隠れての移動は二人を隠すだけならオレが動けるから問題ないけど、オレも隠れるってなると確実にあそこに進入する動く何かの影に隠れないとな」


「搬入口があるならトラックはどうだ?」


「いや、クラン……。

あの工場は周りからは倉庫として認識されてる。

その認識にカモフラージュさせる形で成り立ってるのが武器工場だ。

トラックの搬入はこの時間帯にあるかどうか……」


「そうか……こんな人目につきやすい時間にわざわざ警察やギルドにバレるような危険なことはしないってことか」


「それだけじゃない。

ネクロもオレたちもあそこに武器工場があることを知ったのはここ数時間での出来事の中でだ。

あの武器工場の武器を積み運んでるトラックがどんなトラックに偽装されてるかも分からない中では危険すぎる」


「なら搬入口の方に向かうトラックの影にギリギリのタイミングで……」


危険すぎる、とイクトはソラの提案に対して危険性があることを指摘した。


「ソラのやり方だとオレたちはここから離れなきゃならない。

この位置があの工場を安全に視察出来る位置、そこから先は敵の監視の網にかかる危険性がある」


「無駄に動けないってのか?」


「今のまま、ならな。

だけどネクロの指示通りに行くなら……別働隊として動こうとしてくれてるネクロの奇襲に合わせて適当な乗り物の影に隠れて移動すればいい」


「だけどその都合のいい乗り物が通るのか?」


「ソラ、イクト。

都合のいい動くものなら……一つだけあるぞ」


何かを見つけたのかクランはイクトとソラにも教えるように指さし、イクトとソラはクランが指さしたものの方を見て確認する。


視線を向けた先には電線があり、電線の上にはカラスが数羽いた。


それを見たイクトはクランが考えていることを理解し、それをソラにも説明するため、確認するようにクランに言った。


「あのカラスが飛び立つ瞬間に三人でカラスの影に飛び込み、カラスが工場の近くの影まで行けばその影に移って接近するんだな?」


「トラックや動く物が他に来なくてもあのカラスをあっちに飛ぶように仕向けて影に飛び込めば敵の監視網も何もない。

なら後はカラスがあの工場の方に飛ぶようにすればいいいい」


「なるほどな。

クランの考えたやり方ならイクトの影の移動も簡単に済みそうだな。

あとはタイミングだな」


「カラスが向こうに飛ぶようにするのは小石投げるなりすればいいし、ネクロたちの陽動が始まればそれが開始タイミングだな」


「だな。

まずは……」


イクトがソラとクランに何か言おうとしたその時、突然搬入口がある工場の表側の入口の方で大きな爆発が起きる。


「!?」


「何!?」


「何が起きた!?」


イクト、ソラ、クランは突然の爆発に驚きを隠せず、クランは慌てて通信機を出すと別働隊のネクロへと連絡をして何が起きてるのか確認しようとした。


「ネクロ!!

聞いてた話と違うぞ!!

そっちは裏側から侵入するんじゃなかったのか!!」


『こちらはまだ敷地にすら入っていない!!

今の爆発はオマエたちじゃないのか!?』


「何言ってやがる!!

こっちはそっちの奇襲待ちだ!!」


『なら誰の仕業だ!!

この武器工場の情報はグリズリーから情報を得た我々かあの工場に勤務する人間だけのはずだ!!』


「誰の仕業なのかはこっちが聞きたいくらいだ!!」


クランとネクロが通信機越しに犯人探しをする中ふたたび爆発が起き、その爆発を皮切りに何度も爆発が発生する。


爆発はしばらく続くもすぐに収まるが、爆発によって工場敷地内は黒煙を巻き上げており、工場の方から警報が鳴り響いてくる。


「ネクロ、指示をくれ!!

このままじゃどうにもならねぇぞ!!」


『……仕方ない。

三人はそのまま突撃して工場破壊を行ってくれ。

こちらもそちらに合流するべく工場内の設備を破壊して進む』


「この爆発を起こしてる犯人はどうするつもりだ?」


「んなもん倒すだだろクラン!!

今更指示を待つ必要ねぇよ!!」


爆発を起こした犯人をどうら対処すべきかクランはネクロに指示を求めようとするが、その隣でソラはやる気十分な様子で自前の銃を取り出していた。


「待てソラ!!

ここを爆撃した相手がどうやってここを知ったか知る必要がある!!」


「流暢なこと言ってる場合か!!

さっさとしねぇとキキトの手掛かりが消されかねないんだぞ!!」


「キキト……」


クランとソラが揉める中、イクトはソラが口にした「キキト」の名を聞くと何かに気づいたのかクランの持つ通信機越しにネクロにあることを訊ねた。


「ネクロ、リュクスって男を知ってるか?」


『リュクス?

誰だそれは?』


「熱海でリブラを殺した能力者だ。

その男はキキトの邪魔をしていた男だ」


『キキトの邪魔をする能力者だと!?

あの男を狙うヤツが他にもいたのか……?』


「素性はオレもよく知らない。

けど今この武器工場を知るオレたち以外でここを知ることが可能な人間はリュクスってヤツだけなんだ!!」


「イクト、ネクロはリュクスってヤツを知らない。

こうなったら……」


「……そうなるよな」


『おい、何を……』


「ネクロ、オレたちはアンタの指示通りに突入する!!

そしてこの目で犯人を確かめる!!」


『おい、待……』


通信機越しにネクロが待つように言おうとする途中でイクトは一方的に通信機の電源を切り、そしてイクトはソラとともに工場に向けて走る。


「すまん、ネクロ……!!」


通信機を片手にクランはネクロに謝るように呟くと二人を追うように走っていき、三人は黒煙巻い上がる工場の搬入口に向かっていく。


走る中でクランは両手に短剣を装備し、イクトは大鎌を自身の影の中から出現させると手に持って武器を装備する。


三人とも武器を装備して工場前まで来ると敵のことなど気にすることなく敷地内に足を踏み入れる。


搬入口がある表側の入口と敷地内は爆発による影響で焔が燃え上がっており、黒煙が舞う中でこの工場で作業していたと思われる作業員が何人も倒れていた。


「ひでぇ……」


「派手に暴れてやがるな。

クラン、どう動く?」


「この惨状を引き起こしたヤツを見つけてどうにかするべきだな。

オレたちがここを破壊しようとしてもそいつがここを破壊するオレたちとは別の目的で来てるのなら邪魔してくるかもしれない」


「ならオレたちは敵の足止めか?」


「それが先決だな。

最悪の場合はネクロたちに……」


「敵襲、敵襲!!」


ソラとクランがここからの段取りを決めようとする中、工場内部から銃器を装備した作業員が次々に現れてイクトたちを撃つべく構えようとするが、構えるよりも先にソラは銃を構えて炎の弾丸を速射して作業員の持つ武器を全て破壊してしまう。


さらにクランは短剣に魔力を纏わせると作業員たちに向けて斬撃を放ち、放たれた斬撃が作業員を吹き飛ばしてしまう。


「「うわぁあああ!!」」


「……ここの作業員はまともな戦力にならねぇ。

湧いてくるのほっといても軽く倒せる」


「たしかにな。

武器の扱いもなってねぇし、ソラとオレ……あとイクトがいれば問題ないな」


「さりげなくオレのこと忘れるなよ!?」


「……元気があるなら十分だ。

それよりもどうやって敵を探すか……」


「探さなくてもいいさ」


クランが話す最中に誰かが邪魔するように話に入ってくる。


話に入ってくるように聞こえてきた声の方を三人が向くとその先には赤い髪の青年がいた。


黒いロングコートに翼を思わせるような赤い装飾を付けた青年は微笑みながらイクトたちに向けて手を振るが、青年を見たソラはイクトに言った。


「オマエの言う通りだったなイクト」


「ああ、嫌な予感が当たった……!!」


「おい、ならアイツが……」


「アイツがリュクスだ!!」


「……あれ?

歓迎されてなかったのかな?」


イクトが叫ぶとリュクスは意外そうな顔をしながらつぶやき、クランは初めて会うリュクスに短剣の切っ先を向けながら問い詰めるように言葉を発する。


「オマエは何者だ?

何故この場所にたどり着いた?」


「ん?

キミは「暗撃」のクランか。

なるほどねぇ、この地域にオレの目的物があると聞きつけてやって来たけどそっちはこの辺を牛耳るネクロとその部下に頼ってるとは思わなかったよ。

キミたちにネクロとの繋がりがあるとは思わなかったな……いつからだ?」


「オマエに関係ない事だ。

それよりもオレの質問に答えろ」


「キミたちが答えないなら答える義理はないし、答えたところで教える気は無いさ」


「……なら死ぬか?」


「やってみろよ。

キミじゃムリだなクラン。

所詮キミじゃオレは倒せない」


「んだと……?」


「待ってくれクラン!!」


青年……リュクスの挑発するような言葉に苛立ったのかクランは短剣を強く握るとリュクスを攻撃すべく走ろうとするが、イクトは彼を止めるとリュクスに質問をした。


「……キキトはどこにいる?」


「それを答える義理はない。

それに……オレの目的はキキトじゃないからな」


「キキトじゃない?

なら何のために……」


「教えてやってもいいけどさ……どうせオマエら知らないだろうしいいや。

とりあえず……グリズリーはどこにやった?」


「……!!」


「なんでオマエが情報屋のグリズリーを?」


「それも教えないさ相馬ソラ。

オレはただ、目的物のためにグリズリーを尋問したいだけだからな」


「……そうかよ。

けどグリズリーならここにはいない」


「けどオマエらだろ?

あの劇場にいるはずのグリズリーを襲ったのはオマエらだろ?」


「……だとしてもここにはいない。

オレらが手厚い尋問でここを聞き出したからな」


「そうか。

なら仕方ねぇな」


ソラの言葉を聞いたリュクスの顔から微笑みは消え、そしてリュクスは全身に魔力を纏うとどこからか槍を出して構えるとイクトたちを強く睨む。


「答えないなら殺してでも聞き出す。

死にたくないなら……グリズリーを寄越せ」

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