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XXXV


イクトのド派手な新技で武装した兵士たちを倒し、クランがグリズリーを捕らえたことでひとまずの目的は達成された。


イクト、ソラ、クランは戦場となったサーカスの劇場から外に出るとソラは銭湯の痕跡を消すために炎を周囲に放ち、放たれた炎はサーカスの劇場を燃やしていく。


幸いな事にサーカスの公演で活躍する動物たちや劇団員たちは到着していないらしく姿はなく、炎に焼かれる劇場の中で倒れる兵士たちだけが炎に飲まれていく。


燃え盛る炎、次第に噂をききつけた近隣住民や野次馬が集まり始め、消火のために消防車が駆けつける。



その光景を遠く離れた人気の無い場所から眺めるイクトとソラ。


「……やりすぎじゃない?」


「あれくらいは必要だな。

オレたちはあそこで派手に暴れた。

その事を悟られぬためにも確実に証拠を消し、その上でオレたちが動きやすく人の目をあそこに向けさせるにはあれくらいはやって当然だ」


「やって当然、か。

やりすぎてキキトに勘づかれないか?」


「気づいた時にはもう遅い。

手掛かりとなる男である情報屋のグリズリーはオレたちとクランで捕まえてるからな」


「そうだけど……」


ソラの言葉に対して言い返すわけでもなく曖昧な言葉を返したイクトは恐る恐る後ろを見た。


イクトが視線を向けた先、そこでは天井から吊るされるように体を鎖で縛られた情報屋のグリズリーがクランに何度も何度も殴られている光景があった。


「や、やめてく……」


やめてくれ、とでも言おうとしてるであろうグリズリーの言葉になど耳を傾けずに一方的に容赦なく殴り続けるクラン。


そのクランの殴り続ける姿を見たイクトはソラに確認した。


「……止めなくていいのかな?」


「何がだ?」


「クランだよ。

あのままじゃグリズリーは何も話さないんじゃ……」


「……確かにそうだな。

おいクラン、その辺で止めろ」


「何?」


イクトに言われて珍しく素直に聞き入るとソラはクランを止めるように言い、クランはソラの言葉を聞くなりグリズリーを殴る手を止めるとソラに問う。


「何のつもりだ?

オレは情報を得るためにコイツを痛めつけてんだぞ?」


「そんなの見れば分かる。

けど……それじゃそいつも答えたくないものは答えないだろ?

痛みを与えるだけなら耐え凌ぐ道を選べばそいつは時間稼ぎも出来る」


「……それもそうか」


「だからちょっと離れとけ」


ソラはクランにグリズリーから離れるように伝え、ソラの言葉に従うようにクランはサンドバッグの代わりにしていたグリズリーから離れる。


すると……


クランが離れるとソラはすぐさま拳銃を取り出し、取り出した拳銃から炎の弾丸を数発放つとグリズリーを縛る鎖に命中させる。


炎の弾丸が鎖に命中するとそれを受けた鎖は熱を帯びていき、真っ赤になるほどの高温に達した鎖は超高音となり、その鎖に縛られるグリズリーは鎖の熱に体を焼かれて苦しみ叫び出してしまう。


「ぁぁぁあぁぁぁぁぁあ!!」


「……痛みに耐えるなら耐えれなくするだけだ」


「うわぁ……エグッ……」


「ソラ、オマエ拷問専門の賞金稼ぎに向いてるぞ」


「残念だがクラン、その提案は却下する。

さて……グリズリーさんよ」


クランの言葉に冷たく返すとソラは鎖の帯びた熱に苦しむグリズリーのもとへ歩み寄り、そしてグリズリーに拳銃を向けながら告げた。


「死にたくないなら答えろ。

答えないのならさらに温度を上げるだけだ。

その上で質問するが……キキトはどこにいる?」


「ぐぁぁあ……!!

お、オマエら……こんなことしてタダで済むと思うなよ……!!」


「質問に対して関係の無い答えは求めてない」


「……オレがグリズリーから聞きたかったのは武器工場の場所なんだけどな」


「ま、まぁいいじゃんクラン。

それよりも……」


本来の目的と異なる質問をするソラにクランは少し不満を持つもイクトが宥めようとするが、一方でグリズリーの態度の気に入らないソラは鎖に一発炎の弾丸を撃ち込んで鎖の帯びる熱をさらに高める。


「がぁぁあ!!」


「質問には相応の答えを返せ。

情報屋やってるならそれくらい分かるよな?」


「ぐ、このクソガキ……!!」


「……オレがクソガキならオマエはクズだな」


グリズリーはソラに対して叫ぶが、ソラは冷たい眼差しを向けたまままた鎖に炎の弾丸を撃ち込み、鎖が更なる熱を帯びるとグリズリーは叫んでしまう。


「ああああああああぁぁぁ!!」


「叫んでねぇでさっさと答えろ。

キキトはどこにいる?」


「ぐ、ぐぁぁあ……!!」


「……仕方ねぇか。

もっと温度を……」


「キ、キキトとは数日前から連絡が取れねぇ……んだ!!」


ソラがまた鎖に炎の弾丸を撃ち込もうとするとグリズリーは苦しみから逃れようと叫ぶようにソラに言い、グリズリーの言葉を聞いたソラは彼に問い詰める。


「どういう事だ?

オマエさっきはキキトから連絡受けて警戒してたんじゃなかったのか?」


「オ、オレの所に連絡があったのは数日前なんだ!!

リブラが殺されたって報告とそいつらがオレや武器工場を狙ってるって……キキトからの連絡があったのは数日前なんだ!!」


「……」


「ぐっ……うう……」


「チッ……」


ソラは舌打ちをすると炎の弾丸を鎖に連続で撃ち込み、炎の弾丸を数発連続で受けた鎖は熱を更に帯びようとするもその熱に耐えられなくなったのか砕け散り、鎖が砕けたことでグリズリーは拘束から解かれる。


が、ソラの手によって高温に仕立て上げられた鎖に縛られた体はひどい火傷を負っており、拘束から解放されても痛みからは解放されないグリズリーは苦しそうにしていた。


「……用済みは消すつもりだったのに脆い鎖だな」


「最初からそのつもりだったんだろ?」


鎖の脆さに愚痴をこぼすソラだが、そのソラにイクトは歩み寄ると彼に言った。


「情報を吐かせるために拷問みたいなことしてたけど、鎖の耐熱性と衝撃耐性を理解した上で炎の弾丸を撃ち込み、数発撃ち込んだらグリズリーの体の重みと熱に耐えれなくなった鎖が砕けるように計算してたんだろ?」


「……何の話だ?」


ソラの行動に対してイクトが話すとソラはとぼけた様子で聞き返し、そのソラの言葉にイクトは思わず笑みを浮かべる。


彼には優しさがある。

命を奪うことの躊躇の無さと目的を優先する非情さがイクトの瞳には強く映っていたが、こうして見ると彼も優しさをしっかりと兼ね備えている。


ソラのことを改めて認識し直すイクト。

だがそのイクトのことなどお構い無しにクランはナイフを取り出すとグリズリーの首に突きつけた。


「オマエがキキトの情報を持ってないはずがない。

オマエが言ってた武器工場の場所を教えろ」


「こ、答える義理は……」


「オマエに選択権はない。

答えろ、賞金首に横流しされてる武器を生産してる工場はどこだ?」


「……」


「黙秘か?

黙って時間稼ぎか?」


「……」


「時間稼ぎがしたいなら……好きにしろ!!」


クランはグリズリーの首に突きつけたナイフを持ち直すとグリズリーの右肩に突き刺し、刺されたグリズリーは叫んでしまう。


「がァァァあ!!」


「時間が経てば何とかなるかもしれない……とか思ってねぇよな?

残念な話だが今のオマエにはオレの質問に答える以外にこの瞬間を逃れる方法はない。

そして沈黙がこのまま続くなら……オマエの肉を削ぐ」


「ぐっ……あっ……悪魔め……!!」


「悪魔で結構。

オレの全てはすでにネクロのもとにある。

今のオレはネクロのために動く悪魔だ」


「ぐっ……この……」


「さて、答えてもらうぞ」


クランはグリズリーの右肩からナイフを抜くと左肩に狙いを定め、勢いよく振り下ろそうとする。


……が


「そこまででいい、クラン」


どこからかした声、その声の言葉を聞いたクランはグリズリーの左肩に突き刺す寸前でナイフを止め、イクトとソラは声のした方を見た。


その先には……


二本の触覚があるような前髪の青い髪、紫色の瞳を持った黒いローブを纏った青年がこちらに向けて歩いてきていた。


「アイツは?」


「……ネクロだ」


青年を見ても誰か分からないソラに対してイクトは彼を知るようにソラに話した。


「彼がオレたちが探してる情報屋だよ」


「あの男が……ネクロか」


「……クラン、それ以上はやらなくていい」


青年……ネクロはこちらに向けて歩いてくる中でクランに言い、それを聞いたクランはため息をつくとナイフを片すとグリズリーから離れ、そしとクランはネクロに対して言った。


「まだ情報は聞き出せていない。

オマエの頼みを果たせてない」


「このままやってもその男は何も吐かない。

それにオレのためと言ってキミが手を汚す必要は無い」


ネクロはクランに伝えると杖を出し、杖の先をグリズリーの額に当てる。


ネクロの行動を不思議そうに見るソラ。


「何する気だ?」


「……見てれば分かるよ」


ソラの隣で何か知ってるような言い方をするイクト。

そのイクトが話した後、ネクロの杖が光を発し始め、光を発するとともにグリズリーの頭の中から何やらメモのような形のものが光となってネクロの手元に飛ぶ。


ネクロはそれを手に取ると閲覧し、閲覧を終えるとグリズリーの中へとそれを戻した。


「なるほど。

大阪湾に隣する工業地帯付近の青い倉庫にカモフラージュさせた工場か。

傍から見たら分からないな」


「な、なぜ場所が……!?」


「残念だなグリズリー。

オレの手にかかれば手に入れられぬ情報はない」


ネクロが言った武器工場があると思われる場所を聞いたグリズリーは動揺してしまい、動揺するグリズリーにネクロは言うと魔力を杖から放ってグリズリーの全身を縛るとイクトに指示を出した。


「黒川イクト、この男をオマエの影に隠しておけ」


「お、おう!!」


ネクロの指示通りにイクトは魔力に縛られたグリズリーを自分の影の中に入れ、グリズリーが影の中に入るとネクロはため息をつくとイクトに言った。


「……派手に暴れてくれたな。

オマエとそのお仲間は隠密に行動してるんじゃなかったのか?」


「何でその事を?」


「ここに来た目的についてはすでに情報網から得ているが、詳細に関しては雨月ガイから聞いている」


「ガイからだと?

アイツは今どこに……」


「落ち着きたまえ相馬ソラ。

彼は今オレの指示を受けた能力者と待機している。

怪我もなく無事だよ」


「そうか……」


「キミたちと来たロビンの姿は見えないが……まぁ、いい。

あの男無しでも果たせそうだな」


「?」


「グリズリーの記憶から武器工場の場所を割り出せた。

キミたちは彼と合流した後、オレの指揮の下で工場を襲撃してもらう」


了解した、とネクロの言葉にクランは返事をし、ソラはイクトに話しかけた。


「……いよいよオマエの目的に近づけるな」


「ああ、ようやくだ。

ソラ……力貸してくれるよな?」


「……ヒロムの脅威になるキキトを消すためだ。

オマエのためじゃない」


「……ありがとな」


「さっさと行くぞ」


「ああ!!」

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