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XXXII


「せっかくだ……ネクロに依頼した仕事を完遂出来るか見極めてやるよ」


黒いコートを羽織り、豹を模したような獣造形の氷の仮面をつけた男……ウィンターは首を鳴らすとイクト、ソラ、クランに言うとかかってこいと挑発するように中指を立てる。


「あ?」


ウィンターのそれを見たソラは拳銃を取り出すと迷うことなく弾丸を撃ち放ってウィンターの頭を撃ち抜こうとするが、放たれた弾丸はウィンターに接近すると突然氷に襲われ、凍結するとそのまま砕け散ってしまう。


「……!!」


「加減するな、相馬ソラ。

その程度ではオレは倒せんぞ?」


「……上等だ。

本気でやって……」


「待て、一旦落ち着け」


ウィンターの言葉によってやる気を見せるソラだが、そのソラをクランは宥めるとウィンターを見ながら質問をした。


「何故キキトの始末をネクロに依頼した?

情報屋の界隈を大きく統べてるのは確かににネクロだ。

だがネクロ以外にも「酷獣」がいる。

非合法で殺しを頼むならネクロではなくそっちに……」


「ネクロに依頼したのはヤツが情報屋の情報を牛耳るだけの責任能力と判断力、それを駆使して経済を動かす力がある。

だからヤツに依頼した、その方が効率がいい。

辺境の地に住んで金のために情報を流して生活して欲を見せない男の方が都合がいい」


「……ネクロから話は聞いたが、推測ではオマエは「八神」の人間だと考えられる。

そのオマエが何故「八神」に加担するキキトを売るゆだ?」


「……何?」


クランの言葉に思わず反応してしまうソラ。

そしてイクトもクランの言葉に反応してしまう。


「どういうことだよ?

目の前の男が「八神」の人間で、「八神」に仕えてるキキトを殺させようとしてるのか?」


「ネクロの推測ではな。

ネクロはその仮面の下の正体も気づいている。

だからこそ引き受けたんだろうが……オレは違う。

ネクロに近づく不審な野郎は始末する」


「……始末とは大きく出たな。

試してみるか?」


「……やってやるよ!!」


クランは腰に携行した二本の短剣を抜剣すると走り出し、クランに続くようにソラは拳銃を構えて走り出す。


「ちょっ……」


「何してる「死神」!!

オマエも加勢しろ!!」


「……っ!!

ああ、もう!!訳わかんねぇ!!」


混乱するイクトにクランは加勢しろと命令口調で指示し、それを聞いたイクトは頭を搔くと言葉を吐き捨てながら大鎌を構えて走り出す。


三人が走り出すとウィンターは両手の指の関節を鳴らすとゆっくりと歩き出す。


「さて……お手並み拝見だ」


「オレに喧嘩を売ったこと、後悔させてやる!!」


クランは短剣を構えて走る中で加速すると速度を上げ、残像すら残さぬ速度でウィンターに接近すると目にも止まらぬ速さで短剣による連撃をウィンターに放っていく。


……が、放たれた攻撃の全てはウィンターに命中せず、ウィンターに命中する瞬間に薄い氷がウィンターを守るように現れてクランの剣撃を全て止めてしまう。


「何……!?」


「見事な動きだ。

だが……速さばかりで軽すぎる。

氷が割れないところを見るとかなり軽いな」


「……黙れ!!」


クランの攻撃を分析するウィンターを黙らせようとクランは短剣を逆手に握って首をかっ切ろうとするが、ウィンターはその攻撃を片手で簡単に止めると氷を纏わせた足でクランを蹴り飛ばす。


「がっ……」


「そして単純。

この程度で異名を持って強者を名乗れるとは勘違い甚だしい」


「黙れ……!!」


「黙らせてやる」


ウィンターにクランが黙れと言葉を発するとソラが拳銃を構えて接近し、ウィンターに向けて次々に炎の弾丸を放っていく。


放たれた炎の弾丸を前にしてウィンターは氷を使おうとせずにソラの攻撃を避けるとソラに蹴りを放つが、ソラはその攻撃を避けると仮面に向けて至近距離から炎の弾丸を放とうとする。


「ほぅ……」


「その仮面の下の面……拝ませろ!!」


ウィンターの仮面を撃ち抜こうと狙い定めて引き金を引こうとするソラ。


しかし……


ソラが引き金を引こうとしても引き金は引けず、絶好のチャンスの中で弾丸が放てないでいた。


「何故……!?」


「よく見てみろ」


ウィンターが指を鳴らしてソラに告げ、それに従うようにソラが拳銃を見ると、彼の持つ拳銃の銃身、引き金はいつの間にか凍りついており、使用しようとしても動かせない状態にあった。


「なっ……」


「オレがオマエの攻撃を避けたから炎でどうにかできるとでも?

残念だがオマエ程度の熱なら凍らせられる」


「オマエ、わざと……!!」


「その通りだ、間抜けが」


全てを理解したソラに一言告げるとソラの拳銃を掴んで完全に凍結させて砕き、武器を失ったソラの体に掌底を叩き込むとソラを吹き飛ばす。


「がっ……!!」


「この程度か」


「そんなわけねぇだろ!!」


吹き飛ばされたソラは受け身を取ると右手に炎を纏わせ、纏わせた炎をウィンターに向けて撃ち放とうとするのだがウィンターが指を鳴らすとソラの右手は炎ごと凍結し、動きを封じるかのように左手と両足までもが凍結させられる。


「しまった……!!」


「まずは一人」


「はぁぁあ!!」


ソラの身動きを封じたウィンターが呟く中でクランは短剣に魔力を纏わせて斬撃を放つが、ウィンターは両手に冷気を纏わせると斬撃を掴み、掴んだ斬撃を冷気で凍結させると握り砕いてしまう。


「コイツ……!!」


「……単純だと言っただろ?

オマエの攻撃は単純すぎて効かない。

頭は切れるが戦闘力は低い」


「なめ……」


「はぁっ!!」


クランがウィンターに再び攻撃しようとした瞬間、イクトが大鎌で斬撃を放ち、放たれた斬撃はウィンターに襲いかかろうとする。


が、クランの時同様にウィンターはイクトの放った斬撃を冷気を纏わせた手で止めると凍結させて砕いてしまう。


「やっぱ無理か!!」


「……無理とわかりながらも挑むその無意味さ、ある意味尊敬する」


「そりゃどうも!!」


皮肉を混じえたウィンターの言葉を受けたイクトは自身の影を操作して無数の影の拳を作り出すとウィンターを殴らせようと放ち、さらに自身は魔力を纏うと加速しながらウィンターに接近していく。


影の拳はウィンターに迫ると次から次に殴りかかっていくが、ウィンターは両手と拳を氷で覆うと迫り来る拳を全て殴り返し、そして全ての影の拳を殴り返すと吹雪を放ってイクトごと影の拳を押し返す。


「ぐっ……!!」


イクトは大鎌を大きく回転させて風を起こして吹雪を凌ぐが、吹雪に襲われた影の拳は凍結するとそのまま形をなくしてイクトの影の中に戻ってしまう。


「この……!!」


吹雪を凌ごうと大鎌を回転させて風を起こすイクトだが、ウィンターの放つ吹雪の勢いは強く、徐々にイクトの体は凍り始めていた。


少しずつではあるが確実に凍りつつある。


が、イクトは影を膨らませると無数の腕を出現させ、自身の体を掴ませると無数の腕とともに彼の体は影の中に消え、影は音もなく消えてしまう。


「……?」

(消えた?

影の中に?

ヤツはどこに……)


イクトが消えたことで何が起きてるのかを分析しようとするウィンター。

そのウィンター自身の影が背後で大きくなっていき、その影からイクトが飛び出て姿を現すと彼は大鎌を振り上げて背後からウィンターを斬ろうとした。


しかし……


「……甘いな」


振り下ろされた大鎌はウィンターに命中して彼を斬り穿とうとするが、大鎌の一撃を受けるとウィンターの全身は氷に覆われ、そして大きく亀裂が入ると氷は砕け散ってしまう。


「な……!?」


氷が砕け散るとそこにいるはずのウィンターの姿が消え、氷を砕いた大鎌は完全に凍結してしまい、イクトは凍結に巻き込まれぬように手を離してしまう。


が、それは判断ミスだった。


イクトが大鎌を手放すと彼の背後にどこからともなく冷気が現れ、現れた冷気が一つに集まるとウィンターへと姿を変え、現れたウィンターはイクトの体に手を当てると彼の頭を残すように他の全てを凍結させてしまう。


「なっ……!!」


「影から影への移動とは驚いた。

が、似たようなことならオレにも出来る」


「くそ……っ!!」


悔しそうにするイクト、そのイクトの姿を見たソラとクランは動けなかった。


ソラは氷に襲われたこともあって動けないが、クランは別の理由があった。


「……」


「理解してるようだな「暗撃」のクラン。

少しでも動けばオマエにとって都合のいい駒は殺す」


「……望みは何だ?」


クランは短剣を鞘に収めると両手を上げ、クランの行動を見たウィンターは指を鳴らしてイクトとソラの体の氷を消すとクランの言葉に対して返事をした。


「要求は一つ。

オレの指定する場所にある施設を強襲して破壊してほしい」


「何のためにだ?」


「そこはキキトにとって重要な場所だからだ。

そこを破壊すればオマエたちがやろうとしていたキキトの炙り出しも簡単になるぞ」


「……拒否権は?」


「ネクロのために役立ちたいなら引き受けろ、それだけだ」


ウィンターはクランに一言告げると背を向けて立ち去ろうとするが、彼が数歩歩くとイクトが止めるように話しかける。


「待ってくれ!!

どうしてオレたちに情報を?

アンタが直接やれば済むことじゃないのか?」


「……ことはそう簡単な事じゃない。

オレの素性がバレれば今後動きにくくなるからな。

それに……黒川イクト、オマエの力を試したかった」


「オレの……?」


「オマエが姫神ヒロムの力になるかどうか、確かめさせてもらうためだ。

この先姫神ヒロムには力を持つ仲間が必要になる。

雨月ガイや相馬ソラに続く仲間……オマエがそれに足る存在かを確かめさせろ」


「ど、どういう意味だよ!!」


「……答えはいずれ分かる」


ウィンターの言葉に疑問を抱かずにいられないイクトは真実を聞き出そうと叫ぶが、ウィンターはあしらうように一言言うと冷気となって姿を消してしまう。


ウィンターが消えると彼の言葉によって悩みを抱くイクトは頭を抱え、ウィンターに勝てなかったクランは悔しそうに地面を蹴る。


そんな中、ソラはウィンターの言葉に対して違和感を感じていた。


(何故ヤツはオレやガイのことを口にした?

それにヤツが「八神」の人間なら何故ヒロムの仲間を増やすかのような言葉を口にした?

それに……イクトが次の仲間?

イクトの現れたタイミング、キキトの出現、そしてイクトの周囲の人間を巻き込むようなこの状況……)


「まさか今回の件はヤツが全て……」





***



電波塔の上……



そこに冷気が集まるとそれはウィンターに姿を変え、ウィンターは顔に右手を当てるとゆっくりと氷の仮面を消していく。


「……腕は悪くない。

判断力もあるし能力者としての戦い方もしっかり心得ている。

あとは……心の問題だな。それさえ乗り越えればヤツはヒロムの力になる」


氷の仮面が消えると氷のような冷たさを感じさせる水色の髪の少年の素顔が現れ、少年は遠くの景色を見ながら一人呟く。


「これで三人目。

オレの思い描く部隊の完成まであと二年。

完成した時には……かならずオマエのところに戻るぞ、ヒロム」


ウィンターは……氷堂シンクは言葉を発すると氷の仮面を装着して冷気となって消える……

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