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XXXI


ソラもイクトも電話に出ないと悩むガイ。


そんな中……


「そこのお兄さん」


悩むガイのもとへと赤黒い髪の少年が歩み寄り、少年はガイに話しかけた。


「お兄さん、今一人?」


「……そうだけど」


少年に話しかけられたガイは彼のことを警戒して冷たく言葉を返し、そして腰に携えた刀に手をかける。


万が一の場合、ガイは少年を斬るつもりでいる。


この状況下で話しかけてくることに疑わざるを得ないのだ。


敵地に足を踏み込んでる可能性もある中、ガイはそういうことに過敏になっている。


が、そんなガイの気持ちなど理解しようとしないのか分かっていないのかは知らないが少年は何も気にすることなくガイに話していく。


「実は人を探してるんだ。

えっと……クロカワイクトって言うんだけど、

クロカワは漢字で書くと白黒の黒と川遊びの川で黒川って……」


「悪いが日本人だからクロカワって聞いたら黒川だって察しがいくし、こんな金髪の見た目だがオレは日本人だ」


「えっと……なんか怒ってる?」


「安心しろ、怒ってない。

オレはそれよりも何故オマエがイクトを探してるのか気になってるだけだ」


ガイの様子を伺うように恐る恐る話しかける「晶眼」に向けてガイは即答すると刀を抜刀して少年に突きつけるが、少年は両手を上げると無抵抗の意思を伝えるかのようにガイに向けて言った。


「お、落ち着いて!!

オレは敵地に来て不安になってるだろう黒川イクトとその仲間を助けるように言われたんだよ!!」


「ただ人に優しいだけのヤツがオレを見て敵地に足を踏み込んでる可能性がある人間だと思って話しかけると?

それにイクトがオレたちと来てることを知ってるのも怪しい。

オマエ何者だ?」


「お、オレは……ちょっと待って!!」


少年はガイの何者だという問いに答えようとしたが、何故か急に待つように伝えると刀から逃れるように数歩下がり、そして携帯電話を取り出すと誰かにテレビ電話を始めた。


「もしもし、天晴だけどさ……アンタの話と違うじゃん!!

あの金髪の……名前忘れたけど、とにかく物騒だよこの人!!

刀抜いてオレに向けて構えてんだよ!?」


『それはオマエの段取りが悪いだけだな。

オレの指示通りにしてれば雨月ガイに不要な警戒心を抱かせることもなかった』


「いやいや、アンタの説明長くて……」


『もういい。

テレビ電話にしてるならこの音声はもれなく雨月ガイに聞こえてるはずだ』


電話をする少年は恐る恐るガイの顔を確認し、ガイはため息をつくと刀を鞘に収めて少年に歩み寄り、そして少年の携帯電話を覗き込んだ。


すると……


『キミが雨月ガイだな?』


ガイが少年の携帯の画面を見るとそこにはテレビ電話の相手である青年が映っていた。



青い髪、前髪は二本の触角を思わせるように額にかかったような髪型をした紫色の瞳の青年。


青年の方でもガイの姿を確認したらしく、ガイの身分を確かめるように質問をしてきた。


が、ガイはそれに応じることなく青年に向けて質問をした。


「アンタは何者だ?

何故オレのことを知っている?」


『それはオレが情報を集めるという点においてこの関西圏では優れてるという表れでもある。

キミが黒川イクト、相馬ソラ、ロビン・ケルトマンとともに数時間前にここにやってきたのも、キミが黒川イクトや相馬ソラとオレの手掛かりとなるであろう男を探そうとしていることもな』


「アンタ、まさかだが……ネクロなのか?」


『さすがは雨月ガイ、冷静に答えを導き出した点は評価に値する』


「……まさかそっちから接触してくるとはな。

ところでこのアンタの使いみたいなのは?」


ガイは少年指さしながら青年……ネクロに問うのだが、ガイはネクロに対して訊ねたはずなのに少年は自ら名乗り始めた。


「テンセイ、天は晴れると書いて天晴だ」


「……オレはネクロに質問したんだがな。

まぁ、いい。この天晴ってのを寄越した理由は何だ?」


『単刀直入に言おう。

キミは天晴とともに私のところに来て欲しい。

用件はその後だ』


「待て。

イクトやソラと合流するのが先だ」


『彼らは今クランと合流した。

三人にはある仕事をさせるからキミにはこちらに来て欲しい』


「何のためにだ?」


『キキトを始末するためだ。

そのためにはまずキミと情報を共有したい』


「……なるほど」


ネクロの提案を聞いたガイは彼の思惑を理解すると共にどうするかを悩む。


今の話の流れでネクロにはガイたちの動きは全て筒抜けだ。

それによってガイのもとに少年……天晴を送られ、イクトとソラはクランと合流したのだ。


だがガイは腑に落ちなかった。


それほどまでの情報収集力があるのに何故わざわざガイだけネクロと合流して情報を共有したいと言うのか?


共有などしなくてもガイが持つ以上の情報を手にするなど容易なはずだ。


なのに何故……?


何故なのかと疑問に思っているとネクロはガイに向けてあることを伝えた。


『キキトは今この関西圏に身を潜めている。

そしてヤツはあらゆる場所で力になるであろう実力者や市民を買収してでも情報操作しようとしている』


「……そうか。

アンタと合流するのは……」


『あくまでキミを無事に確保し、イクトたちをも確保するためだ。

キキトを倒すためにはキミたちの力が不可欠だからな』


「なるほど。

けど……合流は後にしてくれ」


ガイはネクロに一言告げると後ろを振り向く。


ガイが振り向くと光が湾曲して歪むかのように景色が崩、崩れた景色の中から全身を武装した兵士が何人も現れる。


現れた兵士を見るとガイは電話越しのネクロにもそれを確認させるように天晴の携帯のカメラを兵士の方へ向けながらアレについて訊ねた。


「アレはアンタの使いの連中か?」


『いや、アレはキキトの部下だ。

やはりヤツもキミたちがこちらに来たのを察知していたらしい』


「……そうか。

なら倒していいよな?」


『そうしてもらえると助かる。

倒したら天晴の携帯のマップアプリにオレが今いる位置を登録している。

それを頼りにして来てくれ』


分かった、とガイはテレビ電話を切ると天晴に携帯電話を返し、そして刀を抜刀すると天晴に指示を出した。


「援護を頼む。

オレはヤツらを斬り倒す」


「援護は難しいかな」


「何?」


だって、と天晴はどこからともなく忍者刀を取り出すと構え、構える中でガイに向けて伝えた。


「オレもアンタと同じ剣士だからね」


「……そういうことなら仕方ないな。

じゃあ……お互いに相手の実力を確かめるってことで好き勝手やるか」


「おっ、分かりやすくていいね!!

じゃあやろうぜ!!」


「ああ、いくぞ!!」


ガイと天晴は武器を強く握ると走り出し、兵士たちも武器を構えると動き出した。








***


兵士たちを倒したイクトとソラのもとに現れたクラン。


彼は二人に用意しろと指示を出したのだが、イクトは突然の事過ぎて説明を求めてしまう。


「待ってくれクラン。

オレたちはキキトを探してる。

その手掛かりを知ってるであろうネクロに……」


「そのネクロからの指示だ。

オマエらはオレとある仕事をこなしてもらう」


「その仕事って何なのさ?」


「オマエが求めてるキキトの捜索だ。

ネクロはロビンってヤツを探しに行ってるから今は会えないが、代わりにオレたちでキキトを炙り出す」


「オレたち?

賞金稼ぎ同士仲良くしてるのはいいが、賞金稼ぎでもないオレを巻き込むな」


イクトと話を進めるクランに対して不満をぶつけるようにソラは言うとクランに向けて拳銃を構え、引き金に指をかけるとクランにある事を告げていく。


「オマエの見た目がクランだとしてもその中身は本物とはかぎらない。

本物と断定できるまではオレはオレのやりたいように捜索させてもらう」


「勝手なこと言うなよ?

敵は「八神」の恩恵を受けて情報操作できるキキトだ。

オマエみたいな未熟な能力者が一人で勝手に動いたらネクロの思惑通りにことが進まなくなるから困るんだよ」


「未熟だと?

そこまで言うなら試してみるか?

オレが未熟かどうか……」


「やめろって!!」


クランの言葉に苛立つソラは今にもクランを攻撃しそうな勢いで殺気を放ちながら言葉を発するが、イクトはそれを止めようとクランとソラの間に割って入るとソラの構える拳銃を妨害するように立ち塞がる。


「どけ。

そいつに訂正させなきゃ気がすまねぇ」


「わかる、ソラの気持ちはよくわかるから。

けどここはクランの指示に従うべきだ」


「同じ賞金稼ぎのオマエが情報屋に聞き回ればこんなバンダナ野郎に頼らなくて済むって話だろ。

だったらコイツは……」


「その情報屋に頼りたくてもオレは今この地域にいる情報屋のどれだけがキキトに内通してるか分からない状態なんだぞ?

クランはネクロの指示で動こうとしてるし、それはつまりネクロがオレたちを安全な方に導いてくれてるってことだ」


「どうかな?

そのネクロが「八神」に買収されてたらどうする?

そいつの指示ってのも疑わしいってことだ」


「……オマエ、ネクロを侮辱するとはいい度胸だな?」


クランはイクトを横へと押し退けると二本の短剣を両手に構えてソラを睨む。


睨まれたソラはクランのひたいに風穴を開けようと狙いを定め、両者ともに完全に怒りを抑えられずにいる状態だった。


「オマエらいい加減に……」


何とかして止めようとするイクト。

するとそのイクトの言葉を遮るように誰かが話し始めた。


「人がせっかくその環境を用意してやったのに何してやがる」


どこからか聞こえてくる誰かの声。

その声を聞くとソラとクランはまるでタイミングを合わせたかのように声のした方を向き、イクトも大鎌を構えて二人と同じ方に視線を向ける。


三人が視線を向けると突然周囲の地面が氷に覆われ、そして三人の前に一人の男が姿を現す。


黒いコートを羽織り、頭部を覆うように豹にも似た動物の造形の氷の仮面を付けた男。


その男の登場に三人は真剣な表情で武器を構えるのだが、それを見た男は呆れた様子で話していく。


「……構えても無駄だ。

オマエらじゃオレは倒せない」


「何?」


「この程度の挑発で怒るなら尚更だ相馬ソラ。

所詮オマエは姫神ヒロムの取り巻きでしかない」


「テメェ……!!」


「おい、氷野郎。

オマエは何者だ?

何故オレや「死神」の前に現れた?」


「依頼主として受理したあの男がどうやって仕事をこなすかを見届けに来たんだがな……宛が外れたな」


「依頼主……?

オマエ、まさかネクロにキキトを消すように依頼したウィンターか!?」


その通りだ、とクランの言葉に対して男は……ウィンターは答えると続けてクランに向けて話していく。


「オマエが「暗撃」のクランだな。

噂では実力者と聞いていたが、ハンターと取り巻き相手に苦戦するとは情けないな」


「あ……?

やんのかテメェ?」


「取り巻きで済ませたこと後悔させてやろうか?」


ウィンターの言葉に怒りを隠しきれないクランとソラ。


その二人の怒りを感じ取っているのかウィンターは軽く拍手をするとイクトを指さしながら告げた。


「せっかくだ……オマエらがネクロに依頼した仕事を完遂出来るか見極めてやるよ」

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